片瀬那奈から「果たし状」を叩き付けられた気分だ。「13日の金曜日」は、確かに在ったのです。公式サイトは、其れ以前から荒れ果てていて、最早修復不可能かと思われていました。
僕は、悔しかった。何にも出来ない「無力な僕」を憎んだ。僕が出来るのは、いつもの記録だけなんだ。「日々是片瀬」で、只観ているしか出来ないのだ。そんなことは初めから解っていたはずなのに、僕は哀しかった。
片瀬に新女性マネージャーが付き、毎日「日記」を更新する様になった。以前は三人体制だった「片瀬チーム」が、実質「シュガーちゃんひとり」になってから随分と時間が経ったな。新マネちゃんが加わったことで、シュガーちゃんは「チーフ・マネージャー」に昇進したわけだ。「たったひとりで片瀬那奈を守った実績」が認められたわけだが、最後に大いなる試練が待っていた。
例の件は、様々な裏事情が絡んだ「嫌らしい出来事」だ。そのうち「さかさま」で詳らかにしてもいいけど、あんまり「面白い話ではない」ぞ。調べれば調べるほど、「下らない話」しか出て来なかった。ひとことで云えば「金」だからナ。
公式サイトが生まれ変わって、様々なコンテンツも消えた。メルマガ配信も終わった。此れまでも、多くの過去が消された。より美しい未来の為に、綺麗なアルバムを残さなければならない。でも、昨日は在った。そーゆーのを克明に残しているあたくしの立場は、いよいよ危ういのです。もう、ガクブルっすよ。だから、アングラで遊んでりゃ好かったんだよ。もう遅い。「全記録」は、もうじき10萬アクセスなんだからナ。
「片瀬那奈の今」は、「片瀬マネ日記」が毎日伝えてくれる。此れからは、もう、あんな哀しいことなんて起こらないんだろう。「片瀬那奈全記録」の役目は、終わった。もう、あたくしは何も書かなくても好いんだ。片瀬那奈は、やっと自分の代弁者を得たのだから。そう思って、さっさと撤退しよう。面倒なことに巻き込まれるのは御免だ。
違う。全然、違ってるぞ。そもそも、あたくしは「片瀬那奈の広報」でも「片瀬那奈の代弁者」でも無い、只のファンなんだよ。あたくしは、「誰かに片瀬那奈を啓蒙したい」とか「片瀬那奈サイドに認めて欲しい」とか、そーゆー面倒なことは考えていないのだ。
単純に、片瀬那奈じゃなきゃダメなんだよ。他の誰でもなく、片瀬那奈を観ていたいだけ。だから、あたくしがやれるのは、此れまでとおんなじだ。毎日、淡々と記録する。そりゃ、情は在るさ、相手もあたくしも人間だもの。でも、スタンスは「演者と観客」のまんまだ。ずっとずっと、そうだ。
彼女にとって、いちファンにすぎないあたくしは「虫けら」みたいなモンだろう。だから、きっと、あたくしにとって、彼女は「カブトムシ」なのだ。此の世に「片瀬那奈」が存在する限り、僕たちの夏休みの宿題は、永遠におわらない。
初出「COPY CONTROL」 (小島藺子)