
2004年2月20日に、ブライアン・ウィルソンは英国ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールにて、幻のアルバム「SMiLE」全曲披露ライヴを初演して、同年9月28日にそのスタジオ・アルバム「BRIAN WILSON PRESENTS SMiLE」をリリースしました。1966年から1967年にかけてレコーディングされて放棄された幻のアルバム「SMiLE」は、それで完結したと思われたのです。ところが、現存していたブライアン・ウィルソン以外のビーチ・ボーイズのメンバーである、マイク・ラヴ、ブルース・ジョンストン、アル・ジャーディンの3人は、ブライアン・ウィルソンのソロ・アルバム「BRIAN WILSON PRESENTS SMiLE」に対して余り良い反応を示してはくれなかったのです。マイク・ラヴは「見本盤が届いたけれど、忙しくて聴いていない。但し、ブライアンがビーチ・ボーイズよりも今のブライアン・ウィルソン・バンドの方が優れているなんて云った事には失望しているよ」と云い、ブルース・ジョンストンは「“PET SOUNDS”の方が良い、なんて思ったのは内緒だよ」と云い、アル・ジャーディンは「見本盤を聴いてなかなか良いと思ったけれど、ビーチ・ボーイズでレコーディングした当時の音源の方が優れている」と云いました。ファンの立場としても、確かにブライアン・ウィルソンが遂にアルバム「SMiLE」を完成させた事には感動したものの、何かが違う、と思えたのです。上手く云えないけれど、膨大なブートレグを聴いたり、1990年リリースの公式盤の「2 in 1」CDや、1993年リリースの公式盤の箱「GOOD VIBRATIONS:THIRTY YEARS OF THE BEACH BOYS」に収録されていた、1966年から1967年にかけてレコーディングされたアルバム「SMiLE」用の音源と比べて、2004年のアルバム「BRIAN WILSON PRESENTS SMiLE」は、何か物足りないと感じさせる作品でした。そして、時は流れて、2011年11月1日に、なんと、ビーチ・ボーイズのアルバム「THE SMILE SESSIONS」がキャピトルからリリースされたのでした。このアルバム「THE SMILE SESSIONS」は、ブライアン・ウィルソン、マイク・ラヴ、アル・ジャーディン、ブルース・ジョンストンの合意を得て編纂されています。
このアルバム「THE SMILE SESSIONS」は、配信、1CD、2CD、2LP、5CD+2LP+2EPの、5種類でのリリースでした。全てのヴァージョンに共通しているのは、1「OUR PRAYER」、2「GEE」、3「HEROES AND VILLAINS」、4「DO YOU LIKE WORMS(ROLL PLYMOUTH ROCK)」、5「I'M IN GREAT SHAPE」、6「BARNYARD」、7「MY ONLY SUNSHINE(THE OLD MASTER PAINTER / YOU ARE MY SUNSHINE)」、8「CABIN ESSENCE」、9「WONDERFUL」、10「LOOK(SONG FOR CHILDREN)」、11「CHILD IS FATHER OF THE MAN」、12「SURF'S UP」、13「I WANNA BE AROUND / WORKSHOP」、14「VEGA-TABLES」、15「HOLIDAYS」、16「WIND CHIMES」、17「THE ELEMENTS:FIRE(MRS. O'LEARY'S COW)」、18「LOVE TO SAY DADA」、19「GOOD VIBRATIONS」の、全19曲です。これは、ブライアン・ウィルソンの要望で、2004年のアルバム「BRIAN WILSON PRESENTS SMiLE」を下敷きにして、基本的には1966年から1967年にかけてビーチ・ボーイズとしてレコーディングされた音源を使って再構築されています。故に、1「OUR PRAYER」〜8「CABIN ESSENCE」が第1楽章で、9「WONDERFUL」〜12「SURF'S UP」が第2楽章で、13「I WANNA BE AROUND / WORKSHOP」〜19「GOOD VIBRATIONS」が第3楽章となっています。この本編はモノラル・ミックスが採用され、2LPでは、それぞれの楽章で3面となっていて、4面は、1「YOU'RE WELCOME」、2「VEGA-TABLES」、3「WIND CHIMES」、4「CABIN ESSENCE」、5「SURF'S UP」のステレオ・ミックスやセッション音源を加えた、全24曲入りとなっています。2CDは、CD1が、1「OUR PRAYER」〜19「GOOD VIBRATIONS」の本編に加えて、20「YOU'RE WELCOME」、21「HEROES AND VILLAINS」、22「HEROES AND VILLAINS SECTIONS」、23「VEGA-TABLES DEMO」、24「HE GIVES SPEECHES」、25「SMiLE BACKING VOCALS MONTAGE」、26「SURF'S UP 1967」、27「PSYCODELIC SOUNDS:BRIAN FALLS INTO A PIANO」、シークレット・トラック(28)「CAPITOL SMiLE PROMO」の、全28曲入りです。
CD2は、1「OUR PRAYER」、2「HEROES AND VILLAINS:PART 1」、3「HEROES AND VILLAINS:PART 2」、4「HEROES AND VILLAINS:CHILDREN WERE RAISED」、5「HEROES AND VILLAINS:PRELUDE TO FADE」、6「MY ONLY SUNSHINE」、7「CABIN ESSENCE」、8「SURF'S UP:1ST MOVEMENT」、9「SURF'S UP:PIANO DEMO」、10「VEGA-TABLES:FADE」、11「THE ELEMENTS:FIRE SESSION」、12「COOL, COOL WATER:VERSION 2」、13「GOOD VIBRATIONS SESSIONS HIGHLIGHTS」、シークレット・トラック(14)「PSYCODELIC SOUNDS:BRIAN FALLS INTO A MICROPHONE」の、全14曲入りで、合計42曲入りとなっていて、本編19曲にレア音源のハイライトを23曲加えていて、ポスターとバッチなどのオマケも入っている小箱となっています。そして、5CD+2LP+2EPの大箱は、2LPはバラ売りと同じ内容で、2EPは「HEROES AND VILLAINS:PART 1 / HEROES AND VILLAINS:PART 2」と「VEGA-TABLES / SURF'S UP」の2枚です。問題の5CDは、CD1が、1「OUR PRAYER」〜19「GOOD VIBRATIONS」が本編で、20「YOU'RE WELCOME」、21「HEROES AND VILLAINS」、22「HEROES AND VILLAINS」、23「VEGA-TABLES」、24「HE GIVES SPEECHES」、25「SMiLE BACKING VOCALS MONTAGE」、26「SURF'S UP 1967」、27「PSYCODELIC SOUNDS:BRIAN FALLS INTO A PIANO」、シークレット・トラック(28)「CAPITOL SMiLE PROMO」の、全28曲入りです。CD2は、1〜2「OUR PRAYER」、3〜36「HEROES AND VILLAINS」、37「PSYCODELIC SOUNDS:BRIAN FALLS INTO A MICROPHONE」、38「PSYCODELIC SOUNDS:MOARNING LAUGHING」の、全38曲入りです。CD3は、1〜5「DO YOU LIKE WORMS」、6〜7「MY ONLY SUNSHINE」、8〜10「CABIN ESSENCE」、11〜14「WONDERFUL」、15「LOOK」、16〜17「CHILD IS FATHER OF THE MAN」、18〜20「SURF'S UP」、21「I WANNA BE AROUND / WORKSHOP」、22〜26「VEGETABLES」、シークレット・トラック(27)「WORKSHOP SESSION」の、全27曲入りです。
CD4は、1〜2「VEGETABLES」、3「HOLIDAYS」、4〜6「WIND CHIMES」、7「THE ELEMENTS(FIRE)」、8〜9「DA DA」、10〜13「LOVE TO SAY DADA」、14〜15「COOL, COOL WATER」、16「YOU'RE WELCOME」、17「YOU'RE WITH ME TONIGHT」、18「TUNE X」、19「I DON'T KNOW」、20「THREE BLIND MICE」、21「TEETER TOTTER LOVE」、22「PSYCODELIC SOUNDS:UNDERWATER CHANT」、23「HAL BLAINE VEGA-TABLES PROMO SESSION」、24「HEROES AND VILLAINS」、シークレット・トラック(25)「THE ELEMENTS:FIRE(MRS. O'LEARY'S COW)」の、全25曲入りです。そして、CD5は、1〜24「GOOD VIBRATIONS」、シークレット・トラック(25)「GOOD VIBRATIONS」の、全25曲入りで、5CDの合計で全144曲入りです。兎に角、圧倒的な内容で、言葉を失う程に凄まじい気が充満していて、一聴してトンデモナイ作品だとだけは理解出来る代物です。ブライアン・ウィルソンのソロ・アルバム「BRIAN WILSON PRESENTS SMiLE」を下敷きにして、2004年に新たにブライアン・ウィルソンとヴァン・ダイク・パークスが書き足した部分などは欠落した侭ですが、このビーチ・ボーイズ盤の方が断然恐るべき内容で、幾らブライアン・ウィルソンが主導権を握っていたとは云え、そばで見ていたマイク・ラヴやブルース・ジョンストンやアル・ジャーディンが「オリジナルのビーチ・ボーイズ盤の方が、ブライアン・ウィルソンのソロよりも良かった」と云ったのも頷ける音源です。しかしながら、この「THE SMILE SESSIONS」は、あくまでも未完成作品であって、本編とされている19曲からなる3楽章は、2004年にブライアン・ウィルソンが再構築した「別の作品」でしかないのです。ブライアン・ウィルソン盤も、このビーチ・ボーイズ盤も、LPが2枚組なのに本編が3面しかなくて、1枚半になっているわけで、1967年にリリースしたのならば、LP1枚かLP2枚組になっていたはずなのです。この膨大な音源を、ブライアン・ウィルソンはまとめる事が出来ずに投げ出したのです。この「THE SMILE SESSIONS」は、全米27位・全英25位となっていますが、それ以上に価値があるし、未完成の侭で投げっぱなしにされたのも納得のトンデモ音源集です。
(小島イコ)
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