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2025年12月11日

「ポールの道」#938「THE BEATLES BLACK VOX」
#247「PRESS TO PLAY & MORE」

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1985年11月18日に、英国・MPL/パーロフォン、米国/キャピトルからリリースしたシングル「SPIES LIKE US」は、同名映画主題歌で、ポール・マッカートニーのワンマン・レコーディングの駄作でした。ところが、映画に主演したチェビー・チェイスとダン・エクロイドとポールの3人でのミュージック・ビデオが受けた事もあって、全英13位・全米7位とそこそこのヒット曲となってしまったのです。シングルのB面は1975年リリースの第5期ウイングスによるアルバム「VENUS AND MARS」のアウトテイクである「MY CARNIVAL」でしたが、そっちの方がよっぽどマシでした。シングル「SPIES LIKE US」は、ポールとフィル・ラモーンとヒュー・パジャムの共同プロデュースでしたが、「SPIES LIKE US」が売れたので、ポールは勘違いをしてフィル・ラモーンとヒュー・パジャムのそれぞれとアルバムを制作する事にしました。フィル・ラモーンとは1987年にビートルズのアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」20周年を記念したアルバム「RETURN TO PEPPERLAND」を制作するのですが、ポールとフィル・ラモーンが喧嘩してオジャンとなっています。その時にレコーディングした楽曲は、後に「ONCE UPON A LONG AGO」がシングルになったり、シングルB面などでリリースされてゆきます。ヒュー・パジャムとは上手くいって、先ずは1986年7月14日に先行シングル「PRESS」が、英国・MPL/パーロフォン、米国・MPL/キャピトルからリリースされました。米国では、シングル「SPIES LIKE US」からは、再びキャピトルへ出戻りしてのリリースでした。ポールが地下鉄に乗って周りの人々の反応を見て楽しむと云う低予算のミュージック・ビデオも楽しい「PRESS」は、全英25位・全米21位とコケてしまいますが、シングル「PRESS」は何種類もリリースされているので、コレクター泣かせとなっています。そして、同1986年9月1日に英国・MPL/パーロフォン、同年8月21日に米国MPL/キャピトルから、ポールのソロ・アルバムでは6作目(ポール&リンダやウイングスを含めると14作目)のオリジナル・アルバム「PRESS TO PLAY」をリリースしました。

アルバム「PRESS TO PLAY」は、英国ではCDも同時発売されていて、LPは全10曲入りでしたが、CDは全13曲入りでした。後に1993年に「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」でリイシューされた時には、更に2曲(「SPIES LIKE US」、「ONCE UPON A LONG AGO(Long Version)」)が加わった、全17曲入りとなっています。オリジナルCDの内容は、1「STRANGLEHOLD」、2「GOOD TIMES COMING / FEEL THE SUN」、3「TALK MORE TALK」、4「FOOTPRINTS」、5「ONLY LOVE REMAINS」、6「PRESS」、7「PRETTY LITTLE HEAD」、8「MOVE OVER BUSKER」、9「ANGRY」、10「HOWEVER ABSURD」、11「WRITE AWAY」、12「IT'S NOT TRUE」、13「TOUGH ON A TIGHTROPE」の、全13曲入りです。LPでは、1「STRANGLEHOLD」〜5「ONLY LOVE REMAINS」がA面で、6「PRESS」〜10「HOWEVER ABSURD」がB面の、全10曲入りでした。CD全13曲にシングル「PRESS」の12インチ盤に入っていた「HANGLIDE」を加えた全14曲中、9曲(「STRANGLEHOLD」、「FOOTPRINTS」、「PRETTY LITTLE HEAD」、「MOVE OVER BUSKER」、「ANGRY」、「HOWEVER ABSURD」、「WRITE AWAY」、「TOUGH ON A TIGHTROPE」、「HANGLIDE」)が、10cc(この時期は解散状態)のエリック・スチュワートとポールの共作で、残りの5曲(「GOOD TIMES COMING / FEEL THE SUN」、「TALK MORE TALK」、「ONLY LOVE REMAINS」、「PRESS」、「IT'S NOT TRUE」)がポールの単独作です。エリック・スチュワートとポールは、他にも「DON'T BREAK THE PROMISES」や「YVONNE'S THE ONE」なども共作していて、それらは後にエリック・スチュワートが「再結成10cc」で発表しています。このアルバム「PRESS TO PLAY」は、全英8位・全米30位と、米国でのセールスがどん底まで堕ちた事によって、現在では駄作扱いされているばかりか、エリック・スチュワートが悪いと云うトンデモ理由を持ち出す日本のバカな評論家が多い作品です。シングル「SPIES LIKE US」は、押しも押されもしない駄作だとは思いますけれど、だからと云ってアルバム「PRESS TO PLAY」がダメとは云えません。

チャートでの成績で云うならば、英国では8位なのですから、そんなに酷くないわけで、つまり米国で30位だったから悪いと云っているわけですよ。ところが、米国では1982年のアルバム「TUG OF WAR」が首位!で、1983年のアルバム「PIPES OF PEACE」が15位で、1984年のアルバム「GIVE MY REGARD TO BROAD STREET」が21位で、この1986年のアルバム「PRESS TO PLAY」が30位で、次の1987年のベスト・アルバム「ALL THE BEST!」は62位(全英2位)だったのです。よく日本のバカな評論家は1989年のアルバム「FLOWERS IN THE DIRT」でエルヴィス・コステロと組んでポールが復活したから、エリック・スチュワートではダメだった、などと云うわけですが、アルバム「FLOWERS IN THE DIRT」は全英首位!だけど、全米21位なのです。つまり、米国では大復活など遂げていなかったのです。普通にダンダンダンと米国では売れなくなっていて、ベスト・アルバムでどん底の更に下まで堕ちて、アルバム「FLOWERS IN THE DIRT」では少し持ち直しただけなのです。そんなわけで、不当な低評価となっているアルバム「PRESS TO PLAY」ですが、リリース当時は普通に売れていて、普通に高評価で、普通に聴かれていたのですよ。特にエリック・スチュワートと組んだ9曲は、流石はビートルズと10ccが合体したと高く評価されていたし、誰もエリック・スチュワートを「ミニ・ポール・マッカートニー」とか「10ccのポール」などと云う意味不明な捉え方などしていなかったのです。エリック・スチュワートはマインドベンダーズとして1960年代からキャリアがあって、10ccを結成するずっと前から活動していたのです。大体、エリック・スチュワートが「10ccのポール」だったなら、グレアム・グールドマンとケヴィン・ゴドレイとロル・クレームは10ccの誰だって云うのでしょうか。もっと云うならば、ポール・バージェスとリック・フェンとスチュアート・トッシュとトニー・オマリーとダンカン・マッケイなどは、どうなるのでしょうか。

さて、アルバム「PRESS TO PLAY」は2025年の現在でもアーカイヴ・コレクションがリリースされていないので、最新CDは1993年8月9日にリリースされた「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」となります。そこで、毎度お馴染みの「MOONCHILD RECORDS」から2022年にリリースされたCD2枚組で税込み千円のパイレート盤「PRESS TO PLAY & MORE」が便利です。内容は、CD1が、1「STRANGLEHOLD」、2「GOOD TIMES COMING / FEEL THE SUN」、3「TALK MORE TALK」、4「FOOTPRINTS」、5「ONLY LOVE REMAINS」、6「PRESS」、7「PRETTY LITTLE HEAD」、8「MOVE OVER BUSKER」、9「ANGRY」、10「HOWEVER ABSURD」、11「WRITE AWAY」、12「IT'S NOT TRUE」、13「TOUGH ON A TIGHTROPE」、14「SIMPLE AS THAT」、15「YVONNE'S THE ONE」、16「SEASIDE WOMAN」、17「B-SIDE TO SEASIDE」、18「HANGLIDE」の、全18曲入りです。1「STRANGLEHOLD」〜13「TOUGH ON A TIGHTROPE」の13曲は、アルバム「PRESS TO PLAY」CDオリジナル盤全13曲の最新リマスター音源です。14「SIMPLE AS THAT」は「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」ではアルバム「PIPES OF PEACE」にボーナス・トラックとして収録されていたチャリティー盤への提供曲で、15「YVONNE'S THE ONE」は後に10cc名義でリリースされる曲のポール・ヴァージョンで、16「SEASIDE WOMAN」と、17「B-SIDE TO SEASIDE」は、リンダがリード・ヴォーカルの曲で、1986年のシングルでのリミックス音源で、18「HANGLIDE」は12インチ・シングル「PRESS」にカップリングされたアルバム未収録のインストゥルメンタル曲で、ポールとエリック・スチュワートの共作です。CD2は、1「PRESS」、2「IT'S NOT TRUE」、3「STRANGLEHOLD」、4「ANGRY」、5「PRETTY LITTLE HEAD」、6「ONLY LOVE REMAINS」、7「PRESS」、8「PRESS」、9「PRETTY LITTLE HEAD」、10「TOUGH ON A TIGHTROPE」、11「TALK MORE TALK」、12「GOOD TIMES COMING / FEEL THE SUN」、13「SEASIDE WOMAN」、14「B-SIDE TO SEASIDE」、15「PRESS」、16「PRESS」の、全16曲入りで、合計34曲入りです。

1「PRESS」と、2「IT'S NOT TRUE」は、シングル・ヴァージョンで、3「STRANGLEHOLD」はサックス少年がポールのライヴに飛び入りするミュージック・ビデオ・ヴァージョンで、4「ANGRY」、5「PRETTY LITTLE HEAD」、6「ONLY LOVE REMAINS」の3曲はシングル・ヴァージョンで、7「PRESS」は米国盤シングル・ヴァージョンで、8「PRESS」はダブ・ミックスで、9「PRETTY LITTLE HEAD」と、10「TOUGH ON A TIGHTROPE」と、11「TALK MORE TALK」の3曲は12インチ・ヴァージョンで、12「GOOD TIMES COMING / FEEL THE SUN」はラフミックス音源で、13「SEASIDE WOMAN」と、14「B-SIDE TO SEASIDE」の2曲は12インチ・ヴァージョンで、15「PRESS」は米国盤プロモ・ヴァージョンで、16「PRESS」は10インチ・シングル・ヴァージョンです。英国だけでリリースされた「PRESS」の10インチ盤は、円形の変型ジャケットです。時代は1980年代中期で、CDが徐々にLPを侵食していた時期で、しかも12インチ・シングルも流行っていた時期なので、ポールだけではなく、色々なバンドやミュージシャンが多くのレコードやCDを乱発していました。それは、このパイレート盤「PRESS TO PLAY & MORE」の2枚目を聴いて頂ければ分かり易いでしょう。何せ「PRESS」だけで、6ヴァージョンもあるのです。共同プロデュースしたヒュー・パジャムは当時は全盛期で、ポリスや、フィル・コリンズや、デヴィッド・ボウイなどをプロデュースしていて、このポールのアルバム「PRESS TO PLAY」でも1980年代型のド派手なプロデュースをやらかしています。それに加えて、ポールの単独作である「ONLY LOVE REMAINS」(個人的には嫌いではない)の様な甘さもあって、叩こうと思えば幾らでも叩けるアルバムではあります。ミュージック・ビデオも、「PRESS」は低予算ですが、他の「STRANGLEHOLD」(全米81位)、「PRETTY LITTLE HEAD」(全英76位)、「ONLY LOVE REMAINS」(全英34位)はガッツリとお金をかけて制作しています。このアルバムでのポールとエリック・スチュワートの共作は、日本のバカな評論家が云う様な酷い出来栄えではありません。と云うか、そんな世迷言を云う愚かな評論家は、本当に10ccを聴いた事があるのでしょうか。おそらく、1981年のアルバム「TEN OUT OF 10」や、1983年のアルバム「WINDOWS IN THE JUNGLE」辺りは、聴いた事がないのでしょう。いや、「I'M NOT IN LOVE」しか知らないんじゃないでしょうか。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする