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2006年06月27日

「夢みる歌謡曲」第1章の4:
片瀬那奈「タイトル未定」

Necessary/EVERY***(初回限定盤)(CCCD)(DVD付)


現在の処、片瀬那奈唯一のフルアルバムである「TELEPATHY(2003)」は、歌手・片瀬那奈の金字塔となる傑作でした。それまでの三枚のシングルが何であったのか、そして片瀬那奈が目指す音楽とは何なのか、そのすべてが集約されたこの作品までの「一年余の期間(2002-4〜2003-7)」は、おそらく当初の予定通りに進められた綿密なプロダクションだったと思います。もし、片瀬那奈の音楽作品を一枚だけ選ぶとしたらCCCDと言うハンデこそあれ、迷わずこのアルバムを推します。捨て曲なしのそれぞれ独立した13トラックが、美しいトータル性を持って連なる流れにデビュー作で完成品を作ってしまった片瀬那奈の「強さ」と、それゆえの「不運」すら感じます。

ライヴ活動も軌道に乗り、アルバム発表後初となるシングルが9月に発売告知され、正に順風満帆に思えたのですが、このシングルが発売中止となったことから雲行きがおかしくなって行きます。結局10月に仕切り直しで発売された第四弾シングル「Necessary / EVERY***(2003)」は、当初の予告とは大きく違う作品となっていました。

9月10日に発売予定だった「タイトル未定」は、後に「Necessary」になるCMタイアップ曲に、カップリングとして初回盤には「他アーティストとのコラボレート作品」を、通常盤には「アルバム収録曲のリミックス音源」を収録すると公式発表されました。これぞ「TELEPATHY」以後を予感させるものとして計画されていたのは明らかです。しかし、実際に発売(10/16)されたシングルは、初回盤も通常盤も音源としては同じ新曲が入ったものでした。お得意のピクチャーレーベル3種も無く、その代わり(?)avexで5種のピンナップをシングル持参一枚につき1種ずつランダムに手渡しすると言う「前代未聞のキャンペーン」までやってしまいます。

しかも、延期したにも関わらずレコーディング時の片瀬那奈は「人生最大の風邪」をひいている状態。(その哀れな姿は、初回盤の付属DVDに収録されています。重病で鼻をすすりながら掠れた声でインタビューを受けるアイドルって、一体、、、。)楽曲は、片瀬那奈のシングルの中でもかなり上位に入る二曲です。「シングル最高傑作!」との声も多くありました。体調不良とはいえ、片瀬那奈のポテンシャルは揺るぎなかった。いや、でもね、DVDで悲惨な姿まで晒し、プロモも同作品映像をフルで収録すると言う「出血大サービス!」な展開(つまり、もう後がないっ!)には、一抹の不安を感ぜずにはおれない秋でした。(まだまだ、つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子)



posted by 栗 at 01:02| YUMEKAYO | 更新情報をチェックする