
1980年6月23日リリースの15作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「EMOTIONAL RESCUE」と、1981年3月リリースのベスト・アルバム「SUCKING IN THE SEVENTIES」で、1970年代を総括したローリング・ストーンズは、同1981年8月24日に16作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「TATTOO YOU(刺青の男)」を、ローリング・ストーンズ・レコードからリリースしました。時は1981年、前年である1980年12月8日のジョン・レノン暗殺事件の悲しみが癒えぬ時に、兄貴分だったジョン・レノンの後を継ぐかの様にリリースされたアルバム「TATTOO YOU」は、覚悟を決めた様な爽快なロックンロール・アルバムで、全英2位・全米首位!となり、先行シングル「START ME UP」は全英7位・全米2位となり、2作目のシングル「WAITING ON A FRIEND」は全英50位・全米13位となり、3作目のシングル「HANG FIRE」も全米20位まで上がっています。誰もが1980年代を迎えたローリング・ストーンズの大傑作アルバムと認めたアルバム「TATTOO YOU」ですが、現在ではその内幕が明かされています。それは、当時も現在もローリング・ストーンズの中核で「ジャガー=リチャーズ」として曲を書き、アルバムのプロデュースも「グリマー・ツインズ」として行っていた、ミック・ジャガーとキース・リチャーズの関係性が最悪で、とても新曲を書く事など望めず、しかし新作アルバムはリリースしなければならなかったので、なんとまあ、過去のレコーディング・セッション音源からボツになった曲を再利用して完成させてしまったのです。アルバム「TATTOO YOU」の内容は、A面が、1「START ME UP」、2「HANG FIRE」、3「SLAVE(奴隷)」、4「LITTLE T&A」、5「BLACK LIMMOUSINE(黒いリムジン)」、6「NEIGHBOURS」で、B面が、1「WORRIED ABOUT YOU」、2「TOPS」、3「HEAVEN」、4「NO USE IN CRYING(泣いても無駄)」、5「WAITING ON A FRIEND(友を待つ)」の、全11曲入りです。プロデュースはグリマー・ツインズですが、エンジニアのクリス・キムジーが共同プロデューサーとしてまとめていて、ボブ・クリアマウンテンが統一感のあるミックスを行っています。
内訳は、アルバム「GOATS HEAD SOUP」用の1972年のレコーディング・セッションから2曲(「TOPS」、「WAITING ON A FRIEND」)、アルバム「BLACK AND BLUE」用の1975年のレコーディング・セッションから2曲(「SLAVE」、「WORRIED ABOUT YOU」)、アルバム「SOME GIRLS」用の1977年のレコーディング・セッションから2曲(「START ME UP」、「BLACK LIMMOUSINE」)、アルバム「EMOTIONAL RESCUE」用の1979年のレコーディング・セッションから3曲(「HANG FIRE」、「LITTLE T&A」、「NO USE IN CRYING」)、そして、新曲が2曲(「NEIGHBOURS」、「HEAVEN」)と、なんとまあ、本当に全11曲中9曲が過去のレコーディング・セッションからのリサイクルとなっているのです。勿論、ただ過去のボツ音源をそのまんまリリースしたわけではなく、中には歌詞を新たに書いたり、ヴォーカルや演奏をオーバーダビングしたりして、なんとか新作アルバムとして成立する様にはしています。それで、レコーディング・メンバーは、ミック・ジャガー(リード・ヴォーカル(「LITTLE T&A」以外の10曲)、バッキング・ヴォーカル、「HANG FIRE」と「HEAVEN」のエレキ・ギター、「HEAVEN」のエレクトリック・ピアノ)、キース・リチャーズ(エレキ・ギター(「HEAVEN」以外の10曲)、バッキング・ヴォーカル、「LITTLE T&A」のリード・ヴォーカルとベース)、ロン・ウッド(エレキ・ギター(「SLAVE」、「WORRIED ABOUT YOU」、「TOPS」、「HEAVEN」、「WAITING ON A FRIEND」以外の6曲)、バッキング・ヴォーカル、「HANG FIRE」のベース)、ビル・ワイマン(ベース(「HANG FIRE」、「LITTLE T&A」以外の9曲)、「HEAVEN」のギター、シンセサイザー、パーカッション)、チャーリー・ワッツ(ドラムス)、そして、ミック・テイラー(「TOPS」、「WAITING ON A FRIEND」のエレキ・ギター)と、ローリング・ストーンズの新旧6人に加えて、各アルバムのレコーディング・セッションに参加したゲスト・ミュージシャンがそのまま多数参加している事となりました。但し、その参加ミュージシャンは、新録と思わせる為に、最初は全てノンクレジットだったのです。
それらは、ニッキー・ホプキンス(「TOPS」、「NO USE IN CRYING」、「WAITING ON A FRIEND」のピアノ、「NO USE IN CRYING」のオルガン)、イアン・スチュワート(「HANG FIRE」、「LITTLE T&A」、「BLACK LIMMOUSINE」、「NEIGHBOURS」のピアノ)、ビリー・プレストン(「SLAVE」、「WORRIED ABOUT YOU」のキーボード)、ウェイン・パーキンス(「WORRIED ABOUT YOU」のリード・ギター)、オリー・ブラウン(「SLAVE」、「WORRIED ABOUT YOU」のパーカッション)、ピート・タウンゼット(「SLAVE」のバッキング・ヴォーカル)、ソニー・ロリンズ(「SLAVE」、「NEIGHBOURS」、「WAITING ON A FRIEND」のサックス)、ジミー・ミラー(「TOPS」のパーカッション)、マイケル・カラベロ(「START ME UP」のカウベル、「SLAVE」、「WAITING ON A FRIEND」のコンガ)、クリス・キムジー(「HEAVEN」のエレクトリック・ピアノ)、バリー・セージ(「START ME UP」の手拍子)、シュガー・ブルー({BLACK LIMMOUSINE」のハーモニカ)、と云った面々です。これらをまとめたのはクリス・キムジーで、この頃のローリング・ストーンズのアルバムでの実質的なプロデューサーはクリス・キムジーでした。新曲が書けないのならば、過去のボツ音源をリサイクルしようと、実際に過去のレコーディング・セッション・テープを聴いて曲を選んだのもクリス・キムジーなので、彼の貢献なくしては有り得なかったアルバムでした。シングル・ヒットした「START ME UP」は、ミック・ジャガーが1980年代のローリング・ストーンズの代表曲と自画自賛している快作ですが、元々はアルバム「SOME GIRLS」のレコーディング・セッションで「NEVER STOP」と云う仮題でレゲエ・ナンバーとしてレコーディングされていた曲ですし、原型はアルバム「BLACK AND BLUE」の頃にはあったそうです。同じくシングル・ヒットした名曲「WAITING ON A FRIEND」に至っては、アルバム「GOATS HEAD SOUP」のレコーディング・セッションでの楽曲なので、ミック・テイラーがギターを弾いているのです。その曲などでのソニー・ロリンズの参加は、ジャズ好きなチャーリー・ワッツがダメ元でリクエストしたら、ミック・ジャガーが本当に依頼してやって来たのですが、ソニー・ロリンズはノンクレジットだった件にも「ローリング・ストーンズのファンは、俺のレコードなんか聴かないだろうから気にしない」と漢気をみせています。
楽曲は全てジャガー=リチャーズ作で、「BLACK LIMMOUSINE」と「NO USE IN CRYING」の2曲はジャガー=リチャーズとロン・ウッドの共作になっています。しかし、アルバム「GOATS HEAD SOUP」のレコーディング・セッションでの「TOPS」と「WAITING ON A FRIEND」に関しては、ミック・テイラーがギターを弾いているのに、ローリング・ストーンズは始めはそれを明記していなかった(ミック・テイラー以外も全てノンクレジットだった)ので、ミック・テイラーから訴えられています。その辺のいい加減なところが、実にローリング・ストーンズらしいわけですが、当然の如くミック・テイラーが勝訴しています。アルバム「TATTOO YOU」は、2021年10月22日に4CD+1LPなどの拡張盤がリリースされています。CD1とLPは、アルバム「TATTOO YOU」全11曲のリマスター音源で、CD2は、1「LIVING IN THE HEART OF LOVE」、2「FIJI JIM」、3「TROUBLES A’ COMIN'」、4「SHAME, SHAME, SHAME」、5「DRIFT AWAY」、6「IT'S A LIE」、7「COME TO THE BALL」、8「FAST TALKING, SLOW WALKING」、9「START ME UP(EARLY VERSION)」のアウトテイク全9曲入りです。CD3とCD4は1982年のウェンブリー・スタジアムでのライヴ音源で、1「UNDER MY THUMB」、2「WHEN THE WHIP COMES DOWN」、3「LET'S SPEND THE NIGHT TOGETHER」、4「SHATTERED」、5「NEIGHBOURS」、6「BLACK LIMMOUSINE」、7「JUST MY IMAGINATION」、8「TWENTY FLIGHT ROCK」、9「GOING TO A GO GO」、10「CHANTILLY LACE」、11「LET ME GO」、12「TIME IS ON MY SIDE」、13「BEAST OF BURDEN」、14「LET IT BLEED」、15「YOU CAN'T ALWAYS GET WHAT YOU WANT」、16「BAND INTRODUCTION」、17「LITTLE T&A」、18「TUMBLING DICE」、19「SHE'S SO COLD」、20「HANG FIRE」、21「MISS YOU」、22「HONKY TONK WOMEN」、23「BROWN SUGAR」、24「START ME UP」、25「JUMPIN' JACK FLASH」、26「(I CAN'T GET NO)SATISFACTION」の、全26曲入りです。このツアー「STILL LIFE」の1981年の北米ツアーが決まっていたので、無理矢理に新作として出したのがアルバム「TATTOO YOU」なのです。
(小島イコ)
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