
1998年2月6日に、カール・ウィルソンが肺がんの為に51歳で亡くなりました。それで、ブライアン・ウィルソンは正式にビーチ・ボーイズの解散を決めて、ソロ活動へ移行しました。アル・ジャーディンは、カール・ウィルソンが亡き後もビーチ・ボーイズを続行していたマイク・ラヴと対立して、ビーチ・ボーイズを去りました。「ビーチ・ボーイズ」の商標を持っていたマイク・ラヴは、ブルース・ジョンストンと初期メンバーだったデイヴィッド・マークスと共に、ビーチ・ボーイズとして懐メロ・ライヴを続けていて、ビーチ・ボーイズは3分裂してしまったのです。カール・ウィルソンは、1965年にブライアン・ウィルソンがライヴ活動から抜けた後にはライヴの音楽監督をやっていて、1967年にアルバム「SMiLE」が頓挫した後は、ブライアン・ウィルソンに代わって実質的にはビーチ・ボーイズのリーダーとして活躍していました。そんなカール・ウィルソンが亡くなった事によって、ビーチ・ボーイズは3分裂してしまい、幾らマイク・ラヴとブルース・ジョンストンとデイヴィッド・マークスが「ビーチ・ボーイズ」を名乗っていても、事実上は解散してしまったのと同じ事となったのです。それで面白いのは、マイク・ラヴとブルース・ジョンストンとデイヴィッド・マークスによる「ビーチ・ボーイズ」と、アル・ジャーディンによる「ビーチ・ボーイズ・ファミリー&フレンズ(マイク・ラヴの横槍で「アル・ジャーディン・ファミリー&フレンズ」に改名)」と、ブライアン・ウィルソンによる「ブライアン・ウィルソン・バンド」は、ツアー・スケジュールがバッティングしない様に3派で調整していた事です。そして、ブライアン・ウィルソンの娘であるカーニー・ウィルソンとウェンディ・ウィルソンは、父親であるブライアン・ウィルソンのバンドでも、親戚のオジサンであるマイク・ラヴたちのバンドでもなく、アル・ジャーディンのバンドに加入してライヴ活動をしていたのです。
ビーチ・ボーイズとしてカール・ウィルソンが最後に参加したアルバムは、1996年8月19日にリリースされたアルバム「STARS AND STRIPS VOL. 1」で、それはビーチ・ボーイズの楽曲をカントリー界の大物歌手が歌って、ビーチ・ボーイズはコーラスで参加しているだけの作品でした。かつて「GOD ONLY KNOWS」や「GOOD VIBRATIONS」でリード・ヴォーカルを務めて、幻のアルバム「SMiLE」用だった「CABINESSENCE」や「SURF'S UP」などでもリード・ヴォーカルを務めて、当時としては最新ヒット曲であった「KOKOMO」でもサビで歌っていたカール・ウィルソンの美声が、単なるバック・コーラスでしか聴けないアルバムが遺作となってしまったのは、とても残念な事でした。ところが、カール・ウィルソンが亡くなって2年後の2000年になって「ベックリー・ラム・ウィルソン」名義のアルバム「LIKE A BROTHER」がトランスペアレント・ミュージックからリリースされたのです。このアルバムは、アメリカのジェリー・ベックリーと、シカゴのロバート・ラムと、ビーチ・ボーイズのカール・ウィルソンの3人によるスーパー・グループによる作品でした。つまり、このアルバム「LIKE A BROTHER」が、カール・ウィルソンの遺作となったのです。この3人は、1995年にハリー・ニルソンのトリビュート・アルバム「FOR THE LOVE OF HARRY:EVERYBODY SINGS NILSSON」に収録された「WITHOUT HER」のカバーで初登場していて、そのトリビュート・アルバムにはブライアン・ウィルソンも「THIS COULD BE THE NIGHT」のカバーで参加していました。アルバム「LIKE A BROTHER」の内容は、1「TODAY」、2「FEEL THE SPIRIT」、3「I WISH FOR YOU」、4「RUN DON'T WALK」、5「WATCHING THE TIME」、6「LIFE IN MOTION」、7「SHELTERING SKY」、8「THEY'RE ONLY WORDS」、9「WITHOUT HER」、10「LIKE A BROTHER」の、全10曲入りです。
このアルバム「LIKE A BROTHER」は、日本盤では、11「STANDING AT YOUR DOOR」、12「BLUE AFTER ALL」、13「IN THE DARK」の3曲がボーナス・トラックとして加わった全13曲入りとなっています。カール・ウィルソンが曲作りに関わっているのは、3「I WISH FOR YOU」、4「RUN DON'T WALK」、8「THEY'RE ONLY WORDS」、10「LIKE A BROTHER」の4曲で、他の楽曲はボーナス・トラックも含めてジェリー・ベックリーとロバート・ラムが共作も含めて書いていて、前述のハリー・ニルソンのカバーも収録されています。カール・ウィルソンがリード・ヴォーカルを担当しているのは、1「TODAY」、3「I WISH FOR YOU」、4「RUN DON'T WALK」、8「THEY'RE ONLY WORDS」、10「LIKE A BROTHER」と自作曲を中心とした5曲で、他にもジェリー・ベックリー作の、5「WATCHING THE TIME」と、同じくジェリー・ベックリー作の、7「SHELTERING SKY」の2曲で、ジェリー・ベックリーとロバート・ラムと共に「ベックリー・ラム・ウィルソン」として3人で歌っています。本編全10曲中7曲でカール・ウィルソンによる伸びやかなヴォーカルが聴けて、勿論他の3曲でもコーラスで参加しています。このアルバム「LIKE A BROTHER」がリリースされなければ、繰り返しますが、カール・ウィルソンの遺作アルバムはビーチ・ボーイズのアルバム「STARS AND STRIPS VOL. 1」になっていたわけで、そうならなかっただけでも価値があります。カール・ウィルソンの歌声は、このアルバム「LIKE A BROTHER」の後にも、2004年にリリースされたブライアン・ウィルソンのソロ・アルバム「GETTIN' IN OVER MY HEAD」に収録された「SOUL SEARCIN'」(ビーチ・ボーイズとしてレコーディングした曲からカール・ウィルソンのリード・ヴォーカルだけを抽出してバッキング・トラックを新たにレコーディングした楽曲)や、2010年にリリースされたアル・ジャーディンのソロ・アルバム「A POSTCARD FROM CALIFORNIA」に収録された「DON'T FIGHT THE SEA」(バーチャルでビーチ・ボーイズの5人による歌声が聴ける)などで聴く事が出来ます。
(小島イコ)
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