
1968年11月22日にパイからリリースした6作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「THE KINKS ARE THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY」は、レイ・デイヴィスの渾身のコンセプト・アルバムでした。2004年のキンクス結成40周年では、3CDの拡張盤がリリースされて、2018年にはアルバムの50周年記念で、5CD+3LP+3シングルに豪華本の箱もリリースされた、レイ・デイヴィスのお気に入りで自信作です。しかしながら、当初の構想では全20曲入りのLP2枚組での構想をバカなレコード会社に却下されて、全12曲入りでリリースするも納得出来ず差し止めて、全15曲入りでリリースされています。外された曲は、アラン・クレインが版権を持っていて、勝手に1973年にそれらを中心としたコンピレーション・アルバム「THE GREAT LOST KINKS ALBUM」をリリースされたのですが、2004年の3CD盤「THE KINKS ARE THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY」でそれらのレア音源はCD化されています。そうした紆余曲折があったアルバム「THE KINKS ARE THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY」ですが、リリース当時は英国でも米国でもチャート入りせず、ズバリ云って商業的には大失敗作と断じられました。それで、その影響もあったのか、オリジナル・メンバーでベース担当のピート・クウェイフが脱退してしまい、後任には以前にも代役を務めていたジョン・ダルトンが正式メンバーとしてベースを担当する事となりました。キンクスの長い歴史で、メンバー・チェンジは何度もありますが、基本的には、レイ・デイヴィスとデイヴ・デイヴィスの兄弟は一貫してメンバーであり続けていて、ドラマーのミック・エイヴォリーも1984年まではメンバーで、その後にボブ・ヘンリットに交代しますが、現在はまた戻っています。つまり、出たり入ったりしているのはベースとキーボードなのです。キーボードに関しては、1960年代にはニッキー・ホプキンスやレイ・デイヴィスが担当していて、ライヴを補強する為に1970年代からメンバーを追加しています。
つまり、1960年代のパイ時代のキンクスは4人組のバンドだったわけで、基本的にはレイ・デイヴィスのワンマン・バンドでもありました。そこに弟であるデイヴ・デイヴィスが成長して曲も書く様になったわけですが、あくまでもアルバムの方向性を決めているのはレイ・デイヴィスでした。そんなレイ・デイヴィスが、渾身のアルバムとして世に問うた「THE KINKS ARE THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY」が売れなかった事で、だったら次はコンセプト・アルバムなんか止めて初期の様にロックンロール路線でゆこう、と普通なら方向展開するわけですが、何せレイ・デイヴィスなので、コンセプト・アルバム路線は止めず、曲調はロックンロール路線にしよう、となるわけですなあ。そして、1969年10月10日に、パイから7作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「ARTHUR(OR THE DECLINE AND FALL OF THE BRITISH EMPORE)」をリリースしたのです。邦題が「アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡」とされたこのアルバムは、またしてもコンセプト・アルバムなのですが、コレはですね、元々はテレビ・ドラマ用にレコーディングされていたので、レイ・デイヴィスがコンセプト・アルバムに拘ったわけではなさそうにも思えます。しかしながら、その後のキンクスのアルバムはパイ時代もRCA時代もずっとコンセプト・アルバムばかりなので、レイ・デイヴィスがどうしてもコンセプト・アルバムではないとやりたくなかったのでしょうなあ。ところで、キンクスは1965年にステージ上でメンバーが喧嘩して大怪我する事件があって、4年間米国での音楽活動が禁止されていたのです。それで、それが解除される1969年4月にレイ・デイヴィスが渡米して交渉して、米国で再びライヴ活動が出来る様になったのです。それは、翌1970年に花開く事となりますし、コンセプト・アルバムとは云え、この頃のレイ・デイヴィスは、まだ各曲を単体にしても通用する様に作っているのです。アナログ盤の見開きジャケットには、仕掛けもしてあります。
さて、アルバム「ARTHUR(OR THE DECLINE AND FALL OF THE BRITISH EMPORE)」の内容は、A面が、1「VICTORIA」、2「YES SIR, NO SIR」、3「SOME MOTHER'S SON」、4「DRIVIN'」、5「BRAINWASHED」、6「AUSTRALIA」で、B面が、7「SHANGRI-LA」、8「MR. CHURCHILL SAYS」、9「SHE'S BOUGHT A HAT LIKE PRINCESS MARINA」、10「YOUNG AND INNOCENT DAYS」、11「NOTHING TO SAY」、12「ARTHUR」の、全12曲入りでステレオ・ミックスです。全曲がレイ・デイヴィスの単独作で、プロデュースもレイ・デイヴィスが務めています。CDにはボーナス・トラックとして、13「PLASTIC MAN」、14「KING KONG」、15「DRIVIN'」、16「MINDLESS CHILD OF MOTHERHOOD」、17「THIS MAN HE WEEPS TONIGHT」、18「PLASTIC MAN」、19「MINDLESS CHILD OF MOTHERHOOD」、20「THIS MAN HE WEEPS TONIGHT」、21「SHE'S BOUGHT A HAT LIKE PRINCESS MARINA」、22「MR. SHOEMAKERS DAUGHTER」の10曲を加えた全22曲入りです。こちらはアルバム未収録シングル曲で、「MINDLESS CHILD OF MOTHERHOOD」と「THIS MAN HE WEEPS TONIGHT」と「MR. SHOEMAKERS DAUGHTER」の3曲5テイクがデイヴ・デイヴィスの単独作で、他の4曲5テイクはレイ・デイヴィスの単独作です。13「PLASTIC MAN」〜17「THIS MAN HE WEEPS TONIGHT」はモノラル・ミックス、18「PLASTIC MAN」〜20「THIS MAN HE WEEPS TONIGHT」はステレオ・ミックス、21「SHE'S BOUGHT A HAT LIKE PRINCESS MARINA」はモノラル・ミックス、22「MR. SHOEMAKERS DAUGHTER」は未発表曲です。このアルバム「ARTHUR(OR THE DECLINE AND FALL OF THE BRITISH EMPORE)」も、商業的には失敗しますが、レイ・デイヴィスはそれでもコンセプト・アルバムに拘り、次作アルバムではコンセプト・アルバムの表題曲を大ヒット・シングルにすると云う、離れ技を披露するのでした。
(小島イコ)
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