
1976年にRCAからアリスタへ移籍したレイ・デイヴィスが率いるキンクスは、1977年2月に移籍第1弾で通算15作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「SLEEPWALKER」をリリースして、その移籍第1弾アルバム「SLEEPWALKER」は、全米21位まで上がるヒット作となりました。キンクスが地道に米国でのツアーを行っていた事もヒットの原因ではあったものの、何と云ってもパイ時代の1968年リリースの6作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「THE KINKS ARE THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY」から、RCA時代の1975年リリースの14作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「THE KINKS PRESENT SCHOOLBOYS IN DISGRACE」まで、なんと、9作11枚連続で拘ってきたコンセプト・アルバムを止めて、万人向けのストレートなロックンロール路線に回帰した事がヒットした最大の要因でしょう。アルバム「SLEEPWALKER」は、それまでの「レイ・デイヴィスとその演劇集団」の様なコンセプト・アルバムとは真逆の路線で、バンドも総勢14人の大所帯から5人組に戻って制作されていて、ロックンロール・バンドらしい清々しいアルバムに変貌しています。コレはですね、やはり移籍したアリスタ側から「もうコンセプト・アルバムは止めて下さいね、その為に移籍金としてコンク・スタジオの機材を一新するだけのお金を払っているんですからね」と、釘を刺されたのでしょう。レイ・デイヴィスとしても、いつまでも売れもしないコンセプト・アルバムばかり出していたんじゃアカンな、と思うところがあったのでしょう。そして、1978年5月17日(米国)・5月19日(英国)に、アリスタ移籍第2弾で通算16作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「MISFITS」を、アリスタからリリースしました。
内容は、英国盤のA面が、1「MISFITS」、2「HAY FEVER」、3「BLACK MESSIAH」、4「A ROCK'N'ROLL FANTASY」、5「IN A FOREIGN LAND」で、B面が、6「PERMANENT WAVES」、7「LIVE LIFE」、8「OUT OF THE WARDROBE」、9「TRUST YOUR HEART」、10「GET UP」の、全10曲入りです。米国盤は違っていて、A面が、1「MISFITS」、2「HAY FEVER」、3「LIVE LIFE」米国盤シングル・ミックス、4「A ROCK'N'ROLL FANTASY」、5「IN A FOREIGN LAND」で、B面が、6「PERMANENT WAVES」、7「BLACK MESSIAH」、8「OUT OF THE WARDROBE」、9「TRUST YOUR HEART」、10「GET UP」の全10曲入りです。「TRUST YOUR HEART」がデイヴ・デイヴィス作で、他の9曲はレイ・デイヴィス作で、プロデュースもレイ・デイヴィスことレイモンド・ダグラス・デイヴィスが務めています。CDでは英国盤仕様の全10曲につづいて、ボーナス・トラックとして、11「BLACK MESSIAH」シングル・リミックス、12「FATHER CHRISTMAS」アルバム未収録シングル、13「A ROCK'N'ROLL FANTASY」米国盤シングル・ヴァージョン、14「LIVE LIFE」米国盤シングル・ミックスの4曲を加えた全14曲入りとなっていて、こちらは全てレイ・デイヴィス作です。アルバム「MISFITS」は、全米40位と前作アルバム「SLEEPWALKER」の全米21位よりは売れていませんが、シングル・カットした「A ROCK'N'ROLL FANTASY」が全米30位まで上がる「トップ40ヒット」となっています。キンクスのシングルが全米「トップ40」入りしたのは、1970年の「LOLA」(全米9位)以来の快挙で、アリスタに移籍したキンクスが大復活する予兆が充分に感じられました。
しかしながら、当時のキンクスの内情はガタガタで、前作「SLEEPWALKER」の途中から加入したベースのアンディ・パイルと、1970年の8作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「LOLA VERSUS POWERMAN AND THE MONEYGOROUND, PART ONE」以来のメンバーだったキーボードのジョン・ゴスリングが、アルバム「MISFITS」のリリースを前に脱退してしまいました。それらを受けて、旧メンバーだったジョン・ダルトンや、セッション・ミュージシャンがベースを弾いていたり、セッション・ドラマーがドラムスを叩いている曲もあります。相次ぐメンバーの脱退を受けて、レイ・デイヴィスがソロ・アルバムにしようとキンクス以外のセッション・ミュージシャンを起用してレコーディングした曲(「A ROCK'N'ROLL FANTASY」、「TRUST YOUR HEART」、「GET UP」)があるものの、アリスタ側としては売れてきた「キンクス」のアルバムが欲しかったので、結局はキンクスの16作目のオリジナル・スタジオ・アルバムとなった経緯があります。結局、キンクスは、レイ・デイヴィス(ヴォーカル、ギター、キーボード)、デイヴ・デイヴィス(ギター、ヴォーカル)、ミック・エイヴォリー(ドラムス)のオリジナル・メンバー3人に、ベースに元・アージェントのジム・ロッドフォード、キーボードに元・プリティー・シングスのゴードン・エドワーズを加えた5人組となるのですが、ゴードン・エドワーズはツアー後に脱退して、イアン・ギボンズがキーボード奏者として加入する事となります。アリスタ側としては、前作アルバム「SLEEPWALKER」よりも今作アルバム「MISFITS」が売れなかったので、次作アルバム「LOW BUDGET」は低予算で短期間でレコーディングさせています。ところが、そのやっつけ仕事のアルバム「LOW BUDGET」が、様々な要因からバカ売れしてしまうのでした。
(小島イコ)
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