
2020年は、世界的なコロナ禍となり、英国でもロックダウンが敢行されました。ところが、音楽活動をやっていないと生きてはゆけないサー・ポール・マッカートニーは、全ての楽器と歌を自分ひとりでやってのけたオリジナル・スタジオ・アルバム「McCARTNEY �V」を、2020年12月18日にキャピトルからリリースしてしまったのです。ロックダウンを逆手に取ったそのアルバム「McCARTNEY �V」は、全英首位!・全米2位・日本5位と大ヒットして、レコード盤では19種類も乱発して、コレクター泣かせとなりました。CDも5種類あって、あたくしが持っているのは日本盤のスペシャル・エディションで、内容は、1「LONG TAILED WINTER BIRD」、2「FIND MY WAY」、3「PRETTY BOYS」、4「WOMEN AND WIVES」、5「LAVATORY LIL」、6「DEEP DEEP FEELING」、7「SLIDIN'」、8「THE KISS OF VENUS」、9「SEIZE THE DAY」、10「DEEP DOWN」、11「WINTER BIRD / WHEN WINTER COMES」、12「WOMEN AND WIVES(STUDIO OUTTAKE)」、13「LAVATORY LIL(STUDIO OUTTAKE)」、14「THE KISS OF VENUS(PHONE DEMO)」、15「SLIDIN'(DUSSELDORF JAM)」の、全15曲入りです。1「LONG TAILED WINTER BIRD」〜11「WINTER BIRD / WHEN WINTER COMES」が本編で、レコード盤や通常盤CDに収録されている曲で、12「WOMEN AND WIVES」〜15「SLIDIN'」は、4種類の色違いジャケットにそれぞれ収録されたボーナス・トラックの4曲全てをまとめて収録されています。故に、あたくしの様に音源さえ聴ければ良い方々は、日本盤のスペシャル・エディションを買えば済むわけで、コレクターの方の苦労は良く分かりません。ポールは翌2021年4月16日には配信で、同2021年7月23日にはCDとレコード盤とカセットテープで、アルバム「McCARTNEY �V」の全曲カバー集である「McCARTNEY �V IMAGINED」をキャピトルからリリースしていて、それはおそらくアルバム「McCARTNEY �V」と同時進行した企画だったのでしょう。
アルバム「McCARTNEY �V」は、英国では1989年リリースのアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」以来31年ぶりとなる首位!を獲得していて、勢いに乗ったポールは、2022年から「GOT BACK TOUR」を開始しています。アルバム「McCARTNEY �V」は、基本的には2020年のロックダウン中に自宅スタジオでひとりでレコーディングした楽曲で構成されていますが、本編の最後に収録されている「WHEN WINTER COMES」は、1992年にサー・ジョージ・マーティンとの共同プロデュースで制作した音源です。故に、2020年のポールが、最後だけ30歳近く若返った歌声になっていて、些か違和感があります。それで80歳にもなって、また北米ツアーの「GOT BACK TOUR」をやるなんて、大丈夫なのかと要らぬ心配をしてしまいました。流石にもう「HELTER SKELTER」なんて叫べないだろう、と思ったのです。今回紹介するのは、そんな2022年のライヴ音源を収録した、新品がCD2枚組で千円ポッキリの「MOONCHILD RECORDS」から2022年にリリースされたブートレグ「GLASTONBURY FESTIVAL 2022」です。このライヴ音源は、2022年6月25日に英国のワーシーファーム、ピルトンで行われた「グラストンベリー・フェスティバル 2022」に、ポールがヘッドライナーとして出演した時のものです。内容は、CD1が、1「CAN'T BUY ME LOVE」、2「JUNIOR'S FARM」、3「LETTING GO」、4「GOT TO GET YOU INTO MY LIFE」、5「COME ON TO ME」、6「LET ME ROLL IT / FOXY LADY」、7「GETTING BETTER」、8「LET ’EM IN」、9「MY VALENTINE」、10「NINETEEN HUNDRED AND EIGHTY FIVE」、11「MAYBE I'M AMAZED」、12「I'VE JUST SEEN A FACE」、13「IN SPITE OF ALL THE DANGER」、14「LOVE ME DO」、15「DANCE TONIGHT」、16「BLACKBIRD」、17「HERE TODAY」、18「NEW」、19「LADY MADONNA」、20「FUH YOU」です。
CD2は、1「BEING FOR THE BENEFIT OF MR. KITE!」、2「SOMETHING」、3「OB-LA-DI, OB-LA-DA」、4「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」、5「SHE CAME IN THROUGH THE BATHROOM WINDOW」、6「GET BACK」、7「I SAW HER STANDING THERE」、8「BAND ON THE RUN」、9「GLORY DAYS」、10「I WANNA BE YOUR MAN」、11「LET IT BE」、12「LIVE AND LET DIE」、13「HEY JUDE」、14「I'VE GOT A FEELING」、15「HELTER SKELTER」、16「GOLDEN SLUMBERS / CARRY THAT WEIGHT / THE END」の、全36曲入り(メドレーを分ければ全39曲入り)です。セットリストは、クォリーメンが1曲(「IN SPITE OF ALL THE DANGER」)、ビートルズ・ナンバーが20曲(メドレーを分ければ22曲)(「CAN'T BUY ME LOVE」、「GOT TO GET YOU INTO MY LIFE」、「GETTING BETTER」、「I'VE JUST SEEN A FACE」、「LOVE ME DO」、「BLACKBIRD」、「LADY MADONNA」、「BEING FOR THE BENEFIT OF MR. KITE!」、「SOMETHING」、「OB-LA-DI, OB-LA-DA」、「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」、「SHE CAME IN THROUGH THE BATHROOM WINDOW」、「GET BACK」、「I SAW HER STANDING THERE」、「I WANNA BE YOUR MAN」、「LET IT BE」、「HEY JUDE」、「I'VE GOT A FEELING」、「HELTER SKELTER」、「GOLDEN SLUMBERS / CARRY THAT WEIGHT / THE END」)、ウイングス・ナンバーが7曲(「JUNIOR'S FARM」、「LETTING GO」、「LET ME ROLL IT」、「LET ’EM IN」、「NINETEEN HUNDRED AND EIGHTY FIVE」、「BAND ON THE RUN」、「LIVE AND LET DIE」)、ソロ・ナンバーが7曲(「COME ON TO ME」、「MY VALENTINE」、「MAYBE I'M AMAZED」、「DANCE TONIGHT」、「HERE TODAY」、「NEW」、「FUH YOU」)、カバーが2曲(「FOXY LADY」、「GLORY DAYS」)です。相変わらず、ビートルズ・ナンバーが全体の半分以上を占めておりますけれど、ビートルズ以前にクォリーメンとして活動していた頃の「IN SPITE OF ALL THE DANGER」や、ジョン・レノン主導で書いたレノン=マッカートニー作「BEING FOR THE BENEFIT OF MR. KITE!」や、ジョージ・ハリスン追悼の「SOMETHING」も演奏しています。
ジョージ作の「SOMETHING」は、以前はジョージから贈られたウクレレでの弾き語りでしたが、この時期には最初はウクレレで、間奏からバンドでと云う、かなりドラマティックなアレンジとなっています。更に、アルバム「ABBEY ROAD」から「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」と「SHE CAME IN THROUGH THE BATHROOM WINDOW」と云った珍しい曲も演奏しています。「I SAW HER STANDING THERE」と「BAND ON THE RUN」では、元・ニルヴァーナのドラマーで、現在はフー・ファイターズのヴォーカルとギターのデイヴ・グロールが参加しています。年齢は親子程に違うものの、マルチ・プレイヤー同士なので気が合うのでしょう。そして、「GLORY DAYS」と「I WANNA BE YOUR MAN」には、ブルース・スプリングスティーンが参加しています。「GLORY DAYS」はボスの持ち歌ですけれど、ポールが自分のライヴでゲストに持ち歌まで演奏させるのは結構珍しいのです。更に、最後の「THE END」では、デイヴ・グロールとブルース・スプリングスティーンが再登場して、ポールと3人でギター・バトルを展開しています。しかしながら、この時のクライマックスは、「HEY JUDE」の興奮が冷めやらずアンコール中にずっと「ナナナナナナナ・ナナナナ・ヘイ・ジュー」と大合唱している観客の前に再び現れたポールが、映像作品「GET BACK」を手掛けたピーター・ジャクソン監督のお陰だ、と云って演奏した「I'VE GOT A FEELING」です。なんとまあ、デミックスによってジョン・レノンのヴォーカルだけを抽出して、ポールとジョンがヴァーチャル共演しているのです。音だけでも興奮しますけれど、会場では大スクリーンに「ルーフトップ・コンサート」でのジョンが大写しになっているのですから、ビートルズ・ファンは、そりゃあもう堪りませんなあ。この時のポール・マッカートニーは、なんと、80歳なのです。この「グラストンベリー・フェスティバル 2022」での前日のヘッドライナーは、当時二十歳のビリー・アイリッシュだったのですから、サー・ポール・マッカートニーにとっては孫みたいな存在と勝負しているんですよ。これが80歳の歌声なのか、と思わされるし、音質もバッチリなので、公式にライヴ・レコーディングしていたのでしょう。
(小島イコ)
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