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2010年05月13日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
中入りの那奈:「2005」

RELOADED〜Perfect Visual〜 [DVD]


2005年に、片瀬那奈は「テレビの国」に帰って来ました。前年の秋に女優回帰してからの片瀬は、3クール続けて連ドラに出演し、AUBEのCMにも出演し連動して女性ファション誌でも席巻します。夏からはバラエティ番組やアフリカ紀行特番へも出演し、二作で主演し、年末には「熟年離婚」にレギュラー出演です。一年間を通して、一般人もTVや雑誌で那奈ちゃんを観ない日は無いと云える日々が戻って来たのです。海外ロケも多い多忙な日々の中でも、トークショー等でファンと直接交流する機会も用意してくれました。立派ですよっ、御本尊様。

此の年には既に此処をリアルタイムで更新していたので、那奈ちゃんの八面六臂な活躍に度肝を抜かれました。正直に云えば、此処を立ち上げた2004年の終わりに、僕は「もう那奈ちゃんの先は長くない」と思っていました。だからこそ、其れまでの記録を遺さなければいけないと考えたのです。其の後の展開は、大いなる嬉しい誤算の連続となります。

来るべき2006年に、遂に片瀬那奈は其の眞の才能を開花させます。目くるめく怒涛の快進撃が始まろうとしていました。ゆえに2005年は正に「革命前夜」と呼ぶべき時です。様々な役柄を演じ乍ら、着実に片瀬那奈は逞しくなっていました。バラエティ番組でも其の特異な才能は発揮されつつあり、女優履歴に記しても然るべき「残り夏」(30minutes鬼、2005年9月24日放映)での摩訶不思議な演技は「ホラね、片瀬クンは単なる美人女優じゃないのよさ、えっへん!」と大いに古参ファンの溜飲を下げてくれました。

16才で衝撃のモデル・デビュウをし、17才から20才までの第一期女優時代を経て、21才で歌手に転身し、22才での女優回帰、其の歴史の全てが今、正に沸点に達しようとしていました。翌2006年、予想だにしなかった怪優が誕生します。其れが突然の出来事では無かった事は、此処までの歴史を紐解けばお分かりでしょう。さあ、皆様お待たせ致しました。

次回より、いよいよ「怪優・片瀬那奈」の降臨です。


(小島藺子/姫川未亜)


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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 020「小早川妙子」

小早川伸木の恋 DVD-BOX


 出演作:『小早川伸木の恋』全9話(フジテレビ系)
 放映日:2006年1月12日〜3月23日(毎週木曜日 22:00〜22:54、初回15分拡大版)
     平均視聴率 11.5%

 映像作品:「小早川伸木の恋 DVD BOX」(ポニーキャニオン PCBC-60980)
       2006年6月21日発売


運命の2006年が始まりました。24才になった片瀬那奈が年頭に挑んだ「小早川妙子」は、研音の大先輩である主演の唐沢寿明さん演じる医者・伸木の妻でヒロインです。お台場ちゃんは、名作「白い巨塔」での財前役と同じ医者役乍ら其の性格は真逆とのギャップを狙ったのでしょうが、「白い巨塔」で財前のエゴで誤診され死んでしまう弁当屋を演じたキチホンさんこと田山涼成さん(何気に片瀬クンと数多く共演しています)が今度は伸木を罠に嵌める越智助教授役で出演する等のツッコミどころが目立ち、ナナムジカによる大仰な主題歌「くるりくるり」と共に「世紀の怪作」として記憶されるドラマとなりました。(ちなみにナナムジカは翌年に同じく奇妙奇天烈なドラマ「女帝」の主題歌も担当します。)其の奇怪な作品での片瀬クンは、ハッキリ云って「小早川妙子の変」と名付けても構わない程の変しい変しい怪演をやらかします。

容姿端麗な妻で愛娘みーちゃん(神の子:北村一葉ちゃん)の優しいママである妙子は、反面、幼少時代のトラウマに起因するヒステリックで情緒不安定な「狂ったダイヤモンド」でもありました。自分以外の女性が例え仕事上でも伸木と関わる度に過剰に嫉妬し、包丁を振り回して暴れたり部屋を滅茶苦茶にする程に錯乱したり勝手に自宅マンションの鍵を変えて伸木を閉め出し伸木の友人で弁護士の仁志(藤木直人さん)に「伸木と離婚したい」と相談したりします。但し原作漫画と同じ性格設定乍らも余りにも身勝手な原作版とは違い、片瀬版の妙子には愛らしさがありました。

家庭での安らぎを得られない伸木はうっかり盆栽教室で知り合った作田カナ(紺野まひるさん)と関係を持ち、其れに勘付いた妙子もうっかり大学生の潤クン(山口翔悟クン:アンテツは此の時「もうリューケンドーは見ない!」と断言しました)と一夜を共にします。伸木「妙子と寝たのか?」潤「(こっくりうなずく)」とか、妙子「カナさんと、寝たんれしょ?」伸木「ああ、寝たよ!」などと身も蓋もない応酬の果てに、物語は離婚裁判へと発展するのでした。ちなみに、リューケンドーを「いつか殴る手帳」にしっかりと記したアンテツに「キス・シーンやベッド・シーンまで演じた唐沢さんは、どーなのよさ?」と訊いたら「唐沢さんは別にいいんですよ、ショッカー戦闘員でライダーマンですからね」と仮面ライダーマニアらしい回答が得られました。

DVDではバッサリとカットされた初回冒頭での大立ち回りから始まり、全篇に渡っての妙子の発狂演技が凄まじく、世間に「片瀬那奈って、一体、、、」と大いにイメージを覆させる事となりました。まるでジョーズが出現するかの如くタイミング良く伸木が他の女と一緒の現場に妙子が現れる演出は、爆笑を誘います。当時、片瀬クンが桂由美せんせいの「ブライダル・ファッション・ショー」で晴れ姿を披露した際にも、客席の奥様方が「アラ、コノコ観た事あるわね」「妙子よ、ホラ、小早川の」「ああ、アノ基地外嫁ね、普通にしてればベッピンさんじゃない」などと語っておりました。

上様(谷原章介さん)などの共演陣もモジャ公を除けば豪華で、キッちゃん(吉瀬美智子さん)が看護婦役でチラリと出てたりもしますが、またしても小川直也さんがプロレスラー役でゲスト出演しているのが注目に値します。「新宿暴走救急隊」での不甲斐なさに奮起したのか、小川は2005年末の吉田戦で本当に怪我をしてまで怪我人役に臨みました。ガチでリアルな姿勢は天晴れですが、役作りってそーゆーもんじゃないんじゃまいか?ハッスル!ハッスル!(死語)

然し乍ら、此の作品の眞の主役は「神の子みーちゃん」です。愛らしい風貌に似合わないドスの効いた単調すぎる台詞回しのギャップが生む破壊力はメガトン級で、怪演する片瀬クンをも食いまくっております。黙っていれば天使の様に可愛いのに、話した途端に物語を根底から覆すのですよ。ストーリー展開上でも、結局はみーちゃんが最後まで鍵を握っておりました。近年、大人も顔負けな上手い演技をしやがる子役が多い中で、こんなにも子供な姿を晒したみーちゃんは素晴らしいですよっ。片瀬クンの初めての御子を演じるに相応しい「史上最強の子役」です。

原作では「伸木はカナと再婚し、妙子は在ろう事か仁志を誘惑しできちゃった再婚し、更に成長したみーちゃんは潤クンと偶然に再会して惹かれ合い親子丼へ、、、」とトンデモすぎる結末を迎えますが(ま、単に原作者フーミンがポール・サイモン好きゆえに映画「卒業」みたいにしたかっただけなのだろうけどさ、、、そーいえばナナムジカの「くるりくるり」も「コンドルが飛んでいく」にアレンジがそっくりじゃん、、、)流石にドラマは其処まで無茶な展開にはなりません。そもそも仁志は原作では冴えない風貌の中年男で、藤木さんの様な綺麗な人が演じる役柄ではありません。ドラマでは最終回で離婚した妙子の引っ越しを手伝わされた仁志に、妙子が「あたし、仁志さんみたいな人となら上手くいったのかナァ」と唐突に告白じみた事を云いますが、仁志は「勘弁してよ、、、」と切り返すのでした。カナもあっさりと身を引き、伸木は独り身になります。可愛いみーちゃんがリューケンドーの魔の手に堕ちる心配もなさそうです。離婚してから逆に関係が修復している様に思える伸木と妙子が屋外で食事する場面でドラマは終りますが、其の最終場面のロケが天候不順で最終回直前まで延期されたなんてウラ話もありました。

予告の段階ではBGMにロネッツの「BE MY BABY」が流れていてワクワクしたのですが、本編では偏屈なフィル・スペクターからの使用許可が降りなかったのか無かった事になりました。挿入歌としてジェイムス・ブライトの「YOU'RE BEAUTIFUL」が使われ、特に妙子が苦悩する場面で頻繁に流れたので「小早川妙子のテーマ」として記憶される事となります。

私生活までもが妙子モードに染まる程に、片瀬那奈は此の役柄に賭けました。大いなる息吹が感じられる怪演に、あたくしも珍しく「妙子がんばれ!」とガチで全面支援を繰り返したものです。確かに、片瀬那奈は新たなるステージに上がったと思えました。箍を外した片瀬クンの暴走が始まったのです。


(小島藺子)


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2010年05月14日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 021「山田バーバラ」

ビバ!山田バーバラ(3)<完> (講談社コミックスキス)


 出演作:『ビバ!山田バーバラ』全2話(テレビ朝日系)
 放映日:2006年6月30日〜7月7日(毎週金曜日 23:15〜24:10)


「小早川妙子の変」に続いて、2006年の片瀬那奈は二本の映画(後に詳述)の撮影と同時進行で主演ドラマに挑みました。其れは前年に主演した「香港バタフライ」と「いい男はマーケティングで見つかる」では燻っていた片瀬クンの真価がようやく炸裂した作品となります。原作は鈴木由美子さんの同名漫画で、正に「マンガ女優・片瀬那奈」の快進撃が始まるのです。

片瀬クンが演じた山田バーバラは、かつてはトップモデルだったものの42才になった現在は太ったオバさんに成り果てています。人生に疲れコンビニの冷蔵庫で凍死自殺を試みたところ20代の若かりしスタイル抜群の美人時代に戻ってしまい、再びブイブイいわせようとしますが、水に濡れると元のオバさんに還ると判明します。若いバーバラで純クン(内田朝陽クン)に積極果敢にアタックするバーバラでしたが純クンの父親が元カレ・天(杉本哲太さん)と分り、冷蔵庫で変身を繰り返しては濡れて元に戻る二重恋愛ドタバタ喜劇を繰り広げるのでした。原作では「ふしぎなメルモ」さながらに焦ってうっかり10才の少女になったりもしますが、ドラマでは其処までは描かれず結末も違っています。

オバさんになったバーバラを中島唄子さんが演じ、若いバーバラを片瀬クンが演じる「二人一役」ですが、バーバラの心象を吐露する全体のナレーションも片瀬クンが担当しています。海に入り太ってしまう場面では下半身だけ肥大化する特殊メイクを披露したり、内面が42才のオバさんゆえの過激な台詞や大胆な行動も厭わず演じ切り、其の後のコメディエンヌ路線を決定付ける基点となった作品でした。ようやく主演作でも「片瀬那奈、此処にあり」を大いに印象付ける艶姿です。マブダチ星村麻衣クンがエステシャン役で「うっかり女優デビュウ」していたりもしますが、何故か長州小力を始めとする「西口プロレス」の面々が多数出演しております。何で毎度毎度、片瀬クンにはプロレスが擦り寄ってくるのよさ。

単なる美人女優の一人と認識していた世間一般の方々には、2006年の片瀬那奈は大きく変貌したと映ったかもしれません。でも第一期女優時代から片瀬那奈を愛したファンにとっては、此の路線での爆裂は正しく待望していた事でした。「片瀬クンはやる時はやるのだ」と、遂に其の眞なる姿を魅せてくれたと、拍手喝采大絶賛となりました。此の作品の前編がオンエアされた翌日の2006年7月1日に、映画「デスノート完結篇」への出演が公表されます。「おおっ!銀幕でも那奈ちゃんが大活躍かっ」と盛り上がり、翌7月2日に名古屋で行われたトークショーに駆けつけた流星ブラッドベリーズ(未亜&うっぴー☆)に、片瀬那奈は無情にも「結婚引退宣言」を云い放ちます。「結婚したら仕事はヤメます!」とハッキリと明言したのです。「片瀬那奈24才、最後の暴走!」と考えれば、なるほど2006年前半の躍進は納得がゆく展開でした。「ならば良し、其の輝きをしっかりと最後まで見届けよう」と、僕たちは誓ったのでした。

が、未だ未だこんなもんじゃなかった。怪優・片瀬那奈は其の正体を垣間見せたに過ぎなかったのだと、怒涛の2006年後半に僕たちは思い知らされるのです。


(小島藺子/姫川未亜)


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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 022「夏目雅子」

夏目雅子写真集 HIMAWARI


 出演作:『ニッポン人が好きな100人の偉人・美女編』(日本テレビ系)
 放映日:2006年9月23日(土曜日 21:00〜23:18)


此の作品を女優歴に加えるのは如何なものか?とも思えますが、バラエティ特番の中での再現ドラマで「夏目雅子さん」を演じた片瀬那奈は確かに女優でした。

拾った紙コップのコーヒーを飲み干す場面や、役を降ろされ演出家の和田勉さんに詰め寄る場面など、全てが事実に基づいた「夏目雅子ストーリー」を忠実に再現したものです。「夏目雅子さん」はランキングで見事に首位に輝いた為、片瀬クンの演じるドラマも「落ち」で放映されました。

「もしもツアーズ」では何度もスカされ捲る片瀬クンの「入浴場面」も、此の時は実録物ならではの演出ゆえに大盤振る舞いで披露されました。「2001年のおとこ運」や「ビバ!山田バーバラ」でも麗しい姿は魅せて下さったものの、此処まで素っ裸(まぁ、当然肌色の水着は着ておりますが)で挑む姿を晒して下さったのは余りにも貴重です。正に「ヴィーナス誕生」だっ。そして、其れ等の作品は押し並べて映像作品化されず、伝説と化してゆくのでした。桂由美せんせいのファッション・ショーでの晴れ姿を、真っ正面から拝んだ直後にアンテツ&うっぴー☆に発したコトノハを、もういちど云わせて下さい。

「伝説は、真実です」

真実は、常に現場に在るのだ。


(小島藺子)


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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 023「横田めぐみ」

めぐみ―北朝鮮拉致ドキュメンタリーコミック (双葉文庫)


 出演作:『再会〜横田めぐみさんの願い〜』(日本テレビ系)
 放映日:2006年10月3日(火曜日 21:00〜22:54)視聴率 9.1%


此の作品も、大変厄介な案件です。片瀬那奈は前作の「夏目雅子さん」に続いて、実在の人物「横田めぐみさん」を演じました。御存知の通り拉致被害者である彼女の半生を描いた作品で、13才から15才までの少女時代を福田麻由子ちゃんが演じ、19才から28才を片瀬クンが熱演しました。

異国に拉致され極限状態まで追い詰められてゆく姿を、真摯に片瀬那奈は演じ切りました。「夏目雅子さん」役にも云えますが、実在の人物を演じるのは過酷な挑戦です。そんな中でも「横田めぐみさん」は最大の難役でしょう。此の作品に挑んだ事実だけでも、大いに評価出来ます。片瀬那奈が女優であるからとか、僕が彼女の大ファンだからとかを超えて、人間として片瀬那奈は立派だと賞賛します。

番組は、当時の政権に対するプロパガンダが大いに感じられる生臭い内容も含むのですが、未だ解決に到らない拉致問題を考える機会になるドラマ部分は是非DVD化して然るべきだと思います。


(小島藺子)


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2010年05月15日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 024「楓」

信長の棺〈上〉 (文春文庫)


 出演作:『信長の棺』(テレビ朝日系)

 放映日:2006年11月5日(日曜日 21:00〜23:24)視聴率 17.8%

 (撮影:2006年8月上旬?〜8月25日)


2006年秋に、片瀬那奈は爆裂します。後述する連続ドラマ「鉄板少女アカネ!!」が10月15日より放送開始され、映画「DEATH NOTE the Last name」が11月3日に公開されます。そして此のドラマが11月5日に放映されたのです。時系列的にこんがらがってしまう程の大進撃です。

只、2006年7月2日の名古屋で発せられた「結婚引退宣言」を聞いてしまったので、25才の適齢期を迎える此の年に片瀬那奈はラスト・スパートを懸けたとも思えました。今にして思えば、まんまと片瀬クンの手練手管に引っ掛かったとも云えますが、当時の異常とも思えたワーカフォリック振りは其れを信じるには充分過ぎたのです。ところが、一旦ギアが入った那奈ちゃんは其の後も益々「一体、いつ休んでんのよさ?」と思える程の「仕事の鬼」と化してゆきます。

さて、此の作品は片瀬那奈が初めて挑んだ時代劇で、京都で撮影されました。主役の「太田牛一」を演じるのは、天下の松本幸四郎さんです。那奈ちゃんが演じた「楓」は山の民の娘で、牛一の亡くなった愛妻に瓜二つだった為に見初められ、彼と共に信長の死の真相を追う内に心が通じ合い結ばれる重要な役どころでした。原作で描かれた官能小説の様な場面は幸いにもなく、信長から授かった大切な金平糖を牛一が手で楓の口に与える演出(逆にエロい場面でもあります)から、いきなり「私のおなかには太田様の子がおりますっ」となり結婚しちゃいます。もう、此の頃の劇中では片瀬クンは子供を孕みまくりですよっ。

日曜洋画劇場枠での開局記念拡大版スペシャルドラマで、初めての時代劇ですので、舞台裏を明かしたナビ番組を観ても相当な苦労が在ったと感じられる作品です。「なんとか生きて帰れます」と素になって語る那奈ちゃんに強い決意を感じました。「矢張り、那奈ちゃんは最後の輝きを遺そうとしているのだ」と思えました。

其れを証明する様に、此の番組は「鉄板少女アカネ!!」と見事にバッティングして放送されたのです。形振り構わず!と思える事態でした。再放送や映画の地上波放映は兎も角(いや、其れも大いに問題ですけど)同一出演者の本放送ドラマが同時間に重なるなんて考えられない愚挙です。2010年の現在でも再現されている「片瀬クン vs 那奈ちゃん」が初めて敢行されたのが「2006年11月5日」でした。此の時も現在の「リコ様 vs スペイン姫様」も、決して在ってはならない「恥ずべき行為」です。但し、其の責任を片瀬那奈に負わせるのは断じて間違っていますよ。責められるべきなのは、スケジュール管理を怠ったスタッフじゃん。

そーいえば、女子マネちゃんから受け継いだ「新マネ★僕クン」のマネ日記は、全く以てつまんないぞ。だから無視してるわけよ。今後も記録対象とはなりません。あたくしがシュガーちゃんや女子マネちゃんを弄ったのは、ナンダカンダ云っても彼等の姿勢に「カタセ☆LOVE」を感じたからなの。特に女子マネちゃんが健気で真摯で面白かったのよさ。どーでもいいなら、わざわざ文句なんか云わないっつーの、なっ。(加藤絵里声で)


(小島藺子/姫川未亜)


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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 025「高田清美」

DEATH NOTE デスノート the Last name [DVD]


 出演作:『DEATH NOTE the Last name』(日本テレビ、松竹、日活、他)
 公開日:2006年11月3日

 映像作品:DVD「DEATH NOTE the Last name」(バップ VPBT-12687)
      2007年3月14日発売

 (撮影:2006年6月2日〜7月31日)


「ビバ!山田バーバラ」での「はっちゃけた怪演」で主演作でも遂に輝いた片瀬那奈は、いよいよ銀幕でも本格的に活躍します。人気漫画が原作の「デスノート」続編への登板です。片瀬は前述の通り既に2001年に「冷静と情熱のあいだ」でスクリーン・デビューを果たしていたものの、其れは僅か数十秒しか出番のない端役でした。ゆえに此の「DEATH NOTE the Last name」が実質的な銀幕デビューと云っても好いでしょう。「小早川伸木の恋」〜「ビバ!山田バーバラ」に続き、またしても漫画が原作です。前二作に関してはビジュアル的には原作に忠実なコスプレに近いものでしたが、此処での「高田清美」は原作とは掛け離れた設定及びビジュアルで登場します。

脚本自体が原作後半を大胆にアレンジし「L/竜崎(松山ケンイチくん)」と「夜神月(藤原竜也くん)」の対決に絞った展開に変えられました。ゆえに片瀬那奈が演じた高田清美も、ニュース・キャスターである事以外は原作とはかなり異なる役柄になっています。「L/竜崎」にも云える改変ですが、映画での「高田清美」は原作での複数のキャラクターを合体させているのです。片瀬那奈が高田清美を演じると公表された時に、研音公式BBSには原作の熱狂的なファンが荒らし目的でやって来て「髪を切れ!」などと謂れの無い罵詈雑言を書き立てました。アノですね、片瀬は当然乍ら原作を読んで、金子監督に自ら「漫画の高田さんはショートカットだから、髪を切りましょうか?」と打診したのですよ。するとガメラ金子は「いや、そのまま髪の長い片瀬那奈で演じて下さい」と却下したのだよ。原作と映画は別の作品なのです。全員がコスプレして原作をなぞっただけじゃ、素人の学園祭じゃん。ぜいはあ、、、

金子カントクは、只只、片瀬那奈を撮りたかったのです。ハッキリ云って、公私混同ですよ。ま、映画監督ってのはそんなもんですけどね。物語の中盤で死んでしまう高田清美ですが、クランクインもクランクアップも高田の場面だったと後に明かされます。デスノートを得た高田が事前に名前を書いた女性が死ぬ現場で待ち構えて路上でレポートをする場面が撮影初日で、高田がさくらテレビにおびき出されて車で向かい白バイの警官を殺す場面が最終日です。撮影期間中、まるっと片瀬クンを拘束したわけです。挙げ句に片瀬クンの美脚ばっか撮りまくっていたのですから、羨ましいかぎりですねっ。「何で高田清美は無意味に脚を出し捲くってるの?」と素朴な感想が多く寄せられておりましたが、そんなもん別に那奈ちゃんが好き好んで演じたわけじゃないじゃん。監督の金子が演出し編集したから、そーなったのよさっ。「映画って監督のモノでしょ?それぞれの役割があるでしょ?片瀬クンの役割は何?」と上原さくら声で云っちゃうぞっ。ぜいぜい、はあはあ、、、

果たして片瀬那奈は、デスノートを手にするまでの地味な印象と「第三のキラ」となってからの悪女振りの変貌を、見事に演じ切りました。追い詰められた時に拘束され目隠しをされた状態で、魅力のひとつである「目力」を禁じられ乍らも不敵に笑う演技にはゾクゾクします。絶命する場面での悶え苦しむ様は肉感的で、なるほどエロ金子が撮りたがったわけだと思わされます。徹底的なシリアス演技でも、片瀬那奈は充分に通用すると感じられました。

片瀬クンの宣伝隊長振りも際立ってきており、先行試写会では全国行脚します。特に、博多で夜に舞台挨拶した翌日の昼には札幌で舞台挨拶をしてしまったのには驚かされました。個人的には此の映画の初日舞台挨拶に駆けつけた時に、片瀬クンから此処を読んでいる事を知らされたのも衝撃的過ぎました。真っ昼間に友人たちと祝杯を上げて、自宅に戻りひとりになった途端に止めどなく涙が溢れました。其れで筆が鈍って提灯記事しか書けなくなったかと云えば、真逆で「おいおい、本人が覗いてくれてるんじゃ、益々過激に行かなきゃイカンぜよっ」と燃えてしまったのですけどね。


(小島藺子/姫川未亜)



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2010年05月16日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 026「西豪寺エレナ様」

鉄板少女アカネ!! DVD-BOX


 出演作:『鉄板少女アカネ!!』全9話(TBS系)
 放映日:2006年10月15日〜12月10日(毎週日曜日 21:00〜21:54、初回10分拡大版)
     平均視聴率 8.8%

 映像作品:DVD「鉄板少女アカネ!! DVD BOX」
      (ハピネット・ピクチャーズ BBBJ-9234)2007年3月23日発売

 (撮影:2006年9月14日〜12月5日)


此の連載のカテゴリ・タイトルが「エレナ」である事実でお分かりに通り、此の「日曜劇場」で史上初の一桁数字を叩き出し打ち切りの憂き目に逢ってしまった「鉄板少女アカネ!!」で片瀬那奈が演じた「西豪寺エレナ様」こそが、「怪優・片瀬那奈」を決定付けた記念碑的なキャラクターです。そして、此の世紀の当たり役は、もしかしたら存在しなかったかもしれなかったのです。千載一遇のチャンスを、見事に片瀬那奈はモノにしやがりました。此の作品が無ければ、後の「美月うらら姫」も「高瀬リコ様」も居なかったかもしれません。

何ゆえ、こんなにも面白い「西豪寺エレナ様」が打ち切られなければならなかったのでしょう。「世界バレーボール」中継の延長で放送時間が余りにも不安定だったからでしょうか?はたまた老舗の「日曜劇場」枠にはマッチしない破天荒な内容だったからでしょうか?片瀬クンが「信長の棺」の放送と見事にバッティングしたばかりでなく陣内さんもバッティングする等の「普通なら考えられない」事態が続いた事実からも、何らかの裏事情は感じられます。ま、そんな「片瀬那奈マネ日記」みたいな裏話は「此処の本分」でも「武士の一分」でもありません。ま、此の面白さが分らない片には「おまいは呑気に華麗なる月9でも観てろ!」と云うしかないです。いえ、別に他意はないです。

さて、「鉄板少女アカネ!!」は、またしても原作が漫画でした。「那奈ちゃん、全部マンガだよ、片瀬クン」と「マンガ女優道」を邁進して来た片瀬那奈ですが、此の「西豪寺エレナ様」は「高田清美」など比較にならない程に「片瀬那奈のオリジナル」になりました。何しろ、原作での「西豪寺エレナ様」は僅か二話に登場するだけの端役なのです。他の設定も原作とは全く違っていますが、「西豪寺エレナ様」が堂々とメインでアカネのライバルとして君臨するのが最も大きな違いでしょう。

つまり、片瀬那奈は自ら「西豪寺エレナ様」と云うキャラクラーを創造したのです。其の暴走度は回を重ねるごとに歯止めが効かなくなってしまい、完全に主役のミクロちゃんも並みいる俳優陣も食いまくってしまいました。一体、何が此処まで片瀬クンを弾けさせているのか?と我が目を疑う程に熱狂し爆笑しまくったものです。秘書の北村(デビット伊東さん)と鳴海(大友みなみさん)とのトリオも楽しく、其の三人コントは現在の「高瀬リコ様」でも継承されています。

此の作品では、オープニング・ナレーションを秀島史香さんが担当しているのも、未亜たん&うっぴー☆にとっては嬉しかったです。そう云えば「ふみか、かわいいよ、ふみか」は、先日(2010年5月5日)に御結婚なされたそうで、おめでとうございます。「ふみか、ひとづまだよ、ふみか」になっても、可愛い声は不滅です。

さて、ドラマ版でのストーリーを何となく振り返りましょう。物語は、母を亡くし父も失踪し17才でお好み焼き屋「ちゆき」を切り盛りする「神楽アカネ(ミクロちゃんこと堀北真希ちゃん)」が「父・鉄馬」の多額の借金(那奈千万円!)を理由に立ち退きを命じられるエピソードから始まります。其れは、鉄馬を東京フードパークの鉄板部門に料理長として迎える条件を「美食王・嵐山(竜雷太さん)」に突きつけられた西豪寺グループの若き女社長「西豪寺エレナ様」の策略でした。ダイビング土下座までやらかし店を守ろうとするアカネを見た嵐山は、アカネの負った借金を肩代わりする代わりに「三ヶ月後に鉄馬を超える豚玉を焼けっ!」と分けが分からない事をぬかします。天下無敵のエレナ様も、何故か嵐山の命令には逆らえない御様子です。アカネの初恋の人「心太(塚本高史くん)」や謎の男「黒金(陣内孝則さん)」と共に、全国各地から鉄馬の名前で送られてくる食材を頼りに修行の旅に出るアカネと、どーゆーわけか西豪寺エレナ様は行く先々で必ず遭遇し、料理勝負を繰り広げるのでした。

「熱くて悪いかっ!」と健気に対戦するミクロちゃんがエレナ様の手下どもを次々と打ち負かしてゆくのですが、800億円もの大金を事業に投資したエレナ様は、アカネを知り尽くす心太を対戦相手にスカウトしアカネを追い詰めます。其れを画策した黒幕でも在り乍ら「勝負に勝った方にしか、鉄馬には逢わせないっ!」等と理不尽な事を云い出した嵐山は、なな、なんと鉄馬の父親でアカネの祖父だったのですっ。しかも、鉄馬は既に死んでいましたっ。正に「ええぇ〜〜っ!」(ミクロちゃん声で)ですよ。存在しない鉄馬を探せと云われ、多額の投資をしたエレナ様は茫然自失です。嵐山は最後の対戦相手に、実は鉄馬のライバルだった黒金を用意していました。何もかもが、嵐山のエゴだったのかっ。恐るべし、美食王!てか、何で只の「食い道楽じじい」がそんなに偉いのよさ、、、。

しかし!流石は西豪寺エレナ様です。宿敵ミクロちゃんの情に訴える「掟破りの逆土下座」でまんまとミクロちゃんを懐柔し味方に引き込み、黒金との対戦もちゃっかりプロデュースして、屈辱を与えられた嵐山&黒金をミクロちゃんとの共闘で打ち破り、フードパークも成功に導くのでした。めでたしめでたし、、、。と大雑把に振り返っても「なんじゃこりゃ」と云うしかない荒唐無稽なお話です。特に終盤の「嵐山はアカネの祖父でした」とか「鉄馬は死んでました」とか「心太も黒金も嵐山の手先でした」とか、もう投げっ放しの打ち切りスープレックスが連発される展開には目眩がしました。もう此の際だから「アカネとエレナ様は生き別れた姉妹だったのだ!」とか云われても驚かない程に「どーにでもして頂戴」な、スットコドッコイ脚本じゃまいか。

最初の内は「エレナ様が金にモノを云わせたフードパーク店舗を進出させ、閉店の危機にある老舗料理店をミクロちゃんが救う」と必然性があった勝負も、後半には「病気で死にかけた松茸ババアの跡継ぎを決める為に二人の息子に代わってエレナ様とミクロちゃんが対決するものの、松茸ババアは仮病で、エレナ様は呆れ返って試合放棄」などと破綻しまくり、最早「勝負の為の勝負」へと転げ落ちてゆきます。イコちゃん的には大好物な物件ですけど、「平均 8.8%」で「打ち切り」は世間一般常識的視点からなら当然でしょう。此れが20%とか超える世界だったら、あたくしはもう「ゼンキロ」なんか書かなくてええわけだ。2010年の現在でも「プロ花」第五話は「3.9%」だったのよさ。あんなに面白いのにね。「数字じゃないっ♪」と歌いたいっ。

そんな出鱈目な世界でも、片瀬那奈は踏ん張ったのです。最終回の決戦では何故か髪をピンクに染めておりますが、直前の番宣で「王様のブランチ」に出演し「何故、ピンクきのこ頭なのよさ?」と訊かれた片瀬クンは「もう、このくらいやらないと誰も観てくれないと思いまして」と云い放ちました。其の恐るべき女優魂に「朝に逢った時にはエレナ様は金髪だったんですけど、本番になったらピンクになってたんですよ」と明かしたミクロちゃんも、大きな目をパチクリさせつつ絶句しておりましたよっ。此の命懸けとも云える怪演には、世間も「片瀬那奈って、何なのよ?」と注目せずにおれなくなったのでした。正直に申しますと、あたくしは此の「西豪寺エレナ様」が永遠に片瀬那奈の最高傑作になると思っていました。ところが、其の予想は次々に覆されてゆくのです。今振り返れば「西豪寺エレナ様」は、正に「怪優開眼」の時でした。


(小島藺子/姫川未亜)


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「怪優・片瀬那奈・進化論」
中入りの蛸:「2006」

片瀬那奈 2006年度 カレンダー


2006年は、片瀬那奈の女優歴に於いて余りにも芳醇な時でした。其の後も2010年の現在に至るまで片瀬は女優として更に大きく成長しますが、其の雛形は全て2006年に演じたと云っても過言ではないでしょう。

小早川妙子に始まり、山田バーバラ、高田清美、と連なった「オカルトもコメディもシリアスも何でも来い!」な「マンガ女優路線」に加え、初の時代劇や実在の人物役をもしっかりと演じ切り、其の積み重ねの上に爆裂しまくった「西豪寺エレナ様」に至った濃密な年でした。其ればかりか、片瀬は既に翌年に公開される「きみにしか聞こえない」の撮影も終えており、エレナ様の興奮が冷めやらぬ年末には「らんぼう2」の撮影に臨んでいたのです。CMも、クアトロ4ウーマン、ビューティーラボ、ポカリスエット・イオンウォーター、NTTドコモ関西キッズケータイ、と次々にに起用され、しっかりとファンと交流するトークショーや舞台挨拶も人並み以上に行っていました。恐るべき殺人的なスケジュール!立派過ぎますよっ、御本尊様。

どんな役柄でも演じられる稀有な女優として、片瀬那奈は引っ張りだこになって来たのです。那奈ちゃんに逢った事がある片になら説明不要でしょうけど、本当にマジでガチで「あんなに好い子はいないっ!」って断言出来る程に那奈ちゃんは素晴らしいんですよ。逢えば誰もが好きにならずにいられない素敵な人なのです。当然乍ら業界での評判も高いのでしょうし、オファーが殺到するのも宜なるかな、なのです。其の全てに真摯に取り組む姿は、美しいです。そんな最中に発せられた「結婚引退宣言」は、真面目な片瀬クンならではの本心でしょうが、多忙な女優業に加えて25才の誕生日を迎えた2006年11月7日には「So close, 7」を立ち上げデザイナーとしても活躍します。バラエティ番組での「おもしろいおねえさん」振りも好評を得て、10月からは「フェイク・オフ」の司会も担当していました。

うっかり結婚引退とか云ってられない立場に、片瀬那奈は祭り上げられていたのです。もうどうにもとまらないっ。ファンといたしましても「いつだってヤメたきゃヤメてもらって結構だ。那奈ちゃんがシアワセなら其れで好い。でも、ヤメられないでしょ?やっと此処まで来たんだもん。どーなのよさ?」と、もう気分は御本尊様と一蓮托生です。何せ、もう未亜たんとアンテツあにいは、此の年には遂にうっかり公衆の面前で正座して那奈ちゃんを拝んじゃったんですから、引っ込みが付きませんよっ。僕たちは此れまで何度も、那奈ちゃんの急激な変貌に驚き乍らも追わずに居れなかったのです。歌手に専念した時も、再び歌手から女優へと回帰した時も、振り落とされずに残ったじゃないか。片瀬那奈が今後も何をしようとも、挑み続ける覚悟はとっくに出来ていました。

2006年の大躍進劇は、繰り返しますが突然に降って湧いたのではなく、其れまでの長き片瀬クンの積み重ねが満を持して開花した成果です。2006年10月30日、西豪寺エレナ様に歓喜し、楓や高田清美を待っていた時に、来るべき2007年に片瀬那奈が初舞台に挑むと公表されます。鴻上尚史さん演出の「僕たちの好きだった革命」でヒロインを演じると報じられ、既に稽古に入っているとも書かれていました。鴻上さんは「ナナは初舞台だが、俺は歌手でステージに立っているのを観て舞台度胸を知っているから心配してないっ(キリッ!)」と断言しました。片瀬那奈が歌手活動に賭けた日々は、決して無駄ではなかった。そして、西豪寺エレナ様が片瀬那奈の頂点でもなかった。

物語は、未だ始まったばかりだったのです。


(小島藺子/姫川未亜)


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2010年05月17日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 027「甲田美和子」

潜入刑事 らんぼう2 [DVD]


 出演作:『潜入刑事 らんぼう2』(日本テレビ系)
 放映日:2007年2月6日(火曜日 21:00〜22:54)

 映像作品:DVD「潜入刑事 らんぼう2」(バップ VPBX-12694)
      2007年5月23日発売


西豪寺エレナ様の爆進劇に続き、2007年最初の「女優・片瀬那奈」は初の二時間ドラマ出演で幕を開けます。前年に放映された坂口憲二さんと哀川翔さん主演作「らんぼう」の続編で、エレナ様とは打って変わったシリアスな演技を魅せました。前述の通り、撮影は2006年12月に行われましたので、エレナ様から美和子へと瞬時に変わったのです。

「甲田美和子」はホスト省吾の恋人で、省吾は美和子と結婚し釣り具店をオープンさせる為の資金作りに止む無くホストに身を転じていましたが、何者かによって殺害されます。犯人がナンバー2ホストの水沢(黄川田将也さん)だと睨んだ美和子は、素人なのに自らホストクラブへ潜入捜査し復讐を試みるのでした。当然乍ら逆に人質に取られてしまってハラハラドキドキな美和子は、らんぼうコンビの活躍で救われ復讐も思いとどまります。如何にも二時間ドラマらしい展開ですが、片瀬クンは普通に熱演しております。ところが、西豪寺エレナ様が余りにも強烈な印象を遺した為、こうしたシリアス路線の作品でも「いつぶっ壊れるのか?」と視聴者に期待される様になりました。怪演しない片瀬クンは「変身しないウルトラマン」か「クリープを入れないコーヒー」の如く、些か物足りないと思われてしまうのです。

犯人役がかつて「不機嫌なジーン」で片瀬クンが演じた「めぐみちゃんを置き去りにした健一」役だった黄川田将也さんで、美和子もめぐみと同じ花屋さんと云う設定ゆえに、あたくしには「殺された恋人の復讐劇」ではなく「岡元めぐみのリベンジ」に観えてしまいまして、鬼畜の様な犯人に向けて美和子が拳銃を向けたクライマックスでは、

「撃て!撃つんだ、片瀬クンっ」

と殺人教唆気分になってしまいましたよっ。前年の高田清美での大量殺人を観てしまったので「二時間ドラマの刑事ものなら犯人役でも上等!」と思っていましたからね。御本尊様が望む通りに、ファンとしても「誰もやらない様なへんちくりんな役柄」を大いに期待しております。そんな片瀬クンのポテンシャルでは手錠を掛けられる程度では「大人しい役柄」と云えますが、二時間ドラマがDVD化されているのは珍しいので未見の片は是非御覧になって下さい。

主演の坂口憲二さんは、御存知の通り「世界の荒鷲:坂口征二さん」の次男です。此の作品と同時期の2006年末に撮影され2007年初頭に放映されたバラエティ番組「芸能人格付けチェック」では「何故か此の連載では御馴染みの小川直也さん」との師弟タッグで出演した「燃える闘魂:アントニオ猪木さま」とも片瀬クンは遂に共演を果たしました。夢にも思わなかった「片瀬 vs 猪木」と云う究極の異種格闘技戦は、伝説の「アリ戦」をも超える興奮を与えて下さったものです。タッキーに負けるくらいなら、猪木は片瀬クンにこそ敗れるべきだったぞ。今からでも遅くないっ。イノキゲノムで片瀬クンと闘えっ!そして壮絶に散れ、猪木。晩節を汚しまくった猪木伝説を救えるのは、片瀬クンしかいないのだ。


「潜入刑事 らんぼう2」INDEX


(小島藺子)



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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 028「小野未来」

僕たちの好きだった革命 世界が明日も続くなら


 出演作:『僕たちの好きだった革命』(サードステージ、他)
 公演日:初演、2007年2月28日〜4月1日(新宿シアターアプル、他)全23公演
     再演、2009年5月19日〜7月5日(東京芸術劇場 中ホール、他)全35公演

 映像作品:DVD「僕たちの好きだった革命」(サードステージ TDV-007)
      2007年5月31日発売(初演版2007年3月7日昼夜公演を編集し収録)


片瀬那奈の初舞台作品「僕たちの好きだった革命」で演じた「小野未来」は、初演時の東京千秋楽で脚本・演出の鴻上さんをして「此れが初舞台!奇跡です、片瀬那奈!!」と云わしめた驚嘆すべき事件となりました。ええ、此れはもう「事件」です。あれほどまでに熱狂した西豪寺エレナ様も霞む程の、衝撃的な出来事でした。

物語は、学生運動が激しかった1969年に高校の自主文化祭で主人公の山崎クン(中村雅俊さん)が機動隊の攻撃で意識を失い、30年後の1999年に目覚め高校に復学し、現役のぬるい10代のクラスメイトを熱き心と行動力で感化してゆき、再び自主文化祭を敢行する姿を描いたものです。1999年の高校生には、片瀬那奈ちゃん演じる小野未来や、日比野クン(ハリケンレッド)、希(森田彩華ちゃん)などがいて、希と未来が文化祭で企画したラッパー:タイトキック(GAKU-MCさん)のライヴを却下された事を発端に山崎クンが時代錯誤な学生運動を始めてしまい、擦った揉んだして文化祭自体が中止される事態になります。姿カタチは47才のオッサン乍ら心は17才で止まっている山崎クンの熱情に徐々に影響され、未来たちやタイトキックも共に活動し自主文化祭を強行するのですが、30年前と同様に機動隊がやって来て山崎クンや未来ちゃんたちは対決を余儀なくされます。果たして、彼等の運命や如何に!クライマックスの山崎クンの感動的なアジテーションは、何度観劇しても涙なくしては観れませんでした。

初演初日を観劇した時、僕は溢れる熱い涙を止められなかった。其れは演劇に感動したからでもありますが、何よりも目の前で初めて観た「女優・片瀬那奈」の圧倒的な存在感に屈したからです。其れまでも歌手時代のステージやトークショー等で、僕は何度も那奈ちゃんに逢えました。でも、最初に好きになった「演じる片瀬那奈」を目の当たりに出来たのは初めてだったのです。

ヒロインと語り部を兼務する片瀬那奈は、初舞台とは信じ難い程に輝いていました。舞台で躍動する片瀬那奈を観て、僕は1998年から2007年まで10年近く追い続けた日々のデジャヴを感じたのです。「小野未来」には、其れまでの片瀬那奈の全てが在りました。16才での衝撃のモデル・デビュウも、グラビア・アイドル女優だった10代の日々も、歌手に専念し再び女優に回帰した20代前半の激動の時代も、そして、おそらく生まれて来てからの25年間の全てが込められた「魂の演技」でした。此れは、片瀬那奈にしか出来ない完全なるオリジナルです。もし同じ演技が出来るのなら、其の人が片瀬那奈になっていたでしょう。「小野未来」に、片瀬那奈は25年間の自分史を重ねたのです。すべてが此の初舞台へと繋がっていたと実感出来たのですから、ファンにとっては正しく至福の時でした。「未だ未だ、那奈ちゃんの道は終らないのだ」と確信しました。

此の作品は二年後の2009年にも再演されましたが、本当は初演終了後に映画化が決定していたのです。映画でも主役の山崎クンは中村雅俊さんが演じると公表されてもいましたが、現役高校生の未来ちゃんを映画でも那奈ちゃんが演じるのは些か無理が在ると思われましたので、初演限りと思っておりました。ところが、諸事情で映画化が頓挫し延期され、演劇での再演が決まった様です。まさか再び観れるとは思ってなかったので嬉しかったんですけど、何だかナァ、、、。

僕は初演9公演に再演4公演と13公演を観劇し、壱回ごとに一期一会な舞台の魅力に大いに魅了されました。革命同志であるムッちゃんやレオちゃんの舞台を観に下北へ通ったり、GAKUちゃんの実演に参戦したりと、所謂ひとつの「カタセカイ」が大きく広がった特別な思い入れが在る作品です。初演も再演も素晴らしかったけれど、個人的には初演初日の強烈なインパクトが忘れ難いです。「片瀬那奈って、凄いナァ、やっぱり」と改めて思い知らされた夜でした。初演はDVD化されているものの、実際に体験した舞台の感動の半分も伝えてはくれません。当たり前田のアンドレ膝皿蹴りですが、舞台は生で観なきゃダメです。其れでも、DVDの副音声での腕白番長丸出しな片瀬クンのコメントは面白過ぎますので是非御覧下さい。

てか、堤カントクは映画化する気があるのでしょうか?また延びて、三度目の舞台での革命!なんて事になったら、怒るどころか「堤さん、よくぞ投げてくれたっ」と賞賛しますけどね。片瀬クン、三十路で高校生でも好いじゃん。ムッちゃんを観よっ。アレこそが、女優の在るべき姿ですよっ。

再演時のトークショーで、鴻上さんが「世の中にはナナみたいなデカくて侠気溢れる女が好きだって酔狂な男性ファン連中もいて、何度も舞台に通ってくれてるんだけど、あの人達は俺から見たら挑戦してるって思えるんだよな」と呆れて云うと、片瀬クンは「ええ、彼等はチャレンジャーですね」とエラソーに云い放ちました。そっか、自覚あるのね、御本尊様。てか、ファンと勝負する気マンマンな女優って、一体なんなのよさ。宣戦布告されたのですから、僕たちは喜んで受けて立ちますわよ。こっちとら伊達や酔狂で10余年も片瀬クンを追っかけてないっつーの。片瀬那奈を愛すると云う事は、常に未知なる何かに挑む事なのです。

僕たち那奈ちゃんファンは、此の物語での日比野クンそのものです。片瀬那奈の自分史が投影された小野未来を慕い、震え乍らも共闘し、新たな戦場へ向かい消えた彼女に想いを伝えようと決意を固める姿に、ファンとしての自分を投影せずにはおれません。結末の幻影で、冷たく一瞥し去ってゆく未来を呆然と見送る日比野クンには、トコトン参りました。此の作品は、僕たちファンと那奈ちゃんの歴史すらも内包しています。

そして、物語の眞の主役は山崎クンでも未来ちゃんでもなく、「今度は震えない」と誓った日比野クンだと僕は強く思います。


(姫川未亜/小島藺子)


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2010年05月18日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 029「原田リョウ」

きみにしか聞こえない [DVD]


 出演作:『きみにしか聞こえない』(ザナドゥー、他)
 公開日:2007年6月16日

 映像作品:DVD「きみにしか聞こえない」(メディアファクトリー ZMBJ-3631)
        2007年12月7日発売

 (撮影:2006年7月19日)


奇跡の初舞台と絶賛された「僕たちの好きだった革命」初演を終えた片瀬那奈は、撮影順で語れば、2007年11月に放映される「法廷荒らし 弁護士 猪狩文助」を撮り、7月期の連続ドラマ「地獄の沙汰もヨメ次第」へと向かいます。舞台を経験した前と後では、明らかに片瀬那奈の演技は変わりました。ゆえに、あたくしは女優回帰した2004年秋の「ラストクリスマス」から、2006年末に撮影された「らんぼう2」までを「第二期女優時代」と区切り、「僕たちの好きだった革命」初演の2007年2月からは「第三期女優時代」が始まったと考えています。

此の「きみにしか聞こえない」は、公開された順番では「僕たちの好きだった革命」初演の次に当たりますが、実際に撮影されたのは2006年の夏です。おそらく「DEATH NOTE the Last name」の撮影と同時進行で行われたと思われます。現在(2010年5月)絶賛公開中の「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」も今後公開を控える「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」や「ジーン・ワルツ」も、撮影は2010年1月期連ドラ「泣かないと決めた日」のクランクアップよりも前に終了しております。撮って出しとも云える連ドラと違い、本編は撮影から公開まで間が開くのです。ゆえに、此の作品での「原田リョウ」は「第二期女優時代」の演技です。

主演は「りこりこ」こと成海璃子ちゃん(片瀬クンと同じ研音所属で年齢は11才も下ですが、彼女のデビュウは5才なので芸歴年数は同じです)と、2009年から「ジョージア」の連続CMで共演する事になる小出恵介クンで、片瀬クンとの三人に荻島監督を加えた四人が初日舞台挨拶を行いました。ところが、片瀬クンにとっては主演二人と実際に顔を合わせるのが初めてとなった「不可思議な舞台挨拶」だったのです。其れが何故なのか?は、映画を御覧になって頂ければ解ります。

僕は片瀬那奈ちゃんが出演した映画の中では、此の作品が最も好きです。端役だった「冷静と情熱のあいだ」は論外ですし、エキストラ参加して「共に創った(主演の唐沢さんの名言)」と云う気分にさせてもらえた「20世紀少年」も、片瀬クンの出番が原作とは違って全く無くなっちゃったので「那奈ヲタ」的にはお話になりません。其れとは真逆に高田清美を原作以上に大フューチャーした「DEATH NOTE the Last name」や、最近観たばかりの「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」(杉尾園子は面白杉でしたけど、高瀬リコ様には及ばないナァ。)は、充分に及第点を超える出来映えとは云えます。でも、撮影がたったの二日(おそらく実写場面が壱日で、もう壱日はアフレコ)で、さほど出番が無い此の作品で演じた「原田リョウ」が最も心に遺りました。だから、舞台挨拶で荻島監督が「僕は原田という役がとても好きです」と語ったのは、とても嬉しかったです。片瀬クンも「後世に遺る作品に参加出来ました」と、自信たっぷりに挨拶してくれました。

物語の内容に関しては「ネタバレ上等!」で書き捲くっている此の連載では珍しく多くは語りません。僕はいつも通りに原作を読んでから観てストーリー展開を知っているがゆえの大きな感動を得ましたが、何も知らずに観て頂いた方が衝撃は大きいと思います。是非、未見の片は御覧になって下さい。泣けますよっ。シリアスで地味な役柄では「原田リョウ」が最も好きかもしれません。此の時点で、出番が多いとか主演だとかを超えた地点に片瀬那奈は来ています。其れが舞台を経験した後に、バイプレイヤーでの多彩で印象的な名演の数々へと繋がってゆきます。正しく、ギラリと光る助演を出来る様になりました。

えっと、そう云えば此の映画には「りこりこ演じる相原リョウの通う学校の山口先生役」で高田延彦さんが出演しております。小川、船木に続いて、またしてもプロレスが片瀬クンに擦り寄って参りました。今は亡き「ハッスル」でのノリノリな高田総統でお分かりの様に、高田はなかなか好い演技をしちゃってます。でも、其れは小川や船木がスットコドッコイ過ぎただけでして、決して高田が上手いわけじゃないのよさ。猪木も長州も映画に出ちゃってますけど、えっとですね、プロレスと演技は別ですからね。どんなに上手い役者だって、プロレスは出来ないじゃん。「相撲はお相撲さん、お相撲さんは相撲」なのだ。

でも、片瀬クンなら何でも出来そうなんだよナァ。


「きみにしか聞こえない」INDEX


(小島藺子/姫川未亜)



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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 030「森福みちる」

地獄の沙汰もヨメ次第 [DVD]


 出演作:『地獄の沙汰もヨメ次第』全10話(TBS系)
 放映日:2007年7月5日〜9月13日(毎週木曜日 21:00〜21:54、初回6分拡大版)
     平均視聴率 10.3%

 映像作品:DVD「地獄の沙汰もヨメ次第 DVD BOX」(TBS PBBD-60278/82)
      2007年12月5日発売


初舞台を経た片瀬那奈の「明らかに変貌した演技」を我々が最初に目撃出来たのが、此の「地獄の沙汰もヨメ次第」での「森福みちる」です。前述の通り、此の前に片瀬クンは「法廷荒らし 弁護士 猪狩文助」の撮影を終えておりますが、其の公開は2007年11月まで待たなければなりませんでした。

此の作品は、TBSの定番ホームドラマで、明らかに過去のヒット作「ダブル・キッチン」や「トリプル・キッチン」の流れを汲み、更には主役の「真琴=江角マキコさん」が他局で演じた人気作「ショムニ」をも赤ら様に意識したキャスティングで、正に「コメディ・ドラマの王道」を狙った作品でした。片瀬那奈ちゃんが演じた「森福みちる」は、大家族「森福家」の一員です。みちるの祖父「大三郎」は伊東四朗さん、祖母「千代子」は野際陽子さん(野際さんは「真琴の母:橘深雪」と二役!)、母「小百合」は浅田美代子さん、其の弟=みちるの叔父さん=真琴の夫「三四郎」がエロ男爵:沢村一樹さん、と豪華絢爛な一家です。更に、深雪の秘書役で怪優・佐野史郎さんも「野際の陰に佐野あり」とばかりに当然の如く加わりました。

みちるは出戻りの母と共に大家族で暮らす娘で、パソコンで株取り引きをしているみたいですけど、簡潔に云えば「ニート」です。連続ドラマのレギュラー陣のひとりで、出番が際立って多いわけではありません。ファンといたしましても「那奈ちゃんがワキで出てるから観ますよ」と、お気楽に臨んだドラマでした。

ところが、其の演技を観て「片瀬那奈は変わった」と大いに驚かされたのです。舞台を経験し常に多角度から観客に其の身を晒した片瀬那奈は、全身で演技が出来る女優へと変貌していました。物語の本筋で江角さん&野際さんが熱いバトルを繰り広げるのをミヨちゃんママと共に袖で覗く場面などでも、其の「もしかしたら誰も観ていないかもしれない」細かい所作が光るのです。例え、顔が映らず後ろ姿や手足しか映ってない場面でも「確かにみちるが其処に居る」と感じられます。表情の豊かさや大きなアクションでは定評があった片瀬那奈ですが、更なる豊かな表現力を会得し、完全に一皮むけたと思えました。

舞台での経験を、すぐさまTV連続ドラマで活かしてしまったのですから、敬服するしかありません。確かに、片瀬那奈には類い稀なる才能があります。されど、彼女が成長し続けるのは弛まぬ努力ゆえなのです。あらゆる経験を無駄にせず必ず次へと繋げる姿勢は、尊敬に値します。

「みちるっち」の放つ存在感は、片瀬那奈が新たなる地点に到達したと実感出来る「其れまでに観た事がない演技」でした。片瀬那奈は、例え一場面に登場するだけの役柄でも確かな存在感を伝える俳優になりました。こうなったら、もうどうにもとまらないっ。片瀬クンの快進撃は、未だ未だ続きますよっ。


「地獄の沙汰もヨメ次第」INDEX


(姫川未亜/小島藺子)



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2010年05月19日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 031「三浦真由」

回転木馬 オリジナル・ブロードウェイ・キャスト盤


 出演作:『未来遊園地』『未来遊園地2』(テレビ朝日系)
 放映日:2007年9月28日、2008年3月28日(金曜日 23:15〜24:10)


所謂ひとつの「第三期女優時代」に突入した片瀬那奈ちゃんは、休む事なく様々な役柄に挑戦し続けます。「三浦真由」役で出演した「未来遊園地」は、かつて「ビバ!山田バーバラ」を送り出したテレ朝の「金曜ナイトドラマ」枠で改変期に放映された単発ドラマでしたが、好評を得て半年後に続編が制作されます。続編では、ズバリ云って片瀬那奈ちゃん演じる三浦真由が主役です。

夢ヶ丘遊園地のオーナーに嫌々乍ら就任した主人公「長谷部達也(田中直樹さん)」が、会社を株暴落で解雇され退路を無くし、遊園地経営に賭ける物語です。謎の幽霊少女(夏未エレナちゃん)や、何故かひとりだけやる気マンマンの片瀬クン演じる三浦真由に関わり、見事に再建を成し遂げるのでした。壱作目は幽霊少女と達也の関係を中心に描かれた作品ですが、達也が「余りにも真由が夢ヶ丘遊園地を愛する姿」に疑問を感じ尋ねる場面があります。真由は「詳しく話せば壱時間かかるんだけど」と云い、達也に「だったら話さなくていい」と却下されるのです。其の語られなかった話が「未来遊園地2」で描かれるのでした。

長い髪を二つに結び遊園地のユニフォームを着た「三浦真由」は、其のスタイリングだけでも片瀬クンの新たなる魅力を伝えて余り在るのですが、何と云ってもプレイベートでの「眼鏡ちゃん」が好いっ!前作「地獄の沙汰もヨメ次第」でのみちるっちも眼鏡姿を頻繁に披露しておりまして、此処に来て遂に僕も、

「那奈ちゃんは、眼鏡をかけても好いじゃん!」

と、新たなるフェティシズムを体感してしまいました。嗚呼、片瀬那奈ちゃんとは何と罪深き御方なのでしょうかっ。続編での主人公は完全に「三浦真由」です。彼女の半生を描き、物語は前作ともリンクして感動的な結末へと進みます。前述の通り壱作目で何気に続編内容を示唆しておりましたので、最初から二作目まで作る気マンマンだったのかもしれません。片瀬クンは、彼女にしては「普通の役柄」も難なく演じられる様になりました。情感が込められた熱演に引き込まれ、自然と涙が溢れます。

それで、「片瀬クンは、実に好い女優さんになった。めでたし、めでたし、、、」とはならないのが、「怪優・片瀬那奈」の凄まじさです。二度の「三浦真由」を演じる僅か半年の間に片瀬クンが挑んだ数々の役柄が、其れを雄弁に語ります。そして何よりも讃えるべきなのは、後に語る「花輪倫子」や「手塚モモコ」や「鳴海京子」や「加藤絵里」などを経た後でも、しっかりと「三浦真由」に戻ってしまった事実でしょう。いよいよ、変幻自在な怪優振りが発揮されて参りましたよっ。


「未来遊園地」INDEX


(小島藺子/姫川未亜)



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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 032「まどかの友人」

グータンヌーボ SPドラマ グータンな女たち (スペシャルエディション) [DVD]


 出演作:『グータンな女たち』(関西テレビ、フジテレビ系)
 放映日:2007年10月3日(水曜日 21:00〜23:18)

 映像作品:DVD「グータンな女たち」(東宝 TDV-18069D)2008年3月8日発売


片瀬那奈が2006年5月と2008年6月にゲスト出演し、2009年10月から2010年2月までMCを担当する「グータンヌーボ」のスペシャル版として放送された「大グータンヌーボ 恋する女たち勢ぞろい&初ドラマSP!」の番組内企画ドラマ「グータンな女たち」には多くのゲストが出演しました。片瀬クンも「So close, 7」のスカル柄ワンピ姿で1カット出演しております。

完全なる顔見せだけの特別出演で、流石の片瀬クンもブランドの宣伝をうっかりやらかす位しか出来なかったのですが、堂々とDVD化されました。前述の通り、後の代打MCへの布石ともなった作品です。只、正直に申しましてあたくしは此の「グータンヌーボ」って番組自体が余り好きではありません。片瀬クンがゲストの回は観ましたけど、片瀬クンが出ている以外、一体どこが面白いのかさっぱり分らなかったので、片瀬クンが代打MCに抜擢された時も期待は全くしてなかったのです。ま、其れは杞憂に終わりまして、グータンでの片瀬クンはとても面白かったんですけどね。

でも、結局それは「片瀬那奈が面白い」だけで、番組が面白かったわけでは在りません。毎回、テキトーに女の子が三人で話してるだけじゃん。三時間長回しした中からおいしい場面を15分位に編集したお気楽な番組でしょ。2006年に初めてゲスト出演した時に片瀬クンは「やっぱり、ガールズ・トークは楽しい」とかぬかしてましたけど、マジっすか?本音なんか語ってないわけだし、もしも本当に三人で楽しんでお話をしちゃったのなら、そんなもんはTVで流すラベルじゃないじゃん。勝手にプライベイトでやって頂戴。

確かに片瀬クンはバラエティもこなせる逸材です。でもね、君は女優なのよさ。グータンの代打MCでの片瀬クンは女優でした。だから面白かったのよさ。「フェイク・オフ」とかもおんなじで「女優の片瀬那奈がバラエティに出てる」から価値が在るのです。サッカーとかガンダムとか家電とかキューピーとかも、全部一緒なの。本分としての女優で輝いているからこそ、楽しめるんですよ。グータンの司会なんかに収まってもらっちゃ困るんだよ。

片瀬那奈ファンとしての視点からすれば、此の作品は「マニアック」の極みです。ところが、本来なら超レアな物件になるはずが、まさかのDVD化でそうした偏執狂的な価値も暴落してしまいました。ま、こんな作品もあるさ、ってトコでしょう。


(小島藺子)


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2010年05月20日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 033「夏目理恵子」

必殺!The BEST


 出演作:『法廷荒らし 弁護士 猪狩文助』(テレビ東京系)
 放映日:2007年11月21日(水曜日 21:00〜22:48)※地上波での放映日


今は亡き名優・藤田まことさんとガチンコ共演をした此の作品は、前述の通りに初舞台「僕たちが好きだった革命」初演終了直後の2007年5月に京都と奈良で撮影されました。つまり、舞台を経験した片瀬那奈が初めて挑んだドラマです。バラエティ番組や雑誌の取材、デザイナーとしての仕事などで東京でも多忙を極めていた片瀬クンは「東京ー京都」を三往復しての過酷な撮影に臨みました。

「夏目理恵子」は新人弁護士で、主人公の猪狩文助と組んで時効間近に逮捕された冤罪事件の真相を究明します。準主役ですが、のらりくらりと一見やる気がなさそうな猪狩に代わって事件調査を担当する為、出番は壱番多い役柄です。司法試験を一発で合格した才媛ですので、基本的には凛々しい「静」の演技乍らも、うっかり猪狩と一升瓶の酒を酌み交わし酔っぱらう場面などもあり、那奈ちゃん目当てで観たヲタ的な満足度も高い作品です。BSでも先行放映及びリピートされ、2009年10月に再放送もされました。

2006年の西豪寺エレナ様で「動」の演技に関してなら盤石の地点に到達した片瀬那奈は、初舞台を経て「静」の演技でも魅せる技を会得しました。其の変幻自在な豊かな表現力は、此の作品と同時期に放映された2007年10月期連ドラ「暴れん坊ママ」で演じた「花輪倫子」で万人に分り易く露になります。

其れにしても驚かされるのは、2006年以降に片瀬那奈が演じた役柄の多彩さと其の数です。女優回帰した2004年にひとつだったのは復帰が其の年の後半だったからですが、2005年には5役となり、其の時点でも過剰な数でした。其れが2006年に7役へと更に増え、2007年は8役、翌2008年は10役と増え続けるのです。昨年の2009年には再演や続編も含めれば11役となり、今年2010年は未だ半年を経ない段階で撮影済みの映画を含めれば既に5役に挑んでおります。年間に10役以上を演じ分けるのが当然との状況になってしまったのです。2008年10月期には連ドラ三本を掛け持ちし、今年公開される三本の映画も同時進行でした。

片瀬那奈ちゃんは2010年でデビューして12年目ですが、女優歴を考えた場合、モデル時代や歌手専念時代が空白になりますので10年に満たない事になります。そして、歌手時代までの「第一期女優時代」には12役を演じたに留まったわけですから、「第二期女優時代」以降の僅か五年間で40を軽く超える様々な役柄を演じて来たのです。「夏目理恵子」を観た時に、其の未来は確約されたと思えました。「西豪寺エレナ様が思いの外に受けている」と語った那奈ちゃんは、本心だったのです。いえ、片瀬那奈は其のスタート時から「色んな役を演じられる女優になりたい」と雄弁に語っていました。片瀬那奈は自分の意志で「片瀬那奈」を実現して来たのです。強いナァ、やっぱり。

そして、此の項では、僕にとって幼少時代から大いに楽しませて頂いた藤田まことさんに、改めて感謝し御冥福をお祈り致します。大好きな俳優さんが共演する姿を観れたのは、虚構を愛する者にとって大いなるシアワセでした。よくぞ片瀬クンと相見えて下さった。マコちゃん、本当にありがとう。


「法廷荒らし 弁護士 猪狩文助」INDEX


(小島藺子/姫川未亜)



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2010年05月21日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 034「花輪倫子」

暴れん坊ママ DVD-BOX


 出演作:『暴れん坊ママ』全10話(フジテレビ系)
 放映日:2007年10月16日〜12月18日(毎週火曜日 21:00〜21:54、初回10分拡大版)
       平均視聴率 12.4%

 映像作品:DVD「暴れん坊ママ DVD BOX」(ポニーキャニオン PCBC-61360)
        2008年4月25日発売


2007年7月期の連ドラ「地獄の沙汰もヨメ次第」に続いて、10月期の連ドラ「暴れん坊ママ」にも片瀬那奈ちゃんは連投します。改変期の狭間にも単発ドラマやバラエティ番組へ絶え間なく出演し、翌年3月に放映される「いのちのいろえんぴつ」の撮影に北海道と東京を何度も往復し乍ら臨んでもおり、休む事なく「働く那奈ちゃん」振りを発揮しておりました。

「花輪倫子」は、主人公「川野あゆ(ウエッティ・上戸彩ちゃん)」と再婚した「哲(数字を持つ男!レイトン・モジャ公・大泉洋ちゃん)」が前妻「岩崎景子(あひるちゃん・紺野まひるさん)」との間にもうけた「佑樹(澁谷武尊クン:何気に「小早川伸木の恋」にも出演)」が編入した「さくらんぼ幼稚園」の「園ママ軍団」の一員です。父母会の「北条翠子会長=蓮くんママ(ともさかりえサン)」や「小南八重=さくらちゃんママ(山口紗弥加さん)」などと共に、新参者のあゆに意地悪をし追い出そうとします。てか、「小早川」とキャスティングが被り杉、、、いや、モジャ公がモテ杉、、、前妻があひるちゃんで後妻がウエッティって、「そんなの、あるわけないじゃん!」(9ちゃん声で)

「大輝くん(鏑木海智くん)ママ」である倫子(ちなみに読み方は「のりこ」ですが、此処では変換する時も呼ぶ時も「りんこ」です)は、エリート商社マンの夫(岡本光太郎さん)が仕事漬けで構ってくれないので、息子に過大な期待を寄せつつも、幼稚園の山口先生(向井理くん)に想いを寄せています。更に、北条会長の「デカ過ぎるコバンザメ」で「No.2」に甘んじている倫子は、会長選挙で敗れた過去があり、虎視眈々と下克上の機会を伺ってもいました。

一見すると「何故、こんなアホな息子を片瀬クンがお産みに成られたのかっ」と思われた大輝くんですが、サンタクロースの正体を知っていたり、母親が「パパよりも山口先生が好き」と見抜いているなど、実はなかなかの切れ者です。昼行灯を気取っていたのか、其れとも「もうママには大輝しかいないの」と倫子ママに抱きしめられた事で覚醒したのか、まさかまさかで難関有名進学校へ園内で唯ひとり見事に合格してしまいます。「合格の秘訣なんて無いから、困っちゃうのよぉ〜」と倫子ママが云ったのは、本心でしょう。あたくしも「ま、片瀬クンにハグされたら合格するわな」としか云えません。

機は敏なりとばかりに、息子の合格を境にして倫子ママの下克上が開始されます。自慢の息子がお受験全滅で傷心の北条会長を、正に傷口に塩を塗るが如く追い詰め、父母会主催のクリスマス会を自ら仕切り天下を穫ります。会長に虐げられて来たと勝手に思い込んだ積年の恨みから暴走は収まらず、合格した子供と不合格だった子供を差別して遊ばせようとまでするのです。息子の合格で頂点に立ったと確信した倫子ママは、夫の浮気疑惑など忘れ去り、想いを寄せていたはずの山口先生すら顎でこき使う高慢振りです。正に「俺様イズム炸裂」の無茶苦茶な「にわか女王」となった姿は、鬼気迫る熱演でした。しかし、明智光秀の三日天下さながらに、倫子ママの野望は真っ正面から受け止める北条会長と無邪気な子供たちによって頓挫し「あっ。」と云う間に元の「デカ過ぎるコバンザメ」に戻ってしまいます。されど、ガチンコで闘った北条会長とは心から信頼し合える関係となり、園ママ軍団の絆はより強く深まるのでした。めでたし、めでたし、、、ん?主役の話はどーしたって?何を云い出すのだね、君は。

「倫子ママが主役に決まってるでしょ」

「強きを助け弱きを挫く」精神を体現する花輪倫子を、片瀬クンは実に上手く演じました。園ママ軍団で最も「イヤな女」なはずなのに、やはりどこか憎めない愛らしさがあるのです。息子を溺愛する余り学芸会での小人役を一緒に練習する(名場面です!)に留まらず過剰な電飾衣装を着せてしまう等、走り出したら止まらないってトコが可愛いんだよナァ。謀反を起こすまでは黒い衣装で控えめにデカイ姿態を屈める様にオドオドしていたのに、天下を手中にしたと思ったら真っ赤な衣装でふんぞり返る「分り易い敵役スタイリング」もお見事です。ドラマ作品では、倫子ママ役が此の年のベストでしょう。

そして、息子役の鏑木海智くんが、これまた好い。アホな振りしてちゃっかり合格しちゃうし、卒園式での号泣する祐樹クンの肩越しで間抜け面で淡々と歌い続ける様は、完全に「主役の祐樹クンの懸命な泣きの演技」を破壊しまくっております。流石は「破壊女王の息子」だっ。「感情を押し殺した名演(単に何も考えていない様にも観えますが)をする大輝クン」と共に映ると「泣いてる祐樹クン」が「何をガキのくせしてオヤジ役のモジャ公みたいに臭い芝居をしてるんだよ、斜め後ろの大輝を観よっ!」と大根役者に見えて来て、感動すべき場面なのに爆笑してしまいました。海智くんは、ミクロちゃんが「愛する心太さん」に裏切られ自暴自棄になった時に「アカネ・スペシャル」を食べたくて幼い乍らも小銭を貯金し単身「ちゆき」に訪れ再起を促した事もあるのですよ。ミクロちゃん&エレナ様=倫子ママに抱かれた事が在る「トンデモな羨まし杉の神経歴を持つガキ」なのだよ。(←いや、だから其れ、違うドラマを混同してるから、、、。)

つーか、海智くんは翌年の舞台「フラガール」を観劇した際に、当然乍ら楽屋訪問をして片瀬クンと逢ったにも関わらず、其の後、我々一般人ファンと共に出待ちをしやがった「筋金入りの那奈莫迦」です。片瀬クンが車で去ってゆくまで、赤坂ACTシアター楽屋口付近から離れずにずっと待っていやがったのだよ。あんな天使の様な子供さえも虜にしてしまった「片瀬那奈の魔性」を、まざまざと見せつけられたものです。


「暴れん坊ママ」INDEX


(小島藺子/姫川未亜)



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2010年05月22日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
中入りの9ちゃん:「2007」

片瀬那奈 2007年 カレンダー


2007年の「女優・片瀬那奈」を考える時、矢張り最重要作は奇跡の初舞台と賞賛された「僕たちの好きだった革命」初演となります。初舞台を踏んで以後の片瀬は、更なる豊かな演技力を身につけました。鴻上さんが「主演の山崎くんは、中村雅俊さんでなければならなかった」と脚本に臨んだと同等に「小野未来を演じるのは片瀬那奈しかいない」と念頭に置いての起用だったとしか思えません。其の初舞台を観た山田監督が「舞台版のまどか先生を見つけたっ!」と直感し、翌年の初主演舞台「フラガール」が構想されます。そもそも、鴻上さんが片瀬を初舞台乍らヒロイン兼語り部と云う重要な役柄に抜擢したのは、彼が片瀬那奈の歌手時代に「真夜中の王国」で何度か共演し、歌手・片瀬那奈のステージを観ていたからでした。真摯に活動していれば、ちゃんと誰かが観ていて、後の活躍へと繋がってゆくのですね。

初舞台に始まった此の年の女優以外での詳細に関しては過去ログを参照して頂くとして、特筆すべき活動を挙げてみます。前年10月からレギュラーMCを務めていた「フェイク・オフ」は3月まで続き、終了後も数々のバラエティ番組で弾けまくる片瀬クンを観る機会が益々多くなりました。そんな中でも7月3日に放映された「サラリーマンNEO:セクスィー部長」でのエロ男爵との「息が合い過ぎたコント」は必見です。此の年の初頭(1月19日)「笑っていいとも!」のテレフォン・ショッキングに中村雅俊さんからの紹介で二度目の出演を果たした際に、片瀬クンが繋いだのがエロ男爵でした。4月からはエロ男爵担当だった「女子マネちゃん」が片瀬クン担当に変わり、「セクスィー部長」を経て、「2トップ」と呼ばれた「地獄の沙汰はヨメ次第」での共演へと繋がります。中学時代の憧れの人と公言し「できちゃった結婚(2001)」や「なな色のアフリカ(2005)」で関わりがあったエロス・沢村一樹さんと、最も濃密に絡み合った時でした。エロ男爵は其の機を逃さず、

「片瀬、お前の裸はもう見えているっ」

とまで云い放ち、「下ネタは苦手」と語る片瀬クンを調教してゆくのでした。恐るべし、エロ男爵。いや、もう此の当時には「沢村一樹=エロ男爵」は衆知の事実で研音の若手女優に避けられていたのですから、敢えて「友達の輪」へと誘った「片瀬クンのオヤジ殺しな手練手管にエロスも落ちた」と見るべきかもしれません。「セクスィー部長」は先日(2010年4月21日)DVD化され片瀬クンが「大宮のホステス」を嬉々として演じた姿も収録されましたので「是非ごらんになって下さいね☆」(懐かしの女子マネちゃん声で)

「暴れん坊ママ」で終ったはずの此の年の12月に、片瀬クンは間髪入れずに翌2008年新春に放映される主演作「ミラクルボイス」の撮影に臨んでおりました。更に、クリスマス・イブにはJ-WAVEでラジオ・ドラマ「一番小さなメリークリスマス」が放送されます。片瀬クンは、ヒロインの斉藤恵を当然乍ら声だけで演じました。作品内容は「つまらないエロドラマ」ですが、果敢にも声優に挑戦した志は好しとすべきでしょう。片瀬クンは語り部としてもなかなかの技量を持っていて、其れは翌年の紀行番組などで大いに発揮されます。

あっ。そー云えば此の年には宿敵「FRIDAY」による久しぶりの「13日の金曜日」攻撃もありましたね。片瀬クンは謝罪文を書き、発売日翌日の名古屋でのトークショーでも深々と頭を下げてファンに謝罪しました。此の件で、スタッフ側は社長を始めとして関係者への謝罪しかしなかった。片瀬那奈本人だけが、真っ先にファンへ謝罪したのです。ハッキリ云いますけど、那奈ちゃんがあんなにも潔く、大昔の事で僕たちに頭を下げる必要なんてなかったよ。ファンに謝罪すべきだったのは、スタッフです。片瀬クンを守るのが、貴方達の仕事だろ?肝心な時にスポンサーにヘコヘコするだけなんて、一体何をやらかしてんの。あたくしは、此の件で「チーム片瀬」とかほざいてる連中への信用を根底から失ったのよさ。

叩いてもなかなか埃が出ない片瀬クンが大昔のプリクラなんぞを引っぱり出されてしまったのは、其れだけ「片瀬那奈が再びのし上がって来た」との証明にもなりました。馬車馬の如き片瀬クンの活躍は、更に加速度を増し乍らつづきます。


(小島藺子/姫川未亜)


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2010年05月23日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 035「手塚モモコ」

ふしぎなメルモ-リニューアル- DVD-BOX


 出演作:『ミラクルボイス』(TBS系)
 放映日:2008年1月3日(木曜日 23:15〜24:39)視聴率 4.9%
     (撮影:2007年12月12日〜23日)


2008年の片瀬那奈ちゃんからのお年玉は、久しぶりの主演ドラマでした。毎年新春早々にTVで那奈ちゃんを観れる素敵な世界に生きている僕たちですが、其れはお正月向けのバラエティ番組と云うのが定番です。しかし、2008年は「片瀬那奈が片瀬那奈になって10周年」となる記念すべき年でしたので、気合い充分に女優として堂々の謹賀新年となったのです。W主演を務めるのは塚本高史くんで制作がドリマックスと来れば、そりゃアータ「西豪寺エレナ様物語、ふたたび」じゃまいか。こいつは初春から縁起が好いや。撮影は「暴れん坊ママ」のクランクアップ(2007年12月11日)の翌日から開始されております。「倫子ママ、一夜明ければ、モモコちゃん」だったわけで、恐るべきカメレオン振りです。どんだけ働いてんのよさ。余りの多忙さゆえ、片瀬クンは「暴れん坊ママ」の打ち上げにすら出席出来なかった様です。

物語は、女心が分らない小説家志望の「鳥山充(塚本高史くん)」と、男心が分らず美人なのに無意識に相手を傷つけ振られ捲くっている「手塚モモコ(片瀬那奈ちゃん)」が、異性の心の声を聞ける妖しげな薬を入手し、そのチカラを利用してそれぞれの野望を実現しようとする顛末を描いたものです。充とモモコは偶然に知り合い同じ薬屋で其れを一緒に手に入れますが、其の後は二人別々のストーリーが同時進行してゆきます。

此処では、当然ですが「モモコのお話」を語りましょう。結婚相手を見つけないと実家に連れ戻されお見合いさせられる事になったモモコは、心を読める様になった為に「親友・千鶴(木下あゆ美さん)」の幼馴染みで誠実なイケメンの「古屋秀則(阿部力くん)」と急接近します。ところが、偶然いつもの居酒屋で千鶴の心の声を聞いた充から「千鶴が子供の頃からずっと秀則を想い続けていた事」を知らされてしまい悩んだ末に、「キスしたくらいで彼氏ヅラするのはヤメて下さい!」と残酷に古屋くんを振って、千鶴との仲を取り持つキューピッド役を演じてしまうのです。エレナ様モード全開での弾けた演技と、恋と友情に揺れ動く切ない女心を魅せるシリアスな演技を、自然に「手塚モモコ」の中で両立させた名演です。雨に濡れてのしっとりした熱演あり、一転してオッサン度777%な塚本くんとの楽しく愉快なコンビネーションあり、と振り幅が激し過ぎる役柄を難なく演じ切ってしまった姿を観て、2008年も片瀬那奈クンは益々大活躍して下さると確信出来たドラマでした。

スタッフが「鉄板少女アカネ!!」とほとんど一緒で、塚本くんと共演なのですから、明らかに「西豪寺エレナ様の逆襲」と呼ぶべき作品でしょう。志半ばで打ち切られたアカネの無念を、スッキリと晴らして頂きましたよ。豊かな表情で振り切れ捲る演技には圧倒されますが、エレナ様からの壱年が片瀬那奈を更なる高見へと導いていた事実をも大いに感じさせられる作品となりました。音楽にはビートルズ・ナムバーが使われており、余りにもベタな「ヘイ・ジュード」や「レリビ」をクライマックスに持って来る一方で、マニアック過ぎる仏蘭西語カヴァーなども流している遊び心にもニヤリとさせられたものです。此れを書く為に録画したDVDを観たらCMがカットされていなかったので、何故かしらん?と思えば、劇中に明治のチョコレートとかスズキの車とかスポンサーの商品をこれ見よがしに多用されてて、千鶴役の木下あゆ美さんがスズキのCMにも出てたりしてたのね。此処まで堂々とやらかすのが面白いと思って遺したのか、当時は地デジが壱回しかダビング出来なかったからCMカットを回避したのかは定かでは在りません。

此処に来て「片瀬クンって、深夜枠ドラマの方がより自由奔放で面白いナァ」とも思えて参りました。更に、此の作品は主演ですが、塚本くんとのW主演でして、ハッキリ云って「もう別に主演じゃなくっても好いよ」とも思えたのです。例えば「月9」とかに出て誰にでも出来る様なお人形さんみたいな役で主演されるよりは、奇抜な演技を許される助演の方がずっと片瀬クンの魅力を伝えてくれると思えました。本来なら、片瀬那奈は主演女優の道を歩んでいたのでしょう。「歌手時代がなければ、危なかったナァ」と、此の頃にはハッキリと分りました。全く以て、御本尊様は「記録し甲斐が在り過ぎる御方」ですよ。


「ミラクルボイス」INDEX


(小島藺子/姫川未亜)



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2010年05月24日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 036「鳴海京子」

いのちのいろえんぴつ


 出演作:『いのちのいろえんぴつ』(テレビ朝日系)
 放映日:2008年3月22日(土曜日 21:00〜23:11)視聴率 11.8%
     (撮影:2007年8月〜10月、オール北海道ロケ)


実話を元にし、不治の病に健気に立ち向かう少女「豊島加純(藤本七海ちゃん)」と「担任教師・香川泰介(国分太一さん)」の交流を描いたドラマ「いのちのいろえんぴつ」が放映されたのは2008年3月です。しかし、実際に撮影されたのは前年2007年の夏から秋に掛けてで、片瀬那奈ちゃんにとっては連ドラ「地獄の沙汰はヨメ次第」と「暴れん坊ママ」や「未来遊園地」と併行しての撮影でした。「未来遊園地」も群馬県でのロケーションですが、此の作品は全て北海道厚岸町で撮影されましたので、片瀬クンは「東京、群馬、北海道」と飛び回り乍ら多彩な役柄を演じ分けなければなりませんでした。

「鳴海京子」は、主人公かすみちゃんが通う小学校の音楽教師です。美人で子供たちからは「きょうこちゃ〜ん!」とアイドル並の声援が起こる人気者ですが常に冷静沈着な模範教師の為、熱血教師である香川と教育方針の違いから激しく対立します。例えば、かすみちゃんは右手が上手く動かせなくなり音楽の時間にリコーダーを吹く振りをします。京子先生は其れを知りつつも普通に授業を続けますが、香川先生は「分っているなら歌を歌うとか、豊島にも出来る授業をして下さい!」と頼むと「彼女中心に授業をやれとおっしゃるのですか?生徒は彼女ひとりではありません。それに、あたしが豊島さんなら、そんな差別みたいな事をされるのは嫌です」と返します。どちらの主張も「子供の気持ちを考えた正論」ですので、二人の対立は激化してゆきます。

懸命に生きようとするかすみちゃんがもうすぐ死んでしまう事を知っている香川先生は、自分の無力さに苛立ち、純真に未来を信じて描いた絵日記を見せられた時に思わずかすみちゃんの前で泣いてしまいます。其の姿を目撃した京子先生は「むかつく、あたし生徒の前で感情を剥き出しにする教師って、みてるとムカつくんです!」と激しく非難します。京子先生も生徒を思う気持ちは人一倍持っており、其れを押し隠して冷静に接するのが最善の道だと考えているのです。香川先生は泣いた事でかすみちゃんに余命幾ばくも無い事を気付かれたと思い、苦悩します。物語は主人公が亡くなってしまう悲劇の結末に向かわざるえませんが、遺された者たちが少女との交流で成長する過程も描かれており、其の中でもクール・ビューティーな京子先生が秘めた熱き心を解き放ってゆく姿は印象的です。

かすみちゃんが亡くなった後で、京子先生は香川先生に「感情を剥き出しにする教師がムカつくのは、あたしにはマネ出来ないから」と心を開きます。そして物語は「かすみちゃんがいない運動会」で終ります。中盤で描かれた前年の運動会では車椅子姿で応援するかすみちゃんがいた場所に、もう彼女はいません。それでも、前年は本部席で佇んでいただけの京子先生が感情の赴くままに飛び出し綱引きに参加する姿に、確かにかすみちゃんが生きた日々が未来へ繋いだと感じられ、深い余韻を残します。

小学生の女の子が死んでしまわなければならない物語を観て「泣くな」と云うのは無理です。しかも実話を元にしているのですから、生半可な気持ちで作られたドラマでは在りません。子供が難病で動物も絡むとくれば、感動を強要する様な反則技とも云えます。此の作品も涙なくしては観れないのですが、片瀬クンが演じた京子先生を中心に観た時、彼女の人間的成長物語としての感動も得られます。実際にピアノを弾く姿や、結末での思いを爆発させるまでのじれったい葛藤を全身で表現する姿など、「那奈ヲタ」的な見どころも満載です。シリアスなドラマの助演でも「片瀬那奈は必ず一癖在るぞ」と思わせる演技が光った佳作と云えるでしょう。


「いのちのいろえんぴつ」INDEX


(小島藺子)



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