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2026年01月06日

「ポールの道」#964「BEAT THE BEATLES」
#013「SMiLE」

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1966年5月16日にリリースされたビーチ・ボーイズのアルバム「PET SOUNDS」は、全米10位・全英2位と云う立派な成績を残しています。ところが、バカなレコード会社のキャピトルは全米10位では納得しておらず、なんとアルバム「PET SOUNDS」のリリースから僅か2か月足らずの同年7月5日にビーチ・ボーイズの初めてのベスト・アルバム「THE BEST OF BEACH BOYS」をリリースしてしまったのです。ベスト・アルバム「THE BEST OF BEACH BOYS」米国盤の内容は、A面が、1「SURFIN' U.S.A.」、2「CATCH A WAVE」、3「SURFER GIRL」、4「LITTLE DEUCE COUPE」、5「IN MY ROOM」、6「LITTLE HONDA」で、B面が、1「FUN, FUN, FUN」、2「THE WARMTH OF THE SUN」、3「LOUIE, LOUIE」、4「KISS ME, BABY」、5「YOU'RE SO GOOD TO ME」、6「WENDY」の、全12曲入りです。英国盤では選曲が違っていて、A面が、1「SURFIN' SAFARI」、2「SURFIN' U.S.A.」、3「LITTLE DEUCE COUPE」、4「FUN, FUN, FUN」、5「I GET AROUND」、6「ALL SUMMER LONG」、7「IN MY ROOM」で、B面が、1「DO YOU WANNA DANCE?」、2「HELP ME, RHONDA」、3「CALIFORNIA GIRLS」、4「BARBARA ANN」、5「YOU'RE SO GOOD TO ME」、6「SLOOP JOHN B.」、7「GOD ONLY KNOWS」の、全14曲入りです。どう考えても英国盤の方がまともな選曲で、全米首位!となった「I GET AROUND」と「HELP ME, RHONDA」も英国盤には収録されているし、年代順に並べてあります。と云うか、本家である米国キャピトル盤の選曲や曲順が出鱈目過ぎます。ところが、このいい加減な米国盤ベスト・アルバム「THE BEST OF BEACH BOYS」が全米8位となり、アルバム「PET SOUNDS」よりも売れてしまったのです。ちなみに英国盤ベスト・アルバム「THE BEST OF BEACH BOYS」は全英2位まで上がっていますが、英国ではアルバム「PET SOUNDS」も全英2位になっていました。ブライアン・ウィルソンはこの結果には落胆したものの、アルバム「PET SOUNDS」の時期にレコーディングを開始していた楽曲をシングルでリリースしました。

それが、1966年10月10日にリリースされたシングル「GOOD VIBRATIONS」です。90時間にも及ぶレコーディング・セッション・テープから生まれたこの複雑怪奇な楽曲は、全米首位!・全英首位!と大ヒットしたのですが、作者がブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴである点が重要です。暴走するブライアン・ウィルソンの楽曲に、分かり易い詞を乗せたマイク・ラヴの貢献度もかなりあったと思います。それにしたって、こんなに難解なサウンドが全米首位!・全英首位!となったのですから、ブライアン・ウィルソンの方向性は間違ってはいなかったのでしょう。そして、ブライアン・ウィルソンはその「GOOD VIBRATIONS」をアルバムに拡張した様な作品を制作し始めたのです。それが、1967年にリリース予定だったアルバム「SMiLE」です。アルバム「PET SOUNDS」ではトニー・アッシャーと組んだブライアン・ウィルソンは、今度はヴァン・ダイク・パークスを起用して、主に作詞を依頼しています。例によって、ブライアン・ウィルソン抜きでツアーへ行っていたビーチ・ボーイズは、全ての楽曲で演奏しておらず、歌とコーラスのみの参加で、レッキング・クルーと称されるスタジオ・ミュージシャンがブライアン・ウィルソンの意図に沿って演奏しています。またしても作詞家のポジションを奪われたマイク・ラヴは、ヴァン・ダイク・パークスによる難解な詞にイチャモンを付けて「コレはどう云う意味なんだ?」と訊いたところ、ヴァン・ダイク・パークスが「意味なんかないよ」と応えて、マイク・ラヴが「だったら、俺は歌わない」とごねたそうです。ブライアン・ウィルソンは、ビートルズに勝つ為に、益々レコーディングにのめり込んでいて、延々と何度もコーラスをやらされたマイク・ラヴたちも困惑するしかない状況へと進んでゆきました。ブライアン・ウィルソンは、自宅のピアノの下に砂場を作ったり、レコーディング・メンバーに消防士の格好をさせたりと、奇行も目立ってゆきました。キャピトルは、まだ完成していないアルバム「SMiLE」のジャケットを勝手に印刷して、裏ジャケットには曲名まで掲載して、ラジオで宣伝までしていたのですけれど、結局はブライアン・ウィルソンはアルバム「SMiLE」を完成する事が出来なかったのです。

それから37年も経って、ブライアン・ウィルソンはソロのライヴで「SMiLE」を再現して、2004年にソロ・アルバムとして「SMiLE」を完成させています。更に2011年には、遂に1966年から1967年にかけて制作されていたビーチ・ボーイズのアルバム「SMiLE」が「SMiLE SESSIONS」としてリリースされました。そのブライアン・ウィルソンによる「SMiLE」は、新たな楽曲も加えて、あくまでも2004年の「SMiLE」としてライヴで披露されて、そのままスタジオ・アルバムもレコーディングされていて、2011年のビーチ・ボーイズの「SMiLE SESSIONS」本編は、その2004年のブライアン・ウィルソン盤「SMiLE」に沿った曲順に1966年から1967年にかけてレコーディングされた音源を並べています。ブライアン・ウィルソンのアルバム「SMiLE」は完成形ではあるものの、やはり、幻のアルバム「SMiLE」とは別物だし、それに沿ったビーチ・ボーイズの「SMiLE SESSIONS」も、当時に意図していた完成形ではありません。ビーチ・ボーイズの幻のアルバム「SMiLE」は、結局は幻の侭なのです。アルバム「SMiLE」は何だか分からないけれど凄いらしい、となったのは、1993年にリリースされたビーチ・ボーイズの箱「GOOD VIBRATIONS:THIRTY YEARS OF THE BEACH BOYS」に、「GOOD VIBRATIONS」、「OUR PRAYER」、「HEROES AND VILLAINS」、「HEROES AND VILLAINS」、「WONDERFUL」、「CABINESSENCE」、「WIND CHIMES」、「HEROES AND VILLAINS」、「DO YOU LIKE WORMS」、「VEGETABLES」、「I LOVE TO SAY DA DA」、「SURF'S UP」と、12曲のアルバム「SMiLE」音源がまとめて収録されてからです。それまではブートレグでしか聴けなかった「SMiLE」が、遂に公式盤で聴ける日が近いと感じられたわけです。しかしながら、実際にビーチ・ボーイズの「SMiLE SESSIONS」がリリースされたのは、それから18年も後の事でした。それで、あたくしも「SMiLE」のブートレグは沢山持っています。

タイトルがズバリ「SMiLE」なのが1CDで4作、他に「THE SMiLE ERA OUTTAKES」、「THE ALTERNATIVE SMiLE COLLECTION」、「SMiLE MILLENNIUM EDITION」、「MAKE A SMiLE」、「HEROES AND VILLAINS SESSIONS PART 1 & 2」、2CD「SMiLE」、2CD「SMiLE(DELUXE EDITION)」、3CD「LOST SMiLE SESSIONS」と云ったところで、12作16枚ほどあります。それに加えて、公式盤でシングル「GOOD VIBRATIONS」と、ブライアン・ウィルソンの「SMiLE」と、2011年のビーチ・ボーイズ盤「SMiLE SESSIONS」があるわけですが、それぞれ色々と違っているので、こんなに沢山持っているわけですなあ。勿論、公式盤アルバム「SMILEY SMILE」も3種類持っています。アルバム「SMiLE」に収録予定だった楽曲は、レコーディング順に、1「GOOD VIBRATIONS」、2「HEROES AND VILLAINS」、3「WIND CHIMES」、4「LOOK(SONG FOR CHILDREN)」、5「WONDERFUL」、6「HE GIVES SPEECHES」、7「HOLIDAYS」、8「OUR PRAYER」、9「CABIN ESSENCE」、10「CHILD IS FATHER OF THE MAN」、11「I'M IN GREAT SHAPE」、12「VEGA-TABLES」、13「DO YOU LIKE WORMS?」、14「BARNYARD」、15「SURF'S UP」、16「MY ONLY SUNSHINE」、17「THE ELEMENTS:FIRE」、18「I WANNA BE AROUND」、19「YOU'RE WELCOME」、20「LOVE TO SAY DADA」、21「I DON'T KNOW」、22「GEE」、23「TONES / TURN X」と云われていて、当時のブライアン・ウィルソンは、「フィールズ」と云う曲の断片を数多くレコーディングして後に繋げる手法を取っていたので、そのレコーディング・セッション音源は膨大です。何せ、前述の通り「GOOD VIBRATIONS」1曲だけで90時間もあるわけで、公式盤でCD5枚の「SMiLE SESSIONS」があっても、たったのCD5枚じゃあ、全く足りていません。もしも1967年にビーチ・ボーイズのアルバム「SMiLE」が完成してリリースされていたなら、どうなっていたのかは神のみぞ知るですけれど、おそらく難解過ぎてマニア向けのアルバムになっていたのではないでしょうか。それでブライアン・ウィルソンは、「SMiLE」を完成出来ても、出来なくとも、どちらにせよ苦しんだと思います。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする