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2006年06月25日

「夢みる歌謡曲」第1章の2:
片瀬那奈「MY LIFE」

Babe(通常)  (CCCD)


片瀬那奈の歌手デビュー作「GALAXY / TELEPATHY / FANTASY(2002)」は、明らかなカイリー・ミノーグ日本語化路線であり、「GALAXY」に関しては北京語盤(「Dun Dun Dun」容祖兒)と英語盤(「Dangerous To Me」Ladybird)もほぼ同時に発売されました。それだけカイリーの「Can't Get You Out of My Head(2001)」は革命的なヒットチューンだったのです。

面白いのは同じ楽曲でありながら、片瀬那奈だけが「GALAXY」と「TELEPATHY」の二曲で「Can't Get You Out of My Head」の翻訳を試みている点です。「Dun Dun Dun」と「Dangerous To Me」は「GALAXY」と「TELEPATHY」を足した様な出来映えになっていて、これは「Can't Get You Out of My Head」から片瀬那奈の二曲へ発展してから再び統合された様な印象を受けます。

もう一曲の「FANTASY」は、アニメの主題歌であった為かよりポップな路線になりましたが、後にアルバムに収録される際にアレンジが一新されます。この楽曲は、ユーロビート時代のカイリーを彷彿とさせるもので、デビュー三曲がカイリーへのオマージュであるのは疑う余地はありません。リアルタイムで洋楽のキラーチューンを翻訳するのは、ヒッパレ時代からの歌謡曲の常套手法です。さらに「GALAXY」と「TELEPATHY」のリミックスを収録した5曲入りのシングルは、avexのお家芸とはいえ、もはやミニアルバムとすら言える体裁です。しかもピクチャーレーベル6種封入り。内3種の追加プレス「ウインターヴァージョン」は公式告知なしのレア・アイテムです。

つづくセカンド・シングル「Babe(2003)」は、タイトルトラックこそ再びカイリーの「Love at First Sight(2001,2002)」の「完全なるショートケーキ」ですが、カップリングの三曲「MY LIFE」「for you」「Babe(Huge remix)」では、ダンスミュージックへの果敢な挑戦が試みられていました。

「Babe(Huge remix)」は2003年6月夭折した天才サウンドクリエーターHugeによるリミックスで、片瀬那奈と同い年の彼による斬新なこの作品はライヴ時代の片瀬那奈がセットチェンジの際に頻繁に流した為「テバサキ5のテーマ曲」としても知られています。「MY LIFE」「for you」の作詞は片瀬那奈自身が担当し、そのアレンジははっきり言えば「古いハウス」です。特に「MY LIFE」はマドンナに例えるなら「Erotica(1992)」を連想させます。10年掛かって、やっと歌謡曲がマドンナに追いついたとも言えるでしょう。そして、このまるで「Deeper and Deeper」を翻訳した様な楽曲で地団駄する片瀬那奈に、あたくしは限りないシンパシーを感じるのでした。(つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子)



posted by 栗 at 19:06| YUMEKAYO | 更新情報をチェックする