
ビートルズの別ミックスを集めたコンピレーション・アルバムは、2025年の現在では「AI」によって勝手にデミックスしたものも多くなっています。その傾向は、公式盤として2017年のアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」50周年記念盤から始まった、ジャイルズ・マーティンとサム・オケルによるリミックスやデミックスが登場した事が大いに関係があります。公式盤では、2017年の箱「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、2018年の箱「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」、2019年の箱「ABBEY ROAD」、2021年の箱「LET IT BE」、2022年の箱「REVOLVER」と来て、2023年のアルバム「THE BEATLES 1962-1966(赤盤)」とアルバム「THE BEATLES 1967-1970(青盤)」の拡大版が既にリリースされています。つまり、1963年のデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」とアルバム「WITH THE BEATLES」、1964年のアルバム「A HARD DAY'S NIGHT」とアルバム「BEATLES FOR SALE」、1965年のアルバム「HELP!」とアルバム「RUBBER SOUL」の6作が、アルバム「THE BEATLES 1962-1966(赤盤)」に収録された曲以外は手つかず状態になっています。デミックスは公式盤の専売特許ではないので、ブートレグ業者はそこに目をつけて、それらのデミックス音源を勝手に作ってリリースしているのが現状なのです。
1987年から1988年にかけての初CD化で、サー・ジョージ・マーティンの意向もあって、ビートルズの音源が全世界統一規格となる以前には、各国盤で別ミックスが色々と聴けました。その後、なし崩し的に米国キャピトル盤のリマスター盤がリリースされたりして、別ミックスがCD化されたのですけれど、2009年のリマスター盤の登場によって、再び音源の全世界統一規格が行われました。それで、以前にも別ミックスを集めたパイレート盤から、アルバム「THE WORLD'S BEST」や、アルバム「ALTERNATE MASTERS」や、アルバム「CASUALTIES」などを紹介したのですけれど、その時に少しだけ触れたアルバム「COLLECTORS ITEMS」について、改めて紹介します。このアルバム「COLLECTORS ITEMS」は、アナログ盤時代から出ていて、1980年3月24日に米国キャピトルがリリースしたアルバム「RARITIES」は、そのアルバム「COLLECTORS ITEMS」への対抗策としてリリースされている、云わば別ミックス盤の親玉みたいなアルバムです。内容は、1「LOVE ME DO」、2「FROM ME TO YOU」、3「THANK YOU GIRL」、4「ALL MY LOVING」、5「THIS BOY」、6「SIE LIEBT DICH」、7「I FEEL FINE」、8「SHE'S A WOMAN」、9「HELP!」、10「I'M DOWN」、11「PENNY LANE」、12「BABY YOU'RE A RICH MAN」、13「I AM THE WALRUS」、14「THE INNER LIGHT」、15「ACROSS THE UNIVERSE」、16「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP MY NUMBER)」、17「PAPERBACK WRITER」の、全17曲入りです。
1「LOVE ME DO」は、リンゴがドラムスを叩いているヴァージョンで、2「FROM ME TO YOU」と、3「THANK YOU GIRL」の2曲は、英国オリジナル・モノ・ミックスです。4「ALL MY LOVING」はイントロにハイハット入りのステレオ・ヴァージョンで、5「THIS BOY」は初出のステレオ・ミックスで、6「SIE LIEBT DICH」はモノ・ミックスです。「SHE LOVES YOU」のドイツ語版ですけれど、バカなEMIがセッション音源を破棄したので、このドイツ語ヴァージョンは全てレコーディングし直しになっています。7「I FEEL FINE」と、8「SHE'S A WOMAN」の2曲は、英国オリジナル・ステレオ・ミックスですが、米国キャピトル盤ではエコーをかけたヴァージョンでリリースしていたので、ここに入っています。9「HELP!」は英国オリジナル・モノ・ミックスで、10「I'M DOWN」は英国オリジナル・ステレオ・ミックスで、これらは現在では珍しくないのですけれど、このアルバム「COLLECTORS ITEMS」は米国向けだったので、それだけ米国では勝手にリミックスした音源をリリースしていた証明になっています。11「PENNY LANE」は米国プロモーション盤のステレオ・ミックスで、12「BABY YOU'RE A RICH MAN」はステレオ・ミックスで、13「I AM THE WALRUS」は米国キャピトル盤ステレオ・ミックスで、中間部が余計に入っているヴァージョンです。14「THE INNER LIGHT」は米国キャピトル盤モノ・ミックスで、シングルのみだったのでここに入っています。
15「ACROSS THE UNIVERSE」は、バード・ヴァージョンと呼ばれるアルバム「NO ONE'S GONNA CHANGE OUR WORLD」用のサー・ジョージ・マーティンがプロデュースしたヴァージョンです。このヴァージョンは、サー・ジョージ・マーティンがビートルズの許可なしで作ったヴァージョンです。16「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP MY NUMBER)」はシングル「LET IT BE」のB面のみに収録されていたので、ここに入っています。そして、17曲目には「PAPERBACK WRITER」ではなく「SGT. PEPPER INNER GROOVE」(アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」の最後に入っている意味不明なおしゃべり)が繰り返し入っています。米国キャピトル盤のアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」には、このオチの部分が収録されていなかったのです。そして、最後の18曲目には「PAPERBACK WRITER」の別ステレオ・ミックスが入っていて、コレがですね、リンゴ・スターのドラムスがディレイしているヴァージョンで、急にドタバタと遅れてドラムスが入って来る、奇怪なヴァージョンなのです。このヴァージョンは、あたくしはこのアルバム「COLLECTORS ITEMS」以外では聴いた事がありません。シングルB面曲など、このアルバム「COLLECTORS ITEMS」に収録されているミックスは、ほとんどが現在では公式盤CDで聴く事が出来ますけれど、最後の「PAPERBACK WRITER」だけは、このアルバムでしか聴けないと思います。
さて、こうしたブートレグと云うかパイレート盤に対抗する為に、英国パーロフォンと米国キャピトルはアルバム「RARITIES」を、それぞれ別の内容でリリースしました。英国パーロフォンは1978年に箱に入れて、翌1979年にバラ売りしていて、内容は、A面が、1「ACROSS THE UNIVERSE」ステレオ、2「YES IT IS」モノラル、3「THIS BOY」モノラル、4「THE INNER LIGHT」モノラル、5「I'LL GET YOU」モノラル、6「THANK YOU GIRL」モノラル、7「KOMM, GIB MIR DEINE HAND」ステレオ、8「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」 モノラル、9「SIE LIEBT DICH」ステレオ、で、B面が、1「RAIN」モノラル、2「SHE'S A WOMAN」モノラル、3「MATCHBOX」モノラル、4「I CALL YOUR NAME」モノラル、5「 BAD BOY」ステレオ、6「SLOW DOWN」モノラル、7「I'M DOWN」モノラル、8「LONG TALL SALLY」モノラルの、全17曲入りでした。元々がアルバムの箱にオマケで付けていたので、ほとんどがシングルのB面やEPのみに収録されていた曲で、「ACROSS THE UNIVERSE」のバード・ヴァージョン位しか面白味はなかったし、現在では全てがアルバム「PAST MASTERS」ステレオ盤とアルバム「MONO MASTERS」モノラル盤で聴く事が出来ますし、ジャケットにもやる気が感じられず、後にリリースされたアルバム「PAST MASTERS」とアルバム「MONO MASTERS」のジャケットにも、その悪しき点が継承されています。それを受けて、1980年に米国キャピトルからリリースされたのが、米国盤「RARITIES」です。
内容は、A面が、1「LOVE ME DO」モノラル、2「MISERY」ステレオ、3「THERE'S A PLACE」ステレオ、4「SIE LIEBT DICH」ステレオ、5「AND I LOVE HER」ステレオ、6「HELP!」モノラル、7「I'M ONLY SLEEPING」ステレオ、8「I AM THE WALRUS」ステレオで、B面が、1「PENNY LANE」ステレオ、2「HELTER SKELTER」モノラル、3「DON'T PASS ME BY」モノラル、4「THE INNER LIGHT」モノラル、5「ACROSS THE UNIVERSE」ステレオ、6「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」モノラル、7「SGT. PEPPER INNER GROOVE」ステレオの、全15曲入りです。A面の1「LOVE ME DO」は盤起こしのリンゴ・ヴァージョン、2「MISERY」と、3「THERE’S A PLACE」は、うっかりキャピトル盤に収録しなかった2曲、4「SIE LIEBT DICH」はステレオ・ミックス、5「AND I LOVE HER」はエンディングが長いヴァージョン、6「HELP!」はモノ・ミックス、7「I'M ONLY SLEEPIG」は英国盤ステレオ・ミックス、8「I AM THE WALRUS」は編集してあるコレでしか聴けないミックス、B面の1「PENNY LANE」はプロモ盤モノラルの最後のトランペットをステレオに繋いだミックス、2「HELTER SKELTER」と、3「DON'T PASS ME BY」はモノ・ミックス、4「THE INNER LIGHT」はモノ・ミックス、5「ACROSS THE UNIVERSE」はバード・ヴァージョン、6「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP MY NUMBER)」はモノ・ミックス、7「SGT. PEPPER INNER GROOVE」は米国キャピトル盤初登場です。現在ではCD化されたミックスもありますが、こっちはCD化しても良いんじゃないでしょうか。
(小島イコ)
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