「Extended(2004年)」は、やはり大失敗作です。但し、シングルの「ミ・アモーレ」や「禁断のテレパシー」や、其の後のライヴでの「Extended コーナー」まで含めれば、成果は在りました。特にライヴに於ける早着替えは、其の全貌がDVDに記録されなかったがゆえに「伝説化」しました。あの「C-Girl」での奇跡は、あたくしたちの記憶の中にだけ在るのです。あたくしたちは、確かに「歴史の目撃者」になりました。
片瀬那奈に其れ以前より深くのめり込み、遂には「ゼンキロ」の管理人になって声援と罵倒を浴び続ける日々など、「GTOドラマスペシャル」を観た頃には予想もしておりませんでした。キャンギャルを辞めて、女優へと進んだ片瀬那奈に出逢える機会など無いと思っていました。現に、歌手転向以前に彼女がファンの前に公的に現れたの事は、ほとんど在りません。舞台でもやってくれれば別ですが、基本的に女優さんがファンと直接交流することはなかなかないのです。(だから、ミクロちゃんみたいに、そーゆー機会を作り、一生懸命に交流するコはエライと思う。)
「俳優さんがCDを出すのはファン・サービスだ」と云ったのは、ナンシー関サンです。曰く「歌手と違って役者のファンは自分がお金を出す機会が圧倒的にないから、其の捌け口としてCDを出す。するとファンは確かに対象に対して何かをしていると云う気持ちになれるのだ。(うろおぼえの大意)」あたくしも其の通りだと思ったし、片瀬那奈が歌をやると知った時には「もしかしたら逢えるかも、でもさっさと女優にもどれ」くらいな気分でした。其れが、怒涛の展開へと進んでしまいます。毎日、片瀬那奈に逢える日々がやって来たのでした。あの時代がなければ、其の後のあたくしたちはなかった。
さてさて、「Extended」がダメだってのは、片瀬那奈が原曲に忠実に歌い過ぎているからなのです。其れだけ彼女は器用なのですが、デビュー曲「GALAXY」が其のオリジナルを凌駕した片瀬那奈のオリジナルに聴こえるのに、「Extended」はオリジナル・ヴァージョンをなぞっただけとも云える歌唱なのです。はっきり云えば「カラオケ那奈ちゃん」になってしまいました。色んな声を出せるのは、流石は女優サンなのですが、「モノマネじゃん」と云われても仕方が無いです。
小泉今日子の「木枯しに抱かれて」を歌って、レコーディング・アーティストとしての片瀬那奈は終わってしまいました。無念です。只只、無念です。其れが彼女の意志だったのではないことが分っているがゆえ「何故カヴァー路線へ行かねばならなかったのか?」が解せません。小泉サンに関しては、とても此のスペースでは語り尽くせません。此処での主人公は片瀬那奈です。だから、其れは、また別の話です。
(第5章、STOP,)
「夢みる歌謡曲」第5章:テレビの中に(2006-11-22、2007-11-24〜26)
取材・文:未亜
語りまくり:イコちゃん(本物)
(文中、敬称略)
☆予告☆
いよいよ佳境に入りました。次章「月のおんな」を刮目して待て!!
初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)