
ローリング・ストーンズの音源は、1963年にデビューしてから1971年に独立してローリング・ストーンズ・レコードからアルバム「STICKY FINGERS」をリリースする前までの、英国デッカと米国ロンドンでリリースした音源と、その期間にレコーディングされた音源の全てが、悪徳マネジャーだったアラン・クレインが設立した会社「ABKCO」に版権を所有されています。故に、この連載でもこの辺から実際にリリースされた順番ではなく、デッカ/ロンドンでのレコーディング音源を先に紹介してゆきます。ローリング・ストーンズの1960年代の音源は「ABKCO」に握られているので、結構いい加減なコンピレーション・アルバムが多数リリースされるのですけれど、1971年と1972年にリリースされてそれぞれLP2枚組だったベスト・アルバム「HOT ROCKS 1964-1971」と「MORE HOT ROCKS(BIG HITS & FAZED COOKIES)」や、1975年にリリースされたレア音源集のアルバム「METAMORPHOSIS」や、1975年にリリースされたLP2枚組のベスト・アルバム「ROLLED GOLD」や、1989年にリリースされた3CDのシングル集「SINGLES COLLECTION THE LONDON YEARS」などのアルバムは、ローリング・ストーンズの1960年代の音源を全て聴く為には避けれて通れません。それぞれのコンピレーション・アルバムは、例えばシングル集と謳っている「SINGLES COLLECTION THE LONDON YEARS」の様にシングル曲ではあるものの、シングル・ヴァージョンではない音源が収録されていたりもするのですけれど、レノン=マッカートニー作の「I WANNA BE YOUR MAN」のローリング・ストーンズ・ヴァージョンなどはそれらでしか聴けません。アルバム「HOT ROCKS 1964-1971」と「MORE HOT ROCKS(BIG HITS & FAZED COOKIES)」に関しては、同じくアラン・クレインが関わったビートルズの「THE BEATLES 1962-1966(赤盤)」と「THE BEATLES 1967-1970(青盤)」を翌1973年にリリースする雛型になっているし、二番煎じだった「MORE HOT ROCKS」には「MONEY」が収録されているので、ビートルズとローリング・ストーンズの両方がカバーした曲を聴くにはそれに頼るしかありません。1975年6月6日に、ローリング・ストーンズ・レコードになって初めてリリースされたベスト・アルバム「MADE IN THE SHADE」にバッティングさせたデッカ/ロンドン時代のレア音源集「METAMORPHOSIS」も、やり口は褒められたものではありませんが貴重です。
さて、時代を1968年12月に戻すと、ローリング・ストーンズは7作目の英国オリジナル・アルバム「BEGGARS BANQUET」を、ジャケット差し替え問題などで遅れて、ようやく1968年12月6日にデッカからリリースしました。そこからがスピーディーで、12月10日から12日まで、翌1969年1月1日に放送予定だったテレビ特番「ROCK AND ROLL CIRCUS」を収録しています。このスタジオ・ライヴ番組は、ローリング・ストーンズがメインのトリで登場して、多くのゲストを招いて前座で演奏させて、マイケル・リンゼイ=ホッグ監督で撮影されていますが、諸々の理由でお蔵入りして、1996年10月14日に30年近い時を越えて「ABKCO」から映像作品と音源集としてリリースされています。内容は、1「MICK JAGGER'S INTRODUCTION OF ROCK AND ROLL CIRCUS」、2「ENTRY OF THE GLADIATIORS」、3「MICK JAGGER'S INTRODUCTION OF JETHRO TULL」、4「SONG FOR JEFFREY」、5「KEITH RECHARD'S INTRODUCTION OF THE WHO」、6「A QUICK ONE WHILE HE'S AWAY」、7「OVER THE WAVES」、8「AIN'T THAT A LOT OF LOVE」、9「CHARLUE WATT'S INTRODUCTION OF MARIANNE FAITHFULL」、10「SOMETHING BETTER」、11「MICK JAGGER'S AND JOHN LENNON'S INTRODUCTION OF THE DIRTY MAC」、12「YER BLUES」、13「WHOLE LOTTA YOKO」、14「JOHN LENNON'S INTRODUCTION OF THE ROLLING STONES〜JUMPIN’ JACK FLASH」、15「PARACHUTE WOMAN」、16「NO EXPECTATIONS」、17「YOU CAN'T ALWAYS GET WHAT YOU WANT」、18「SYMPATHY FOR THE DEVIL」、19「SALT OF THE EARTH」の、全19トラック入りです。それぞれの曲紹介やサーカス団の演奏もトラック分けされているので、実際のバンドでの演奏は全12曲となっています。このスタジオ・ライヴで最も話題になったのは、ジョン・レノン(ヴォーカル、ギター:ビートルズ)、エリック・クラプトン(ギター:クリーム)、キース・リチャーズ(ベース!:ローリング・ストーンズ)、ミッチ・ミッチェル(ドラムス:ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス)によるスーパー・バンド「ダーティー・マック」です。
演奏は、4「SONG FOR JEFFREY」がジェスロ・タル、6「A QUICK ONE WHILE HE'S AWAY」がフー、8「AIN'T THAT A LOT OF LOVE」がタジ・マハール、10「SOMETHING BETTER」がマリアンヌ・フェイスフル、12「YER BLUES」がダーティー・マック、13「WHOLE LOTTA YOKO」がダーティー・マックとヨーコさんの「キエーッ!」にイヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)、14「JAMPIN' JACK FLASH」〜19「SALT OF THE EARTH」の6曲がローリング・ストーンズです。お蔵入りした原因は、フーによるロック・オペラの「A QUICK ONE WHILE HE'S AWAY」の演奏が凄過ぎて、ミック・ジャガーがローリング・ストーンズの演奏部分を撮り直ししたいと云い出したからとも云われています。そのローリング・ストーンズはトリだったので、収録が押して本番は12月11日の深夜から始まりお客さんも帰ってしまい、終わったのは翌12月12日の早朝だったそうです。ジョン・レノンの出演に関しては、マイケル・リンゼイ=ホッグ監督が先にポール・マッカートニーに声を掛けたのにポールからの返事がなくて、ジョンに声を掛けたら即オッケーされた上に、エリック・クラプトンとミッチ・ミッチェルを連れて来て、おそらく「SYMPATHY FOR THE DEVIL」や「STREET FIGHTING MAN」での演奏を気に入っていたので、キース・リチャーズにベースを弾かせたわけです。ほとんどが生演奏ですが、ジェスロ・タルとマリアンヌ・フェイスフルとローリング・ストーンズの最後の「SALT OF THE EARTH」の3曲はカラオケで歌のみが生収録です。このアルバム「ROCK AND ROLL CIRCUS」は、2019年に拡張盤がリリースされていて、タジ・マハールによる3曲と、ジュリアス・カッチェンによる2曲に加えて、ダーティー・マックの「REVOLUTION」、「WARMUP JAM」、「YER BLUES」テイク2の3曲が蔵出しされました。この番組「ROCK AND ROLL CIRCUS」は、ブライアン・ジョーンズがローリング・ストーンズから解雇される前の、最後のライヴ演奏する姿を観る事が出来る映像作品ですが、当日に手に怪我をしていたらしく、すっかり影が薄くなっています。その分、キース・リチャーズが「ダーティー・マック」でも「ローリング・ストーンズ」でも頑張っています。
(小島イコ)
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