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2006年09月28日

「夢みる歌謡曲」第4章の5:
小美人と三人娘「恋のロープをほどかないで」

WINK ALBUM COLLECTION 1988-2000 アルバム全曲集


「愛が止まらない」(原題「Turn it into Love」)の作者である「ストック/エイトケン/ウォーターマン」は、ユーロビートを代表する作家チームであり、カイリーの他にも「バナナラマ」や「リック・アストリー」などに楽曲を提供し、すべて大ヒットさせていました。

この特定の作家チームによる量産型ヒット曲製造法は、別に彼らが発明したわけではありません。1950年代末期から1960年代前半にアメリカン・ポップスの多くを生み出した「ブリル・ビルディング」系のソングライター集団(ゴフィン&キング、マン&ウェイル、デイヴィッド&バカラック、リバー&ストラー、などなど)や、1960年代のモータウンでの「ホランド/ドジャー/ホランド」(HDH)とおんなじことをやったのです。「ストック/エイトケン/ウォーターマン」の場合は、特に「ホランド/ドジャー/ホランド」の影響が強く感じられますね。

かのビートルズ(レノン・マッカートニー)も「ブリル・ビルディング」系に影響されて「ソングライティング・チーム」を始めたわけですが、彼らの場合「演奏も歌も」全部自分たちでやっちまったのが違っていました。とはいえ、自作自演ならチャック・ベリーを始めとするロケンロール退屈男どもが、既にいました。1960年代を席巻した英国のビートルズとか米国のビーチ・ボーイズとかのバンドは、実は新しいことなんか何もやっていないのです。彼らはただ、それまであったモノを組み合わせただけです。しかし、「発明」とは「過去の遺産を研究し組み合わせを変えて行く」過程を経なければ、いくら天才を持ってしても起こりえないことだと、あたくしは思います。

「新世紀エヴァンゲリオン」が、すべての起源になった様な世界で、10年前に「エヴァ」を観た時のことを思い返してみましょう。あの作品は、正に「過去の遺産をコラージュ」したものだったのですよ。あたくしはソコに惹かれました。そして、その作品が、今やアニメに留まらず多くの作品の元になっているのです。それは「ガンダム」然りで、初代ガンダムが「すべての起源」なわけがないのです。それは「宇宙戦艦ヤマト」でも「ルパン3世」でもないし、「仮面ライダー」でも「ウルトラQ」でもなく、さらに言えば「初代ゴジラ」でさえも本当の「起源」ではありません。

だったら、答えのない起源を探るのは不毛なのでしょうか?あたくしは、そうは思っていません。マドンナが歌う「FEVER」がカヴァー曲だと知って聴いた片が、果たしてどれくらい居るのでしょう?もしも「XXはマドンナのパクリだ」とか思考停止発言をするのなら、「FEVER」のオリジナルを即答してはくれないか?おまえらは、マドンナのことなんか何にも分っちゃいないんだよ。そんな輩に「パクリ」なんて言われたら、(それがもし、単なる模倣であったとしても)真摯に対象を愛したコが「あまりにも不憫だ。」罵倒する前に「何故似てるのか?」と、その理由を考えてみた方が、きっと僕らは幸せになれる。ずっとずっと、あたくしは、そう思っています。(つづく)


初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)



posted by 栗 at 01:19| YUMEKAYO | 更新情報をチェックする