
ビートルズが1968年11月22日(英国)にステレオとモノラルで、同年11月25日(米国)にステレオで、それぞれアップルからリリースした2枚組のアルバム「THE BEATLES」は、真っ白なジャケットから「ホワイト・アルバム」と呼ばれています。しかしながら、元々のタイトル案は「A DOLL'S HOUSE」で、それはヘンリック・イプセンの「人形の家」からとられていました。ところが、レコーディング・セッション中の1968年7月に、ファミリーがアルバム「MUSIC IN A DOLL'S HOUSE」を先にリリースしてしまったので、タイトルを変える事となって、シンプルに「THE BEATLES」となりました。それで、ジャケットも当初はジョン・パトリック・バーンが描いた幻想的なビートルズの絵だったのですけれど、タイトルが変更になったのでボツになって、その絵は後に1980年10月20日に英国パーロフォンからリリースされた編集盤「THE BEATLES BALLADS」に使われています。タイトルが「THE BEATLES」と変更された後にも、ビートルズの4人の顔がイギリス海峡に彫られたデザインも検討されていて、それは何だかディープ・パープルの1970年リリースのアルバム「IN ROCK」みたいなので、ボツになって良かったです。結局は、ポール・マッカートニーの発案で、リチャード・ハミルトンが手掛けた真っ白なジャケットになりました。ジャケットは真っ白ですが、中には4人のポートレートと、色々な写真をコラージュしたポスターと、その裏には全曲の歌詞が印刷されています。ポートレートのトリミングがポールだけ大きいのは、ポールだけ別の日に撮影したからで、その辺もポールの足並みが揃っていません。
ジョン・レノンは、アルバム「THE BEATLES」のプリプロダクションであるジョージ・ハリスンの別荘での「イーシャー・デモ」の直前に、シンシアとジュリアンが外泊中に小野洋子さんを自宅に連れ込んで、後にアルバム「TWO VIRGINS」となるガラクタ音源をレコーディングして、男女の仲になったと云われています。それは「REVOLUTION 9」よりも出鱈目なクズ音源なのですけれど、当時のジョンはそう云うのがカッコイイと誤解していたのでしょう。そもそも前衛作品に最初に興味を持ったのはポールで、1967年には未だに公式リリースされていない「CARNIVAL OF LIGHT」をレコーディングしています。ヨーコさんは、前衛芸術のスポンサーとして、最初はポールを狙っていたけれど相手にされなかったので、ジョンに寝返って狙いを定めたとも云われています。ジョージも1969年にはアルバム「ELECTRONIC SOUND(電子音楽の世界)」などと云うガラクタ音源をリリースしているので、ビートルズはどいつもこいつも前衛音楽と云えば聞こえが良い、単なるガラクタ音源も好んでいたのでしょう。リンゴ・スターまで、自分も「REVOLUTION 9」には協力したなどと云い出す始末なのです。ジョンとヨーコさんのアルバム「TWO VIRGINS」は、当初はレコーディング順から云っても、ビートルズのアルバム「THE BEATLES」よりも先にリリースを予定していたのですけれど、ジャケットが二人の全身全裸の2ショット写真だった事でEMIから拒否されたので遅れて、インディー・レーベルからリリースされました。先に「TWO VIRGINS」が出ていたのならば、アノ「REVOLUTION 9」の評価も変わっていたかもしれません。
ジョンが丸裸になったと問題視されたアルバム「TWO VIRGINS」ですけれど、ビートルズのアルバム「THE BEATLES」に付いているポスターを見ると、ポールも全裸になっているではありませんか。何と云うか、あの二人は、いつだって同じ様な事をやっているんですよ。さて、今回紹介するのは、2023年に「Retrospective COLLECTION」からリリースされた1CDのブートレグ「A DOLL'S HOUSE THE WHITE ALBUM UNRELEASED TRACKS」です。タイトル通りに、ジャケットには「A DOLL'S HOUSE」用のイラストが使われています。内容は、1「BACK IN THE U.S.S.R.」、2「DEAR PRUDENCE」、3「OB-LA-DI, OB-LA-DA」、4「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」、5「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」、6「FUCK A DUCKIE」、7「BRIAN EPSTEIN BLUES」、8「HEY JUDE」、9「HEY JUDE」、10「STUDIO JAM」、11「HAPPINESS IS A WARM GUN」、12「DOWN IN HAVANA」、13「THE WAY YOU LOOK TONIGHT」、14「WHAT'S THE NEW MARY JANE」、15「BIRTHDAY」、16「EVERYBODY'S GOT SOMETHING TO HIDE EXCEPT ME AND MY MONKEY」、17「HELTER SKELTER」、18「HELTER SKELTER」、19「REVOLUTION 1」、20「SOUR MILK SEA」、21「LADY MADONNA」、22「ACROSS THE UNIVERSE」、23「GOOD NIGHT」の、全23曲入りです。全体的に、アルバム「THE BEATLES」のレコーディング・セッションで取り上げられた楽曲に、1968年2月のセッション音源も加えた中から23テイク選んだ感じです。
1「BACK IN THE U.S.S.R.」は、マルチトラック・リミックスとなっていますが「ROCKBAND」ステレオ・リミックスです。2「DEAR PRUDENCE」は「take 1」で、ジョンのヴォーカルは仮歌です。3「OB-LA-DI, OB-LA-DA」は「take 5」で、幻のアルバム「SESSIONS」の別テイクです。4「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」はアコースティックな「take 40」で、5「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」は「ROCKBAND」ステレオ・リミックスで完奏しています。6「FUCK A DUCKIE」と、7「BRIAN EPSTEIN BLUES」は、ジョンによる即興曲で、後者では前年に亡くなったブライアン・エプスタインを揶揄しています。8「HEY JUDE」は「take 9」で、9「HEY JUDE」は「take 25」です。10はスタジオ・ジャム音源で、11「HAPPINESS IS A WARM GUN」は「take 65」です。12「DOWN IN HAVANA」と、13「THE WAY YOU LOOK TONIGHT」は、お馴染みの「I WILL」セッション音源で、14「WHAT'S THE NEW MARY JANE」は、ヨーコさんの「キエーッ!」が随所に入る、全く嬉しくないロング・ヴァージョンです。15「BIRTHDAY」は「ROCKBAND」ステレオ・リミックスで、16「EVERYBODY'S GOT SOMETHING TO HIDE EXCEPT ME AND MY MONKEY」は「take 6」の編集前のヴァージョンです。17「HELTER SKELTER」はスタジオでのお喋りで、18「HELTER SKELTER」は「ROCKBAND」ステレオ・リミックスです。そして、19「REVOLUTION 1」は、ブートレグではお馴染みになった「take 20」です。2023年のブートレグでもこうして堂々と収録されているのは、2018年の公式盤の箱「THE BEATLES」には「take 18」しか収録しなかったからなのです。
20「SOUR MILK SEA」は、ジョージ作でジャッキー・ロマックスに提供した曲の「イーシャー・デモ」音源です。これも「NOT GUILTY」と並んで良い曲なので、ビートルズで演奏して欲しかった佳曲です。21「LADY MADONNA」は、1968年2月のシングル用のレコーディングからの「take 4」です。22「ACROSS THE UNIVERSE」も1968年2月のレコーディングからの「take 7」で、ジョンのヴォーカルが自然なスピードなので、公式リリースされたサー・ジョージ・マーティン版(テープ・スピードが速い)や、フィル・スペクター版(逆にテープ・スピードが遅い)よりも、ずっと良い感じです。最後の「GOOD NIGHT」は、ピアノとリンゴのヴォーカルだけの別テイクですけれど、コレは公式盤の箱にも入っていた気がします。最後はコレで〆ないといけないので持って来たのでしょう。と云うわけで、全23曲入りで、全てが「2023年最新ステレオ・リミックス&最新リマスター」と云う事になっています。確かに、他のブートレグでも聴ける音源が多いとは云え、音は良くなっているし、何なら2018年の公式盤の箱よりも良い音になっている曲まであります。少なくとも「ROCKBAND」ステレオ・リミックスに関しては、過去のブートレグ音源よりもずっと音が良いです。現在のブートレグは、公式盤同様に「AI」を駆使したデミックスなども積極的に取り入れていて、音質はドンドンドンガラガッタと向上しています。その分、大昔のブートレグにあった「妖しい魅力」は、なくなっています。音が悪くとも、本物のビートルズの演奏が聴けるのが真のブートレグなので、何でもかんでも音を良くしたから良いって話でもないんですよ。今後は、その辺の匙加減も大事になってゆくのでしょうなあ。
(小島イコ)
【関連する記事】
- 「ポールの道」#1094「BEAT THE BEATLES」
#143「EXILE.. - 「ポールの道」#1093「BEAT THE BEATLES」
#142「STICK.. - 「ポールの道」#1092「BEAT THE BEATLES」
#141「ROLLE.. - 「ポールの道」#1091「BEAT THE BEATLES」
#140「METAM.. - 「ポールの道」#1090「BEAT THE BEATLES」
#139「SINGL.. - 「ポールの道」#1089「BEAT THE BEATLES」
#138「THE R.. - 「ポールの道」#1088「BEAT THE BEATLES」
#137「MORE ..

