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2026年01月16日

「ポールの道」#974「BEAT THE BEATLES」
#023「HOLLAND」

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ドラッグ漬けで音楽活動もままならなかったリーダーのブライアン・ウィルソンに代わって、弟であるデニス・ウィルソンやカール・ウィルソンが主導権を握っていた1970年代前半のビーチ・ボーイズですが、当時のマネジャーだったジャック・ライリーの発言権も強くなって迷走していました。1972年リリースのアルバム「CARL AND THE PASSIONS “SO TUGH”」では、ジャック・ライリーと確執があったブルース・ジョンストンが脱退してしまい、デニス・ウィルソンは右腕の大怪我でドラムスを叩けなくなったので、カール・ウィルソンの人脈から、黒人で元・フレイムのヴォーカルのブロンディ・チャップリンとドラマーのリッキー・ファターを新たにメンバーを加えたものの、全米50位・全英25位と微妙な成績になっていました。そして、ジャック・ライリーが環境を変えれば良いレコードが作れるだろう、と思い付いて、次作アルバムはオランダでレコーディングする事になってしまったのです。ブライアン・ウィルソンは飛行機に乗りたくないとごねて、3度目でようやくオランダへと向かいました。そうしてオランダでレコーディングしたので、タイトルはズバリ「HOLLAND」と云う単純明快なアルバムを、1973年1月8日にブラザー/リプリーズからリリースしました。結果から云えば、この移籍第4弾で通算22作目のアルバム「HOLLAND」は、全米36位・全英20位と、そこそこの成績となっています。内容は、A面が、1「SAIL ON, SAILLOR」、2「STEAMBOAT」、3「CALIFORNIA SAGA / BIG SUR」、4「CALIFORNIA SAGA / THE BEAKS OF EAGLES」、5「CALIFORNIA SAGA / CALIFORNIA」で、B面が、1「THE TRADER」、2「LEAVING THIS TOWN」、3「ONLY WITH YOU」、4「FUNKY PRETTY」の、全9曲入りです。が、しかし、このアルバム「HOLLAND」には「MT. VERNON AND FAIRYWAY(A FAIRY TALE):A FAIRY TALE IN SEVERAL PARTS」と題されたEPが付いていて、そちらは、A面が、1「MT. VERNON AND FAIRYWAY - THEME」、2「I'M THE PIED PIPER - INSTRUMENTAL」、3「BETTER GET BACK IN BED」、4「MAGIC TRANSISTOR RADIO」で、B面が、1「I'M THE PIED PIPER」、2「RADIO KING DOM」の、全6曲入りです。

アルバム「HOLLAND」本編の作者は、ブライアン・ウィルソンとジャック・ライリーとレイ・ケネディとタンディン・アルマーとヴァン・ダイク・パークスの5人の共作(とは云えおそらくブライアン・ウィルソンとヴァン・ダイク・パークスが中心)が1曲(「SAIL ON, SAILLOR」)、ブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴとジャック・ライリーの共作が1曲(「FUNKY PRETTY」)、デニス・ウィルソンとジャック・ライリーの共作が1曲(「STEAMBOAT」)、カール・ウィルソンとジャック・ライリーの共作が1曲(「THE TRADER」)、デニス・ウィルソンとマイク・ラヴの共作が1曲(「ONLY WITH YOU」)、マイク・ラヴが1曲(「CALIFORNIA SAGA / BIG SUR」)、アル・ジャーディンとリンダ・ジャーディンとロビンソン・ジェファーズの共作が1曲(「CALIFORNIA SAGA / THE BEAKS OF EAGLES」)、アル・ジャーディンが1曲(「CALIFORNIA SAGA / CALIFORNIA」)、カール・ウィルソンとブロンディ・チャップリンとリッキー・ファターの共作が1曲(「LEAVING THIS TOWN」)で、プロデュースはビーチ・ボーイズ名義です。リード・ヴォーカルは、カール・ウィルソンが2曲(「THE TRADER」、「ONLY WITH YOU」)、デニス・ウィルソンとカール・ウィルソンが1曲(「STEAMBOAT」)、マイク・ラヴが1曲(「CALIFORNIA SAGA / SUR」)、マイク・ラヴとアル・ジャーディンが1曲(「CALIFORNIA SAGA / THE BEAKS OF EAGLE」)、ブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴが1曲(「CALIFORNIA SAGA / CALIFORNIA」)、ブロンディ・チャップリンが1曲(「SAIL ON, SAILLOR」)、ブロンディ・チャップリンとリッキー・ファターが1曲(「LEAVING THIS TOWN」)、カール・ウィルソンとマイク・ラヴとアル・ジャーディンとブロンディ・チャップリンの4人で1曲(「FUNKY PRETTY」)です。作者としてマネジャーだったジャック・ライリーが半数近い4曲にクレジットされているのが、当時のビーチ・ボーイズを象徴しています。おそらく4曲共に彼以外にクレジットされているのが、本当の作者でしょう。

シングル・カットは、1973年1月29日に「SAIL ON, SAILLOR / ONLY WITH YOU」が全米79位、同年4月16日に「CALIFORNIA SAGA(CALIFORNIA) / FUNKY PRETTY」が全米84位と、相変わらずピリッとしない成績でした。そして、オマケで付いていたEP「MT. VERNON AND FAIRYWAY(A FAIRY TALE):A FAIRY TALE IN SEVERAL PARTS」は、6曲全てがブライアン・ウィルソン作で、「I'M THE PIED PIPER - INSTRUMENTAL」と「I'M THE PIED PIPER」がカール・ウィルソンとの共作で、「RADIO KING DOM」がジャック・ライリーとの共作となっています。12分余りのラジオ・ショーの様な出来栄えで、ほとんどがジャック・ライリーによるナレーションで進行されています。そのナレーションをなくした音楽のみの音源は、1993年に箱「GOOD VIBRATIONS:THIRTY YEARS OF THE BEACH BOYS」に「FAIRY TALE MUSIC」として4分余りが収録されています。本編では、久しぶりにブライアン・ウィルソンとヴァン・ダイク・パークスが共作している「SAIL ON, SAILLOR」と、ブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴが共作した「FUNKY PRETTY」と、最初と最後にはキメているし、組曲である「CALIFORNIA SAGA」も新機軸だし、カール・ウィルソンが歌う「THE TRADER」と「ONLY WITH YOU」もイイ感じです。EPに関しては期待外れではありますが、ブライアン・ウィルソンがまだ音楽を制作出来るとの証明にはなっています。このアルバム「HOLLAND」でのジャック・ライリーのやりたい放題に呆れて、経歴詐称も明るみに出て、実質的にはブライアン・ウィルソンに代わってリーダーとなっていたカール・ウィルソンは、遂にジャック・ライリーを解雇しています。アルバム「HOLLAND」は、1990年に単体でCBSから、2000年にキャピトルから前作アルバム「CARL AND THE PASSIONS “SO TUGH”」と2CDでCD化されています。「2 in 1」ではなく2枚組となっているのは、前作とこちらのアルバム「HOLLAND」にEPも足すと、CD1枚には収まらないからです。

2022年12月2日には、アルバム「CARL AND THE PASSIONS “SO TUGH”」とアルバム「HOLLAND」の拡張盤である「SAIL ON, SAILLOR 1972」がリリースされています。CD6枚組の箱は全105曲入りですが、通常盤2CD全45曲入りも出ておりますので、そのCD2を紹介します。1〜9は、アルバム「HOLLAND」全9曲のリマスター音源で、10〜15はオマケのEP「MT. VERNON AND FAIRYWAY(A FAIRY TALE):A FAIRY TALE IN SEVERAL PARTS」全6曲のリマスター音源です。その後はボーナス・トラックで、16「WE GOT LOVE」、17「HARD TIME」、18「CARRY ME HOME」、19「CALIFORNIA SAGA(THE BEAKS OF EAGLES)」シングル・ミックス、20「CALIFORNIA SAGA(CALIFORNIA)」シングル・ミックス、21「SAIL ON, SAILLOR」2022年ミックス、22「HOLLAND PROMO 1」、23「SAIL ON, SAILLOR」1975年ライヴ・ヴァージョンの、全23曲入りとなっております。ちなみに、6CDの箱には他にライヴ音源とセッション音源が多く収録されていますが、完全にマニア向け音源集です。当時のライヴ音源を聴くと、1960年代前半のヒット曲は余り演奏しないで、1966年のアルバム「PET SOUNDS」以降のアルバムからの曲が多いセットリストとなっていて、それで1973年11月19日にはライヴ・アルバム「THE BEACH BOYS IN CONCERT」(LP2枚組全20曲入り)をリリースする事となるのです。そして、この箱「SAIL ON, SAILLOR」に収録されたライヴ音源では、ローリング・ストーンズの「JUMPIN' JACK FLASH」と云った些かビーチ・ボーイズのイメージとは違ったカバー曲も演奏していました。但し、ビーチ・ボーイズは1965年のアルバム「BEACH BOYS' PARTY!」のセッションでは既にローリング・ストーンズの「(I CAN'T GET NO)SATISFACTION」を明るくカバーしていたので、ローリング・ストーンズの曲でも、ビーチ・ボーイズ色に染めてしまっていたのでした。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする