
1980年になってからのローリング・ストーンズは、1980年6月に15作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「EMOTIONAL RESCUE」を、1981年3月にベスト・アルバム「SUCKING IN THE SEVENTIES」を、1981年8月に16作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「TATTOO YOU」を、1982年6月にライヴ・アルバム「STILL LIFE(AMERICAN CONCERT 1981)」を、それぞれローリング・ストーンズ・レコードからコンスタントにリリースしていました。しかしながら、その内容は、アルバム「EMOTIONAL RESCUE」は1979年にレコーディングされていて、ベスト・アルバム「SUCKING IN THE SEVENTIES」は1970年代の音源で、アルバム「TATTOO YOU」は1970年代のレコーディング・セッションでのボツ音源を元にしていました。ライヴ・アルバム「STILL LIFE(AMERICAN CONCERT 1981)」も、過去のレパートリーを中心としたライヴ音源です。ライヴ・アルバム「STILL LIFE(AMERICAN CONCERT 1981)」は全12曲入りで、ローリング・ストーンズの演奏は全10曲ですが、実際のライヴでは25曲程が演奏されています。それは、「INTRO:TAKE THE A TRAIN」、1「UNDER MY THUMB」、2「WHEN THE WHIP COMES DOWN」、3「LET'S SPEND THE NIGHT TOGETHER」、4「SHATTERED」、5「NEIGHBOURS」、6「BLACK LIMMOUSINE」、7「JUST MY IMAGINATION(RUNNING AWAY WITH ME)」、8「TWENTY FLIGHT ROCK」、9「GOING TO A GO GO」、10「LET ME GO」、11「TIME IS ON MY SIDE」、12「BEAST OF BURDEN」、13「WAITING ON A FRIEND」、14「LET IT BLEED」、15「YOU CAN'T ALWAYS GET WHAT YOU WANT」、16「LITTLE T&A」、17「TUMBLING DICE」、18「SHE'S SO COLD」、19「HANG FIRE」、20「MISS YOU」、21「HONKY TONK WOMEN」、22「BROWN SUGAR」、23「START ME UP」、24「JUMPIN' JACK FLASH」、25「(I CAN'T GET NO)SATISFACTION」、「OUTRO:STAR SPANGLED BANNER」の、全25曲です。
1981年の段階ではオールタイム・ベスト・ヒット曲満載のライヴで、1982年には映画「LET'S SPEND THE NIGHT TOGETHER」として劇場公開もされました。が、しかし、1960年代の「UNDER MY THUMB」、「TIME IS ON MY SIDE」、「LET IT BLEED」、「YOU CAN'T ALWAYS GET WHAT YOU WANT」、「HONKY TONK WOMEN」、「JUMPIN' JACK FLASH」、「(I CAN'T GET NO)SATISFACTION」と云った楽曲も多く含まれていて、ローリング・ストーンズも懐メロ・バンド化するのか、とも思えるセットリストです。勿論、当時の最新ヒット曲の「START ME UP」や「WAITING ON A FRIEND」なども演奏されているものの、それらはアルバム「TATTOO YOU」収録曲であり、つまりは過去の楽曲をリサイクルしたものです。アルバム「EMOTIONAL RESCUE」も、ベスト・アルバム「SUCKING IN THE SEVENTIES」も、アルバム「TATTOO YOU」も、全ては1970年代の作品であって、それで1981年の北米ツアーと1982年のヨーロッパ・ツアーでの最新ライヴのセットリストがオールタイム・ベスト・ヒットとなれば、この時点でローリング・ストーンズは1980年代になってから新曲を発表していなかった事になります。それではイカンと思ったローリング・ストーンズは、ようやく1980年代に入ってから初めての新作アルバムを制作する事となったのです。それが、1983年11月7日にローリング・ストーンズ・レコードからリリースした17作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「UNDERCOVER」です。内容は、A面が、1「UNDERCOVER OF THE NIGHT」、2「SHE WAS HOT」、3「TIE YOU UP(THE PAIN OF LOVE)(恋の痛手)」、4「WANNA HOLD YOU」、5「FEEL ON BABY」で、B面が、1「TOO MUCH BLOOD」、2「PRETTY BEAT UP」、3「TOO TOUGH」、4「ALL THE WAY DOWN」、5「IT MUST BE HELL」の、全10曲入りです。9曲がジャガー=リチャーズ作で、「PRETTY BEAT UP」がジャガー=リチャーズとロン・ウッドの共作となってはいます。
しかし、実情はミック・ジャガーとキース・リチャーズの仲が毎度の事ですが最悪で、時代遅れにならない様に1980年代らしい新しい試みをしたいミック・ジャガーと、新たな挑戦は良いけれど基本は時代の流行に左右されない原点回帰のリズム&ブルース路線でいきたいキース・リチャーズが対立して、何とも中途半端なアルバムになってしまったのです。アルバム「UNDERCOVER」は全英3位・全米4位で、先行シングル「UNDERCOVER OF THE NIGHT」は全英11位・全米9位で、第2弾シングル「SHE WAS HOT」(B面の「I THINK I'M GOING MAD」はアルバム未収録曲)は全英42位・全米44位で、米国では「TOO MUCH BLOOD」が12インチ・シングルになっています。プロデュースはグリマー・ツインズとエンジニアのクリス・キムジーで、レコーディング・メンバーは、ミック・ジャガー(リード・ヴォーカル、リズム・ギター、ハーモニカ)、キース・リチャーズ(リズム&リード・ギター、バッキング・ヴォーカル、「WANT TO HOLD YOU」のリード・ヴォーカル、「PRETTY BEAT UP」のベース)、ロン・ウッド(リズム&リード・ギター、バッキング・ヴォーカル、「TIE YOU UP(THE PAIN OF LOVE)」と「WANT TO HOLD YOU」のベース)、ビル・ワイマン(ベース、パーカッション、「PRETTY BEAT UP」のピアノ)、チャーリー・ワッツ(ドラムス)の、ローリング・ストーンズの5人に、チャック・リーヴェル(キーボード)、イアン・スチュワート(「SHE WAS HOT」と「PRETTY BEAT UP」のピアノ、パーカッション)、デヴィッド・サンボーン(サックス)、チョップス(ホーン・セクション)、スライ・ダンバー(パーカッション)、ムスタファ・シセ(パーカッション)、マーティン・ディッチャム(パーカッション)、ジム・バーバー(「TOO MUCH BLOOD」のギター)が参加しています。評論家からは「支離滅裂なクソ作品」と叩かれて、ローリング・ストーンズとしても失敗作と認めた駄作となってしまいました。が、しかし、1980年代のローリング・ストーンズの混迷は、これだけでは終わらなかったのです。
(小島イコ)
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