
ローリング・ストーンズの作品は、1971年の9作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「STICKY FINGERS」からは、自らが設立したローリング・ストーンズ・レコードからリリースされています。但し、それはあくまでもレーベルであって、配給は大手のレコード会社を通じて行われていました。それで、1971年のアルバム「STICKY FINGERS」と、1972年のアルバム「EXILE ON MAIN ST.」は、英国キニーと米国アトコから、1973年のアルバム「GOATS HEAD SOUP」と、1974年のアルバム「IT'S ONLY ROCK'N ROLL」と、1975年のベスト・アルバム「MADE IN THE SHADE」と、1976年のアルバム「BLACK AND BLUE」と、1977年のライヴ・アルバム「LOVE YOU LIVE」は、アトランティックから、1978年のアルバム「SOME GIRLS」と、1980年のアルバム「EMOTIONAL RESCUE」と、1981年のベスト・アルバム「SUCKING IN THE SEVENTIES」と、1981年のアルバム「TATTOO YOU」と、1982年のライヴ・アルバム「STILL LIFE(AMERICAN CONCERT 1981)」と、1983年のアルバム「UNDERCOVER」と、1984年のベスト・アルバム「REWIND 1971-1984」は、英国EMIと米国アトランティックからのリリースとなっています。そして、1984年にローリング・ストーンズ・レコードは、新たにCBSと配給契約(移籍金60億円と云われている)を結びました。それで、心機一転1985年1月から新作アルバムの制作を始めたわけですが、その1985年にはローリング・ストーンズが解散危機に直面していると、傍から見ても分かる様な出来事が立て続けに起きています。先ずは、1985年2月には、リード・ヴォーカルでフロントマンでもあるミック・ジャガーがソロ・アルバム「SHE'S THE BOSS」をリリースして、同年4月にはベーシストのビル・ワイマンが結成したバンドのアルバム「WILLIE AND THE POOR BOYS」をドラマーのチャーリー・ワッツも参加してリリースして、同年7月13日の「LIVE AID」では、ミック・ジャガーがソロで(「MISS YOU」と「IT'S ONLY ROCK'N ROLL(BUT I LIKE IT)」も演奏)、キース・リチャーズとロン・ウッドはボブ・ディランと3人で、別々にライヴに出演したのです。
その時に公開されたミック・ジャガーとデヴィッド・ボウイの共演曲「DANCING IN THE STREET」も12インチ・シングルでリリースされ、同年11月にはチャーリー・ワッツがジャズ・プロジェクトを始動させています。そして、同年12月12日には、6人目のローリング・ストーンズであったイアン・スチュワートが亡くなってしまいます。そうした中でレコーディングが行われたのですが、例によってミック・ジャガーとキース・リチャーズの仲は、何度目の最悪か、で、特にソロ・アルバムを出していたミック・ジャガーがソロでのプロモーションを優先させてセッションを欠席する様になり、怒ったキース・リチャーズがノコノコと遅れてやって来たミック・ジャガーの胸ぐらをつかむと云う一触即発の事態にもなったのです。そうして完成したのが、1986年3月24日にローリング・ストーンズ・レコードからリリースされたローリング・ストーンズの18作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「DIRTY WORK」です。内容は、A面が、1「ONE HIT(TO THE BODY)」、2「FIGHT」、3「HARLEM SHUFFLE」、4「HOLD BACK」、5「TOO RUDE」で、B面が、1「WINNING UGLY」、2「BACK TO ZERO」、3「DIRTY WORK」、4「HAD IT WITH YOU」、5「SLEEP TONIGHT」の、全10曲入りです。プロデュースはキース・リチャーズの提案でスティーヴ・リリーホワイトとグリマー・ツインズの共同で、楽曲は「HARLEM SHUFFLE」はボブ&アールのカバーで、「TOO RUDE」はハーフ・パイントのカバーで、他の8曲がジャガー=リチャーズ作なのですが、その半数である4曲(「ONE HIT(TO THE BODY)」、「FIGHT」、「DIRTY WORK」、「HAD IT WITH YOU」)がジャガー=リチャーズとロン・ウッドの共作で、1曲(「BACK TO ZERO」)がジャガー=リチャーズとチャック・リーヴェルの共作となっていて、つまりはジャガー=リチャーズ作は3曲(「HOLD BACK」、「WINNING UGLY」、「SLEEP TONIGHT」)しかありません。11曲目にはシークレット・トラックで、亡くなったイアン・スチュワートがピアノを弾いた「KEY TO THE HIGHWAY」が収録されています。アルバム「DIRTY WORK」は全英4位・全米4位と云う成績で、シングル・カットした「HARLEM SHUFFLE」は全英13位・全米5位、「ONE HIT(TO THE BODY)」は全英80位・全米28位でした。「HARLEM SHUFFLE」は、レコーディングではミック・ジャガーとボビー・ウーマックのデュエットだったのに、完成ヴァージョンではボビー・ウーマックが単なるバッキング・ヴォーカルにされていて激怒した事で有名です。
レコーディング・メンバーは、ミック・ジャガー(リード&バッキング・ヴォーカル、ハーモニカ)、キース・リチャーズ(ギター、バッキング・ヴォーカル、「SLEEP TONIGHT」のベース、ピアノ、「TOO RUDE」と「SLEEP TONIGHT」のリード・ヴォーカル)、ロン・ウッド(ギター、バッキング・ヴォーカル、「FIGHT」、「TOO RUDE」、「BACK TO ZERO」のベース、「HAD IT WITH YOU」のサックス、「TOO RUDE」、「SLEEP TONIGHT」のドラムス)、ビル・ワイマン(「ONE HIT(TO THE BODY)」、「HARLEM SHUFFLE」、「DIRTY WORK」のベース)、チャーリー・ワッツ(ドラムス)の、ローリング・ストーンズの5人に、ゲストとして、ジミー・ペイジ(「ONE HIT(TO THE BODY)」のギター)、チャック・リーヴェル(キーボード、オルガン、シンセサイザー)、ボビー・ウーマック(「ONE HIT(TO THE BODY)」、「HARLEM SHUFFLE」、「SLEEP TONIGHT」のバッキング・ヴォーカル、「BACK TO ZERO」のギター)、ジョン・レーガン(「ONE HIT(TO THE BODY)」、「WINNING UGLY」のベース)、スティーヴ・ジョーダン(「FIGHT」のバッキング・ヴォーカル)、イヴァン・ネビル(「FIGHT」のバッキング・ヴォーカル、「HOLD BACK」のベース)、ドン・コヴェイ(「ONE HIT(TO THE BODY)」、「SLEEP TONIGHT」のバッキング・ヴォーカル)、パティ・シャルファ、ビヴァリー・ダンジェロ(「ONE HIT(TO THE BODY)」のバッキング・ヴォーカル)、チャーリー・ドレイトン(「FIGHT」のバッキング・ヴォーカル)、トム・ウェイツ(「HARLEM SHUFFLE」のバッキング・ヴォーカル)、ジミー・クリフ(「TOO RUDE」のバッキング・ヴォーカル)、ジャニス・ペンダーヴィス、ドレット・マクドナルド(「WINNING UGLY」のバッキング・ヴォーカル)、フィリップ・セス(「BACK TO ZERO」のキーボード)、ダン・コレット(「BACK TO ZERO」のトランペット)、マルク・ヒバス、アントン・フィグ(「BACK TO ZERO」のパーカッション)、そして、シークレット・トラックでイアン・スチュワート(ピアノ)が参加しています。キース・リチャーズが2曲でリード・ヴォーカルを担当していて、ジャケットでも真ん中にいる事でも分かる通り、キース・リチャーズが主導して制作されたアルバムです。
(小島イコ)
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