
1986年に、レイ・デイヴィスが率いるキンクスは、アリスタからロンドン/MCAに移籍しました。なかなか移籍先が見つからず、ようやく決まったロンドンはインディー・レーベル成り下がっていました。それでも同1986年11月17日には移籍第1弾で通算21作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「THINK VISUAL」をリリースしていて、全米81位止まりだったものの、爽快なロックンロール・アルバムで、内容はファンには好評でした。地道にライヴ活動もつづけていたキンクスは、1987年6月29日から7月1日にかけての米国でのライヴ音源を元にした、ライヴ・アルバム「THE ROAD」をリリースしました。このライヴ・アルバム「THE ROAD」は、1987年12月21日にドイツで先行リリース(ジャケットが違う)され、翌1988年1月11日に米国で、同1988年5月23日に英国でリリースされています。キンクスはそれまで、パイ時代の1967年にライヴ・アルバム「LIVE AT KELVIN HALL」(CDではモノラル・ミックスとステレオ・ミックスの「2 in 1」)を、RCA時代の1972年には通算10作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「EVERYBODY'S IN SHOW-BIZ」LP2枚組の1枚にライヴ(CDでは「2 in 1」)を、アリスタ時代の1980年にはライヴ・アルバム「ONE FOR THE ROAD」LP2枚組(CDでは「2 in 1」)をそれぞれリリースしているので、ロンドン/MCAに移籍したのでライヴ・アルバムをリリースするのは自然な流れでした。但し、移籍第1弾で通算21作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「THINK VISUAL」が思ったよりも売れなかったので、経費節減の為に移籍第2弾はこのライヴ・アルバム「THE ROAD」になったのかもしれません。それまでのキンクスのライヴ・アルバムは、1967年の「LIVE AT KELVIN HALL」が全米162位、1972年の半分だけライヴのアルバム「EVERYBODY'S IN SHOW-BIZ」は全米70位、1980年の「ONE FOR THE ROAD」は全米14位でした。ライヴ・アルバム「ONE FOR THE ROAD」の頃は、チャートの成績を見ても「第2の全盛期」でした。
この1988年のライヴ・アルバム「THE ROAD」は、全米110位だったのですけれど、内容は素晴らしいのひとことです。1988年はキンクス結成25周年だったので、その記念盤だと日本盤の帯には載っています。内容は、A面が、1「THE ROAD」、2「DESTROYER」、3「APEMAN」、4「COME DANCING」、5「ART LOVER」、6「CLICHES OF THE WORLD(B MOVIE)」で、B面が、7「THINK VISUAL」、8「LIVING ON A THIN LINE」、9「LOST AND FOUND」、10「‘IT’(I WANT IT)」、11「AROUND THE DIAL」、12「GIVE THE PEOPLE WHAT THEY WANT」の、全12曲入りです。楽曲は、8「LIVING ON A THIN LINE」がデイヴ・デイヴィス作で、他の11曲はレイ・デイヴィス作で、プロデュースもレイ・デイヴィスことレイモンド・ダグラス・デイヴィスです。このライヴ・アルバム「THE ROAD」は、単なるライヴ・アルバムではなくて、先ず最初の1「THE ROAD」と、終盤の10「‘IT’(I WANT IT)」の2曲は、レイ・デイヴィスが新たに書き下ろした新曲で、どちらも6分以上もある長尺なスタジオ・レコーディング曲です。他はライヴ音源を元にしていて、2「DESTROYER」、5「ART LOVER」、11「AROUND THE DIAL」、12「GIVE THE PEOPLE WHAT THEY WANT」の4曲は、1981年の通算18作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「GIVE THE PEOPLE WHAT THEY WANT」から、3「APEMAN」は、1970年の通算8作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「LOLA VERSUS POWERMAN AND THE MONEYGOROUND, PART ONE」から、4「COME DANCING」、6「CLICHES OF THE WORLD(B MOVIE)」の2曲は、1983年の通算19作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「STATE OF CONFUSION」から、7「THINK VISUAL」、9「LOST AND FOUND」の2曲は、1986年の通算21作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「THINK VISUAL」から、8「LIVING ON A THIN LINE」は、1984年の通算20作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「WORD OF MOUTH」からとなっています。
これはどう云う選曲なのかと云うとですね、アリスタ時代の1980年リリースのライヴ・アルバム「ONE FOR THE ROAD」とは1曲もダブっていないどころか、1967年のライヴ・アルバム「LIVE AT KELVIN HALL」とも、1972年のアルバム「EVERYBODY'S IN SHOW-BIZ」のライヴ・サイドとも、1曲もダブっていないのです。しかも、1980年のライヴ・アルバム「ONE FOR THE ROAD」以前の楽曲は「APEMAN」だけで、他の11曲は新曲2曲も含めて、全てがライヴ・アルバム「ONE FOR THE ROAD」よりも後になって発表した曲だけで構成されているのです。おそらく、本番のライヴでは「YOU REALLY GOT ME」や「LOLA」と云った定番の大ヒット曲も演奏したのでしょうけれど、それらはバッサリと斬り捨てて、全曲がダブらないような1980年代の新しい曲でのセットリストで、ライヴ・アルバムにしてしまったのです。「YOU REALLY GOT ME」も「LOLA」も入っていないライヴ・アルバムでは物足りないと思うかと云うと、そんな事は全くなくて、濃密な「54分23秒」となっています。特に、いきなりだなあ、と「DESTROYER」〜「APEMAN」〜「COME DANCING」と畳み掛ける前半や、終盤の「AROUND THE DIAL」〜「GIVE THE PEOPLE WHAT THEY WANT」のカッコ良さと云ったら、コレはもう堪りませんなあ、なのです。最後にレイ・デイヴィスが「WHAT DO YOU WANT?」と連呼して「GOOD NIGHT!」と〆ているので、実際のライヴでも「GIVE THE PEOPLE WHAT THEY WANT」が最後の曲だったのでしょう。この時のキンクスは、レイ・デイヴィス(リード・ヴォーカル、ギター)、デイヴ・デイヴィス(ギター、バッキング・ヴォーカル、「LIVING ON A THIN LINE」のリード・ヴォーカル)、ジム・ロッドフォード(ベース、バッキング・ヴォーカル)、イアン・ギボンズ(キーボード、バッキング・ヴォーカル)、ボブ・ヘンリット(ドラムス)の、5人組です。このライヴ・アルバム「THE ROAD」を聴いて、益々キンクスのライヴが観たくなったのですけれど、それは5年後に1993年の2度目の来日公演で叶う事となりました。
(小島イコ)
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