
ビートルズが1969年1月に行った「THE GET BACK SESSIONS」の膨大な音源から、選りすぐりの演奏を18時間21分26秒収録した、CD17枚組の大作ブートレグ「THIRTY DAYS」を紹介しております。このブートレグは「VIGOTONE」から2000年にリリースされていて、CD17枚組でしたが、2009年には系列の「RAPPLE」からCD14枚組に改訂されてリイシューされています。何度か書いてきましたが、内容は同じで、改訂盤がCD14枚組になったのは、CD1枚に80分近く詰め込んで枚数を減らしているのです。オリジナルの「THIRTY DAYS」は、CD1〜CD4の4枚に「トゥイッケナム・フィルム・スタジオでのリハーサル音源」を収録して、CD5〜CD13の9枚に「アップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源」を収録して、CD14に「アップル・ビルの屋上でのゲリラ・ライヴ・レコーディング・セッション音源」をノーカットで収録して、CD15〜CD16の2枚に「アップル・スタジオでの最終日レコーディング・セッション音源」をノーカットで収録して、CD17はグリン・ジョンズがまとめてビートルズに却下されたアルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」第1案を収録しています。ほとんどが70分を超えて収録していますが、CD14の「ルーフトップ」や、CD16の「最終日」や、CD17の「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」は、収録時間は短くしていて、時系列やコンセプトを守っています。改訂盤は兎に角CD1枚に入るだけ入れているので、その分、演奏は前倒しになっていて、中途半端なところで「トゥイッケナム・フィルム・スタジオでのリハーサル音源」が終わって、すぐに「アップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源」が入っていたり、「ルーフトップ」や「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」も分けずにそのまんまつづけて収録してあります。
今回は、CD9とCD10を紹介しますが、CD9は「THE BEST OF THE APPLE STUDIO SESSIONS PART 5」で、1「MISS ANN / KANSAS CITY / LAWDY MISS CLAWDY」、2「BLUE SUEDE SHOES」、3「YOU REALLY GOT A HOLD ON ME」、4「IMPROVISATION」、5「IMPROVISATION」、6「LET IT BE」、7「LET IT BE」、8「LET IT BE」、9「I TOLD YOU BEFORE」、10「I TOLD YOU BEFORE」、11「THE LONG AND WINDING ROAD」、12「THE LONG AND WINDING ROAD」、13「THE LONG AND WINDING ROAD」、14「THE LONG AND WINDING ROAD」、15「THE LONG AND WINDING ROAD」、16「THE LONG AND WINDING ROAD」、17「THE LONG AND WINDING ROAD」と、1〜17は、1969年1月26日(日曜日)のアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源のつづきです。3「YOU REALLY GOT A HOLD ON ME」はスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのカヴァーで、1963年リリースのアルバム「WITH THE BEATLES」にも収録されている曲で、映画「LET IT BE」にも使われています。しかし、この曲はジョン・レノンとジョージ・ハリスンが唯一デュエットしていて、映画「LET IT BE」でもジョンとジョージが歌うのですけれど、ジョンは歌詞がテキトーだし、ジョージは完全に歌詞を忘れていて、かなり無様な様子が映されています。特に、歌詞を忘れて体を揺らすしかないジョージをアップで映しているのは、嫌がらせみたいです。「LET IT BE」は、楽曲としてはこれ以前から完成していたのですけれど、イントロが公式テイクでは間奏部分になるところから始まっていたり、相変わらず3番の歌詞が出来ていません。
ポールが「LET IT BE」や「THE LONG AND WINDING ROAD」でピアノに移ると、オーバーダビングなしのコンセプトだったので、ジョンが6弦ベースを弾く事になっています。それで、ジョンは6弦ベースをストローク奏法で弾いて、ジャム・セッションになります。前回で紹介した「DIG IT」も1月26日の演奏ですが、10と11の「I TOLD YOU BEFORE」もオリジナルの未発表曲と云うよりも、ジャム・セッションに乗せてジョージが歌っています。こう云うジャム・セッションになると、ヘザーもまた「アーッ!」とか「ウーッ!」とか叫んで参加しています。この日は「THE LONG AND WINDING ROAD」をじっくりとレコーディングしていて、この7連発の中から、14「THE LONG AND WINDING ROAD」が映画「LET IT BE」で使われて(ポールが途中でフェイクして「チャチャチャ」とか歌うアレ)、17「THE LONG AND WINDING ROAD」はグリン・ジョンズ盤のアルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」第1案・第2案に使われていて、フィル・スペクターがプロデュースしたアルバム「LET IT BE」に収録されたのも、この1月26日の演奏を元にして、オーケストラや女性コーラスを派手にオーバーダビングしたヴァージョンです。ジョンがエンディングのコードを弾き間違えているので、それを元にしてリチャード・ヒューソンも間違えたスコアを書いています。そもそもフィル・スペクターがオーケストラを入れたのは、ジョンの6弦ベースがミスだらけだから、それを目立たなくする為だったらしいのです。つづけて、18「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」、19「LET IT BE」と全19曲入りで、18〜19は、1969年1月27日(月曜日)のアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源です。18「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」は、ポールがピアノを弾いて歌っています。
CD10は「THE BEST OF THE APPLE STUDIO SESSIONS PART 6」で、1「LET IT BE」、2「THE LONG AND WINDING ROAD」、3「OLD BROWN SHOE」、4「OLD BROWN SHOE」、5「OLD BROWN SHOE」、6「OLD BROWN SHOE」、7「IMPROVISATION」、8「I TOLD YOU BEFORE」、9「I TOLD YOU BEFORE」、10「DON'T LET ME DOWN」、11「GET BACK」、12「GET BACK」、13「GET BACK」、14「GET BACK」、15「GET BACK」、16「GET BACK」、17「OH! DARLING」、18「GET BACK」、19「GET BACK」、20「GET BACK」の、全20曲入りで、1〜20は、1969年1月27日(月曜日)のアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源のつづきです。3〜6「OLD BROWN SHOE」は、ジョージ作ですが、他の多くの曲と同様に、この段階ではボツ音源となります。この「OLD BROWN SHOE」は、「THE GET BACK SESSIONS」の後に、1969年4月16日と18日にレコーディングされて、同年5月30日にシングル「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」のB面としてリリースされています。そして、この1月27日のレコーディング・セッションのメインは「GET BACK」です。11「GET BACK」では、出だしにポールが「タッチ・ナガシマ」とか日本語みたいな言葉で歌っています。17「OH! DARLING」は、公式盤「ANTHOLOGY 3」に短縮ヴァージョンが収録されたテイク(実際は6分33秒もある)で、ポールとジョンが二人で歌っていて、ヨーコさんの離婚が成立したので、ジョンが浮かれています。と云うか、この時までは二人は不倫関係だったわけですなあ。この「OH! DARLING」は、結局は1969年9月26日にリリースされたアルバム「ABBEY ROAD」に、ポールの独唱で収録されるのですけれど、ジョンは「俺が歌った方が良くなったはずだ」と云っています。
20「GET BACK」は、シングル盤及びに、グリン・ジョンズによるアルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」第1案・第2案、更にフィル・スペクターがプロデュースしたアルバム「LET IT BE」に収録されたテイクです。アルバム「LET IT BE」収録の「GET BACK」には、最初にジョンの「Sweet Lorretta Fart she thought she was a cleaner, but she was a frying pan... the picker! Picture the finger, Greg.」と云う声が入っていますが、それもこの1月27日のテイクのイントロから持って来た発言です。そして、シングル・ヴァージョン及びグリン・ジョンズによるアルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」第1案・第2案の「GET BACK」は、この1月27日の演奏が途中でブレイクして、再び演奏が始まる様に編集されていますが、そのブレイク後の演奏は翌日の1月28日(火曜日)の演奏になっています。グリン・ジョンズによるアルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」の最後や、映画「LET IT BE」で屋上のライヴが終わった後に流れる、ポールが笑いながら歌っている「GET BACK」も、その1月28日の演奏です。この「GET BACK」では、屋上のライヴを観れば分かる通り、ジョンがリード・ギターを弾いています。それに関しても、ジョンは「ポールは機嫌が良い時には、俺にリード・ギターを弾かせてくれた」などと云っています。この辺になって来ると、レコーディング・セッションも佳境に入って来ていて、ビートルズとビリー・プレストンの5人のアンサンブルも良くなっています。いよいよ、1月30日(木曜日)の「ルーフトップ」が近づいて来ていて、本気になって来たのでしょう。(つづく)
(小島イコ)
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