
ビートルズのベスト・アルバムと云えば、現役時代に唯一リリースされた1966年の「A COLLECTION OF BEATLES OLDIES(オールディーズ)」や、1973年のオールタイム・ベスト・アルバム「THE BEATLES 1962-1966(赤盤)」と「THE BEATLES 1967-1970(青盤)」や、2000年の「1」などが挙げられます。現在では、2009年リマスター盤の箱で、一気に大人買いする方も多いでしょう。そんな中で、ビートルズにはCD化されずに消えていったベスト・アルバムやコンピレーション・アルバムがあります。今回取り上げるのは「THE BEATLES BOX」と云う箱で、1980年11月3日に英国EMIの通販レーベル「ワールド・レコーズ」からリリースされたLP8枚組全126曲入りの箱です。この箱に関しては、以前もチラリンコと触れておりますけれど、日本では1981年1月21日に「リヴァプールから愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス」としてリリースされていて、つまりは、ジョン・レノンの追悼盤となりました。前述の通り、英国での発売はジョンの生前でした。ところで、1966年の「A COLLECTION OF BEATLES OLDIES」には、当時の英国では初収録となった「BAD BOY」が入っていて、それは1965年のアルバム「HELP!」の時にレコーディングされた音源だったのですけれど、出来が良いのと、当時のビートルズがライヴを止めてスタジオに籠っていた為に、1967年にシングル・カットする話がありました。ソレを、リンゴ・スターが「1965年の曲を、1967年にシングルには出来ない、ビートルズは変化している」と応えたのは、リンゴですら分かっていたのだな、と妙に感心します。
さて、箱の「THE BEATLES BOX」ですけれど、LP8枚組で、全126曲がほぼレコーディングされた順に収録されています。それで、アルバム「LET IT BE」の曲が、アルバム「ABBEY ROAD」の曲よりも前に入っていて、この辺から「実は、最後のアルバムは『LET IT BE』ではなく『ABBEY ROAD』だった」と云う事実が明確になった様な気がします。大まかに曲を紹介するとですね、「赤盤」時代は、まずは1962年のデビュー・シングル「LOVE ME DO / P.S. I LOVE YOU」両面から始まり、その2曲も含む1963年のデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」から全14曲中8曲、1963年のシングル「FROM ME TO YOU / THANK YOU GIRL」両面、1963年のシングル「SHE LOVES YOU」、1963年のアルバム「WITH THE BEATLES」から全14曲中5曲、1963年のシングル「I WANT TO HOLD YOUR HAND / THIS BOY」両面、1964年のアルバム「A HARD DAY'S NIGHT」全13曲中シングル曲も含めた8曲、1964年のEP「LONG TALL SALLY」全4曲中全曲!、1964年のシングル「I FEEL FINE / SHE'S A WOMAN」 両面、1964年のアルバム「BEATLES FOR SALE」全14曲中8曲、1965年のシングル「TICKET TO RIDE」、1965年のシングル「HELP! / I'M DOWN」両面、1965年のアルバム「HELP!」からシングル曲も含めた全14曲中13曲、1965年のシングル「DAY TRIPPER / WE CAN WORK IT OUT」両面、1965年のアルバム「RUBBER SOUL」全14曲中8曲、1966年のシングル「PAPERBACK WRITER / RAIN」両面、1966年のアルバム「REVOLVER」全14曲中10曲です。
そして「青盤」時代は、1967年のシングル「STRAWBERRY FIELDS FOREVER / PENNY LANE」両面、1967年のアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」全13曲中9曲、1967年のシングル「ALL YOU NEED IS LOVE / BABY YOU'RE RICH MAN」両面、1967年のEP「MAGICAL MYSTERY TOUR」全6曲中4曲(シングルB面「I AM THE WALRUS」も含む)、1967年のシングル「HELLO GOODBYE」、1968年のシングル「LADY MADONNA」、1968年のシングル「HEY JUDE / REVOLUTION」両面、1968年のアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」全30曲中10曲(何故かC面とD面からの選曲はなし)、1969年のアルバム「YELLOW SUBMARINE」新曲全4曲中1曲、1969年のシングル「GET BACK / DON'T LET ME DOWN」両面(但し「GET BACK」はアルバム・ヴァージョン)、1969年のシングル「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」、1970年(レコーディングは1969年)のアルバム「LET IT BE」全12曲中6曲、1969年のアルバム「ABBEY ROAD」全17曲中10曲となっております。ビートルズの現役時代のレコーディングは全213曲ですので、126曲となるとその半数以上が選曲されているわけで、ここまでくると後は全曲集にするしかないでしょう。中には「青盤」には選曲されているのに、この箱ではカットされてしまった曲(ジョージ・ハリスン作の「OLD BROWN SHOE」)もありますし、選曲はされてはいて、基本的にはEMIのステレオ・ヴァージョン(故に、当然ながらアルバム「HELP!」とアルバム「RUBBER SOUL」の曲はCD化前のオリジナル・ステレオ・ミックス)で収録されているものの、別ヴァージョンに差し替えられた曲もあります。
それらは、まずは「LOVE ME DO」のリンゴ・ヴァージョンです。コレはですね、英国の初回盤シングルのみに使われていて、セカンド・プレスやアルバム以降はセッション・ドラマーのアンディ・ホワイトが叩いているヴァージョンに代えられていて、混同を防ぐ為にリンゴ・ヴァージョンのマスターテープが破棄されていて、当時は貴重ながら盤起こし音源だったのです。現在では2023年の「赤盤」の拡大盤で、リンゴ・ヴァージョンがデミックスでステレオになっていて、アンディ・ホワイト・ヴァージョンの方がレアになってゆくのかもしれません。「P.S. I LOVE YOU」と「SHE LOVES YOU」は疑似ステレオ・ミックスで、「SHE LOVES YOU」もモノラル・ミックスしか存在しなかったのですけれど、こちらも2023年の「赤盤」でデミックスによってステレオになっています。「ALL MY LOVING」はイントロ・ハイハット入りステレオ・ミックス、「AND I LOVE HER」はエンディングが6回のステレオ・ミックス、EP「LONG TALL SALLY」の4曲は左右が逆のステレオ・リミックス、「I FEEL FINE」はウイスパー・ステレオ・ミックス、「SHE'S A WOMAN」と「I'M DOWN」と「RAIN」はステレオ・ミックス、「DAY TRIPPER」と「PAPERBACK WRITER」と「I'M ONLY SLEEPING」と「AND YOUR BIRD CAN SING」はキャピトル・ステレオ・ミックス、「PENNY LANE」はトランペット・エンディング入りキャピトル編集ステレオ・ミックス、「A DAY IN THE LIFE」は「青盤」ヴァージョンです。
更に、「ALL YOU NEED IS LOVE」はモノラル・ミックス、「BABY YOU'RE RICH MAN」はドイツ盤のステレオ・ミックス、「I AM THE WALRUS」はキャピトル編集ステレオ・ミックス、「THE CONTINUING STORY OF BUNGALOW BILL」はイントロのメロトロン・フラメンコギターをカットしたヴァージョン、「GET BACK」と「LET IT BE」はフィル・スペクターがプロデュースしたアルバム「LET IT BE」ヴァージョン、「HER MAJESTY」は「THE END」からの間が短くなっているヴァージョンです。つまり、多くの別ミックス・ヴァージョンを含んでいて、ビートルズの歩みをシングルやEPも含めた年代順で俯瞰して追った構成になっていました。このベスト・アルバムの箱に限った話ではありませんけれど、ビートルズには「ミックス違い」と云う泥沼があってですね、現在では公式盤CDでステレオ・ミックスとモノラル・ミックスとキャピトル・ミックスなどが聴ける様にはなっているのですけれど、こうしたコンピレーション・アルバムにはそれらとはまた別のミックスが収録されていてですね、公式盤が出ないのを良い事に、パイレート盤が出ているわけですよ。この「THE BEATLES BOX」に関しては、LP8枚組だったのをCD5枚組にした盤起こしのパチモンCDを持っていて、なかなか趣きがあるベスト・アルバムです。それには最後に「MOVIE MEDLEY」がオマケで入っています。近年に出たブートレグは、以前にも書きましたが「ソースがカセットテープだから高音質」とか書いてあったのに、そのテープのノイズ(ずっと「サーー」と鳴っている)が酷いので、紙箱入りのソレは買わない方がいいですよ。あたくしは、買ってしまって、速攻で売りました。
(小島イコ)
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