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2010年05月05日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 005「清水茜」

大きな翼


 出演作:『FLY 航空学園グラフィティ』全10話(NHK)
 放映日:2000年5月9日〜7月11日(毎週火曜日 23:00〜)※NHK総合での放送日


数多い片瀬那奈ちゃん出演ドラマの中には、誠に残念乍ら映像作品化されていないモノもあります。単発ドラマなどは、片瀬クンに限らず放送時に出逢えなければ奇跡的な再放送でも無い限りは「一期一会」です。片瀬クン出演作でも、ザッとみて「遠い夏(2000年)」「いい男はマーケティングで見つかる(2005年)」「香港バタフライ(2005年)」「ビバ!山田バーバラ(2006年)」「再会(2006年)」「信長の棺(2006年)」「法廷荒らし 弁護士 猪狩文助(2007年)」「ミラクルボイス(2007年、2008年)」「いのちのいろえんぴつ(2008年)」「未来遊園地(2008年)」等の珠玉の名作が「知る人ぞ知る」ことになっています。舞台「フラガール(2008年)」も映像作品化はされませんでした。

此の様な理不尽な所業に全く納得がいかないものの、せめて連続ドラマくらいは全作品が映像化されて然るべきでしょう。ところが、連ドラでも遺されていない作品があるのです。其れは「2001年のおとこ運(2001年)」と「熟年離婚(2005年)」そして、此の「FLY 航空学園グラフィティ(2000年)」です。

「片瀬那奈ちゃんの出演作なら何でも揃ってますよっ」と云いたいのは山々のあたくしですが、「片瀬の館」ライブラリーでも三作品ほど欠けています。其れは、超度級レアな「遠い夏」と、ネット限定視聴しか出来なかった「香港バタフライ」と、此の「FLY 航空学園グラフィティ」なのだよ。他の二つは兎も角、此の実質的には那奈ちゃんが主演だったドラマが、しかも天下無敵の日本放送協会が制作した作品が、何ゆえレアになってんのよさ?此れって、BSでも先行放映されたのですよ。当然、ヴィデオ化されると思ってましたよ。(当時はDVDではなく、ヴィデオが主流でした。)

と云うのも、地デジになる前までウチはNHKがほとんどマトモに映らなかったからなのです。アナログだと何故か12チャンネルが最も綺麗に観れて、カウントダウンするごとに画像が酷くなってですね、マトモに観れるのは6チャンネルまでだったんですよっ。だから、日テレちゃんとNHKちゃんは砂の嵐みたいな映像になっちゃって、特にNHKは白黒でしか映んなかったりもしたのよさ。

其れでも録画してたんだけど、1998年〜2001年のドラマ録画ヴィデオは、ほとんど全てを「夜勤しててリアルタイムで観れない可哀想なガールフレンド」に貸していたのです。勿論、片瀬クンのドラマ以外も録画出来る限りのドラマを全部を詰め込んだヴィデオを定期的に渡してたのよさ。ところが、其の莫迦娘がすぐ返さなくってですね、気付いたら「100本くらい溜まっちゃったんだけど、どーしよー?」とかぬかしやがったから「もう、まんどくさいなら返さなくっていいわよ」って云ったら、ホントに全部捨てやがったのです、、、そんでもって「悪いから新しいヴィデオあげます」って、新品の空テープを一本くれました。イコちゃん、ぽか〜ん。(実話です、、、)

劣悪な画面で観た記憶を頼りにしてしか「清水茜」を語れないってのは、あんまりですよ。もうアンテツに下駄を預けるしか無いね。別にもう「待てど暮らせどのDVDに焼いてくれ」とは云わないわよ。アンテツが書いて投稿して頂戴☆

「あにい、ハードル爆上げですよっ」


(小島藺子)



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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 006「内山知恵」

花村大介(3) [VHS]


 出演作:『花村大介』第7話「弁護士さん私が犯人です」(関西テレビ、フジテレビ系)
 放映日:2000年8月15日(火曜日 22:00〜22:54)視聴率 13.5%

 映像作品:ヴィデオ「花村大介」3
      (関西テレビ PCVE-31283)2000年12月20日発売


「FLY 航空学園グラフィティ」での大役を無事完走した2000年の片瀬那奈ちゃんは、次の連続ドラマ「新宿暴走救急隊」までの間に二つの作品へ登場します。ひとつ目は、ユースケ・サンタマリアさん主演の連続ドラマ「花村大介」のゲスト出演でした。

内容はサブタイトル「弁護士さん私が犯人です」で堂々とネタバレしている通り、那奈ちゃんが演じる知恵が父親(西田健さん)をゴルフクラブで背後から殴り、其の罪を知恵の異父兄である小島俊介(橋龍吾さん=橋幸夫さんの息子です)が被るものの、、、って展開で、真犯人役です。父親の言いなりに弁護士を目指す空虚な高校生活を送る日々の中で、ロックバンドで活動する自由な兄と出逢い感化され、其れでも厳格な父に逆らえず、思い余って犯行に及ぶのでした。

後の初舞台「僕たちの好きだった革命(2007年)」で奇跡的に復活するまでは、此の作品が片瀬那奈ちゃんが最後に演じた高校生役でした。演技はシリアスそのもので、後のコメディエンヌ振りは伺い知れません。但し、2000年と云えば「那奈理名運命の邂逅」が在った年と記憶されますので、役名が「内山」ってのがヲタ心を揺さぶりますし、異父兄が「小島」ってのも「偶然じゃないだろ?」と勘ぐってしまいます。そんな穿った見方で考えると、凶器がゴルフクラブって事も気になってしまいました。何せ、演出が塚本連平さんですからね。「プロゴルファー花」じゃん。

ま、そんな2010年的なこじつけは「それはそれとして」、此れはリアルタイムで等身大の女子高生を演じた18才の初々しい片瀬那奈ちゃんの真剣な演技を観れる貴重な作品です。ユースケさんの初主演ドラマでも在る作品ですが、彼とは其の後も映画やバラエティ番組で何度も共演する事になります。


(姫川未亜)



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2010年05月06日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 007「柴田広子」

ほんとにあった怖い話


 出演作:『ほんとにあった怖い話』スペシャル2「遠い夏」(フジテレビ系)
 放映日:2000年8月25日(金曜日 21:00〜22:52)


数多在る片瀬那奈ちゃん出演ドラマ及び映画作品の中でも、最上級ウルトラ・レアな物件が「遠い夏」です。片瀬那奈ちゃんは三姉妹の末娘を演じていますが、既に結婚している24才と云う設定です。当時の実年齢より6才も上の既婚者を初めて演じた興味深い作品です。但し、ドラマは三姉妹での場面でのみ展開し、那奈ちゃんは末っ子役なので、とても「24才の既婚者」には見えませんけどね。元々が単発オムニバス特番ドラマで在り、映像作品化もされませんでした。夏の風物詩でもある「怪談モノ」ゆえに再放送の期待(実際に、2001年9月に再放送されています)も僅かにあったのですが、2009年の夏に「止ん事無き事情」でほぼ永遠に「遠い夏」になってしまった不幸な作品です。

此処での柴田広子も、普通にシリアスな演技をしています。2000年夏の時点で、片瀬那奈ちゃんは「十代のアイドル」です。「この役が、片瀬那奈でなければならない必然性」は、未だありません。確かに「天国のKiss」も「氷の世界」も「FLY 航空学園グラフィティ」も、ファンにとっては忘れられない作品です。でも、スタッフ側からすれば、別の若手女優に演じてもらっても一向に構わなかったでしょう。たまたま片瀬那奈ちゃんにオファーが在り、其れ等をうっかり観た者の中に後の「那奈ヲタ」連中がいただけです。僕たちは「ヤンサン」や「アイキューピッド」のグラビアで弾ける笑顔を魅せる那奈ちゃんが、TVで動いて話すだけで充分だった。ハッキリ云って、演技など「二の次」でした。2000年の片瀬那奈ちゃんは、其れ程までに「圧倒的なアイドル」でした。


(姫川未亜)



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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 008「村井ひろみ」

新宿暴走救急隊


 出演作:『新宿暴走救急隊』(日本テレビ、フジテレビ系)
 放映日:2000年10月14日〜12月16日(毎週土曜日 21:00〜21:54)平均視聴率 14.3%

 映像作品:ヴィデオ「新宿暴走救急隊」1〜4
      (バップ VPVX-66843〜66846)2001年7月21日発売


20世紀最後を飾った「新宿暴走救急隊」は、ロンドンブーツ1号2号初主演連続ドラマで、片瀬那奈ちゃんにとって初めてのコメディ風味の作品でした。作品自体は、主演のロンブーが吉本の意向で無理矢理に嫌々やらされていたのが大いに伝わる出来映えで、主題歌もロンブーが担当した典型的な「お笑いアイドル・ドラマ」です。

片瀬那奈ちゃんが演じる「村井ひろみ」は、主役二人と同じ新宿西消防救急隊員で、轟五郎(ロンブー敦さん)と郷秀樹(ロンブー亮さん)が出動する際に乗る救急車の運転手も務める役どころで、群像劇に於いてエンドロールの最初に堂々と名前が出る立場での抜擢でした。ひろみは、運転中に五郎のセクハラ発言に激高し大声で叱責する余り運転をミスってガードレール等にあわや激突か?となりアップで絶叫したりもしますが、向上心と正義感に溢れる真面目な救急隊員です。

其れまでの基本的にはシリアス路線でも片瀬那奈ちゃんの表情の豊かさは垣間見れたのですが、此処ではコメディタッチな展開ゆえに其の大仰でマンガチックな顔芸の発芽が大いに感じられます。二つに結わえた髪型がとっても可愛らしく、第八話ではお見合いして真っ赤な振り袖姿を披露したり(肝心のお見合いは、相手が下着マニアの変質者と判明し頓挫します)、第九話では設定上で得意技とする空手で悪漢どもを蹴散らしたりもしますが、基本的には「いつも救急車を豪快に運転し絶叫している印象」が強く残ります。主役であるロンブーのベタベタな演技ゆえなのか、相手をする後輩なのにエラソー(先輩を「ゴロー!」と呼び捨て)な「村井ひろみ」がとても頼もしく映るのです。壱話完結のストーリーでのサブキャラですので出番は其れ程多くはありませんが、元気溌剌な那奈ちゃんが楽しめる作品です。

ヒロインが上原多香子ちゃん、挿入歌を歌うのがhiroちゃん、第那奈話のゲストが今井絵里子ちゃんと、絵に書いた様な「SPEED 疑似再結成」など、如何にも「日テレ土曜ドラマ」らしいお気楽な演出も楽しめます。レギュラーの看護婦チームには、梨花さん、後藤理沙ちゃん、矢沢心ちゃん等の綺麗どころも揃っております。毎回のゲストも無駄に豪華なのですが、何故か小川直也が三回もノコノコと出て来やがります。しかも、小川直也本人役です。ロンブーなんか比べものにならない程に、演技がスットコドッコイです。本人役なんだから普通にしてれば好いだけなのに、無理に演技しようとして空転しまくっています。そんなこんなで、矢鱈と「那奈ちゃん、随分と演技が上手くなったナァ」と錯覚したドラマでした。


(姫川未亜)



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2010年05月07日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
中入りの貳:「2000」

片瀬那奈写真集 「ナナノナツ」



2000年の片瀬那奈ちゃんを思い返す時、僕らは彼女を「アイドル」と呼びます。当時の那奈ちゃんは、正真正銘、本物のアイドルでした。初めてのカレンダーも発売され、グラビアでも席巻し、ダイドードリンコの「MIU」や「葉の茶」のCMも始まりました。「スポコン!」への出演もあり、二冊目の写真集「ナナノナツ」も発売されます。ドラマ出演も前述の通り、年間に半分の2クールはレギュラー出演するローテーションが確立されました。ファンは圧倒的に男子が多かったと記憶しております。犯罪的な程に、那奈ちゃんは可愛いアイドルでした。

翌2001年には、いよいよ「三代目きれいなおねえさん襲名」が控えていたのですが、其の前夜であった此の時代こそが「アイドル・片瀬那奈」の全盛期でした。「きれいなおねえさん」になってからの那奈ちゃんは、明らかに変わった。其れは、一躍メジャーになった事によって感じるヲタの習性でも在ったのでしょう。でも、其れだけではなく、確かに「那奈ちゃんは変わった」と感じました。僕らは、其の目紛しい変化に置いてけぼりにされない様に追い続ける事になります。

でも、2000年の那奈ちゃんは、すぐそばにいました。壱度も逢ったことなんか無かったけど、いつもそばにいてくれたと思います。僕にとっては、後に本人と逢ってからよりも此の頃の方が、那奈ちゃんは近くにいる様な気がしていました。其れはきっと、完全に偶像として捉えていたからでしょう。「ナナノナツ」で天真爛漫な笑顔を魅せる天使の様な那奈ちゃんを、僕たちは、うっかり愛してしまったのです。繰り返しますが、2000年の那奈ちゃんは「底抜けに可愛い」のです。惚れてまうに決まってるのですよっ。だから、僕らは彼女をアイドルと認識したのです。那奈ちゃんは、僕のアイドルでした。今でも最高のアイドルだけど、意味が違う。未だ、神様じゃなかった。当時の那奈ちゃんは、愛くるしい天使だったのです。

其の後の怒涛の展開など、20世紀には全く予測不能でした。21世紀が始まり、僕たちはようやく気付くのです。「那奈ちゃんって、ヤバイかも、、、」と。


(姫川未亜)



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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 009「柚木さくら」

無情


 出演作:『2001年のおとこ運』全11話(関西テレビ、フジテレビ系)
 放映日:2001年1月9日〜3月20日
     (毎週火曜日 22:00〜22:54、初回・最終回拡大版 22:10〜23:14)
     平均視聴率 14.0%


2001年は、後の「コメディエンヌ・片瀬那奈」を大いに予感させる時です。役柄も完全なる「準主役」のポジションに就くのが「当たり前田の長州顔面蹴り!」でガチになっていました。余談ですが、大昔の「タモリ倶楽部」で「怖い映像ランキング」って企画が在って、スプラッター映像が犇めく上位に「前田のハイキック」ってのがランクインしていたのは笑いました。底抜け脱線(そー云えばかつて前田が「あいつのプロレスは底抜け脱線ゲームや!」と云い放った大仁田は、村井ひろみが好きなレスラーだったナァ、、、)は兎も角として、21世紀初頭に片瀬那奈ちゃんが演じたのは「柚木さくら」でした。

第一期女優時代(1999年3月〜2002年3月)に片瀬那奈ちゃんが演じた12人の内で、最も好きなのが此の「柚木さくら」です。ズバリ云って、此の作品を観て「那奈ちゃんゾッコン☆LOVE」になりました。ゆえに、2010年の現在まで50人を超える那奈ちゃんが演じた役柄の中でも、確実にベスト5以内にランキングされるべき存在です。

「柚木さくら」は、菅野美穂さん演じる主人公「柚木あたる」の妹で、プー太郎な上にオッサンの伊倉(吹越満さん:アンテツの「いつか殴る手帳」に問答無用で名前が記されました)と不倫関係にあるハチャメチャな役どころなのですが、どーにもこーにも愛らしく憎み切れない魅力に溢れています。此の役をモノにした那奈ちゃんは、つづく「できちゃった結婚(2001)」や「プリティガール(2002)」でも基本的には同じ路線を演じます。

物語は「あたる」を中心として、幼なじみの元カレ「カヲル(ファッキンライト先生)」や其の憧れのひと「洋子ムシ(山本未来さん)」、謎めいた男「天羽(田辺誠一さん)」、そして「伊倉」と「さくら」等がグチャグチャな「プチ多角関係」を織りなすラヴ・コメディです。さくらも、伊倉、カヲル、天羽と揺れ動くのですが、矢張り不倫相手(実は離婚していた!)伊倉を一途に想う健気さが観る者に大いに伝わります。膨れっ面や笑顔などの多彩な表情が、ウルトラ「可愛い」のです。此れは惚れますよっ。「あたる&さくら」の父親が泉谷しげるサンってのも、絶妙なキャスティングです。「あたる&さくら」は身長差もかなり在るし性格も全く違うのですが、本物の姉妹に見える程に息が合っています。菅ちゃんの名演に堂々と渡り合う姿に、那奈ちゃんが遂に当たり役に巡り会ったと思いました。

残念乍ら、此の「第一期女優時代最高傑作」と呼ぶべき「2001年のおとこ運」は映像作品化されていません。其れでも以前は再放送されて観れる機会も在ったのですが、「悪夢の2009年夏」に「遠い夏」と同様に「ほぼ永久封印作品」となりました。あたくしを含めたファンは、録画した映像を持っています。されど、未だ知らぬ方々が「柚木さくら」に出逢う機会は失われたのです。片瀬那奈ちゃんには、何の非も在りません。てかさ、あたくし「カヲル」って役も凄く好きなんですよ。「あたる、カヲル、さくら」が三人で炬燵で会話する場面が多いのだけど、とっても好い感じなんです。在らぬ噂が立てられたのも宜なるかな、と思える程に仲が好さ気な三人が居ます。やっぱ魅力在るよ、ビューネくん。勿体なかったナァ、、、。

そして、作品に罪は無いのです。「蘇れ!柚木さくら」と叫びたいっ。


(小島藺子/姫川未亜)



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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 010「有森みさと」

できちゃった結婚 DVD-BOX



 出演作:『できちゃった結婚』全11話(関西テレビ、フジテレビ系)
 放映日:2001年7月2日〜9月10日(毎週月曜日 21:00〜21:54、初回拡大版 21:00〜22:09)
     平均視聴率 15.9%

 映像作品:ヴィデオ「できちゃった結婚」1〜4
      (フジテレビ PCVC31142〜31145)2001年12月5日発売
      DVD「できちゃった結婚 DVD BOX」
      (エイベックス・トラックス AVBD-34031/6)2001年12月12日発売


前作「2001年のおとこ運」で大いに其の魅力を開花させた片瀬那奈ちゃんは、あっ。と驚く「三代目きれいなおねえさん襲名」で一躍お茶の間の人気者になり、壱年半振りに「月9」に準主役待遇で登板します。正に我が世の春と云った時を、19才の片瀬那奈ちゃんは迎えておりました。

片瀬クンが演じた「有森みさと」は、主人公「小谷チヨ(広末涼子さん)」のデパガ同僚で親友です。チヨの姉「小谷亜紀(石田ゆり子さん)」と三人娘を形成し、チヨの相手役「隆之介(竹野内豊さん)」其の後輩の「巧(妻夫木聡くん:当然乍ら、アンテツの「いつか殴る手帳」掲載俳優)」そして亜紀の恋人「栄太郎(阿部寛さん)」の男子トリオに加え、できちゃったチヨの主治医で亜紀に一目惚れする「小松原先生(エロ男爵)」やチヨの厳格な父親「一徹ちゃん(世界のサニー千葉)」などと共にドタバタのラヴ・コメディを展開します。

狙った獲物は逃がさない魔性の女と称される「みさと」は、初回のサイパン旅行で出逢った巧クンに狙いを定め、其の魔性パワー全開で積極果敢に迫りまくるのです。いきなりだナァの眩し過ぎる黒ビキニ姿や胸元を強調した衣装での誘惑シーンに、那奈ヲタの心はブッキー以上に突き動かされたものでした。されど、肝心の相手役「巧クン」はおじいさんの遺言を厳守する九州男児で、みさとチャンの誘惑に負けまいと逃げまくるのです。其れに感化されたみさとチャンが純愛に目覚め清い交際を求めた途端に、巧クンの気持ちが昂り逆に追いかけてはスカされ捲ると云う「サイド・ストーリー」が、主人公二人の「できちゃった結婚」と同時進行で描かれてゆきます。

三人娘での「異常に腰の位置が片瀬クンだけ遥かに上」な図や、阿部ちゃん、エロ男爵、チバちゃんとのタイマン共演場面など、見どころは満載の楽しいドラマです。第一期女優時代の作品では、最も「セクスィ〜」な役どころでもありますが、前作で手応えを得た「憎み切れない可愛さを持つ明るく気の強い爆弾娘」な路線をより確立した作品と云えるでしょう。実際には「有森みさとの出演場面」は、全11話で合計しても「打率1割」の壱時間半弱しか在りませんが、其のインパクトは強打者並みに絶大でした。其の辺は、矢張り「月9」ブランドゆえでしょうし、同時進行で流れていた「三代目きれいなおねえさん」の威光も在ったと思います。今度の「きれいなおねえさん」は「おもしろいおねえさん」でもあるとの印象が伝わり、後の怪優路線へ繋がるコミカルな演技が際立って来ました。特に「憧れのエロ男爵」と初めてガチで絡んだ名場面での気合いの入り方は尋常では無く、「ブラボー!ブラボー!あたし小松原先生のファンになりましたっ」と讃える眼差しは、公私混同も在ったのか、完全にイッてます。

2001年の夏、片瀬那奈ちゃんの未来は輝いていました。僕らは来るべき主演作への階段を着実に登る那奈ちゃんを、何の疑いもなく信じて応援していました。其の期待は、翌2002年に根底から覆されてしまいます。那奈ヲタ試練の時は、刻一刻と近づいていました。


(小島藺子/姫川未亜)



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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 011「アイハラ」

冷静と情熱のあいだ(通常版) [DVD]


 出演作:『冷静と情熱のあいだ』(フジテレビジョン、角川書店、東宝)
 公開日:2001年11月10日

 映像作品:ヴィデオ「冷静と情熱のあいだ」
      (東宝ビデオ)2002年10月25日発売
      DVD「冷静と情熱のあいだ」
      (ポニーキャニオン PCBE-50313)2002年6月19日発売


「冷静と情熱のあいだ」は、片瀬那奈ちゃんの初出演映画作品です。主演の阿形順正を演じる竹野内豊さんとは「月9」作品の「氷の世界(1999年)」と「できちゃった結婚(2001年)」でも共演しており、翌2002年からは正式に所属する研音の先輩でも在ります。と云うか、初めから片瀬クンは研音への出向所属が決まっていたとしか思えません。「GTO ドラマスペシャル(1999年)」時の「伝説の台本」エピソードも明かされておりますし、第一期女優時代はインセント時代とも云えるのに、余りにも研音主導作品への抜擢が多過ぎます。

ま、そんな「片瀬那奈マネ日記」みたいなウラ話なんか、どーでもええわけで、兎にも角にも僕たちの那奈ちゃんは銀幕デビューを果たしたのでした。が。完全なる端役でした。出演場面は、一分にも満たないのです。役どころも、どうやらユースケ・サンタマリアさんが演じる「崇」が付き合っている女の子みたいなのですけど、ハッキリ云って別に出て来なくとも物語の進行に支障は無いと感じられます。台詞は「ああっ、はじめまして、ショムニのアイハラです」のたったひと言のみ。ゆえに名前すら正確には判別不能です。真っ赤なコート姿の那奈ちゃんは可愛いのですけど、全身がマトモに映るのはほんの数秒です。幾ら何でも、こんなんじゃ評価のしようがありません。普通ならバッサリ切れるのにTV放映時にカット出来なかったのは、おそらく直後に主人公の順正が大立ち回りを演じるのが物語上で重要な場面だからでしょう。

てか、あたくしは此の映画をマトモに観た事が無いのです。「那奈ちゃんが出ている一分間」しか観てませんし、映像も其処しか遺していません。今さっきも此れを書く為に観直したんだけど、ホントに一分掛かんなかったわよ。他の作品と違って、ラクチンだったね。「片瀬那奈ちゃんの銀幕デビュー作品」と云う以外の価値は、露程も在りません。片瀬那奈ちゃんが出演した作品で本編を丸っきり観ていないのは、たぶん此れだけです。今後も生涯、どんな話なのか知らずにいるでしょう。


(小島藺子/姫川未亜)



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2010年05月08日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
中入りの参:「2001」

片瀬那奈写真集 「ナナノナツ」


2001年3月14日、当時19才の片瀬那奈は「三代目きれいなおねえさん」を襲名しました。2010年の現在に至るまで片瀬那奈の代名詞のひとつとなった「きれいなおねえさん」が誕生したのが2001年です。そして、片瀬那奈が三代目だったのは翌2002年までの二年間に過ぎなかったのですが「片瀬那奈=きれいなおねえさん」は、永遠不滅の呼称として定着します。其れは「三代目きれいなおねえさん」こそが、片瀬那奈にとって初めての大ヒット作品だったからでしょう。

例えば、サー・ポール・マッカートニーさんは還暦を超えた現在でも堂々と若かりし日に書いた「YESTERDAY」を実演します。アノ天下無敵のマドンナさんですら、彼女を四半世紀以上も前の初期に有名にした「LIKE A VIRGIN」をセットリストから外せないのです。アーティストが世間に認知された最初の印象は、どんなに彼等が成長しても決して忘れられない宝です。一時期、大ファンで在る僕は「一体、世の中はいつまで那奈ちゃんを『きれいなおねえさん』としか認識しないのだっ」と大いに憤りを感じていました。でも、其れは間違いだった。那奈ちゃんは永遠の「きれいなおねえさん」なのです。歴代の「きれいなおねえさん」で、其の看板を守り続けているのは三代目だけなのです。

2010年の現在でも、TVトーク番組やトークショーの場で片瀬那奈ちゃんは「水着キャンギャル出身」も「きれいなおねえさん」も堂々と履歴として何恥じる事無く明かし、当時のエピソードを披露します。本人にとって屈辱的な出来映えだった「最後のデート」がデビュウ作だった事実も、決して黒歴史にはしません。僕たちファンは其の全てをリアルに体感し、其の都度に心底熱狂したのではなかったのか。ファンが片瀬那奈の歴史を全肯定せずに誰がする?永遠の「きれいなおねえさん」上等!と僕たちファンこそが高らかに誇るべきなのです。ビートルズのエセマニアが超有名曲である「YESTERDAY」や「LET IT BE」などを蚊帳の外に置くが如き「愚」を犯してはなりませんよっ。ぜいはあ、、、

「きれいなおねえさん」になった2001年の片瀬那奈は、ドラマでも「柚木さくら」と「有森みさと」と云う魅力的なキャラクターを見事に演じました。正に順風満帆、高校を卒業した18才からは実家を出て愛犬マロンも飼い始めました。多忙な仕事に追われ乍らも、若き十代の片瀬那奈は青春を満喫していたのでしょう。そして、若干19才での三代目襲名にマスメディアが飛びつかないわけがなかった。

2001年11月7日、片瀬那奈が二十歳の誕生日を迎えた記念すべき日に、彼女は初めてのスキャンダル写真を撮られます。其れは因縁の「FRIDAY」誌に掲載されますが、後の展開を考えると「FRIDAY」はもっとトンデモなネタを持って居たわけで、、、。でも、当時の那奈ちゃんはアイドルですから、充分に衝撃的な報道でした。更にほとぼりが冷め掛かった翌2002年春には「FLASH」誌で別のスキャンダルが報じられます。「出る杭は打たれる」を絵に書いた様な展開にファンはヤキモキするのですが、当の片瀬那奈本人はもっと上手でした。

来るべき2002年に、僕たちは本当に「あっ。と驚くタメゴロー」になるのです。些細な醜聞など、片瀬那奈の変貌の前には「屁の河童!アンタ河童を信じるかい?あたいは信じるふみかだよっ」となってしまう「劇的な時」が始まろうとしていました。


(小島藺子/姫川未亜)


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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 012「荒木理恵子」

プリティガール ― オリジナル・サウンドトラック


 出演作:『プリティガール』全9話(TBS系)
 放映日:2002年1月9日〜3月6日(毎週水曜日 22:00〜22:54)平均視聴率 9.9%

 映像作品:ヴィデオ「プリティガール」1〜3
      (TBS、ビクター TVE-389〜391)2002年6月28日発売


些細な醜聞などナンのソノで、2002年も片瀬那奈ちゃんは軽やかにスタートします。「野山花(稲森いずみサン)」「倉井歩美(米倉涼子サン)」と共に、堂々の三人娘として「荒木理恵子」は登場しました。そうです、此れが伝説の、

「デカイ!片瀬」です。

すっかりコメディ路線への登板が常連化した片瀬クンは、此の作品でも存分に其の魅力を放ち捲くってくれました。理恵子は、花や歩美も勤める百貨店アンドリュースの受付嬢です。三人いる受付嬢は同じ制服姿なので、片瀬クンのデカさがより好く目立ちます。サイドには長谷川京子サンを従えております。此の時点では、那奈ちゃんがハセキョーよりも明らかに「配役ランクが上」だったのです。

容姿端麗で自信満々な理恵子は、仕事よりも恋に生きたい22才の明るい今時の女の子です。第三話では取引先大手銀行の御曹司にプロポーズされ、玉の輿に乗ろうと「秘書」だと偽ったりしますが、結局は花の導きで自分自身を取り戻し御曹司を振ってしまいます。其の御曹司を演じる湯江健幸サンは「新宿暴走救急隊(2000)」で片瀬クンが演じた村井ひろみのお見合い相手でもありました。前回は「下着マニアの変態」と発覚し破談になり、今回も見事に撃沈したのでした。しかも別の相手と結婚するエピソードで「理恵子さん、今度生まれ変わったら一緒になりましょう」なんぞと未練がましく迫り、当然乍ら叩き潰されます。「何だか可愛そうだナァ、、、」と思ってしまうのは、永遠に届かぬ想いを抱き続ける那奈ヲタの代弁者に映るからでしょうか。

理恵子は、歩美に想いを寄せる同期のコブこと「古武屋太郎(吉沢悠くん)」が気になっています。いつも喧嘩してばかりの関係なのですが、第六話で専務と歩美のデートを二人で尾行している時に、いきなりだナァでコブが理恵子にキスをします。(ハイ!「アンテツ・いつか殴る手帳」に吉沢くんも掲載決定ですよっ)理恵子はコブが好きだったのだけど、何だか分んないドサクサ紛れのアプローチに戸惑うのです。挙げ句に理恵子を「バカ」呼ばわりしてコブは走り去ってゆきます、、、てな展開での理恵子は、気絶するほど可愛い!!てか、此れまでも那奈ちゃんは何回もキス・シーンを演じましたが、此のコブにいきなりやらかされた場面で、あたくしは初めて相手役に殺意を覚えました。「できちゃった結婚」の巧ブッキーも「いきなりだナァ!」とキスしやがる場面があったけど、物語上での必然性があったので耐えられたのです。でも、此れは、、、

「コブ、てめえ、一体何やらかしとんのじゃっ!!」

と、「FRIDAY」や「FLASH」での醜聞なんぞ比較にならない程に、ジェラシーの炎が燃え盛ったのでした。(其の「那奈ヲタ怨念」に屈したのか、コブは一時期俳優を休業してしまいました、、、)其れ程までに、僕たちは荒木理恵子に恋い焦がれていたのでしょう。こんなに魅力的なキャラクターを演じてくれる片瀬那奈ちゃんには、今後も益々女優として頑張って欲しいと切に望みました。

主人公である稲森いずみサン演じる「野山花」も好きで、結末で歩美に専務(田辺誠一さん)を譲りひとり去ってゆく展開には納得がゆかず、思わず曲まで書いてしまった程にのめり込んだ作品です。絵に書いた様なシンデレラ・ストーリーを成し遂げてしまうヒロイン「歩美」を演じる米倉涼子サンも、其の後の悪女路線など考えられない様な地味で消極的な役どころを熱演しています。三者三様の正しく「プリティガール」が織りなす傑作コメディです。

終盤には、当時ヒクソンに敗れ引退し俳優に転身した船木誠勝がレギュラーで出ています。小川もトホホでしたけど、船木の演技も目も当てられません。こーゆープロレスラーのスットコドッコイな演技を観る度に「プロレスってドラマじゃないんだナァ」と逆説的な証明がなされます。在るレスラーが「プロレスに筋書きが在るって?おいおい、俺たちが脚本なんか覚えられるわけないだろ!がっはっはっは」と云い放ったのは真実です。ま、兎も角、本当に毎週楽しみにしていたドラマでした。

此れまでの流れで、片瀬那奈ちゃんは年間2クールは連続ドラマにレギュラー出演するとの保障がありました。「プリティガール」では制作発表やオープニングでも稲森サンや米倉サンと同等の扱いで登場していましたし、「柚木さくら〜有森みさと〜荒木理恵子」と連なった那奈ちゃんの魅力的な助演振りを観て、次はいよいよ主演か?との期待が大きく膨らんでいました。ところが、此の「プリティガール」を最後に「女優・片瀬那奈」は唐突に沈黙します。いえ、女優ばかりでなく、グラビア・アイドルも勝手に卒業しちゃいます。当時の那奈ちゃんは「未だ二十歳」です。でも、本人にとっては「もう二十歳」だったのかもしれません。

僕たちがようやく「女優・片瀬那奈」の未来を本気で夢想した時、敢え無く片瀬那奈ちゃんは女優活動を休止しました。其れは、すぐには分らなかった。僕たちが気付いたのは、当然次回作が在るべきの2002年4月期にも7月期にも10月期にも、連続ドラマに「片瀬那奈の名前を見つけられなかった」時でした。「何だよ、今期も那奈ちゃんのドラマは無いのか、、、」と落胆し「其れじゃ、みーたん&さっちんのドラマでも観るか、、、」と予告映像を観た時に、聴き間違えるわけが無い声を聴いたのです。

片瀬那奈ちゃんは、歌手に転身していたのでした。


(小島藺子/姫川未亜)



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2010年05月09日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
中入りの肆:「2002」

GALAXY/TELEPATHY (CCCD)


2002年は、今後もつづく長い「片瀬那奈歴」に於いて最初のエポック・メーキングとなった時でした。簡潔に云えば、片瀬那奈は其れまでの四年間で築き上げたグラビア・アイドルやアイドル女優のキャリアを捨てたのです。

「プリティガール」を最後に、唐突に片瀬は女優活動を休止しました。そして、其れは後になって解った事実です。「プリティガール」終了後の2002年の春に、これまた突然の「グラビア卒業宣言」が発せられます。そして、此の年限りで「きれいなおねえさん」も降板します。そんな不穏な動きの中で、女性向けファッション誌を飾る那奈ちゃんの姿を多く見掛ける様にもなりました。明らかに、那奈ちゃんが変わってゆく予感が在ったのです。

ハッキリ云っちゃうと、どんなにシークレットで進行していても、片瀬那奈が歌手デビュウするってのはファンには衆知の事実でした。問題は「歌手に専念する」なんてトンデモな事を企んでいるなんて、小指の先ほども想定していなかった事なのだよ。僕は「那奈ちゃんが歌もやるのか。そりゃ好いね!プロモとか楽しみだナァ」なんぞとお気楽に考えていました。イベントも沢山やりそうだって情報も得て、本人に逢えるかも?なんてウキウキ気分でいたのです。よもや、女優活動を休止してまで音楽活動に専念していたとは、、、。

2002年12月4日、片瀬那奈は歌手デビュウします。そして、其れは「女優・片瀬那奈の封印」をも意味していました。トリプルA面と云う破天荒なデビュウ盤を前にして、僕は底知れぬ怒りが込み上げて来るのを押さえ切れませんでした。確かに、那奈ちゃんが歌ってくれたのは嬉しかった。でも、だからって女優をヤメちゃうなんて有り得ないじゃん!「歌手活動をするので、グラビアや女優は休止して専念します」って、アノですね、そんな事をヌカして実行した芸能人なんて居ないっす。何を考えてんのよさ、片瀬クン!と叫びたいっ。ボキの大切な「グラビア・アイドル女優・那奈ちゃん」を返して下さいっ。

そんな那奈ヲタの勝手な期待を完全無欠に叩き潰して、片瀬那奈は音楽活動に専念してしまいました。こんな風にファンを置いてけぼりにする存在を、僕は初めてリアルタイムで体験したのです。「おいおい、此れってビートルズがライヴをヤメちゃったとかゆー感じなんじゃまいか?」とドキドキしてしまったのです。でも、其れは冗談半分なお遊び気分でも在りました。

「歌手専念とか分け分んない事を云ってないで、女優も併行して、普通にアイドルでいて頂戴!」ってのが本音でした。ズバリと云いますけど、当時の僕は那奈ちゃんに「音楽活動専念」なんて誇大妄想的な期待なんかしていなかったのです。アイドルの余技として歌も歌うって感じの、よく有りがちなお気楽な企画だと思っていました。だって、歌手デビュウ当時の片瀬那奈は21才ですよ。そんな崖っぷちに立つ様な「歌手専念宣言」なんてする必要がないじゃありませんか。多くのファンだって、おんなじ気持ちだったと思います。勝手に活動の場を完全に変えてしまったのですから、其れまでに培ったファンに対する明らかな裏切り行為です。なのに、片瀬那奈は我を通してやってしまいました。よくもまぁ、事務所が許したもんです。那奈ちゃんは、恵まれてるよ。そして、其れも才能です。


(小島藺子/姫川未亜)


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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 013「神崎今日子」

Shine/REVENGE〜未来(あす)への誓い〜(初回)(CCCD)(DVD付)


 出演作:『こちら本池上署 2ndシーズン』第2話「被害者の傷跡」(TBS系)
 放映日:2003年4月21日(月曜日 20:00〜20:54) 視聴率「17.1%」


片瀬那奈ちゃんが音楽活動に専念した時代に、例外として唯一出演したのが「こちら本池上署 2ndシーズン」第2話です。ドラマ主題歌「Shine」を「歌手・片瀬那奈」が担当していたがゆえのスペシャルな企画でした。普通なら俳優も歌手もこなせるタレントさんなら「当たり前田の誰が一番強いか決めたらええんやっ!」とばかりに「ドラマ出演&主題歌担当はお約束」なのですが、片瀬那奈ちゃんは頑固なので、相乗効果を呼ぶそんな美味しい企画に乗ったのは此れだけです。

歌手デビュー曲で在る「GALAXY」は、テレビ朝日系連続ドラマ「逮捕しちゃうぞ」のオープニングテーマ曲でした。主演は同僚の「みーたん&さっちん」ですから、当然の流れで那奈ちゃんのゲスト出演も期待されたのですが、何故かゲストはボブ・サップ!何ゆえ那奈ちゃん関連ドラマは、プロレスラーを起用しまくるのでありましょうかっ?そんなこんなで、歌手デビューから約半年後に、ようやく実現したのが「神崎今日子」です。其れは、たった壱度きりの「女優兼歌手・片瀬那奈」を観れる貴重な作品となりました。「神崎今日子」は、水野真紀さん演じる「麻衣」の娘「とも」が通う保育園の先生です。間近に結婚を控え、幸せいっぱいな今日子先生は、在る日突然にひったくり被害に逢い大切な婚約指輪を奪われてしまいます。心に大きな傷を負い婚約者にも理解されず悩む今日子先生を救う為に、本池上署の面々が活躍し事件を解決し、今日子先生も婚約者と和解してめでたしめでたしってな感じのお話です。

ドラマ自体はコメディタッチなのですが、被害者役を演じる片瀬那奈ちゃんは徹頭徹尾シリアスです。前作「プリティガール」で魅せた明るい姿は消え去り、壱年後に垣間見せたのは大人っぽい路線でした。別に「片瀬那奈でなければならない必然性」は、役柄からは感じられません。初代と三代目の「きれいなおねえさん共演作」としても記憶される作品ですが、以前とは明らかに違う那奈ちゃんの演技に戸惑いを感じました。「アイドル女優・片瀬那奈」は、荒木理恵子と共に去っていました。此処に居るのは「歌手・片瀬那奈」が主題歌を歌うがゆえにゲスト出演した姿です。そして、僕は此の直後に生まれて初めて片瀬那奈ちゃんと逢います。「アイドル女優・片瀬那奈」を愛して止まなかった僕の目前に現れたのは「歌手・片瀬那奈」でした。其の瞬間に、僕の心は「片瀬那奈を音楽家として認識」します。もう二度と「アイドル女優・片瀬那奈」には逢えないのだと、ハッキリと分りました。那奈ちゃんは、変わってしまったのです。


(姫川未亜/小島藺子)



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2010年05月10日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
中入りの伍:「2003」

TELEPATHY(初回)(CCCD)(DVD付)


片瀬那奈が歌手活動に専念したのは公的な活動では、初実演の2002年11月から最後のフルサイズ実演を行った2004年7月までで、僅か壱年半強の短い期間でした。歌手時代をもう少し広く考えても、其れは「TELEPATHY」セッションが開始された2002年春からベスト盤が発売された2005年春までとなります。2002年初頭には未だ女優やグラビア活動も行っており2004年秋からは女優回帰しますので、片瀬那奈が丸一年間歌手に専念出来たのは2003年だけです。其の「第一期歌手時代」に関しては既に「片瀬那奈がきこえる」で詳しく全曲解説を行いましたので、そちらを参照して下さい。(尚、「片瀬那奈がきこえる」は「第一期歌手時代」の終幕で中断しておりますが、未だつづきがあります。)

2003年の世界で、片瀬那奈はコアなファンを除く一般人には「あの人は今?」と揶揄されておりました。ファンにとっては歌手になって其れまでとは比較にならない程に片瀬那奈本人と生で逢える機会が増えていたのですが、活動の場を何もかも変えてしまった片瀬那奈を世間が観る機会は逆に激減したのです。当時のTVレギュラーはBSの「真夜中の王国'03」のみ、CMも御馴染みだった「三代目きれいなおねえさん」は降板し、掲載誌もグラビアを卒業して「Ray」誌上で「Pieces of Rainbow」を連載していました。余りにも潔い方向転換です。毎月どころか毎週、いや毎日の様に那奈ちゃんに逢えていた2003年に、ガールフレンドから「未亜ちゃんが大好きなカタセさんって、最近ドラマに出ないけど、引退したの?」と真顔で云われたりもしました。

前述の通り片瀬那奈が2003年に演じたのは、あくまでも歌手活動のプロモーションとしてゲスト出演した「こちら本池上署 2ndシーズン」第2話のみです。其のひとときの夢を観た時に、2002年3月6日「プリティガール」最終回で女優・片瀬那奈は終ったのだと確認するしかありませんでした。こうなったら、思う存分に歌手活動を邁進してもらおうじゃまいかっ、と取り憑かれた様に現場に通う日々が続きます。そして、其の日々は輝いていました。

歌手として那奈ちゃんが僕たちの前に立ち続けた日々の記憶は、永遠に消えません。公式BBSに毎日の様に書き込みをして、出来得る限り現場に駆けつけ、多くの同志と知り合い夜通しで那奈ちゃん談義を交わし、うっかり「片瀬那奈全記録」を始める事になる「那奈ヲタ狂想時代」でした。片瀬那奈が歌手活動をしなかったなら、此処は絶対に存在していません。僕たちは、ステージで歌い踊る那奈ちゃんを全身全霊を賭けて愛しました。那奈ちゃんが「来てね!」と呼び掛ければ、僕たちは何処へでも駆けつけた。那奈ヲタにとって、最も甘く夢の様な時代でした。僕らの世界は、歌手・片瀬那奈を中心に回って居たのです。

嗚呼、其れなのに、翌2004年に再び片瀬那奈は僕たちに、「ジャイアント・スイングを炸裂」するのでした。


(小島藺子/姫川未亜)


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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 014「藤澤律子」

ラストクリスマス DVD-BOX


 出演作:『ラストクリスマス』全11話(フジテレビ系)
 放映日:2004年10月11日〜12月20日
     (毎週月曜日 21:00〜21:54、初回15分、最終回30分拡大)
     平均視聴率 21.6 %

 映像作品:ヴィデオ「ラストクリスマス」1〜6
      (ポニーキャニオン V-045942〜045947)2005年4月20日発売
      DVD「ラストクリスマス DVD BOX」
      (ポニーキャニオン PCBC50699 )2005年4月20日発売


約二年間歌手活動に専念した片瀬那奈ちゃんは、2004年秋に女優回帰しました。「プリティガール」から二年半、歌手時代に例外的にゲスト出演した「こちら本池上署 2ndシーズン」第2話からでも壱年半、かくも長き沈黙を経て「女優・片瀬那奈」は復活したのです。其の舞台は「月9」のレギュラー出演!と此れ以上無い待遇で、正に華々しい凱旋に思えました。然して其処で片瀬那奈ちゃんが演じた「藤澤律子」は、「プリティガール」まで培った「第一期女優時代」の面影など欠片も無い「クールビューティー」な役柄でした。「女優回帰=歌手活動停止」が既成事実となる中で、再び「片瀬那奈のイメージ戦略」は完全なる方向転換を余儀なくされていました。「藤澤律子」を演じる傍らで、那奈ちゃんは「AUBE」のイメージ・キャラクターとして大量にメディア露出します。其れ等に共通するのは「大人っぽいお嬢様路線」でした。「三代目きれいなおねえさん」は、其の呼称に反して「おもしろいおねえさん」な片瀬クンの魅力を観る者に強く印象づけましたが、女優回帰した「新生・女優・片瀬那奈」は本当の「きれいなおねえさん」に成り下がってしまったのです。

藤澤律子は、主人公である春木(織田裕二さん)が勤務する会社に関わる新進気鋭の若手イラストレーターで、美大時代の同級生であるデザイン部門の日垣(玉木宏さん)と共に仕事をしています。日垣は学生時代から4年越しで律子に想いを寄せていますが、律子は死んでしまった恩師で婚約者を忘れられずに拒否して来ました。其れでも日垣の一途な求愛に心を動かし、目出度くカップルになるのですが、亡くなった婚約者が託したニューヨーク行きに再び心が揺れて、、、てな恋愛ドラマを主人公たちと共に彩ってゆきます。天下の「月9」ブランドにも翳りが見えていたので、夢よもういちどとばかりに「東京ラブストーリー」の主役やスタッフを総動員して描いたベタベタなラブストーリーは、思惑通りに高視聴率を記録しました。

2004年夏に片瀬那奈ちゃんが女優回帰すると知り、当然乍ら「荒木理恵子」のつづきをあたくしは求めていました。歌手時代のステージでも明るく愉快な那奈ちゃんは不滅でしたから、また楽しい演技を魅せてくれると信じて疑わなかった。なのに、其処に居たのは「別に那奈ちゃんじゃなくたって誰でも出来そうじゃん」としか思えない「藤澤律子」でした。しかも、一本気な性格の片瀬クンは歌手活動に専念した時と同じ様に「今後は女優に専念する」と平然と云い放ったのです。

「こんなつまんない役の為に、片瀬那奈は歌手をヤメるのかっ」

底知れぬ怒りが込み上げて来ました。「片瀬那奈は一体どこまでファンの気持ちを踏みにじれば気が済むのだっ」と、「もう那奈ちゃんに振り回されるのは沢山だよっ」と、「てゆーか、こんなんじゃ片瀬那奈はおしまいじゃん!」と、長い那奈ヲタ歴で最大の危機的状況を迎えたのです。「あたくしが愛した片瀬那奈は、こんなもんじゃねーんだよっ」と荒ぶる想いに突き動かされ、PCに向かい「the diary of nana katase」を鬼の様に打ち込みました。2004年の終わりに、此処は突然、既に100記事を超えるブログとして公開されます。あたくしは「藤澤律子やAUBEが、那奈ちゃんのすべてではないのだ」と云いたかった。つまり、此処を創ったのは余りにも不甲斐ないと映った「藤澤律子」なのです。決して、那奈ちゃんの演技が稚拙だったわけでは在りません。逆に普通に上手く収まってしまったからこそ、あたくしは許せなかったのでしょう。此の路線でゆくと云うのなら、もう捨てられても構わないと思いました。「単なる美人女優」を求めて、那奈ちゃんを好きになったんじゃないんだ。折角満を持して女優回帰してくれたのに、此れじゃ悪夢じゃまいか。


(小島藺子/姫川未亜)



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2010年05月11日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
中入りの陸:「2004」

EXTENDED (CCCD)


2004年は、片瀬那奈歴に於いて最も激動の時です。此の年の始めには、間違いなく片瀬那奈は歌手でした。冠イベントの「777」を開始してステージとDJを披露し、同時進行でカヴァー企画の「Extended」セッションを連続リリースしていました。ところが、7月の実演を最後に公的な音楽活動は途絶えます。

翌8月に「10月期『月9』ドラマで片瀬那奈が女優回帰!」との衝撃情報が明かされます。カヴァー路線は明らかに失敗だと感じていましたし、そもそもアイドル女優としての那奈ちゃんを好きになったのですから「女優回帰」は歓迎すべき事です。でも、僕たちは二年間も歌手としての那奈ちゃんを追い続け、其の新たな魅力の虜にもなっていました。

「歌手時代を経た片瀬那奈が再び演じる」のに過大な期待を寄せずにいられないのは、ファンとしては当然でしょう。復帰作は「月9」のレギュラーです。先を急げば翌2005年の1月期「月9」にもゲスト出演乍ら片瀬は連投します。申し分の無い復帰の舞台が整っていました。

なのに、僕は落胆した。復帰作の「ラストクリスマス」を観て、我が目を疑いました。二年半の不在はドラマ界に於いて、すっかり片瀬那奈を忘れ去るには充分すぎました。女優をつづけていれば片瀬が座っていたはずのポジションには、もう既に代わりがいました。第一期女優時代の積み重ねは無かった事になり、片瀬那奈は壱から出直すしかなかったのです。

其れでも、片瀬の歩んだ道は決して無駄ではありませんでした。おそらく、歌手活動に専念した「女優としては一見まわり道」と思えた期間が無ければ、其の後の「怪優・片瀬那奈」はいません。でも、其れは時が経って振り返り解った事です。2004年の終わりに、僕は只只、悔しかった。クリスマスに奇跡の復活を遂げた「歌手・片瀬那奈」最後の勇姿を観て、心の底から「那奈ちゃん、女優なんかいいから歌手をつづけてくれよ!」と叫びました。藤澤律子よりも「Shine」を歌った那奈ちゃんの方が、圧倒的に輝いていた。「次のライヴはいつですか?」と訊いたら、那奈ちゃんは申し訳なさそうに「それは、こちらに訊いて」と青うにょ師匠を観た。「なるほどね、もう歌手活動は無いんだナ、、、」と思うしかなかった。夢は終りました。

僕たちは、またしても片瀬那奈に置き去りにされたのです。


(小島藺子/姫川未亜)


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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 015「岡元めぐみ」

不機嫌なジーン DVD-BOX


 出演作:『不機嫌なジーン』第4話〜第7話(フジテレビ系)
 放映日:2005年2月7日〜2月28日(毎週月曜日 21:00〜21:54)平均視聴率 14.3%

 映像作品:DVD「不機嫌なジーン DVD BOX」
      (ポニーキャニオン PCBC-50720)2005年7月29日発売


女優復帰作「ラストクリスマス」に続いて、2クール連続で「月9」に片瀬那奈ちゃんは登板しました。とは云え今回はゲスト出演で、物語の中盤に登場し儚く消えてゆくのでした。正式にクレジットされたのは、4話、5話、7話ですが、6話にもノン・クレジットの回想シーンで登場します。

「岡元めぐみ」は、主人公ジーン(竹内結子さん)の恋人「白石健一(黄川田将也さん)」のかつての同級生です。健一が親に頼まれて注文した花を受取りに行った花屋さんで店員をしていて、偶然に再会します。其の後もバスの車中でこれまた偶然に出逢ったりして幼馴染みですので距離が縮まってゆき、多忙なジーンに逢えずに振り回されていると感じためぐみは健一に「あたしの方が白石クンに合っていると思う」と告白します。ところが、めぐみと健一がデートしている現場に居合わせたジーンを見掛けた健一は、在ろう事かめぐみを置き去りにしてジーンを追いかけるのでした。なな、なんと、岡元めぐみの出番は、分けも分らずに置き去りにされた(ジーンはめぐみを認識しているけど、めぐみは健一が追いかけたのがジーンだとは知りません)場面で終ってしまうのです。物語はいきなりだナァで数年後に飛び、果たしてめぐみが其の後どうなったかは全く描かれません。

「おいおい、噛ませ犬かよっ」

前作「ラストクリスマス」同様に、別に片瀬那奈ちゃんでなくとも構わない役柄でした。女優回帰した事を喧伝するには「月9」に連投は最上級の高待遇だったでしょう。でも、其れは顔見せにしか思えませんでした。此のドラマでの片瀬那奈ちゃんの出演場面が終った直後に、追い打ちをかける様に「歌手・片瀬那奈」の完全終了を意味するベスト盤「RELOADED」が発表されます。最早、退路無し。片瀬那奈ちゃんは、女優として生きてゆかねばならないのです。其れなのに、復帰後に演じた「藤澤律子」も「岡元めぐみ」も、余りにも期待はずれだった。もしも歌手活動専念で空白だった二年半も女優を継続していれば、片瀬那奈ちゃんは其れ也のポジションに居たと思えました。現に2005年の世界では、かつては手下役だったハセキョーや後輩のみーたんが堂々とゴールデンで主演を張って居たのです。此の侭、片瀬那奈ちゃんは消えてゆくのでありましょうかっ。ま、そんなわきゃーなかったんですけどね。次作から、いよいよ「待ってました」とばかりに片瀬クンは躍動し始めるのでした。

余談ですが、此の作品には「キッちゃん」こと吉瀬美智子さんも出ています。ジーンの眞の相手役である南原(内野聖陽さん)が自宅マンションに連れ込む女性役なのですが、空き巣被害に逢っていて帰ってしまうチョイ役です。南原教授に「こんな状況だから、今夜は帰ってくれ」と云われ去り際に「せんせい、あたし今度、女優になるんですぅ〜」って云うのですけど、2010年の視点から観ると預言の様で興味深いですね。


(小島藺子)



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2010年05月12日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 016「緒方亜紀」

離婚弁護士II〜ハンサムウーマン〜 DVDBOX


 出演作:『離婚弁護士II〜ハンサムウーマン〜』全11話(フジテレビ系)
 放映日:2005年4月19日〜6月28日(毎週火曜日 21:00〜21:54、初回10分拡大版)
     平均視聴率 13.2%

 映像作品:DVD「離婚弁護士II〜ハンサムウーマン〜 DVD BOX」
      (ポニーキャニオン PCBC-60767)2005年9月28日発売


女優回帰した片瀬那奈ちゃんの三作目は、あまみん(天海祐希さん)主演の人気ドラマ「離婚弁護士」続編への登板となりました。壱作目でのミムラさん、スペシャル版での井上和香さんを引き継ぐ「間宮貴子法律事務所」の三代目受付嬢「緒方亜紀」としてレギュラー出演です。3クール続けて連続ドラマに起用され、AUBEのCMもヘビーローテーション、其れに連動した女性ファッション誌上への大量露出!と、一見すれば「片瀬那奈の再度の路線変更」は成功が約束されている様に見えました。然し乍ら、女優復帰後の二作では前述の通り「当たり障りの無い役柄」を演じた上に、今回は「前任者二人と比較されるポジション」への起用ですので、此処で何らかの結果を出さなければ厳しい状況だとも思えました。「復帰三作目でも凡庸な役柄ならばどうしよう?」と「此処が正念場だっ」と、大いに不安でした。

でも、其の杞憂は初回の登場場面を観ただけで消えます。あまみん演じる間宮先生がクライアントのお嬢様ゆえに渋々雇った「緒方亜紀」は、合コン命で占いと健康飲料に凝る「リーサルウェポン」でした。初っ端から諸先輩にタメ口を叩き大欠伸をかます豪快サンです。そうです、其の通りです。遂に、アノ第一期女優時代に魅せていた「楽しく愉快な那奈ちゃん」が帰って来たのです。単純にかつての路線に戻ったのでは無く、歌手時代や女優復帰後の大人しい路線も踏まえた上での爆裂ですので、其の衝撃度は倍増しました。「そう、此れだよ、此れを待っていたんだよ」と、大いに昂揚しました。

初回のゲストで内山理名ちゃんが出演しています。那奈ちゃんとは大親友の仲ですが、ドラマでは初共演でした。絡みはほとんどないものの、同じ画面に二人が映る姿には感慨深いものがあります。更に、主題歌はマブダチ星村麻衣ちゃんが担当しました。戸田恵子さん演じる「つや子さん」との掛け合いも楽しく、すべてが「女優・片瀬那奈」の眞の復活に花を添える美しいサポートと感じられました。そして、片瀬那奈ちゃんは怒涛の快進撃を開始します。単に第一期女優時代の路線へ回帰しただけではなかった。荒木理恵子から緒方亜紀までの三年間は無駄ではなかったのです。片瀬那奈ちゃんはファンを裏切る様な事は何らして来なかったのだと、ようやく僕は理解しました。そして其の瞬間に「遅いよ、遅過ぎるよっ」と云い放つ迫田七海ちゃんの声が、確かに聞こえたのです。夢は、終ってなどいませんでした。


(姫川未亜)



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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 017「菜穂美」

白田久子 Pink Diamond [DVD]


 出演作:『香港バタフライ』全4話(角川映画)
 公開日:2005年9月23日〜11月30日(ネット配信のみの Web Cinema)


「離婚弁護士2〜ハンサムウーマン〜」での緒方亜紀で遂に牙を剥いた片瀬那奈は、此の作品までの2005年夏に多くのTVバラエティ番組に出演しました。特に中学校時代の恩師やお母様も出演された「ウチくる !?」(2005年8月7日放映)は貴重です。南アフリカでの紀行番組「なな色のアフリカ」(2005年9月19日放映)や、女優歴に遺しても然るべき「残り夏」(30minutes鬼、2005年9月24日放映)での「不思議ちゃん演技」も忘れ難いでしょう。タイでロケーションした「AUBE」の夏ヴァージョンも軽やかな印象に変わり、多くの女性誌で表紙を飾ってもいました。そんな正に世界を駆け巡る片瀬那奈ちゃんが、満を持しての事実上の初主演作品に挑みます。7月に行われた過酷な香港ロケで創られた「香港バタフライ」は、新時代に対応したインターネット配信映画として公開されました。

片瀬那奈が演じる主人公「菜穂美」は、ツキに見放された女の子です。買ったばかりのパソコンは立ち上げた途端にウイルス感染し、勤めていた美容室(店長を演じるのはマギーさん)は閉店で解雇され、かつての同級生だった真紀子の誘いで香港へ向かいます。那奈ちゃん自身が「自分とは正反対な性格」と語った消極的な役柄ですが、藤澤律子や岡元めぐみに感じた不満は全く消えました。地味な役どころでも見事な存在感を感じさせる演技を片瀬那奈は成し遂げています。菜穂美と真紀子の掛け合いが絶妙で、恋愛映画と云うよりも二人の友情物語となっています。

只、此の作品は助演で在る「しらたひさこ(現・白田久子)サン」が演じた「みったらの真紀子」のキャラクターの方が、より魅力的にも映るのです。其れは、同じく女性二人の友情をテーマとした次作「いい男はマーケティングで見つかる」でも主演する那奈ちゃんを観て、更に深く印象づけられます。「もしかしたら、片瀬那奈は主役では眞の輝きを放てないのではないのか?」との疑念が膨らみました。


(姫川未亜)



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「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 018「松下梨絵」

いい男はマーケティングで見つかる


 出演作:『いい男はマーケティングで見つかる』全2話(日本テレビ系)
 放映日:2005年11月27日、12月4日(日曜日 1:20〜2:20、1:00〜2:00)


前作に引き続き、二週連続のスペシャル・ドラマ「いい男はマーケティングで見つかる」でも片瀬那奈は主演します。

「松下梨絵」は27才のキャリア・ウーマンで才色兼備ですが男運がありません。シェアリングしている友人(矢沢心さん)が結婚する事となり、彼女のマーケティングを元に理想の相手を探すのでした。那奈ちゃん&心ちゃんの二人芝居が中心で、酔っぱらって過激な台詞を吐き合ったり、平手打ちを交わし合うガチンコの喧嘩をしたりと大胆な演技が目を引きます。お見合い場面でのドレス姿や着物姿など、ファッションでも大いに楽しませてくれます。何しろ主演ですから全篇に渡って出ずっぱりなだけでもファンにとっては嬉しいドラマです。

只、前作「香港バタフライ」同様に相方で助演の矢沢心さんの方が明らかに目立っているのです。当時の感想でも「主演は心ちゃんじゃまいか」と書いた通り、完全に那奈ちゃんが食われてしまいました。心ちゃんはオープニングでの狂言回しを演じ、劇中でも梨絵の見初めた相手に惚れられてしまう美味しい役どころではあるのですが、二作続けての主演作で「相方に連敗した」と見えた片瀬那奈の姿に、ファンとして穏やかではいれません。番組公式ブログでの弾けまくる愉快で楽しいオフステージの那奈ちゃんを観て「何故、此の魅力が本編では活かされないのか?」と、もどかしく感じました。

確実にステップアップしている「女優・片瀬那奈」は、其れでも未だ未だ眞の才能を開花してはいなかったのです。


(姫川未亜)


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2010年05月13日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 019「豊原みどり」

芸能生活40周年記念


 出演作:『熟年離婚』全9話(テレビ朝日系)
 放映日:2005年10月13日〜12月8日(毎週木曜日 21:00〜21:54、初回15分拡大版)
     平均視聴率 19.2%


ネット配信映画とスペシャル・ドラマでの二つの主演作を経て、2005年10月期の連続ドラマにも片瀬クンはレギュラー出演します。此の「熟年離婚」は主演が渡哲也さんで、其の他の配役をみても完全なる「石原軍団ドラマ」でした。高視聴率を絶対待望されるドラマです。片瀬クンが演じた「豊原みどり」は渡さん演じる「豊原幸太郎」の次女ですから、天下の渡哲也とガチで共演しなければならない役どころでした。いやぁ〜、ワクワクしますねっ。

末娘のみどりは父親のコネで入社した会社で働くOLですが、恋人のバンドマンにゾッコンで、彼のバンド活動を金銭面も含めて全面支援しています。定年退職した夜に突然に妻・洋子(松坂慶子さん)から離婚を切り出された父親の幸太郎は、家を出る洋子の代わりに家事にトライし、うっかりみどりの部屋を掃除して恋人の存在を知り、更に帰宅したみどりのバッグからコンドームを発見し激怒します。みどりは当然乍ら「娘にだってプライバシーはあるのよっ、お父さん、最低!」と強く反発します。挙げ句に、みどりは妊娠していたのです。すぐさま幸太郎が家族を前にして、いきなり「みどりが妊娠したっ」と云い放つのは如何なものか?なんて思ったら此のドラマには付き合えません。幸太郎は、みどりの恋人・敦也(石原軍団の舎弟、渡邉邦門クン)を全く信用出来ないものの娘の為に何とかしようとするのですが、見事に空転しまくるのでした。

長女の律子(高島礼子さん)や長男の俊介(21世紀の裕次郎:徳重聡クン)もそれぞれ大きな問題を抱えていて、幸太郎お父さんは自分の離婚問題や子供達の難題などで悩みまくり孤軍奮闘します。様々なトラブルが「これでもかぁ〜、これでもかっ」と起こり捲る中で、みどりは煮え切らない敦也に見切りを付け、彼とは別れて生まれてくる子供は自分一人で育てる決心をするのでした。「お父さん、好きな人と別れるって、辛いことだね、、、」と泣き崩れる愛娘みどりを見た幸太郎はプライドをかなぐり捨て、敦也に頭を下げて「此の通りだっ、みどりと生まれてくる子供の事も考えてはくれないか」と嘆願するのですが、其の場に駆けつけたみどりは「お父さん、もういいよ」と敦也に別れを告げ、帰り道で倒れてしまうのでした、、、。

てな感じで終盤まで救い様の無い展開がつづくのですが、入院したみどりを見舞いに来た敦也は唐突に「俺はみどりを愛してるっ(キリッ!)」と変貌し、メジャー・デビューの話を反故にしてまで愛するみどりを選び、挙げ句の果てに「君の才能は捨て難いから結婚して子供が出来てもいいよ、契約しましょ」と手のひらを返されてプロへの道も開かれ「みどりさんも子供も俺に任せて下さいっ、団長!」と宣言し、団長もニンマリって大団円になってしまうのです。他の問題も全部すっかり解決しちゃって、めでたしめでたしってトンデモな最終回を迎えます。みどりちゃんは妊婦になっちゃってまして、おなかが大きな片瀬クンなんて初めて観ましたので「ファンには衝撃映像でしたよっ」てか、なんちゅー話なのよさ?ってツッコミどころが満載なので、DVD化されていないのが残念です。未亜たん入魂の「片瀬クンだけヴァージョン編集版DVD」で観直しただけでも、怪作だと断言出来ます。何もかもが「こんなの、あるわけないじゃん!」なのよさ。

関東では何度も20%超えを記録し平均でも19.2%と高視聴率でしたが、関西での人気が更に物凄く平均20%超えどころか最終回は30%を叩き出しました。制作者側はシリアスな作品のつもりだったのでしょうけど、個人的には爆笑しながら観ていたドラマです。片瀬クンの演技に関しては平均点以上をクリアしているものの、代表作と呼べる程ではなかったと思います。とは云え、研音主導作品ではない場に単身乗り込んで、並みいる豪華キャストの中でも存在感を遺したのですから、大いに評価出来るでしょう。確実に片瀬クンは、益々デカくなっていました。

てか、敦也の歌が物凄いっすね。「いい曲だねぇ〜、このまま、デビュー・シングルでイケルよ」とかオーデションで云われてる場面で、呑んでた酒を吹きましたよ。悪い事は云わないから、みどりちゃん、別れた方が好いよ。

敦也クンには、音楽的才能は欠片もないです。(キッパリ)


(小島藺子)


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