
1981年に、アリスタ移籍第4弾(ライヴ・アルバムを含めれば第5弾)で通算18作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「GIVE THE PEOPLE WHAT THEY WANT」(全米15位)をリリースしたレイ・デイヴィスが率いるキンクスは、1982年に遂に初来日公演を行いました。個人的には、アリスタに移籍した1977年のアルバム「SLEEPWALKER」からリアルタイムでキンクスを聴いていたので、この当時にはバリバリのキンクス・ファンになっていて、キンクスの初来日公演は行きたかったものの、まだ田舎に住んでいた子どもでありましてですね、東京までコンサートを観に行く経済力がなかったのです。それでも、レコードの方はガッツリとリアルタイムで買う様になっていました。当時はパイ時代やRCA時代のアルバムもリイシューされ始めて、そっちを集めるのも大変だったのです。それで、来日公演の後に、アルバム「GIVE THE PEOPLE WHAT THEY WANT」につづく新作アルバムが出ると噂されていて、そのタイトルが「ENTERTAINER」だと云われていました。当時参加していたミニコミ誌(死語か?)に「キンクスの新作のタイトルは『エンターテイナー』となるらしい」と自分で書いていたので、SNSがない時代に田舎のガキだったファンでも知っている位には周知されていたと思います。ところが、そのアルバム「ENTERTAINER」はなかなかリリースされず、そんな1982年11月19日に、英国でキンクスのシングル「COME DANCING」がリリースされたのです。しかしながら、英国では「COME DANCING」は全く売れず、つづくシングル「DON'T FORGET TO DANCE」も英国ではサッパリ売れなかったのです。と云うか、当時のキンクスは本国である英国では全く売れていなくて、米国ツアーをして米国で人気があるバンドになっていました。そうして、1983年になってから米国でシングル「COME DANCING」がリリースされると、MTVから火が点いて全米6位の大ヒット曲となったのです。
米国での大ヒットを受けて、英国でも「COME DANCING」は全英12位まで上がり、シングル「DON'T FORGET TO DANCE」も全米29位・全英58位とヒットしました。そこで、その2曲を収録したアルバムを出す様にアリスタ側から云われたであろうレイ・デイヴィスとキンクスは、1983年5月24日(米国)・6月10日(英国)に、アリスタ移籍第5弾(ライヴ・アルバムを含めれば第6弾)で通算19作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「STATE OF CONFUSION」をアリスタからリリースしたのです。内容は、A面が、1「STATE OF CONFUSION」、2「DEFINITE MAYBE」、3「LABOUR OF LOVE」、4「COME DANCING」、5「PROPERTY」で、B面が、6「DON'T FORGET TO DANCE」、7「YOUNG CONSER VATIVES」、8「HEART OF GOLD」、9「CLICHES OF THE WORLD(B MOVIE)」、10「BERNADETTE」の、全10曲入りです。CDには、11「DON'T FORGET TO DANCE」オリジナル拡張版、12「ONCE A THIEF」、13「LONG DISTANCE」、14「NOISE」の4曲を加えた全14曲入りになっています。全曲がレイ・デイヴィス作で、プロデュースもレイ・デイヴィスことレイモンド・ダグラス・デイヴィスです。このアルバムでのキンクスは、レイ・デイヴィス(リード・ヴォーカル、リズム・ギター、シンセサイザー、ピアノ)、デイヴ・デイヴィス(リード・ギター、ヴォーカル、「BERNADETTE」のリード・ヴォーカル)、ミック・エイヴォリー(ドラムス)、ジム・ロッドフォード(ベース)、イアン・ギボンズ(キーボード)の5人で、バンドとしては最高の状態でした。大ヒット曲「COME DANCING」に引っ張られて、アルバムも全米12位まで上がるヒット作となりました。「COME DANCING」ありきのアルバムなので、ジャケットは前作アルバム「GIVE THE PEOPLE WHAT THEY WANT」の二番煎じみたいになっています。
ところが、折角盛り上がっていたアルバム「STATE OF CONFUSION」を引っ提げたツアー中に、デイヴ・デイヴィスが脱退すると云い出して、ツアーの後半がキャンセルされてしまったのです。デイヴ・デイヴィスは「俺はもうソロでやる!」と告げて、実際にソロ・アルバムを1980年から1983年にかけて3作もリリースしていて、キンクスを脱退してソロ・ツアーを行ったのです。レイ・デイヴィスは、弟であるデイヴ・デイヴィスと昔から仲が悪く「弟じゃなかったら、とっくの昔にクビにしている」と公言していたので、コレ幸いとデイヴ・デイヴィスの後任としてクリス・スペディングを加入させると決めたのです。ところがところが、いざソロになってみたらソロ・アルバムは売れず、ソロ・ツアーも失敗してしまって、やっぱり兄貴と一緒じゃなきゃやってゆけないんだな、と思い知ったデイヴ・デイヴィスが大嫌いな兄貴に頭を下げてキンクスに復帰してしまったのです。やる気マンマンだったであろうクリス・スペディングの出番はなくなったわけですが、デイヴ・デイヴィスは復帰するや否や、オリジナル・メンバーであるドラマーのミック・エイヴォリーをクビにしてしまい、代わりに元・アージェントのボブ・ヘンリット(ベースのジム・ロッドフォードも元・アージェント)を新たなドラマーにしてしまったのです。故に、ミック・エイヴォリーが全面的に参加しているキンクスのアルバムは、この「STATE OF CONFUSION」が最後となってしまうのです。レイ・デイヴィスとミック・エイヴォリーは苦楽を共にした親友同士なので、レイ・デイヴィスは弟の我がままで脱退させた事を詫びて、コンク・スタジオのスタッフに採用したのでした。そして、先を急げば、2018年にはミック・エイヴォリーはキンクスのメンバーに戻っています。なかなか新作は出ないものの、3人で何かやっていると期待したいです。そんなゴタゴタがあって、キンクスの第2の黄金時代は、このアルバム「STATE OF CONFUSION」で終わっています。
(小島イコ)
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