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2006年08月13日

「片瀬はカエルぢゃないよ、楓だよ☆」

風街クロニクル~another side of happy end~


帰京する新幹線の車中で、今月号の「レココレ」を後ろから読んでいたら「FROM LIVERPOOL TO TOKYO 2」のレビューが載っていましたよ。

おいおい、いつの間にか勝手に発売しないで下さいナ。今回のジャケットは「オールディーズ」のパロディになってるのね。コレだけは入手しなきゃイカン!!と東京までの切符を買ったのに上野で途中下車し、秋葉原のタワレコへ行きますたよ。

ところが、置いてないんだよねぇ。挙げ句に「片瀬那奈」コーナーすらないんだよ。はっきり言いますよ。

「タワレコは、もうダメだな。」

それでもわざわざ行ったのだからと、「GSグレイテスト・ヒッツIII」「風街クロニクル〜another side of happy end〜」「Back to Basics」と、二枚組ばっか買ってしまったじゃまいか。

で、この無茶苦茶なセレクトに思える3セットを繋ぐのが「夢みる歌謡曲」なんですね。で、それは「片瀬那奈」とも言うわけだ。もういちど、言っとこうカナ。

「タワレコは、もうダメだな。」

あ、でも、愛撫ちゃんではお世話になりますので、そこんとこだけはよろしくネ★


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子)



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2006年09月24日

「夢みる歌謡曲」第4章の1:
小美人と三人娘「恋のキラキラ星」

アルティメイト・コレクション


片瀬那奈の「Extended(2004)」は、全那奈曲の1980年代女性アイドル・カヴァーで構成されています。中森明菜の楽曲が2曲選ばれていますので、カヴァーの対象となったのは6組です。(「何故、中森明菜だけ2曲なのか?」に関しては、後に詳しく述べます。)その6組とは「松田聖子」「中森明菜」「小泉今日子」「浅香唯」「工藤静香」「WINK」であり、何れも確かに1980年代を代表するアイドルではあります。

しかしながら、前者「聖子」「明菜」「キョンキョン」が、「間違いなく彼女たちでなければならなかった」のとは違い、「浅香」「工藤」「WINK」は「別に彼女たちでなくともよかった」と、あたくしは断言します。

ゆえに「聖子(第2章)」「明菜(第6章)」「キョンキョン(第5章)」と、それぞれの章でじっくり語らなければならないのですが、他の3組に関しては個人というよりも「ソレが代表するモノ」についてのお話になります。前章で述べた様に「工藤静香」とは「おニャン子クラブ」を象徴する為の選出です。ですから、別に「国生さゆり」でも「渡辺美奈代」でも「渡辺満里奈」でも、誰でも良かったのです。(流石に「山本スーザン久美子」では困りますけどね。)

事実、片瀬本人は「禁断のテレパシー」を「カヴァーするまで知らなかった」と語っています。ミニアルバムからの先行第二弾シングルでもあった楽曲ですが、ライヴでは歌う度に歌詞を間違えたり絶句したりしていました。(しかし、何故か、うたは流れていた。)そして、この第二弾シングルが当初一部メディアで「赤道小町 ドキッ」と告知されていた事実からも、選曲への迷いが伺えます。制作サイドには、全那奈曲で「何か」を伝えたい明確な意図があったと思われます。それが如実に現れたのが実は「浅香」「工藤」「WINK」のセレクトだと、あたくしは深読みしています。

繰り返しますが、工藤はあくまでも「おニャン子」と言う「集合体」を現しています。そして「WINK」は二人組の代表であるのは明白です。(WINKをカヴァーするのは、片瀬の意見が通ったと言われています。)さらに「浅香」は「風間三姉妹」のトップとして頭角を現したのですから、三人組の象徴として選出されているのではないでしょうか。

「聖子」「明菜」「キョンキョン」と誰もが認める重要アイドルを核とし、それらの楽曲に関わった作者陣をも巻き込むことで前史までもを示唆出来るのですが、そこに「二人組」「三人組」「集合体」という「ユニット」を加えることで、たった6組那奈曲の世界が「大いなる歌謡曲史」へと、正に「拡大」しえるのです。

「そんな片瀬が到達したのが「Extended(2004)」でした。このカバー・アルバムにこそ「歌謡曲の謎」が詰まっています。」(「第1章の1」より)との結論に、一点の曇りもありません。

前置きが長くなりましたね。てなわけで、この第4章では「浅香唯」と「WINK」が象徴する「ふたり」と「三人娘」について、じっくりと語らせて戴きますので、そこんとこ、ヨロシク☆(つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)



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2006年09月25日

「夢みる歌謡曲」第4章の2:
小美人と三人娘「恋のバカンス」

THE PEANUTS “THE BEST 50-50”


6組那奈曲の選曲には、それを歌ったアイドルばかりではなく、楽曲を制作したスタッフにも大きな意味があると夢想させてくれるのが、片瀬那奈「Extended(2004)」の魅力のひとつです。

これまでに述べた通り、松田聖子を通して「松本隆プロジェクト」を想起させ(「赤道小町 ドキッ」が外されたのは、同じ松本作詞作品であったこともあるのかもしれません)、工藤静香からは「おニャン子クラブ(秋元康&後藤次利)」へと誘う道が見えていました。

この章で取り上げる 02. 「淋しい熱帯魚」 と 05. 「C-Girl」も、それぞれが「及川眠子/尾関昌也」「森雪之丞/NOBODY」と興味深い布陣による作品です。また、「Extended」のアレンジャーには Shinichiro Hirata、CMJK、Nao Tanaka とクラブシーンで著名なDJを起用していますが、オリジナルのアレンジャーにも目を向けると、この二作はそれぞれ「船山基紀」と「井上鑑」によるものであったことが分ります。

作家陣の豪華さは、「Extended」に選曲された那奈曲中の6曲ものオリジナル作品が、当時オリコン・シングル・チャートで首位を獲得したと言う事実からも説明がつくことです。(たった一曲だけが首位を取っていないのですが、それは「Extended」にどうしても必要な楽曲です。この件は、第5章にて語ります。)当時を知る片なら、誰もが知っている曲ばかりを選びながら、同じ作家によるものは選んではいない理由が、単なる「バランス感覚」では説明不足となるでしょう。

「淋しい熱帯魚」を作詞した及川眠子さんは、「片瀬」と(同時期にカヴァーした懐かしの)「W」による二作を聴いて「アレンジが酷い。船山基紀は偉大だ。」と一刀両断しました。そんなにご立腹されなくとも、オリジナルを凌駕するカヴァーなど在りはしないんですけどね。

WINKをカヴァーしたのは、前述の通りに「片瀬那奈」の意志が大きかったと言われています。そして、「工藤」や「浅香」が例え「集合体」や「三人娘」のアイコンであったとしても、それぞれの楽曲は(その他と同様)ソロであるのに対して、「淋しい熱帯魚」だけはオリジナルが二重唱なのです。それに対して「誰かをゲストに迎える」のではなく「ひとりで二重唱する」方法を選んでいるのがポイントですね。

「Extended」発表時に、多くの那奈ヲタは「那奈色の声」と、その多彩なヴォーカルを讃えました。一方、「モノマネ」した「カラオケ・カヴァー集」と揶揄する声もありました。しかしながら、片瀬がやったのは「大いなる道への招待状」と捉えるなら、見当違いな批判など口に出せないはずなのです。大体「そんなこと言って、誰がハッピーになるんだよ?」

初めて楽曲に出逢った片には「過去の遺産への道」を開き、オリジナルを知る片には「甘酸っぱい記憶」と共に「2004年の音世界」をも魅せてくれるのが「Extended」です。何より、それを歌うのが「片瀬那奈」なのですから、こんな「夢みるアルバム」は唯一無二なんでございます。

なかなか「小美人と三人娘」の噺になりませんナァ。ま、予告通りに「じっくり」イコー☆(つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)



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2006年09月26日

「夢みる歌謡曲」第4章の3:
小美人と三人娘「恋のあやつり人形」

GOLDEN☆BEST/キャンディーズ


なかなか本題に入らない様で「サブタイトルで何かを語っていたりする」のが、分り易いイコちゃん流です。「二人組」と「三人組」は、洋の東西を問わず、アイドル・ユニットの基本型と言えるでしょう。例えば、日本での芸能プロダクション・システムを確立した「渡辺プロダクション(ナベプロ)」にも、その初期から「ザ・ピーナッツ」と「ナベプロ三人娘」が在籍していました。後のキャンディーズもナベプロです。

元々キャンディーズは、スクールメイツから抜擢された三人によるユニットでした。(同期にはアン・ルイスや太田裕美がいますが、間違って彼女らがキャンディーズになっていたら、それはそれで面白い展開だったかもしれません。)ドリフターズの人気番組にマスコット的な存在で登場した彼女たちは、当初それほど人気があったわけではありません。というよりも、さっぱり売れてなかったです。人気が出たのは、センターがスーちゃんからランちゃんに変更された「年下の男の子」からでした。

三人娘での人気者の登場に、対抗したのは「ふたり組」の「ピンクレディー」です。「スター誕生」出身のこのモンスター・チームは、社会現象とも言える大ブームを巻き起こしました。後の「おニャン子クラブ」では、贅沢にも組織内に「うしろゆびさされ組」「うしろ髪ひかれ隊」とふたりも三人も内包したうえ、「ニャンギラス」といった四人組までもヒットさせます。もう「なんでもあり」でした。それは、その後の多団体アイドルの雛形となり現在にまで至るのです。個人的には、おニャン子のメムバーがソロで歌う際に、サブでふたりがバックコーラスにつくカタチが「きゅんっ!」と来ましたね。ま、そのスタイルこそが「キャンディーズ」なのですが。

さてさて、キャンディーズがそうであった様に、デビューしてすぐには人気が出なかったアイドルもいます。そして1980年代で、その代表格と言えば「浅香唯」でしょう。彼女はその芸名が示す通り「ザ・スカウト・オーディション'84」で「浅香唯・賞」を受賞し、1985年6月に鳴り物入りで華々しく「夏少女」と言う曲でデビューします。が。「白豚ガエルと言われ、鳴かず飛ばず(トットちゃん・談)」の状況がつづきました。このデビュー曲はオリコン・チャートの100位以内にすらランクインせず、つづく「ふたりの Moon River」「ヤッパシ・・・H!」(怪作!!)「コンプレックス BANZAI!!」(やけくそか?)と圏外を彷徨い「10月のクリスマス」(もう滅茶苦茶)も88位止まりと、5作つづけて撃沈しました。

しかし、ここで奇跡が起こります。三代目スケバン刑事の襲名が決まったのです。「STAR」9位、「瞳にストーム」4位と狂い咲きし、8作目の「虹の Dreamer」でついにオリコン・チャート首位を獲得しました。デビューから、すでに二年以上経っての快挙であり、「デビュー曲がランクインせずに後に首位にまで登り詰めた唯一のアイドル」と言われています。

勢いは止まらず「風間三姉妹(大西結花、中村由真とのユニット)」名儀の「Remember」も首位をゲット!自身の9作目「Belive Again」も2位と、乗りまくった時期に記念すべき10作目のシングルとして(1988年カネボウ夏イメージソング)「C-Girl」が発売されました。その後も「セシル」など好調でしたし映画「YAWARA!」の主演もつとめますが、彼女のピークは「C-Girl」でしょう。個人的には末期の「恋のロックンロールサーカス」という、神をも恐れぬタイトルにもシビレました。

浅香唯は確かに「いちオクターブも出ない」音域しかない大根足のちっちゃなアイドルでした。でも、後に本人がセルフカヴァーした「C-Girl」には、例え技巧が上回っていても大切な「輝き」が消えていたのです。あたくしは(もうお分かりでしょうけど)「C-Girl」の亜紀ちゃんが大好きでした。だからこそ、片瀬那奈によって蘇った楽曲の輝きが本当に嬉しかったのです。(つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)



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2006年09月27日

「夢みる歌謡曲」第4章の4:
小美人と三人娘「恋のインディアン人形」

リンリン・ランラン GOLDEN☆BEST


この章では「浅香唯」個人のことは書かないと言いながら、しっかり(誰も憶えてなくて知りたくもない)初期シングル履歴まで滔々と語ってしまったわけですが、ついでなので「別記事にしよー」と思っていた「時事ネタ」もココに加えて置きますね。

「週刊ファイト」紙が、現在発売中の1990号をもって、休刊しました。通巻2000号目前での撤退に、スタッフも長年の愛読者も、忸怩たる思いでしょう。あたくしも、四半世紀愛読して来た専門紙の休刊を、ただただ悼みます。この件で、あたくしのプロレスに対する興味は、完全に断ち切られたかもしれません。まだ休刊号を手にしたばかりで、何とも言えないのですけど、おそらく休刊の一因ともなった「ネット」でしか情報を得ない様になってしまうのでしょう。プロレス専門誌紙の歴史は、終わりました。あたくしには「大きな影響を受けた方々や紙媒体が志し半ばで散っていった」ことに対して、自分なりの礼儀を示したいとの想いがありますので、こんな駄文を書き散らしているのです。

ネット上でこうしたことをやらなければと、大袈裟に言えば「決意した」のは、同世代の「ナンシー関」さんが逝ってしまった時でした。「これから、あたくしは一体誰に『大食い』や『女子プロレスラー候補』の話をきけばええんだ?」と、途方に暮れたものです。愛読していた誌紙も「投稿写真」「噂の眞相」につづき、ついに「ファイト」までが消えました。嗚呼、なんてこった。残るは「BUBKA」だけかよ。と。哀しんでばかりいても仕方ないので、今日もあたくしは「コピコン」を書くのです。あたくしのモチベーションなんて、それ以外では「片瀬那奈ちゃん」しかありません。「底が丸見えの底なし沼( I 編集長語録)」になれればええな、と日々是れ呑んだくれているだけです。

さて、「C-GIRL」と「淋しい熱帯魚」の噺へもどりましょう。「C-GIRL」を作詞した森雪之丞さんは、公式サイトを御覧になって戴けば、なんとなく如何なる片なのかがお分かりになるでしょう。歌謡曲、アイドル・ポップス、日本語ロック、J-POP など何でもええのだけど、彼の様な作詞家の存在を中心にして見渡せば(それは松本隆にも共通するのですが)「全部おんなじじゃん」ってことになってしまいます。大分前にあたくしが、暴威の「イラネNY」を聴きながら「C-GIRL」を重ねて歌っちゃって「おんなじじゃん」ってな「バカ話」を書いたのは、こーゆーことです。

作曲した「NOBODY」(相沢行夫&木原敏雄)は、元「ヤマト」で、強制的に初期「キャロル」にも在籍させられ、後のソロ・ファミリーにも付き合わされた「永ちゃんの古くからのダチ」でした。最近ドラマ主題歌に使用されたアン・ルイスの「六本木心中」や、それをエロティックに共演した「漢の中の漢」吉川晃司さん(今週ずっとJ-WAVEでのお話を聴いてますよ、相変わらずええ男っぷりだナァ)の初期大ヒット曲の数々(「モニカ」「ユー・ガッタ・チャンス」などなど)は、彼らの作品です。さらに言うなら、片瀬那奈の実質的な初主演ドラマとも言える「FLY」で名目上の主演(失礼)だった大友さん(=ハウンド・ドッグ)がブレイクした「浮気な、パレット・キャット」で作家として世に出たのが彼らだったのです。

これは大変なことになってしまいましたね。「C-GIRL」を探るだけで、どれだけの金脈があるのでしょう?あたくしは、そのすべてを「例え上辺だけでも知ったうえでの批判」なら、堂々と受けて立ちますよ。でもね、あたくしが言いたいのは、正に「その深層まで探ろう」ってことなわけでして、「例え上辺だけでも知った」片は、もはや「同志」なんですよ。喧嘩になりません。

「淋しい熱帯魚」を片瀬那奈自身がカヴァーしたいと熱望した件も、掘り下げて行くと「無意識の理論武装」になってしまいます。WINK がブレイクした初オリコン首位曲を憶えていますか?それは「愛が止まらない」と言うカヴァー曲でした。日本語詞は及川眠子さんで、編曲は船山基紀さんです。そうです、その通りです。作曲以外はおんなじスタッフによって制作された「淋しい熱帯魚」(1989年度「日本レコード大賞」受賞曲)は、そのまんま、ユーロビートへの歌謡曲からの「ファンレター」です。(ちなみに「日本レコード大賞」は、作家陣が全員日本人でなければ対象外になります。)そのオリジナルを歌ったのは誰でしょう?はい、まだ初々しかった「カイリー・ミノーグ」ですね。

片瀬那奈は歌手デビュー当時の戦略で「和製カイリー」と呼ばれましたが、当然「上辺しか見えない世間(それが〜世間というものだ〜♪)」からは「パクリ」のひとことで大いに侮辱されましたよ。21世紀モードで復活した「エレクトリック・カイリー」の模倣とも取れる方法で歌手活動をスタートした「片瀬那奈」が、そのルーツまでもを詳らかにして魅せたのが「淋しい熱帯魚」なのです。そんなことはお首にも出さず、「ちっちゃい頃から歌っていたから、どうしてもカヴァーしたかった」と、片瀬那奈は笑って言いました。うん、それでいい。那奈ちゃんは、粋でカッコイイぞ。(つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)



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2006年09月28日

「夢みる歌謡曲」第4章の5:
小美人と三人娘「恋のロープをほどかないで」

WINK ALBUM COLLECTION 1988-2000 アルバム全曲集


「愛が止まらない」(原題「Turn it into Love」)の作者である「ストック/エイトケン/ウォーターマン」は、ユーロビートを代表する作家チームであり、カイリーの他にも「バナナラマ」や「リック・アストリー」などに楽曲を提供し、すべて大ヒットさせていました。

この特定の作家チームによる量産型ヒット曲製造法は、別に彼らが発明したわけではありません。1950年代末期から1960年代前半にアメリカン・ポップスの多くを生み出した「ブリル・ビルディング」系のソングライター集団(ゴフィン&キング、マン&ウェイル、デイヴィッド&バカラック、リバー&ストラー、などなど)や、1960年代のモータウンでの「ホランド/ドジャー/ホランド」(HDH)とおんなじことをやったのです。「ストック/エイトケン/ウォーターマン」の場合は、特に「ホランド/ドジャー/ホランド」の影響が強く感じられますね。

かのビートルズ(レノン・マッカートニー)も「ブリル・ビルディング」系に影響されて「ソングライティング・チーム」を始めたわけですが、彼らの場合「演奏も歌も」全部自分たちでやっちまったのが違っていました。とはいえ、自作自演ならチャック・ベリーを始めとするロケンロール退屈男どもが、既にいました。1960年代を席巻した英国のビートルズとか米国のビーチ・ボーイズとかのバンドは、実は新しいことなんか何もやっていないのです。彼らはただ、それまであったモノを組み合わせただけです。しかし、「発明」とは「過去の遺産を研究し組み合わせを変えて行く」過程を経なければ、いくら天才を持ってしても起こりえないことだと、あたくしは思います。

「新世紀エヴァンゲリオン」が、すべての起源になった様な世界で、10年前に「エヴァ」を観た時のことを思い返してみましょう。あの作品は、正に「過去の遺産をコラージュ」したものだったのですよ。あたくしはソコに惹かれました。そして、その作品が、今やアニメに留まらず多くの作品の元になっているのです。それは「ガンダム」然りで、初代ガンダムが「すべての起源」なわけがないのです。それは「宇宙戦艦ヤマト」でも「ルパン3世」でもないし、「仮面ライダー」でも「ウルトラQ」でもなく、さらに言えば「初代ゴジラ」でさえも本当の「起源」ではありません。

だったら、答えのない起源を探るのは不毛なのでしょうか?あたくしは、そうは思っていません。マドンナが歌う「FEVER」がカヴァー曲だと知って聴いた片が、果たしてどれくらい居るのでしょう?もしも「XXはマドンナのパクリだ」とか思考停止発言をするのなら、「FEVER」のオリジナルを即答してはくれないか?おまえらは、マドンナのことなんか何にも分っちゃいないんだよ。そんな輩に「パクリ」なんて言われたら、(それがもし、単なる模倣であったとしても)真摯に対象を愛したコが「あまりにも不憫だ。」罵倒する前に「何故似てるのか?」と、その理由を考えてみた方が、きっと僕らは幸せになれる。ずっとずっと、あたくしは、そう思っています。(つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)



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2006年09月29日

「夢みる歌謡曲」第4章の6:
小美人と三人娘「恋の1-2-5」

紙ジャケットCD-BOX


どうゆー脈絡での噺だったのかは分らないけれど、秀島史香が「私の大好きな10CCの“I'm Not In Love”も、ちゃんと入っているんですよ」とラジオで言ったのが嬉しかった、イコちゃんです。皆さん、秋の夜長を呑んだくれてますか?ついでに言うと、ピスちゃんが「(オレらが)メタリカのライヴで演奏する姿なんか観ないで頭を振りまくるのと、aikoのライヴでファンのコがaikoと一緒に手を振ったりピースしたりするのは、おんなじ気持ちだ」とさらっと言ったのも「はなまる」で、何か知らないけど「ピス」と「ふみか」が「れりびーれりびーれりびーれりびー♪」と歌っていたのも「グッときた」ナ。

ピストン西沢氏の「DJミックス」は面白いし、「音楽の偶然」を始めとする彼の「音楽への立ち位置」は、きっとあたしに限りなく近いと思います。さぁ〜てと、「じっくり」書くと言ってたら、もう6回目じゃん。この章、長いよ。飽きた。なんで、今回で終わらせます。まだまだ先があるんだから、「浅香唯」や「WINK」如きに「那奈回目」なんて踏ませませんよ。いや、そうじゃないか、この章は「小美人と三人娘」に関して書くんだったな。

片瀬那奈の目論見については、とっくに結論が出ています。例えば「キャンディーズ」も、「Mike(A/K/A/宇徳敬子)」も、「W」も、みんなみんな先達である「ザ・ピーナッツ」のカヴァーをレコーディングしています。それは、おんなじユニットとして当然あるべき行為なのですが、ソロ歌手である片瀬にとってはわざわざやる必然性がありません。それでも「Extended(2004)」を構築するに当たって、ソロ歌手のカヴァーだけでは伝え切れない想いがあったのでしょう。それが「淋しい熱帯魚」のカヴァー熱望になり、制作スタッフもより大きな「拡大」を企むことに繋がりました。

「1980年代の超有名女性アイドルのカヴァーを、無作為に、さらっとやってるだけじゃん」なんて思ったら、噺は進みません。何度でも言いますが、そんな「思考停止」発言で物事を済まそうとする御仁は、「無知」です。そして「無知」は「罪」なのです。何故なら、もう「知らなかった」では済まされないことを、やってしまったのですからね。

ミニアルバム発表後のライヴでの片瀬が「淋しい熱帯魚」と「C-GIRL」を好んで歌っていた事実は、残念ながら公式DVDでは完全なカタチでは残されていません。「淋しい熱帯魚」は、やはり本人も希望しての収録だったのでしょうけど、「C-GIRL」の映像が残されなかったのは、誠に遺憾に存じます。ライヴでの「Extended」コーナーは、未だに衝撃的で忘れられません。完全版でのリリースが求められて然るべきでしょう。「なんとかなりませんかねぇ?」

女性アイドル歌手にとって「歌唱力」は「絶対」ではありません。少し位、危うい音程の方が良いとさえ言えます。誰が「マライヤ」みたいに「これ見よがしに音域を誇示する技巧だけのうたをがなり立てる」10代の女の子に野太い声援を贈るでしょう?「楽天使」の「田山真美子」がソロ・デビュー曲の最後につぶやく「負けないで」や、「♪あなたイジワル♪」と歌った「CoCo」時代の三浦理恵子の甘ったれ声の方が、どんなに偉大なオペラ歌手の熱唱よりも「こころに響く瞬間」が、ひとにはあるのです。そして、その「ときめき」こそが、「音楽」にとっては、きっと大切なことでしょう。

ビートルズの曲だって、「れりびー」ではポールが弾くピアノのミスタッチがそのまんま残されているし、「恋におちたら」でハモるポールはフラットしています。いや、別に「ポールはええ加減だ」と言ってるんじゃないですよ。それどころか、彼は「ビートルズで最もプロ意識が強い片」です。ジョンなんか、カヴァー曲の正式レコーディングすら「歌詞が出鱈目」だし、自分で書いた曲すらライヴでは正確に歌えませんでした。でも、それがいい。ジョージの没になった「ど下手なギター・ソロ」を有難く聴いたり、リンゴが太鼓を叩き間違った瞬間にこそ、ファンは「にんまり」するのです。

それは何故なのか?答えは簡単ですね。それは、あたしたちが人間だからです。あたしたちは、日々を生きているから、ひとが書いて歌う音楽に心を震わせるのです。「ひとり」よりも「ふたり」へ、そして「三人」へ、ついには「集団」による大合唱へと広がっていくのが「音楽」でしょう。ちょっと調子外れだって、仲間外れにしちゃいけないよ。「おまえはダメだ」なんて言ってたんじゃ、何にも始まんないじゃないか。

音楽は素敵だ。さあ、恋をしようよ。


(第4章、STOP,)

「この章を、9月24日生まれの「同志」に捧ぐ。ゆえに、次章のタイトルも変えました。」(イコ)


「夢みる歌謡曲」第4章:小美人と三人娘(2006-9-24〜29)

 取材・文:未亜
 語りまくり:イコ

(文中、敬称略)


☆予告☆

第5章は「慈愛の記号(仮)」改め「テレビの中に」を、まったりとお送りいたします。

ではね、ちゃお☆


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)



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2007年11月22日

「夢みる歌謡曲」第5章の0:
テレビの中に「半分少女」

ザ・ベスト


てなわけで、ひさしぶりに再開させて戴きます。此れまでとは違って、一気には書きません。気が向いた時にボチボチいこかって感じです。なんてったって、小泉さん絡みの章なんで、迂闊なこたぁやれませんよ。片瀬クンがカヴァーした時に其の全てのオリジナルを蒐集したのは当然だけど、此の片だけは箱を買いましたからね。ま、大瀧さんが絡んでるんで機会を狙ってたってのも在ったけど、其れが片瀬クンなら、もう迷う事等無かったんだよ。

誰でもいいから、本気で好きにならなきゃ何にも見えて来ないね。KANちゃんは、小泉さんのことが好きで「テレビの中に」行ったんだぞ。彼女が居なけりゃ「愛は勝つ」は世に出て無い。するって〜と、其の後も色々と変わってしまうね。「アイカツ」を莫迦にしちゃイカンぞ。アレは名曲。確かに、KANちゃんには、もっともっと色んな曲が在る。でも「アイカツ」が一番売れて一番有名なの。だから、今でも堂々と歌うし、其れは生涯つづけなきゃなんないの。

なかなか、本気でそんなとこまでは行けないよ。☆ちゃんは「GET HAPPY」を歌わなくなったもんな。其れは其れでええ。いつか、また、きっと歌える日が来るんだ。

此の物語の主役で在る片瀬クンにも、ふたたび、そんな日が来るのかもしれない。其の予兆は、既に在る。衝撃的な「DJ : NANA」復活!情報に続き、来年のカレンダーで降臨した御本尊様に「何かを感じない」輩とは、金輪際、片瀬那奈ちゃんの噺はしたくないって位、あたくしは確信しております。

ま、ええか。そろそろ、小泉さんのことでも語ろうかね。

(いつか、また〜りと、つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子)



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2007年11月24日

「夢みる歌謡曲」第5章の1:
テレビの中に「魔女」

K25~KOIZUMI KYOKO ALL TIME BEST~


「気が向いた時にボチボチいこか」などと呑気なことを云っていたら、本当に壱年間も放ったらかしにしておりました。此の連載を中断して始めた「怪優・片瀬那奈・試論」も半年以上更新しておりませんし、九月に鳴りもの入りでドカンドカンとオープンした「LISTEN NOW !」「CHANGES」「みあみあ隊☆ふたたび」なども全然後が続いておりません。

「イコは大風呂敷は広げるけど、そんだけのホラ吹き娘。だナァ」なんて声も出ております。

「はい、全く、其の通りで御座居ます」

「コピコン」と「ゼンキロ」の更新だけでいっぱいいっぱいなのよ。てのは嘘で、乗らないと書けないだけです。てなわけで、最初の連載から片付けてしまいましょう。一気に最終章の前まで行きますよ。興味の無い片、メンゴです。

連載が中断している間に、あたくしはうっかり「片瀬那奈の『Extended(2004)』は、失敗作だ」と本音を書いてしまいました。そもそもカヴァーなんてのは「逃げ」なわけで、かのレノンの傑作カヴァー集と云われる「ロケンロール(1975)」ですら「曲が書けなくなって規制曲に逃げた」との批判が在るのです。

よほどのファンと云いますか、所謂「那奈ヲタ」くらいにしか知られていませんが、彼女のデビュー曲「GALAXY」からして、実はカヴァー曲でした。但し、其れは同時代の曲で在って、ファンの贔屓目抜きにオリジナルとされる「LADYBIRD」版よりも、片瀬版の方が上回っています。其の後、片瀬はオリジナルでシングル4枚とアルバム1枚を発表しますが、セールス向上を目論んだのか、唐突に1980年代アイドルのカヴァー路線へと迷走してしまいます。

唯一のフルアルバムである「TELEPATHY(2003)」と此のカヴァー・ミニアルバムを比較すれば明らかに前者の完成度が高く、本人もファンも続いて発売された両A面シングル「Necessary / EVERY***」を中心とした弐枚目のフルアルバムを待っていたはずでした。けれど、世の中はそう上手く運ばなかった。

前置きが長くなりました。此の章で語るのは小泉今日子さんの「木枯しに抱かれて」のカヴァーです。此の楽曲は「Extended」のラストを飾る重要な位置に配され、ライヴでも必ず歌われていました。「Extended」に収録された那奈曲の内、6曲は当時のオリコン・チャートで首位を獲得した楽曲です。唯一「木枯しに抱かれて」だけが、3位止まりで首位になっていないのです。片瀬は敢えて、全曲を首位の曲で固めず此の曲を忍び込ませました。キョンキョンだって、首位の曲は沢山在ります。けれど順位ではなかった。例え3位止まりだった曲でも、人々の心に残っているのが「木枯しに抱かれて」なのです。そして、片瀬は其れを歌い、アルバムの最後に収めました。

「Extended」は、「TELEPATHY」を聴いてしまった者にとっては「食い足りない」と云わざるをえないし、まさか此れで「歌手:片瀬那奈」が休止してしまうとも思っていませんでした。只、あまりにも完成度の高いファースト・アルバムを出したことが、彼女に大きなプレッシャーを与えたのではないか?とも考えられます。其れは、アルバム発表後のシングルが発売延期になったことからも伺えます。

さあ、そろそろ、小泉さんの噺をしましょう。何故、片瀬は此の曲を最後に持って来たのか?「Extended」の最後と云うことは、つまり「歌手:片瀬那奈」の現時点での最後なのです。此れは考察せねばなりませんね。

(つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子)



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2007年11月25日

「夢みる歌謡曲」第5章の2:
テレビの中に「ねぇ・ねぇ・ねぇ」

KYON3


小泉今日子のデビュー曲「私の16才」と、弐枚目の「素敵なラブリーボーイ」は、カヴァー曲でした。林寛子のスマッシュ・ヒットだった「素敵なラブリーボーイ」は兎も角、デビュー曲が森まどかの「ねぇ・ねぇ・ねぇ」を改変したカヴァーだったってのがすぎょい。何だか「まわりはキョンキョンに期待していなかったんじゃないの?」と思える処遇です。彼女が頭角を現すのは5枚目の「真っ赤な女の子」とつづく「半分少女」の筒美作品あたりからで、那奈麻衣目の「艶姿ナミダ娘」の頃にはすっかりトップ・アイドルに成長していました。

1982年デビュー組は当たり年で、なんと中森明菜も小泉今日子もレコード大賞新人賞に選ばれていません。彼女たちの素行に問題が在ったなどと云う噂も聞きましたが、其の後の展開を見るまでもなく、デビュー時点でふたりは秀でていましたから、全くもってナンセンスな選考だったと思います。

キョンキョンは、同世代の女の子の半歩先を提示することで生きながらえ、現在ですら其れは有効な様です。例えば「GOOD MORNING−CALL(1988)」と云う楽曲が在ります。此れは未だ「コムロの世界」になる前にコムロに曲を書かせ、彼女が作詞した曲ですが、発注の時に当時流行って居たTMNの曲を参考資料として出し「此れと似た様な曲を書いて頂戴。無理なら、おんなじでもいいのよ」と云ったそうです。其の後も大瀧さん、近田さん、小林武史、陽水&民生などなどを顎で使いブレイク直前に起用する勘のよさを見せ付けます。

てかさ、「あなたに会えてよかった(1991年)」では、レコード大賞作詞賞を穫りやがったのですよ。いくらレコ大の権威なんか落ちたって云っても、アイドル歌手が作詞で賞を取るなんて前代未聞です。阿久悠や松本隆や秋元康とかの立場はどーなるのよ?其れで、職業作詞家とか職業作曲家とかが居心地悪くなって行ったのです。キョンキョン、恐るべしっ!

小泉今日子は、松田聖子や中森明菜とは違った処で大いなる存在でした。1980年代の「ジャパニーズ・グラフィティ」を撮るなら、BGMは聖子ちゃんしか有り得ないでしょう。一寸ダークな其れなら、明菜が似合うでしょう。K2は其のどちらでも在りません。

「木枯しに抱かれて」は、アルフィーの高見沢俊彦による楽曲で、彼女の記念すべき20枚目のシングル曲でした。オリコンでは3位止まりで、次作の「水のルージュ」は首位です。されど「水のルージュ」を記憶している片はどれだけいるのでしょう?常に首位だった聖子ちゃんや明菜とは違い、キョンキョンの首位の曲は何故か印象が薄いのです。寧ろトップ5に入って首位に届かなかった曲の方が心に残っているのです。

そんな中から、片瀬那奈は「木枯しに抱かれて」を選びました。「なんてったってアイドル」を歌う片瀬クンも観てみたかった気はしますが、首位曲で固めたカヴァー・ミニアルバムで敢えて此れを選び最後に収録したのは片瀬那奈の頑固さゆえでしょう。スタッフの意見も当然在って、片瀬クンが聴いたことも無い曲もカヴァーされていますが、「淋しい熱帯魚」と「木枯しに抱かれて」の二曲は間違いなく片瀬那奈の意志で選曲されたと思います。当時五才だった片瀬クンが、いたいけにTVに合わせてうたう姿が目に浮かぶのは、あたくしだけではないでしょう。

(つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子)



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「夢みる歌謡曲」第5章の3:
テレビの中に「迷宮のアンドローラ」

シング!シング!シングルズ!!! [DVD]


「なんてったってアイドル」と高らかに宣言しながら、小泉今日子は「アイドル」からはみ出すことで人気を得ていました。

アイドル全盛期に「週刊プレイボーイ」誌のグラビアで「魚拓」ならぬ「人拓」を披露したことが在りました。オールヌードで、全身に青いアクリルを塗り(アクリル入りのバスタブにつかったのです)、正面と背後を曝け出しました。時代は未だヘアヌード解禁以前の1980年代後期の出来事です。歌もドラマも好調なトップ・アイドルがやる仕事では在りません。されど、歌謡界には「太陽:聖子ちゃん」と「月:明菜」がいました。おニャン子クラブと云う「化け物」も出現しました。ちなみに「なんてったってアイドル」の作詞は、他ならぬ「おニャン子」の仕掛人:秋元康です。

キョンキョンは、常に先鋭的でなければならなかったのです。ゆえに、作家陣も多種多様です。聖子ちゃんや明菜は、プライドが在りますから秋元康に発注などしません。今でこそ美空ひばりの「川の流れのように」を書いた男として名を馳せた彼ですが、当時は少女隊とおニャン子の作詞がほとんどで、放送作家あがりのパチモンみたいな輩だったのです。

早い段階で、彼女は作詞を始め、前出した通り作詞大賞を獲得するまでに成長します。現在では、誰も彼もが自作と称して職業作詞家のフィールドを浸食しまくっておりますが、其の先鞭をつけたのも彼女なのでしょう。

常に変化して行くことでしか、小泉今日子の生きる道は在りませんでした。例えば、パフィーちゃんは「月ひとしずく」がなければ誕生していません。パフィーちゃんは今でもそのまんまでいられるけれど、先駆者のキョンキョンは壱曲でやめてしまうのです。YUKIはヨーコ・オノさんを尊敬しているみたいですが、小泉クンはとうの昔に「女性上位ばんざい!」をカヴァーしているのです。

小泉今日子の箱は、そのまんま日本語ロックや歌謡曲を早回しで見る様な作品でした。近年は女優としての評価が高い彼女ですが、やはり彼女は歌手です。其れも「アイドル歌手」なのです。其の範疇から逸脱しようとしながら、どこかで踏みとどまっている絶妙なバランス感覚は稀有な才能です。

そして其れは、本来は「プログレ・ハウス」を嗜好しながら、万人が聴けるポップスへと向かった片瀬那奈に、しっかりと引き継がれていたと思います。

(つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子)



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2007年11月26日

「夢みる歌謡曲」第5章の4:
テレビの中に「丘を越えて」

K2 BESTSELLER


「Extended(2004年)」は、やはり大失敗作です。但し、シングルの「ミ・アモーレ」や「禁断のテレパシー」や、其の後のライヴでの「Extended コーナー」まで含めれば、成果は在りました。特にライヴに於ける早着替えは、其の全貌がDVDに記録されなかったがゆえに「伝説化」しました。あの「C-Girl」での奇跡は、あたくしたちの記憶の中にだけ在るのです。あたくしたちは、確かに「歴史の目撃者」になりました。

片瀬那奈に其れ以前より深くのめり込み、遂には「ゼンキロ」の管理人になって声援と罵倒を浴び続ける日々など、「GTOドラマスペシャル」を観た頃には予想もしておりませんでした。キャンギャルを辞めて、女優へと進んだ片瀬那奈に出逢える機会など無いと思っていました。現に、歌手転向以前に彼女がファンの前に公的に現れたの事は、ほとんど在りません。舞台でもやってくれれば別ですが、基本的に女優さんがファンと直接交流することはなかなかないのです。(だから、ミクロちゃんみたいに、そーゆー機会を作り、一生懸命に交流するコはエライと思う。)

「俳優さんがCDを出すのはファン・サービスだ」と云ったのは、ナンシー関サンです。曰く「歌手と違って役者のファンは自分がお金を出す機会が圧倒的にないから、其の捌け口としてCDを出す。するとファンは確かに対象に対して何かをしていると云う気持ちになれるのだ。(うろおぼえの大意)」あたくしも其の通りだと思ったし、片瀬那奈が歌をやると知った時には「もしかしたら逢えるかも、でもさっさと女優にもどれ」くらいな気分でした。其れが、怒涛の展開へと進んでしまいます。毎日、片瀬那奈に逢える日々がやって来たのでした。あの時代がなければ、其の後のあたくしたちはなかった。

さてさて、「Extended」がダメだってのは、片瀬那奈が原曲に忠実に歌い過ぎているからなのです。其れだけ彼女は器用なのですが、デビュー曲「GALAXY」が其のオリジナルを凌駕した片瀬那奈のオリジナルに聴こえるのに、「Extended」はオリジナル・ヴァージョンをなぞっただけとも云える歌唱なのです。はっきり云えば「カラオケ那奈ちゃん」になってしまいました。色んな声を出せるのは、流石は女優サンなのですが、「モノマネじゃん」と云われても仕方が無いです。

小泉今日子の「木枯しに抱かれて」を歌って、レコーディング・アーティストとしての片瀬那奈は終わってしまいました。無念です。只只、無念です。其れが彼女の意志だったのではないことが分っているがゆえ「何故カヴァー路線へ行かねばならなかったのか?」が解せません。小泉サンに関しては、とても此のスペースでは語り尽くせません。此処での主人公は片瀬那奈です。だから、其れは、また別の話です。


(第5章、STOP,)


「夢みる歌謡曲」第5章:テレビの中に(2006-11-22、2007-11-24〜26)

 取材・文:未亜
 語りまくり:イコちゃん(本物)

(文中、敬称略)


☆予告☆

いよいよ佳境に入りました。次章「月のおんな」を刮目して待て!!


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)



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2008年02月28日

「夢みる歌謡曲」第6章の1:
月のおんな「スローモーション」

中森明菜 シングル・ベスト KB-45


片瀬那奈の現役歌手としては今の処最後の作品である「Extended(2004年)」で、彼女は1980年代の女性アイドル歌謡曲を21世紀のエレクトロ・ポップ・アレンジメントで蘇らせる実験に挑みました。

前章で『「Extended」は、やはり大失敗作です。』と語りました。しかしながら其れは、セールス拡大をも狙った(Extendedとは其の願いも込められたタイトルだと思います)にも関わらず、其れ以前のオリジナル作品よりも低い結果しか得られなかったことに対する評価です。客観的に見ても、作品としてのクオリティは高いと思いますが、やはり彼女のオリジナル作品には及ばないと思います。

片瀬那奈によって蘇った那奈つの楽曲は、すべて別の作家陣によって書かれたもので、此れまで述べた通り其処から「日本の大衆音楽史」まで拡大していく指針となる絶妙な選曲です。ところが、何故かすべてを別の唄い手から選ばず、ひとりだけ弐曲も選ばれているのです。1980年代女性アイドルなら、他にも例えば、中山美穂、斎藤由貴、南野陽子、菊池桃子、などなど沢山いるわけで、たった那奈曲の縛りで同一歌手が弐曲と云うのは解せません。

其の特例が、此の章のヒロイン「中森明菜」です。穿った見方をするなら、カヴァー曲の場合は楽曲使用の認可が必要ですので「かつては研音に所属していた明菜の楽曲なら交渉もスムーズに行く」と云うことも考えられます。でも、果たしてそうでしょうか?

先行シングルとして、鮮烈なイエローミニ姿と共に出現した「ミ・アモーレ」が一曲目で、なんと三曲目には「TANGO NOIR」が収録されています。もしも「明菜の楽曲なら色々と楽だ」なんて理由からならば、こんな並べ方はしませんね。

片瀬那奈は、どうしても特別に弐曲、中森明菜を歌わなければならなかったのです。其れは、僕たちが最初に「ミ・アモーレ」を聴いた時に「此の低音ヴォーカルは、、、本当に那奈ちゃんなのか?」と驚愕し、彼女が「してやったり」の表情を浮かべた「777」vol.1で、那奈ヲタ界では知れ渡ります。新たなる片瀬那奈との出逢いは、ひらひらと揺らめく黄色いミニと共に、スローモーションでやって来たのでした。

(つづく)


(小島藺子/姫川未亜)



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2008年03月13日

「夢みる歌謡曲」第6章の2:
月のおんな「原始、女は太陽だった」

LIVE TOUR 2006 The Last Destination [DVD]


「Extended(2004年)」のコンセプトは単純明快でした。其処で片瀬那奈は、1980年代の女性アイドル歌謡曲を「21世紀の片瀬那奈的音楽世界」に組み替え再構築したのです。ゆえに、選曲は1980年代を代表する三大アイドルで在る「松田聖子」「中森明菜」「小泉今日子」、そしてデュエットの「WINK」、三人娘のアイコンとしての「浅香唯」、さらにモンスター「おニャン子クラブ」を代表して「工藤静香」となったのでしょう。実に見事な選び方で、此れら六組で1980年代アイドル歌謡が見渡せてしまえるほどです。

どうしても那奈曲とこだわるのならば、もう壱曲は新曲を入れても好かったでしょうし、一部で告知された「赤道小町ドキッ」でも構わなかったでしょう。そうなれば、ニューミュージック畑すらも範疇に捉えた企画に拡大していました。おそらく、発表された那奈曲以外にもカヴァー曲はリハーサルされ、実際にレコーディングもされていたと思われます。其れにも関わらず、中森明菜の楽曲だけが二曲も選ばれたのは不可思議です。

あくまでも私見ですが、まず、片瀬那奈の低音ヴォーカルの魅力も聴き手に届けたいとスタッフは考えた。彼女の地声は意外にも低いのです。其れまでのオリジナル曲では高音や囁き声が中心でしたが、音域も広く、声優並みに色んな声を出せる片瀬那奈のアルト・ヴォイスをもっと使いたい。其の為には、中森明菜の楽曲以外に有名な1980年代アイドル曲がないのです。さらに、那奈曲はすべて違った作家陣を使いたいとも考えていたのでしょう。聖子だと松本隆、キョンキョンは筒美京平、とお抱え作家がいるのですが、明菜の場合は其れが無いのです。

中森明菜が二曲も選ばれたのは、決して偶然では在りません。(つづく)


(小島藺子/姫川未亜)



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2008年03月14日

「夢みる歌謡曲」第6章の3:
月のおんな「月に吠えろ」

ベストコレクション


1980年代、いや、先日しょこたんが「マッハの早さで土下座」した様に、現在でも尚、松田聖子はアイドル歌謡界の「太陽」です。松田聖子は、同じソニーの偉大なる先輩である「山口百恵」のアンチテーゼとして登場しました。百恵ちゃんが陰の在る菩薩で在ったが為、聖子ちゃんはひたすらに明るい太陽となり輝いたのです。

さて、此の章のヒロインで在る「中森明菜」は、其の「太陽:松田聖子」のアンチテーゼとして生きる運命に在りました。但し、聖子ちゃんが「菩薩:百恵」を彼女の引退による不在から払拭出来たのに対し、「月」である明菜は同時代を生きるがゆえに常に「太陽」を意識し、己だけでは輝けない不幸が在ったのです。

象徴的な事件は所謂ひとつのスキャンダルにまで及びました。誰もが認めて居た明菜の恋人で在ったマッチと、聖子はNYで密会したのです。其の後の不幸過ぎる展開は、皆さん御存知でしょう。

中森明菜の歌唱には、未だ20代前半の頃から「情念」が感じられました。片瀬那奈がカヴァーするには、少々荷が重過ぎたと思います。特に「TANGO NOIR」は、完全に明菜の圧勝です。

果敢なる挑戦だったと云うことは評価出来ますが、何故、明菜を二曲も歌わせたのか?其の理由は制作者サイドに立てば此れまでの考察の通りで理解出来ます。しかしながら、聴き手の立場としての私には、分りかねます。

(つづく)


【予告】

次回で、此の章はおしまいです。其の後は、遂に最終章です。お楽しみに。


(小島藺子/姫川未亜)



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