
ローリング・ストーンズには、矢鱈とベスト・アルバムとライヴ・アルバムが多いのです。それで、今年(2026年)7月10日には新作スタジオ・アルバムがリリースされるので、新たにローリング・ストーンズを新作から聴き始めて、過去のベスト・アルバムやベスト・ヒット曲満載のライヴ・アルバムを聴こうと思った場合には、大いに混乱するでしょう。何故にローリング・ストーンズのベスト・アルバムやライヴ・アルバムが多いのかと云うとですね、先ずは1963年にデビューしてから、2026年の現在まで、何度も解散危機に陥った事はあっても、一度も解散せずに60年以上も活動を続けているからなのです。例えばビートルズの場合は、1962年にメジャー・デビューして1970年には解散してしまっているわけで、ローリング・ストーンズ以外のロック・バンドで一度も解散せずに1960年代初期から2026年の現在まで活動しているのは、ビーチ・ボーイズ位しかありません。しかしながら、ビーチ・ボーイズの場合は1998年には3分裂してしまったし、要だったウィルソン3兄弟はブライアンもデニスもカールも既に亡くなっています。それを云ったならばローリング・ストーンズもオリジナル・メンバーはミック・ジャガーとキース・リチャーズの二人しかいないのですけれど、ロン・ウッドは何だか大昔からいたみたいな顔をして馴染んでいるし、確かにロン・ウッドだって加入してから50年も経っているわけですよ。他にはフーなんかも頑張っているけれど、フーの場合は1980年代にウッカリ一回解散しちゃっていて、同じ頃にローリング・ストーンズも何度目かの解散危機に直面していたけれど、ミック・ジャガーとキース・リチャーズが、それぞれソロ・アルバムを出してソロのライヴ・ツアーもやって、ガス抜きして解散を回避したのが大きかったと思います。ミック・ジャガーもキース・リチャーズも、当時はまだ40代半ばだったから解散してもやっていけると思っていたでしょうけれど、今では二人共に80歳を越えているわけで、今更解散なんてしないでしょう。
それをビートルズで云えば、1970年代に裁判沙汰にして解散はしていますが、例えば1970年のジョン・レノンのソロ・アルバム「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」では全編に渡ってリンゴ・スターがドラムスを叩いているし、1971年のジョンのソロ・アルバム「IMAGINE」ではジョージ・ハリスンがギターを弾いているし、1970年のジョージのソロ・アルバム「ALL THINGS MUST PASS」ではリンゴがドラムスを叩いているけれど、それらはビートルズではない事になっているのです。1973年のリンゴのソロ・アルバム「RINGO」に至っては、ジョン、ポール、ジョージが参加していて、ジョンとジョージとリンゴの3人は同じ曲で共演までしているのですけれど、それもビートルズではないと云う事になっているのです。それ以後も元ビートルズのメンバーは何度も共演しているけれど、それらはビートルズではない事になっていて、今度のポールのソロ・アルバムではポールとリンゴがデュエットした曲まで入っているのに、それもビートルズではない事になっているわけです。それなのに、「FREE AS A BIRD」と「REAL LOVE」と「NOW AND THEN」の3曲はビートルズ名義なわけで、簡単に云えば、例外はあるにせよ「レノン=マッカートニー」が二人揃っていない限り、それはビートルズではないと云う話なんですよ。その点、常に喧嘩ばかりしている様な「ジャガー=リチャーズ」の二人がいる限り、それはローリング・ストーンズなのです。さて、今回の本題は、1979年6月1日にローリング・ストーンズ・レコードからリリースされたコンピレーション・アルバム「TIME WAITS FOR NO ONE:ANTHOLOGY 1971-1977」です。このアルバムは、米国ではリリースされていませんが、本国である英国や日本などで世界的にリリースされていますし、2019年には日本でCD化もされています。内容は、A面が、1「TIME WAITS FOR NO ONE」、2「BITCH」、3「ALL DOWN THE LINE」、4「DANCING WITH MR. D」、5「ANGIE」で、B面が、1「STAR STAR」、2「IF YOU CAN'T ROCK ME / GET OFF OF MY CLOUD」、3「HAND OF FATE」、4「CRAZY MAMA」、5「FOOL TO CRY」の、全10曲入りとなっています。
ローリング・ストーンズ・レコードからのリリースとなった、1971年のアルバム「STICKY FINGERS」から1977年のライヴ・アルバム「LOVE YOU LIVE」までの6作からの選曲となっていて、「BITCH」が1971年のアルバム「STICKY FINGERS」から、「ALL DOWN THE LINE」が1972年のアルバム「EXILE ON MAIN ST.」から、「DANCING WITH MR. D」、「ANGIE」、「STAR STAR」の3曲が1973年のアルバム「GOATS HEAD SOUP」から、「TIME WAITS FOR NO ONE」が1974年のアルバム「IT’S ONLY ROCK'N ROLL」から、「HAND OF FATE」、「CRAZY MAMA」、「FOOL TO CRY」の3曲が1976年のアルバム「BLACK AND BLUE」から、「IF YOU CAN'T ROCK ME / GET OFF OF MY CLOUD」が1977年のライヴ・アルバム「LOVE YOU LIVE」からとなっています。ヒット・シングルが「ANGIE」と「FOOL TO CRY」の2曲しか入っていないので、ベスト・アルバムと云うよりはコンピレーション・アルバムなのですけれど、それにしたって良く分からない選曲にはなっています。ローリング・ストーンズ・レコードからのベスト・アルバムとしては、既に1975年6月6日にアルバム「MADE IN THE SHADE」全10曲入りをリリースしていて、1971年のアルバム「STICKY FINGERS」から1974年のアルバム「IT’S ONLY ROCK'N ROLL」までのヒット・シングルを7曲収録済みだったので、こちらとのダブリは「BITCH」と「ANGIE」の2曲だけなのですけれど、それだったなら全10曲がダブらない様にした方が良かったのになあ、と思える中途半端な選曲にはなっています。曲順も3曲ずつ入っているアルバム「GOATS HEAD SOUP」とアルバム「BLACK AND BLUE」からの曲を固めていて、何の捻りもない並べ方をしています。CD化された時に「TIME WAITS FOR NO ONE」は6分半以上もあるアルバム・ヴァージョンに、「STAR STAR」は検閲ヴァージョンに差し替えられていますが、いきなりだなあ、と長尺な「TIME WAITS FOR NO ONE」で始まるのも変ではあります。このコンピレーション・アルバムだけで聴ける曲もないので、ローリング・ストーンズのレコードなら何でも良いから欲しい方向けのアルバムです。
(小島イコ)
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