
ビートルズが、1968年11月22日に英国・アップルからステレオとモノラルで、同年11月25日に米国・アップルからステレオでリリースした、英国では9作目で、米国ではキャピトル傘下では14作目(米国では16作目)のアルバム「THE BEATLES」は、初の2枚組で、全30曲入りです。内容は、ロックンロール、フォーク・ロック、スカ、ロッカ・バラッド、カントリー・ロック、ブルース・ロック、ハード・ロック、ソフト・ロック、ヘヴィメタル、ディキシー、ミュージック・コンクレート、等々、多岐にわたっています。様々な音楽を内包していながら、タイトルはシンプルに「THE BEATLES」とだけ型押しされていて、ジャケットは真っ白なので、通称「ホワイト・アルバム」と呼ばれています。ポール・マッカートニーは映像版「ANTHOLOGY」で、このアルバムに対してドヤ顔で「まとまりがないとか、ソロが多いとか、後から云うのは簡単だけど、ビートルズのホワイト・アルバムだぞ、黙ってろ!」と啖呵を切っています。サー・ジョージ・マーティンは、半分の全15曲位に絞って1枚のレコードにした方が良いと助言したのですけれど、ビートルズは2枚組にする事に拘って、サー・ジョージ・マーティンを押し切り、2枚組にしました。全30曲は、レコードだとA面とB面とC面とD面の、それぞれの面にテーマの様なものがあって、サー・ジョージ・マーティンと共に、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが24時間かけて曲順を決めたと云われています。このアルバムも英国オリジナル・アルバムでは前作だった「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」同様に、曲間がほとんどなく、全体がメドレーの様に収録されています。
単にジョンが主導で書いた曲とポールが主導で書いた曲を交互に並べたのではなく、それぞれの曲が連続して収録されてもいて、そこに各面に1曲ずつジョージ・ハリスンの4曲を入れて、1枚に1曲ずつリンゴの歌を2曲入れています。一聴してバラバラの様なそれぞれの楽曲ではありますけれど、全30曲の内の25曲がレノン=マッカートニー作品(ジョン主導が13曲、ポール主導が12曲)で、ジョージ作が4曲に、リンゴ作が1曲と、バランスは絶妙で、一気に聴かせる力がある名盤です。レコーディングは1968年5月20日からのプリプロダクションである「イーシャー・デモ」を経て、同年5月30日から10月14日までの4か月半にも及ぶ長丁場でした。故に、プリプロダクションの「イーシャー・デモ」を含めれば5か月近くレコーディングしていて、当時のビートルズはライヴをやらずレコーディングばかりやっていたので、そのレコーディング・セッション音源は膨大です。アルバム「THE BEATLES」のレコーディング・セッションは、前作アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」の様なオーバーダビングを駆使したサイケデリックなレコーディング方法ではなく、最初にプリプロダクションとしてアコースティック・ギターを中心にした「イーシャー・デモ」を制作して、基本的には4人でベーシック・トラックを何度も繰り返し演奏して、その後に作者が意図するオーバーダビングをして完成させています。故に、ビートルズは納得するまで何度も繰り返し同じ曲を演奏していて、例えば、結局はボツとなったジョージ作の「NOT GUILTY」などは、100テイク以上もレコーディングされています。
さて、今回は、1991年に「CHAPTER ONE」からリリースされたCD2枚組のブートレグ「WHITE ALBUM SESSIONS」と、その続編で1992年リリースの1CDのブートレグ「WHITE ALBUM SESSIONS VOL. 2」を紹介します。1991年と1992年のブートレグなので、まだ公式盤の「ANTHOLOGY」シリーズもリリースされていなかったわけで、涙ぐましい努力をして音源をかき集めています。「WHITE ALBUM SESSIONS」のCD1は、1「YER BLUES JAM」、2「SPIRITUAL REGENERATION」、3「THE HAPPY RISHIKESH SONG」、4「CHILD OF NATURE」、5「SEXY SADIE」、6「JULIA」、7「CRY BABY CRY」、8「DEAR PRUDENCE」、9「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」、10「THE CONTINUING STORY OF BUNGALOW BILL」、11「I'M SO TIRED」、12「EVERYONE HAD A HARD YEAR」、13「EVERYBODY'S GOT SOMETHING TO HIDE EXCEPT ME AND MY MONKEY」、14「WHAT'S THE NEW MARY JANE」、15「YER BLUES」、16「YER BLUES(REPRISE)」の、全16曲入りです。1「YER BLUES JAM」と16「YER BLUES(REPRISE)」は、1968年12月11日に収録されたローリング・ストーンズの特番「ROCK AND ROLL CIRCUS」用に結成された「THE DIRTY MAC」による演奏で、それは、ジョン・レノン(ヴォーカル&ギター)、エリック・クラプトン(ギター)、キース・リチャーズ(ベース!)、ミッチ・ミッチェル(ドラムス)と云うスーパー・バンドです。このテレビ番組「ROCK AND ROLL CIRCUS」はお蔵入りして、1996年になって映像版と音源が公式リリースされているので、現在では容易に聴けます。後半の、現在では「WHOLE LOTTA YOKO」と名付けられた、イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)とヨーコさんの「キエーッ!」が炸裂するジャムもつづけて収録されています。
2「SPIRITUAL REGENERATION」は、インドでポールが中心にアコースティック・ギターの弾き語りで歌っている即興演奏で、後半にはインドに同行していたビーチ・ボーイズのマイク・ラヴのお誕生日を祝って「HAPPY BIRTHDAY」を歌っています。3「THE HAPPY RISHIKESH SONG」は、1979年のジョンのホーム・デモ音源で、ジョージ・ハリスンの自伝「I ME MINE」を読んだジョンが自分に関する事がほとんど書かれていなかった事に腹を立てて書いた曲なのですけれど、何故か昔はアルバム「THE BEATLES」関連ブートレグに収録されていました。現在では1998年リリースの箱「JOHN LENNON ANTHOLOGY」に「THE RISHIKESH SONG」として収録されています。4「CHILD OF NATURE」から、8「DEAR PRUDENCE」までは、ジョンが主導で書いた曲の「イーシャー・デモ」です。「CHILD OF NATURE」は、後に歌詞を変えて1971年のジョンのソロ・アルバム「IMAGINE」に「JEALOUS GUY」として収録されました。9「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」は、アコースティックな初期テイクです。10「THE CONTINUING STORY OF BUNGALOW BILL」と、11「I'M SO TIRED」も、ジョンが主導で書いた曲の「イーシャー・デモ」で、12「EVERYONE HAD A HARD YEAR」は「イーシャー・デモ」ではないジョンが主導で書いた曲のデモ音源ですが、コレは1969年1月の「THE GET BACK SESSIONS」で、ポールの別の曲と合体させてレノン=マッカートニー作の「I'VE GOT A FEELING」となる曲です。13「EVERYBODY'S GOT SOMETHING TO HIDE EXCEPT ME AND MY MONKEY」から、15「YER BLUES」までも、ジョンが主導で書いた曲の「イーシャー・デモ」です。と云うわけで、CD1は、2「SPIRITUAL REGENERATION」と9「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」以外の14曲が、ジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作品となっています。
CD2は、1「BACK IN THE U.S.S.R.」、2「DON'T LET ME DOWN」、3「PIGGIES」、4「HEATHER」、5「REVOLUTION」、6「A CASE OF THE BLUES」、7「MOTHER NATURE'S SON」、8「LOOK AT ME」、9「THE MAHARISHI SONG」、10「NOT GUILTY」、11「NOT GUILTY」、12「OB-LA-DI, OB-LA-DA」、13「WHAT'S THE NEW MARY JANE」、14「I HATE SEE / HEY JUDE」、15「BRIAN EPSTEIN BLUES」の、全15曲入りで、合計31曲入りです。CD1は、ほとんどジョンの曲でしたが、こちらはポールやジョージの曲も入っています。1「BACK IN THE U.S.S.R.」は「イーシャー・デモ」で、2「DON'T LET ME DOWN」は「イーシャー・デモ」ではないジョンによるデモ音源です。3「PIGGIES」は「イーシャー・デモ」で、4「HEATHER」は1968年12月のポールとドノヴァンのセッション音源で、5「REVOLUTION」は「イーシャー・デモ」で、6「A CASE OF THE BLUES」はジョンによる「イーシャー・デモ」ではないデモ音源で、7「MOTHER NATURE'S SON」は「イーシャー・デモ」で、8「LOOK AT ME」はジョンによる「イーシャー・デモ」ではないデモ音源ですが、この曲は1970年リリースのジョンのソロ・アルバム「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」に収録されました。9「THE MAHARISHI SONG」はジョンによる「イーシャー・デモ」ではないデモ音源で、10「NOT GUILTY」は「イーシャー・デモ」で、11「NOT GUILTY」から、15「BRIAN EPSTEIN BLUES」までは、レコーディング・セッション音源となっています。ポールの「HEATHER」や、ジョンの「A CASE OF THE BLUES」と「BRIAN EPSTEIN BLUES」は、未発表曲です。
続編のブートレグ「WHITE ALBUM SESSIONS VOL. 2」の内容は、1「THE INNER LIGHT」、2「SHE CAN TAKE TO ME」、3「CRY BABY CRY」、4「ACROSS THE UNIVERSE」、5「LADY MADONNA」、6「WHAT WE DID ON OUR MEDITATION COUSE」、7「JULIA」、8「OB-LA-DI, OB-LA-DA」、9「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」、10「BLACKBIRD」、11「ROCKY RACCOON」、12「NOT GUILTY」、13「SINGALONG JUNK」、14「SOUR MILK SEA」、15「HONEY PIE」、16「COLLIDING CIRCLES」、17「HAPPINESS IS A WARM GUN」、18「I'M SO TIRED」、19「DEAR PRUDENCE」、20「REVOLUTION」、21「OH MY LOVE」、22「I'M IN LOVE」の、全22曲入りで、前作と合わせると合計53曲入りです。こちらは、まずはインドへ行く前の1968年2月のレコーディング・セッションから、1「THE INNER LIGHT」、4「ACROSS THE UNIVERSE」、5「LADY MADONNA」、を収録していて、2「SHE CAN TAKE TO ME」は「HEY BULLDOG」のジョンによるデモ音源で、3「CRY BABY CRY」はジョンによる「イーシャー・デモ」ではないデモ音源です。6「WHAT WE DID ON OUR MEDITATION COUSE」は、ビートルズのインドでの様子を伝えたドキュメンタリー番組「THE BEATLES IN INDIA」からの音源です。7「JULIA」はジョンによる「イーシャー・デモ」ではないデモ音源で、8「OB-LA-DI, OB-LA-DA」から、16「COLLIDING CIRCLES」までは、「イーシャー・デモ」です。「SOUR MILK SEA」は、ジョージ作で、ジャッキー・ロマックスへの提供曲となりました。
この段階ではボツになったポールの「JUNK」は1970年リリースのソロ・アルバム「McCARTNEY」で、ジョージの「NOT GUILTY」は1979年のソロ・アルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」で、ジョージの「CIRCLES」は1982年のソロ・アルバム「GONE TROPPO」で、それぞれリリースされます。17「HAPPINESS IS A WARM GUN」から、20「REVOLUTION」までは、スタジオ・アウトテイクです。そして、21「OH MY LOVE」は、ジョンによるデモ音源で、後に1971年のソロ・アルバム「IMAGINE」に収録される楽曲ですが、この段階では全く違ったメロディーも聴けます。アルバム「IMAGINE」ではジョンとヨーコさんの共作となっているものの、このデモ音源を聴く限りでは少なくとも作曲はジョンが単独で行っていた様に思えます。最後の22「I'M IN LOVE」は、1963年にジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作で、フォーモストに提供した曲なのですけれど、何故ここに入っているのかは謎です。「イーシャー・デモ」は2018年に公式盤でジャイルズ・マーティンとサム・オケルによるステレオ・リミックスでリリースされているし、他のアウトテイクや「THE DIRTY MAC」による「YER BLUES」なども、現在ではほとんどが公式盤で聴く事が出来ます。1991年から1992年にかけてリリースされたこのブートレグ「WHITE ALBUM SESSIONS」と「WHITE ALBUM SESSIONS VOL. 2」は、現在ではほとんどが価値のない音源集となってしまいました。それでも2枚組の「WHITE ALBUM SESSIONS」には公式盤のアルバム「THE BEATLES」に付いていたポスターを、パロディ化もしくは単にマネしたポスターが付いていたりして、なかなか趣きがあるブートレグです。ちなみに「WHITE ALBUM SESSIONS」はジャケットが真っ黒で、「WHITE ALBUM SESSIONS VOL. 2」のジャケットはグレーです。
(小島イコ)
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