
1990年代後半に、ブライアン・ウィルソンはアンディ・ペイリーとのセッションを行っていて、そのレコーディングにはビーチ・ボーイズの他のメンバーも参加していました。その通称「アンディ・ペイリー・セッション」を元にして、ビーチ・ボーイズの新作アルバムを制作する予定でしたが、カール・ウィルソンが肺がんになった事などから頓挫しています。そうこうしている内に、マイク・ラヴとブルース・ジョンストンはビーチ・ボーイズの初期にアル・ジャーディンの代役でメンバーだったデイヴィッド・マークスの3人でビーチ・ボーイズを名乗る様になり、アル・ジャーディンはお払い箱となって、ビーチ・ボーイズは「ブライアン・ウィルソン」と「マイク・ラヴ&ブルース・ジョンストン&デイヴィッド・マークス」と「アル・ジャーディン」と3分裂してしまいました。1998年2月6日にカール・ウィルソンが51歳で亡くなると、3分裂は決定的となってしまいます。そして、1998年6月16日には、ブライアン・ウィルソンのソロ・アルバム「IMAGINATION」がジャイアントからリリースされたのです。ブライアン・ウィルソンは1988年に初のソロ・アルバム「BRIAN WILSON」をサイアからリリースしていて、1990年と1991年にはサイアからの2作目のソロ・アルバム「SWEET INSANITY」を完成させたもののリリースを見送られて、1995年にはセルフ・カバー・アルバム「I JUST WASN'T MADE FOR THESE TIMES」をMCAからと、ブライアン・ウィルソン&ヴァン・ダイク・パークス名義の「ORANGE CRATE ART」をワーナーからリリースしていました。故に、公式盤としてブライアン・ウィルソンが新作オリジナル・アルバムをリリースしたのは、1988年のアルバム「BRIAN WILSON」以来2作目と云う事になります。ビーチ・ボーイズは1996年にカントリー界の大物にリード・ヴォーカルを任せたセルフ・カバー・アルバム「STARS AND STRIPS VOL. 1」をブライアン・ウィルソンとジョー・トーマスの共同プロデュースでリリースしていたので、その流れでこのソロ・アルバム「IMAGINATION」も二人で共同プロデュースしています。
アルバム「IMAGINATION」の内容は、1「YOUR IMAGINATION」、2「SHE SAYS THAT SHE NEED ME」、3「SOUTH AMERICAN」、4「WHEN HAS LOVE BEEN?」、5「KEEP AN EYE ON SUMMER」、6「DREAM ANGEL」、7「CRY」、8「LAY DOWN BURDEN」、9「LET HIM RUN WILD」、10「SUNSHINE」、11「HAPPY DAYS」の、全11曲入りで、日本盤には、12「YOUR IMAGINATION」のアカペラ・ヴァージョンが加えられた全12曲入りです。作者は、ブライアン・ウィルソンとジョー・トーマスとスティーブ・ダールの共作が1曲(「YOUR IMAGINATION」)、ブライアン・ウィルソンとラス・ティテルマンとキャロル・ベイヤー・セイガーの共作が1曲(「SHE SAYS THAT SHE NEED ME」)、ブライアン・ウィルソンとジョー・トーマスとジミー・バフェットの共作が1曲(「SOUTH AMERICAN」)、ブライアン・ウィルソンとジョー・トーマスとJ・D・サウザーの共作が1曲(「WHEN HAS LOVE BEEN?」)、ブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴとボブ・ノーバーグの共作が1曲(「KEEP AN EYE ON SUMMER」)、ブライアン・ウィルソンとジョー・トーマスとジム・ペテリックの共作が1曲(「DREAM ANGEL」)、ブライアン・ウィルソンが2曲(「CRY」、「HAPPY DAYS」)、ブライアン・ウィルソンとジョー・トーマスの共作が2曲(「LAY DOWN BURDEN」、「SUNSHINE」)、ブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴの共作が1曲(「LET HIM RUN WILD」)となっています。ブライアン・ウィルソンは、リード・ヴォーカル、ハーモニー&バック・ヴォーカル、キーボード、ピアノ、オルガン、ドラムスを担当していますが、その他のレコーディング・メンバーはジョー・トーマスが用意したカントリー界の凄腕セッション・ミュージシャンで固めていて、その辺が評価の分かれるところです。個人的には、ブライアン・ウィルソンが新曲で勝負しているので嫌いではありません。
先ず目を引くのが、2曲のビーチ・ボーイズのセルフ・カバー(「KEEP AN EYE ON SUMMER」、「LET HIM RUN WILD」)で、特に「LET HIM RUN WILD」はブライアン・ウィルソン自身がビーチ・ボーイズでのレコーディングに納得していなかったので、ここで取り上げたのでしょう。キャロル・ベイヤー・セイガーが作詞した「SHE SAYS THAT SHE NEED ME」も、元々は1965年頃にビーチ・ボーイズ用に書いた曲が元になっていて、ブライアン・ウィルソンの単独作の「HAPPY DAYS」にも、1967年のビーチ・ボーイズの幻のアルバム「SMiLE」収録予定曲「ON A HOLIDAY」や、1970年の未発表曲「MY SOLUTION」などの断片を入れていたり、J・D・ザウザーが共作者として関わっている「WHEN HAS LOVE BEEN?」など、聴きどころはあります。確かにバックのミュージシャンはブライアン・ウィルソンの曲には合っておらず、矢鱈と共作者としても名を連ねているジョー・トーマスが出しゃばり過ぎな感じもしますが、やはり、この歌とコーラスはブライアン・ウィルソンでなければ作りえない魅力があります。そして、亡くなった弟で、自分の代わりにビーチ・ボーイズを守り続けてくれたカール・ウィルソンに捧げた「LAY DOWN BURDEN」は、涙を誘う名曲です。何よりも、トンデモ精神科医の洗脳が解けたブライアン・ウィルソンが、こうして復活しただけで充分だと思いました。このアルバム「IMAGINATION」は、全米88位・全英30位とイマイチな成績ですが、シングル・カットした「YOUR IMAGINATION / HAPPY DAYS」は全米アダルト・コンテンポラリー・チャートで20位まで上がっています。評価も低いものの、このアルバムをリリースした事によって、ブライアン・ウィルソンは完全復活へと向かうのです。それは、スタジオ・アルバムだけではなく、頑なに拒否していたライヴ・ツアーを行ったり、幻のアルバム「SMiLE」を再構築したりと、一時は廃人同然だと云われていた人間が出来る範疇を超えたものとなるのでした。そう云った意味では、とても重要な作品です。
(小島イコ)
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