nana.812.png

2025年08月04日

「ポールの道」#809「THE BEATLES BLACK VOX」
#118「THIRTY DAYS」PART 3

thirtydays.jpg


2000年に「VIGOTONE」からリリースされた、CD17枚組のブートレグ「THIRTY DAYS」は、1969年1月に行われたビートルズの「THE GET BACK SESSIONS」から、選りすぐりの音源を集めて、ビートルズが行ったリハーサルとレコーディング・セッションを日付順に実際に演奏した順番で収録した、画期的な音源集でした。2009年に改訂盤がCD14枚組でリイシューされていますが、そちらは17枚組のコンセプトを無視して、CD1枚に80分近く詰め込んでしまい、枚数を少なくしたものです。CD17枚組の初版は、CD1〜CD4の4枚が1969年1月3日から1月16日までのトゥイッケナム・フィルム・スタジオでのリハーサル音源で、CD5〜CD13の9枚が同年1月21日から1月29日までのアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源で、CD14の1枚が同年1月30日のアップル・ビルの屋上でのゲリラ・ライヴ・レコーディング・セッションの完全収録盤で、CD15〜CD16の2枚が同年1月31日のアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源の完全収録盤で、CD17がグリン・ジョンズがまとめてビートルズに却下されたアルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」第1案と云う、絶妙な構成になっています。2009年の改訂盤では、兎に角、1枚のCDに入るだけ入れていて、当然ながらその分演奏は前倒しになっているので、トゥイッケナム・フィルム・スタジオでのリハーサル音源の後に直ぐアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源が入っていたり、アップル・ビルの屋上でのゲリラ・ライヴも引き続き入っていたり、最後のアルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」第1案もCDの途中からいきなり入っていたりして、CDはコンパクト・ディスクですけれど、だから長く収録するって、それだけじゃあ味気ないじゃありませんか。

さて、ブートレグ「THIRTY DAYS」は、いよいよ5枚目から本番のアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源となります。CD5は「THE BEST OF THE APPLE STUDIO SESSIONS PART 1」で、1「SOMETHIN’ ELSE」、2「DAYDREAM」、3「YOU ARE MY SUNSHINE」、4「WHISPERING」、5「IMPROVISATION」、6「MY BABY LEFT ME / THAT'S ALL RIGHT」、7「MILK COW BLUES」、8「ALL I WANT IS YOU」、9「IN THE MIDDLE OF AN ISLAND / GILLY GILLY OSSENFENFEFFER KATZENELLEN BOGEN BY THE SEA」、10「IMPROVISATION / GOOD ROCKIN' TONIGHT」、11「FORTY DAYS」、12「TOO BAD ABOUT SORROWS」、13「DIG A PONY」、14「DIG A PONY」、15「YOU'RE GOT ME THINKING」、16「I'VE GOT A FEELING」、17「DON'T LET ME DOWN」、18「I DIG A PYGMY」、19「DON'T LET ME DOWN」と、1〜19は、1969年1月21日(火曜日)のアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源です。前日である同年1月20日に、ジョージ・ハリスンが復帰していて、いよいよ本番のレコーディング・セッションとなりました。まだビリー・プレストンは参加しておらず、ジョージが復帰の条件としてビリー・プレストンの参加を要請したと云う話は、やはり少し違うと思われます。オリジナルの未発表曲は、ジョンの「ALL I WANT IS YOU」で、コレはですね、ジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作「DIG A PONY」にも出てくるフレーズですが、全く違う曲です。ジョンはこの時期に「I WANT YOU(SHE'S SO HEAVY)」も既に書いていたので、ヨーコさんへの愛が溢れていたのでしょう。18「I DIG A PYGMY」は曲ではなく、ジョンの発言「I dig a pygmy by Charles Hawtrey and the Deaf Aids. Phase 1 in which Doris gets her oats.」で、コレはフィル・スペクターがプロデュースして1970年5月8日にリリースされたアルバム「LET IT BE」の冒頭に使われています。

つづいて、20「DIG A PONY」、21「GOING UP THE COUNTRY」、22「DIG A PONY」、23「I'VE GOT A FEELING」、24「YOU WANT A SESSION JOB?」、25「DIG A PONY」、26「DON'T LET ME DOWN」、27「DON'T LET ME DOWN」、28「DON'T LET ME DOWN」の、20〜28は、1969年1月22日(水曜日)のアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源です。CD5は全28曲入りで、22「DIG A PONY」は1996年リリースの公式盤アルバム「ANTHOLOGY 3」に収録されています。24「YOU WANT A SESSION JOB?」は曲ではなく、ビリー・プレストンをバンドに加えた時の会話です。ドキュメンタリー映画「GET BACK」で観れる通り、交渉したのはジョン・レノンで、早口で「オーバーダビングなしのアルバムを作っているからキーボード奏者として参加して欲しい、ライヴにも参加して欲しい、これまでレコーディングしたテープを渡すから、曲を覚えて欲しい」などと云って、ビリー・プレストンはビートルズに誘われて嬉しくて堪らない様子で、ニコニコして全て承諾しています。ビリー・プレストンは1月22日の最初から参加したのではなく、テレビ出演の為に渡英していたので、途中で旧知の仲であるビートルズに挨拶に来て、そのままレコーディング・セッションに参加する事となったのです。ジョージが連れて来たと云う話は、やはり無理があるのですけれど、ジョンが「テープを渡すから曲を覚えて」と云った後に、ジョージが「それなら、今すぐに参加してもらおう」と云ってはいます。それで、25「DIG A PONY」からは、ビリー・プレストンが加わった5人での演奏となりました。28「DON'T LET ME DOWN」は、グリン・ジョンズがまとめたアルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」第1案・第2案に収録されています。

CD6は「THE BEST OF THE APPLE STUDIO SESSIONS PART 2」で、1「DIG A PONY」、2「DIG A PONY」、3「I'VE GOT A FEELING」、4「I'VE GOT A FEELING」、5「I'VE GOT A FEELING」の、1〜5は、1969年1月22日(水曜日)のアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源のつづきです。ビリー・プレストンの参加によって、演奏の質も段違いに良くなっていて、この辺からが本番のレコーディング・セッションと云えます。5「I'VE GOT A FEELING」は、グリン・ジョンズがまとめた「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」第1案・第2案と、公式盤アルバム「ANTHOLOGY 3」に収録されています。つづいて、6「GET BACK」、7「GET BACK」、8「GET BACK」、9「GET BACK」、10「IMPROVISATION」、11「TWENTY FLIGHT ROCK」、12「GET BACK」、13「OH! DARLING」、14「OH! DARLING」の、6〜14は、1969年1月23日(木曜日)のアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源です。この辺になると、ライヴをやってアルバムにも収録する曲がダンダンダンと決まってきたので、同じ曲を繰り返し演奏しています。色んな曲を思い付くままにダラダラと演奏していたトゥイッケナム・フィルム・スタジオでのリハーサル音源とは違って、まとまりがある演奏になってきているので、断然こちらのアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源の方が聴き易いです。つづいて、15「GET BACK」、16「ON THE ROAD TO MARRAKESH」、17「TWO OF US」、18「TWO OF US」、19「TWO OF US」、20「TEDDY BOY」、21「TWO OF US」、22「MAGGIE MAE」、23「I FANCY ME CHANCE」、24「TWO OF US」、25「MAGGIE MAE」、26「HER MAJESTY」の、全26曲入りで、15〜26は、1969年1月24日(金曜日)のアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源です。

16「ON THE ROAD TO MARRAKESH」は、元々が「CHILD OF NATURE」で、最終的には「JEALOUS GUY」になるジョンが書いた曲です。オリジナルの未発表曲は、23「I FANCY ME CHANCE」で、コレは「FANCY ME CHANCES WITH YOU」として公式盤の箱「LET IT BE」に収録されました。22「MAGGIE MAE」は、アルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」とアルバム「LET IT BE」に収録されたテイクとは別テイクで、25「MAGGIE MAE」がおそらく収録されたテイクです。前にも書きましたけれど、グリン・ジョンズもフィル・スペクターも、何故に映画「LET IT BE」では取り上げられていない「MAGGIE MAE」を、幾ら短い曲だとは云え、アルバムに収録したのでしょうか。26「HER MAJESTY」は、結局は1969年リリースのアルバム「ABBEY ROAD」の最後に収録されるのですけれど、公式テイクは23秒しかありません。こちらのテイクは2分6秒のロング・ヴァージョンとなっております。この「THIRTY DAYS」の良いところは、トゥイッケナム・フィルム・スタジオでのリハーサル音源をCD4枚にまとめてしまい、その分CD12枚に渡ってアップル・スタジオでのレコーディング・セッション音源とアップル・ビルの屋上でのゲリラ・ライヴ・レコーディング・セッション音源をたっぷりと収録している点に尽きます。特に、本番中の本番である1月30日の「ルーフトップ」と1月31日の最終日に関しては、演奏部分は完全ノーカットで収録されていて、リリース当時は勿論、現在でも画期的なブートレグです。それから、ポールとジョージの仲が悪い一例としては、ドキュメンタリー映画「GET BACK」では、ジョージが「ヘフナーじゃなくてリッケンバッカーを使えば?」と云うと、ポールが「リッケンバッカーも持って来たけど、ヘフナーは軽いから良いんだよ」と返す場面があるのですけれど、多分、ポールは「原点回帰だからヘフナーを弾いているんだよ、何でそんな簡単な事が分かんないんだ、こいつは」と思っていたんでしょうなあ。(つづく)

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする