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2026年08月10日

「ポールの道」#1174「BEAT THE BEATLES」
#221「SLEEPWALKER」

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1976年に、レイ・デイヴィスが率いるキンクスは、RCAからアリスタへと移籍しました。アリスタのトップであったクライヴ・デイヴィス(レイ・デイヴィスとデイヴ・デイヴィスの兄弟とは血縁関係はない)は、キンクスのスタジオであるコンクの録音機材を全て新しくするだけの移籍金をキンクスに与えて、レイ・デイヴィスとキンクスは心機一転、新たなレコード会社から作品をリリースする事となりました。それだけの好待遇でキンクスを迎い入れたアリスタ側としては、暗に、いやハッキリと「もうコンセプト・アルバムなんか止めて、初期のロックンロール路線に回帰して、ズバリ云って売れるアルバムを制作してくれませんかね」と要望したでしょう。レイ・デイヴィスとしても、RCA時代に散々コンセプト・アルバムを乱発してセールスが低迷していたし、その反面、米国での地道なライヴ活動は評価されていたので、アリスタ移籍を機に路線変更を考えていたでしょう。両者の思惑は一致していたので、キンクスは1977年2月12日(米国)・2月25日(英国)に、アリスタ移籍後第1弾で通算15作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「SLEEPWALKER」をリリースしたのです。内容は、A面が、1「LIFE ON THE ROAD」、2「MR. BIG MAN」、3「SLEEPWALKER」、4「BROTHER」で、B面が、5「JUKE BOX MUSIC」、6「SLEEPLESS NIGHT」、7「STORMY SKY」、8「FULL MOON」、9「LIFE GOES ON」の、全9曲入りです。全曲がレイ・デイヴィスの単独作で、プロデュースもレイ・デイヴィスことレイモンド・ダグラス・デイヴィスが手掛けています。CDにはボーナス・トラックとして、10「ARTFICAL LIGHT」、11「PRINCE OF THE PUNKS」、12「THE POSEUR」、13「ON THE OUTSIDE(1977 MIX)」、14「ON THE OUTSIDE(1994 MIX)」を加えた、全14曲入りです。このアルバム「SLEEPWALKER」は、録音機材の一新により音が格段に良くなっています。

この時期のキンクスは、レイ・デイヴィス(リード&バッキング・ヴォーカル、ギター、キーボード)、デイヴ・デイヴィス(リード・ギター、バッキング&ハーモニー・ヴォーカル、「SLEEPLESS NIGHT」のリード・ヴォーカル、「JUKE BOX MUSIC」の共同リード・ヴォーカル)、ジョン・ダルトン(「MR. BIG MAN」以外のベース)、ジョン・ゴスリング(キーボード、バッキング・ヴォーカル)、ミック・エイヴォリー(ドラムス、パーカッション)の5人ですが、ジョン・ダルトンが途中で脱退してしまったので、「MR. BIG MAN」ではアンディ・パイルがベースを弾いています。アリスタ時代には、ベース奏者とキーボード奏者の入れ替わりが激しく、レイ・デイヴィス、デイヴ・デイヴィス、ミック・エイヴォリーのオリジナル・メンバー3人以外はコロコロとメンバーが変わっています。アリスタ側としては、パイ時代の1968年リリースの6作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「THE KINKS ARE THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY」から、RCA時代の1975年リリースの14作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「THE KINKS PRESENT SCHOOLBOYS IN DISGRACE」までの、7年間で9作LP11枚にも及んだコンセプト・アルバムなんかいい加減に止めてもらって、パイ時代の初期の様なロックンロール路線に原点回帰してもらえば、キンクスはまだまだ商売になる、と踏んでいて、それがレイ・デイヴィスにも通じていて、総勢14人の大所帯を止めて5人組となり、この爽快なロックンロール・アルバムが完成したのでしょう。その結果、この移籍第1弾で通算15作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「SLEEPWALKER」は、全米21位まで上がる久しぶりのヒット作となったのです。シングル・カットした表題曲「SLEEPWALKER」も、全米48位まで上がっています。

さて、このアルバム「SLEEPWALKER」は、個人的には初めて買ったキンクスのアルバムなので愛着があります。キンクスに興味を持ったのは、このアルバム「SLEEPWALKER」に収録されていて第2弾シングル・カットもされた「JUKE BOX MUSIC」を、渋谷陽一さんの番組で聴いたからです。当時のロック・ファンにとって、渋谷さんがディスクジョッキーを務めていた「ヤングジョッキー」は、数少ない本物のロックを聴かせてくれる番組で、NHK FMで放送されていたので田舎でも普通に聴けたので、お世話になった方々も多いでしょう。それで「JUKE BOX MUSIC」を聴いて、レイ・デイヴィスの魅力的なヴォーカルと、それに絡むデイヴ・デイヴィスの甲高いヴォーカルの、カッコ良過ぎるロックンロールで、一聴して好きになりました。他にも「廃盤特集」とか云ってパイ時代初期の曲もかけてくれたので、すっかり気に入って、レコード店にキンクスのアルバムを買いに行ったら、最新盤だったアルバム「SLEEPWALKER」しか売っていなかったのです。それで、まあ「JUKE BOX MUSIC」が入っているから良いか、と思って買ったのです。その時点では、キンクスがそれまではコンセプト・アルバムばかりリリースして低迷していたなどと云う知識もなかったし、そもそもパイ時代の初期のヒット曲と、このアリスタ移籍第1弾のアルバム「SLEEPWALKER」しか知らなかったわけで、パイ時代の後期からRCA時代のコンセプト・アルバム時代がゴッソリと抜けていたのです。それで、色々と聴いてゆく内に、どうやらキンクスは長い間は売れもしないコンセプト・アルバムばかり出していたと云う事実にぶち当たるわけですなあ。兎も角、1977年の段階では、このアルバム「SLEEPWALKER」しか日本盤は売っていなかった、と云う記憶は強く残っています。それはキンクスに限った事ではなくて、ビーチ・ボーイズなんかもほとんどが廃盤でした。それで、個人的にはここからがリアルタイムでキンクスを聴いてゆく事となった、重要なアルバムです。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする