
1970年代中期から後期にかけてのローリング・ストーンズは、ミック・テイラーの突然の脱退(1974年12月12日)や、後任のギタリストを決める為の「グレイト・ギタリスト・ハント」を経てロン・ウッドの加入(1976年3月)と、更にはキース・リチャーズのドラッグでの逮捕と云った激動の時期で、何度も解散の危機に直面していました。特にキース・リチャーズの逮捕は、短くとも懲役7年、最悪の場合は終身刑となる可能性があったので、ミック・ジャガーはキース・リチャーズの代わりのギタリストを探そうかとすら考えたそうです。そして、当時の音楽シーンではパンク・ムーブメントが起こり、ローリング・ストーンズは時代遅れの存在としてパンク・ロック勢から公然と批判されていて、一方ではディスコ・ブームも巻き起こっていました。そんな中で、1977年10月から1978年4月にかけてレコーディングされ、1978年6月9日にローリング・ストーンズ・レコードからリリースされたのが、ローリング・ストーンズの14作目のオリジナル・スタジオ・アルバム「SOME GIRLS」です。内容は、A面が、1「MISS YOU」、2「WHEN THE WHIP COMES DOWN」、3「JUST MY IMAGINATION(RUNNING AWAY WITH ME)」、4「SOME GIRLS」、5「LIES」で、B面が、1「FAR AWAY EYES」、2「RESPECTABLE」、3「BEFORE THEY MAKE ME RUN」、4「BEAST OF BURDEN」、5「SHATTERED」の、全10曲入りです。「JUST MY IMAGINATION(RUNNING AWAY WITH ME)」がテンプテーションズのカバーで、他の9曲はジャガー=リチャーズ作です。先ずは、先行シングル「MISS YOU」(B面は「FAR AWAY EYES」)が、全英3位・全米首位!と大ヒットしました。「MISS YOU」はローリング・ストーンズ流のディスコ・ソングで、7インチ・シングル「3分31秒」、アルバム「4分48秒」、そして12インチ・シングル「8分36秒」と3ヴァージョンがあります。ミック・ジャガー自身が1970年代のローリング・ストーンズの代表曲と豪語する「MISS YOU」ですが、ジョン・レノンは自分が書いた「SCARED」をテンポ・アップしたパクリだと云っていました。
1曲目の「MISS YOU」はディスコ路線ですけれど、2曲目以降はロックンロール路線で突っ走るアルバムで、前作がライヴ・アルバム「LOVE YOU LIVE」だったので、ロン・ウッドが加入して初めて全面的に参加したオリジナル・スタジオ・アルバムはこの「SOME GIRLS」です。グリマー・ツインズによるプロデュースで、アルバムも全英2位・全米首位!と売れましたし、米国では2作目のシングル・カットした「BEAST OF BURDEN」(B面は「WHEN THE WHIP COMES DOWN」)も全米8位のヒットとなりました。レコーディング・メンバーは、ミック・ジャガー(リード&バッキング・ヴォーカル、「MISS YOU」から「LIES」までのA面全5曲と「RESPECTABLE」のギター、「FAR AWAY EYES」のピアノ、「SHATTERED」のパーカッション)、キース・リチャーズ(ギター、バッキング・ヴォーカル、「SOME GIRLS」と「BEFORE THEY MAKE ME RUN」のベース、「FAR AWAY EYES」のピアノ、「BEFORE THEY MAKE ME RUN」のリード・ヴォーカル)、ロン・ウッド(ギター、バッキング・ヴォーカル、「WHEN THE WHIP COMES DOWN」、「FAR AWAY EYES」、「BEFORE THEY MAKE ME RUN」、「SHATTERED」のペダルスチール・ギター、「SHATTERED」のベースとドラムス)、ビル・ワイマン(「SOME GIRLS」、「BEFORE THEY MAKE ME RUN」、「SHATTERED」の3曲以外のベース、「SOME GIRLS」のシンセサイザー)、チャーリー・ワッツ(ドラムス)、のローリング・ストーンズの5人に、ゲスト・ミュージシャンとして、イアン・マクレガン(「MISS YOU」のエレクトリック・ピアノ、「JUST MY IMAGINATION(RUNNING AWAY WITH ME)」のオルガン)、シュガー・ブルー(「MISS YOU」と「SOME GIRLS」のハーモニカ)、メル・コリンズ(「MISS YOU」のサックス)、サイモン・カーク(「SHATTERED」のコンガ)、ハッサン(「SHATTERED」のパーカッション)が参加しています。前作まで起用していたビリー・プレストンを、「MISS YOU」はビリー・プレストンとミック・ジャガーのセッションから生まれたのにも関わらずバッサリと切り捨てて、新たにイアン・マクレガン、メル・コリンズ、シュガー・ブルーなどを招いてはいますが、数曲に参加しているのみで、ほとんどをローリング・ストーンズの5人だけで演奏しています。
それで、アルバム10曲中6曲で、ミック・ジャガーもギターを弾いているのです。元・キング・クリムゾンのメル・コリンズに「MISS YOU」でサックスを任せているのも、単なるディスコでは終わっていない要因にもなっています。このアルバム「SOME GIRLS」もお得意の変型ジャケットで、モデルたちの顔がくり抜かれていて、顔を変える事が出来たのですけれど、無許可で使用したモデルたちに訴えられたので、セカンド・プレスからはローリング・ストーンズの女装した写真だけになっています。コレも、ジョン・レノンが1974年のアルバム「WALLS AND BRIDGES」でジョンの顔が百面相になる変型ジャケットにしていたので、マネしたと云われていました。このアルバム「SOME GIRLS」は2011年に2CD+1DVDの拡張盤がリリースされていて、CD1はアルバム「SOME GIRLS」全10曲の2009年リマスター音源が収録されています。CD2は、1「CLAUDINE」、2「SO YOUNG」、3「DO YOU THINK I REALLY CARE?」、4「WHEN YOU'RE GONE」、5「NO SPARE PARTS」、6「DON'T BE A STRANGER」、7「WE HAD IT ALL」、8「TALLAHASSEE LASSIE」、9「I LOVE YOU TOO MUCH」、10「KEEP UP BLUES」、11「YOU WIN AGAIN」、12「PETROL BLUES」の、全12曲入りで、合計22曲入りです。日本盤には、13「SO YOUNG」のピアノ・ヴァージョンがボーナス・トラックとして収録されています。このCD2は、基本的にはアルバム「SOME GIRLS」のアウトテイク集なのですけれど、2011年にリリースする時にミック・ジャガーが新たにリード・ヴォーカルをレコーディングし直した曲も含まれています。DVDには1978年7月のフォートワース公演から3曲(「BEAST OF BURDEN」、「SHATTERED」、「TUMBLING DICE」)のライヴ映像と、3曲(「RESPECTABLE」、「FAR AWAY EYES」、「MISS YOU」)のプロモーション・ビデオが収録されていて、他にも発禁ジャケットの7インチ盤「BEAST OF BURDEN」の復刻盤や、色々なオマケが付いています。ちなみに、この連載では「キース・リチャーズ」に統一していますが、アンドリュー・ルーグ・オールダムの命令で「キース・リチャード」と名乗っていたのを、本人の意思で本名の「キース・リチャーズ」に戻されたのは、このアルバム「SOME GIRLS」からです。
(小島イコ)
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