一夜明けても、KOKAMI @ network vol.9『僕たちの好きだった革命』初日の衝撃が消えないどころか、益々じわりじわりと効いて来ています。
此の舞台を、僕は東京で那奈公演、大阪で壱公演観る予定ですが、はっきり云って、
「全公演を観たい!」です。
其れ故に、しばらくは此の話題しか書けないと思いますので、悪しからず御了承下さいナ。
多くの公演に足を運ぶので、初日の目的は明確でした。其れは、
「何が起ころうと、決して、片瀬那奈から目を反らさない」
ってことです。
舞台では、ストーリーを展開する役者以外も其の場にいる限りは、常に何かをしていなければなりません。物語のヒロインで、しかもストーリーテーラー役も兼ねている「片瀬那奈」は、ほとんど舞台から消えることを許されない立場でした。
初舞台での此の大役が詳らかになった時、私はもしかしたら本人以上にプレッシャーを感じたのかもしれません。「少しくらいヘマやってもいいんだよ、那奈ちゃん」と思ってしまいました。
でも、彼女は想像を絶する舞台デビューを成し遂げてしまいました。「舞台女優・片瀬那奈」は、初舞台時に「完成形」として姿を現したのです。まるでザ・ビートルズのメジャー・デビュー時の様に、ジョージ・ハリスンのソロ・デビュー時の様に、彼女は既に出来上がっていました。
此の物語の主人公「山崎」を演じるのは、中村雅俊以外に考えられないと納得させられる程、鴻上尚史は彼の人生を主人公に重ねています。1969年から30年間眠りつづけ1999年に目覚めた「肉体は47歳なのに、心は17歳」と云う荒唐無稽なミュータント役は、中村だからこそ説得力が在りました。彼が熱く青春を語ると、僕たちは納得してしまうんです。だって、ぼくらはカースケを経験したのだから。
同じ様に、鴻上はヒロイン「小野未来」役は「片瀬那奈以外考えていなかった」と思います。物語は1969年、1999年、2007年とみっつの時代で進行するのですが、中心になるのは1999年です。其れは片瀬那奈が女優デビューした年なのです。当時17歳だった片瀬が、25歳になって「17歳を演じる」のです。
二幕目は、音楽が大きな要素となりますが、其処での片瀬によるダンス・パフォーマンスには圧倒されました。鴻上が彼女を起用したのは、「彼女が歌手時代に番組で共演していたからだ」と以前書きましたが、其の狙いはズバリ的中しました。あの躍動感は、片瀬那奈が歌手時代に女優活動を休止してまで、多くのステージを経験したからこそ成し得たものです。其ればかりか、実際の高校生時代にダンス部であったことや、現在でもプライヴェートでクラブで踊り狂っていることすらも含めた「必殺技」でした。
そして、其れが群衆シーンで行われたことに意味が在ったんです。おそらく、多くの観客は「片瀬のモーレツなパフォーマンス」には気付いていません。何せ彼女は、此のあたくしが一瞬見失う位、舞台いっぱいを使って踊っていたのです。心底シビレました。本当に、カッコ良かった。
だから、そもそも、ぼくらは、片瀬那奈のプライベートなんか知らなくっていいんだよ。彼女が「プライヴェートで遊んで居る現場」になんか行く必要は、全くないんです。
片瀬那奈は、其の人生のすべてを「舞台女優」デビューで晒しました。あの笑顔や、あのダンス、あの叫び、なにもかもが「僕たちが好きだった那奈ちゃん」だった。其のすべてを内包して、片瀬那奈は生まれ変わったんです。もう誰にも文句は云わせない。
怪優は、遂に覚醒した。
僕は嬉しくって、涙が止まらなくなりそうだよ。
初出「COPY CONTROL」 (姫川未亜/小島藺子)