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2006年06月25日

「夢みる歌謡曲」第1章の1:
片瀬那奈「DJ : NANA」

TELEPATHY(初回)(CCCD)(DVD付)


片瀬那奈の第一期歌手時代の音源は「RELOADED〜Perfect Singles〜」と云うベスト盤CDで、其の全シングル曲を容易に聴くことが出来ます。嬉しいことに大傑作アルバム「TELEPATHY (CCCD)」と、ミニ・アルバム「EXTENDED (CCCD)」も絶賛発売中で(出来ればCDで再発して欲しいのですけど)、この三枚を入手すれば「歌手・片瀬那奈」が目指した世界がほぼ完全に音源的には検証可能です。是非、お買い求め下さいナ。

さて、片瀬那奈が行った歌手活動とは、一体なんだったのでしょう?シングル全曲を収めた「Reloaded(2005)」を聴くと、その多様な音楽性と揺るぎない大衆性に驚かされます。片瀬那奈の音楽は、一貫して歌謡曲であろうとしながら、明らかに洋楽志向であり、到底「女優の余技」を超えています。事実、彼女は女優を休業して音楽活動に専念したのですよ。

そこまで真摯な歌手時代の片瀬が、ライヴで歌うだけではなく「DJ : NANA」として自ら皿を回して居た事実は、永遠に語り継がれるべきです。当時、その意味を理解出来なかったとしても恥じることは全く在りません。彼女が進み過ぎていただけです。

コアな洋楽ヲタとしても(一部で)知られる片瀬那奈は、明らかに新たな音楽を作ろうとしていました。それが、カイリー・ミノーグの歌謡曲化から始まったのは伝統でもあり、ある意味盲点だったのです。現在でこそ一般的になった「カイリーの翻訳」を、あの時点でやったのだからね。これだけでも歌謡曲史上に残る快挙です。ちなみにカイリーの元ネタは、何度でも云いますけど、マドンナです。

問題は、それまで有り得なかった洋楽の歌謡曲化が「片瀬那奈」によって実現したことです。洋楽者からは当然「パクリだ」と揶揄されました(あたくしもそのひとりでした)けど、先駆者ってのはそんなもんです。兎に角、片瀬の冒険なしには、以後の「日本語ダンス・ミュージック」の歴史は違っていました。

そして、唯一のフルアルバム「TELEPATHY(2003)」で展開された世界観には、目眩がしそうです。この作品はコアなハウス好きな片にさえ注目されましたけど「甘いナ」って云われましたね。当然ですよ、ソコを狙ったんだもん。それが「歌謡曲」なんだもん。でも、「歌謡曲」としては行き過ぎていたんだよね。で、今聴くと全然普通なんだけどな。(ぼそっ)

そんな片瀬那奈が到達したのが「Extended(2004)」でした。このカバー・アルバムにこそ「歌謡曲の謎」が詰まっています。先行シングルとして発売された「ミ・アモーレ」を自らリミックスしてライヴ前に流した(他は全部洋楽)「DJ : NANA」に、あたくしは「歌謡曲の未来」を観ました。そして、それはその通りになったよ。

片瀬那奈が、ふたたび歌うなら、またきっとそんな魔法が生まれるのさ。(つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子)



posted by 栗 at 01:08| YUMEKAYO | 更新情報をチェックする