nana.812.png

2025年12月10日

「ポールの道」#937「THE BEATLES BLACK VOX」
#246「GIVE MY REGARD TO BROAD STREET & MORE」

broadstreet.jpg


1982年4月26日に、MPL/パーロフォン(英国)・MPL/コロムビア(米国)からリリースしたアルバム「TUG OF WAR」を全英首位!・全米首位!と大ヒットさせたポール・マッカートニーですが、その続編である1983年10月31日にMPL/パーロフォン(英国)・同年10月26日にMPL/コロムビアからリリースしたアルバム「PIPES OF PEACE」は、全英4位・全米15位と、特に米国でのセールスが伸び悩みました。ポールはアルバム「PIPES OF PEACE」への追加レコーディングと並行して、自ら脚本を書いて主演した映画「GIVE MY REGARD TO BROAD STREET(ヤァ!ブロード・ストリート)」を撮影していて、映画は盛大にズッコケました。世は「MTV」全盛時代で、そう云う話ならば「MTV」の本家で元祖と云われる1967年のテレビ映画「MAGICAL MYSTERY TOUR」を構想して実現させたのは、他ならぬポールだったので、時代が俺様に追いついた、とでも思ったのか、ポールはお得意の訳が分からない映画を制作してしまったのです。きっとポールは、公開当時にテレビ映画「MAGICAL MYSTERY TOUR」が無茶苦茶に貶された事実を、すっかり忘れてしまっていたのでしょう。そして、あの時と同じ様に、映画はコケタけれど、サントラ盤は高評価される事となったのです。ポールは、ソロでは5作目(ポール&リンダやウイングスを含めると13作目)のアルバムとなる同名映画のサントラ盤「GIVE MY REGARDS TO BROAD STREET(ヤァ!ブロード・ストリート)」を、1984年10月22日に英国・MPL/パーロフォンから・同年10月22日には米国・MPL/コロムビアから、それぞれリリースしました。プロデュースは1982年リリースの前々作アルバム「TUG OF WAR」と1983年リリースの前作アルバム「PIPES OF PEACE」と同じく、3作連続でサー・ジョージ・マーティンで、エンジニアも3作連続でジェフ・エメリックです。レコーディングは1982年11月から1983年7月で、前作アルバム「PIPES OF PEACE」と被っています。結果から申し上げますと、このアルバムは全英首位!・全米21位と、英国では絶賛されたものの、米国でのセールスが更に落ち込んでいます。

サントラ盤CDの内容は、1「NO MORE LONELY NIGHTS(Ballad)(ひとりぼっちのロンリー・ナイト(バラード編)」、2「GOOD DAY SUNSHINE / CORRIDOR MUSIC」、3「YESTERDAY」、4「HERE, THERE, AND EVERYWHERE」、5「WANDERLUST」、6「BALLROOM DANCING」、7「SILLY LOVE SONGS(心のラヴ・ソング) / REPRISE」、8「NOT SUCH A BAD BOY(悲しいバッド・ボーイ)」、9「SO BAD」、10「NO VALUES / NO MORE LONELY NIGHTS(ひとりぼっちのロンリー・ナイト(バラード/リプライズ))」、11「FOR NO ONE」、12「ELEANOR RIGBY / ELEANOR'S DREAM(エリナーの夢)」、13「THE LONG AND WINDING ROAD」、14「NO MORE LONELY NIGHTS(Playout Version)(ひとりぼっちのロンリー・ナイト(プレイアウト編))」、15「GOODNIGHT PRINCESS」の全15曲入りで、1993年の「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」では更に、16「NO MORE LONELY NIGHTS(Extended Version)」と、17「NO MORE LONELY NIGHTS(Special Dance Mix)」も加えた全17曲入りです。LPだと、「SO BAD」と「GOODNIGHT PRINCESS」2曲が収録されておらず、「GOOD DAY SUNSHINE / CORRIDOR MUSIC」、「WANDERLUST」、「ELEANOR RIGBY / ELEANOR'S DREAM」、「NO MORE LONELY NIGHTS(Playout Version)」などが短縮版になっています。ポールはアルバム「TUG OF WAR」とアルバム「PIPES OF PEACE」もCDを早い段階でリリースしていましたが、それらはまだ基本形はレコードだったのですけれど、この「GIVE MY REGARD TO BROAD STREET」からはCDが基本形となっています。故に、全15曲入りのCDがオリジナルとなっていて、LPは短縮盤となっています。先行シングルは「NO MORE LONELY NIGHTS」で、全英2位・全米6位とヒットしていて、前作「PIPES OF PEACE」で先行シングル「SAY SAY SAY」が全米首位!でアルバム「PIPES OF PEACE」が全米15位となった様に、明らかに米国ではアルバムが売れなくなっています。

このアルバム「GIVE MY REGARD TO BROAD STREET」は、CD基準で云うと新曲が3曲(「NO MORE LONELY NIGHTS」、「NOT SUCH A BAD BOY」、「NO VALUES」)で、他はビートルズ、ウイングス、ソロからのセルフ・カバーとなっています。ポールは口パクが嫌いなので、セルフ・カバー曲も全て生演奏の生歌で撮影されていて、リンゴ・スターがビートルズ・ナンバーには参加したくないと「YESTERDAY」や「HERE, THERE AND EVERYWHERE」ではスティックを探していてドラムスを叩かないで、「WANDERLUST」になってようやく叩くところなんかは映像で観ると面白いんですけれどね。それで、ビートルズ・ナンバーを6曲(「GOOD DAY SUNSHINE」、「YESTERDAY」、「HERE, THERE AND EVERYWHERE」、「FOR NO ONE」、「ELEANOR RIGBY」、「THE LONG AND WINDING ROAD」)も演奏していて、それが最も話題になりました。アルバム「REVOLVER」から4曲も取り上げているのは、ジョン・レノンに褒められたからでしょう。ところが、問題は「THE LONG AND WINDING ROAD」のカバーで、あれだけポールはフィル・スペクター・ヴァージョンのオーケストラや女性コーラスを貶していたのに、このセルフ・カバーではサックス入りのAORアレンジで女性コーラスも入っていると云う、トンデモ・セルフ・カバーにしてしまったのです。ウイングス・ナンバーは1曲(「SILLY LOVE SONGS」)で、ソロ・ナンバーが3曲(「WANDERLUST」、「BALLROOM DANCING」、「SO BAD」)となっていて、新曲は前述の3曲(内「NO MORE LONELY NIGHTS」は2ヴァージョン)となっていて、インストゥルメンタル曲が3曲(「CORRIDOR MUSIC」、「ELEANOR'S DREAM」、「GOODNIGHT PRINCESS」)です。このアルバムはまだアーカイヴ・コレクションがリリースされていないので、1993年8月9日にリリースされた「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」が最新盤となっています。そちらには、前述の通り「NO MORE LONELY NIGHTS」の別ミックスが2ヴァージョン収録されているので、全17曲入りとなっています。しかし「ひとりぼっちのロンリー・ナイト」と云う邦題は「危険がアブナイ」ですなあ。

と云うわけで、毎度お馴染みの「MOONCHILD RECORDS」から2024年にリリースされたパイレート盤「GIVE MY REGARD TO BROAD STREET & MORE」が2CDで税込み千円で便利です。内容は、CD1が、1「NO MORE LONELY NIGHTS(Ballad)」、2「GOOD DAY SUNSHINE」、3「CORRIDOR MUSIC」、4「YESTERDAY」、5「HERE, THERE AND EVERYWHERE」、6「WANDERLUST」、7「BALLROOM DANCING」、8「SILLY LOVE SONGS」、9「SILLY LOVE SONGS(REPRISE)」、10「NOT SUCH A BAD BOY」、11「SO BAD」、12「NO VALUES」、13「FOR NO ONE」、14「ELEANOR RIGBY / ELEANOR'S DREAM」、15「THE LONG AND WINDING ROAD」、16「NO MORE LONELY NIGHTS(Playout Version)」、17「GOODNIGHT PRINCESS」、18「NO MORE LONELY NIGHTS」、19「NO MORE LONELY NIGHTS」、20「NO MORE LONELY NIGHTS」の、全20曲入りです。1「NO MORE LONELY NIGHTS(Ballad)」〜17「GOODNIGHT PRINCESS」の17曲は、アルバム「GIVE MY REGARD TO BROAD STREET」全17曲(公式盤では全15曲表示)の最新リマスター音源です。18〜20「NO MORE LONELY NIGHTS」は、「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」盤でのボーナス・トラック2曲に更に1曲増やしていて、ダンス・ミックス2種と拡大ヴァージョンが聴けます。CD2は、1「NO MORE LONELY NIGHTS(Ballad)」、2「GOOD DAY SUNSHINE」、3「WANDERLUST」、4「SILLY LOVE SONGS」、5「NOT SUCH A BAD BOY」、6「NO VALUES」、7「ELEANOR RIGBY / ELEANOR'S DREAM」、8〜11「NO MORE LONELY NIGHTS」、12〜13「WE ALL STAND TOGETHER」、14〜18「SPIES LIKE US」の、全18曲入りで、合計38曲入りです。

1「NO MORE LONELY NIGHTS(Ballad)」はシングル・ヴァージョンで、2「GOOD DAY SUNSHINE」〜8「NO MORE LONELY NIGHTS」の7曲はLPでの短縮ヴァージョンで、公式盤CDでは聴けません。9「NO MORE LONELY NIGHTS」は12インチ・ヴァージョンで、10「NO MORE LONELY NIGHTS」はモール・ミックスで、11「NO MORE LONELY NIGHTS(Playout Version)」はシングル・ヴァージョンです。ここまでがアルバム「GIVE MY REGARD TO BROAD STREET」関連音源となっていて、その後の2曲(「WE ALL STAND TOGETHER」、「SPIES LIKE US」)は、当時のアルバム未収録シングルです。12〜13「WE ALL STAND TOGETHER」は、1984年11月12日に英国だけでリリースされたシングル両面(全英3位)で、アニメ作品「ルパートとカエルの歌」の主題歌ですが、レコーディングは1980年10月で、サー・ジョージ・マーティンがプロデュースしていて、この曲があったので、アルバム「TUG OF WAR」とアルバム「PIPES OF PEACE」とアルバム「GIVE MY REGARD TO BROAD STREET」と3作連続でサー・ジョージ・マーティンがプロデュースする事となったのです。12は歌入りで、13はハミング・ヴァージョンです。14〜18「SPIES LIKE US」は、1985年公開の同名映画主題歌で、映画はジョン・ランディス監督、チェビー・チェイスとダン・エクロイド主演です。1985年11月18日にシングルがリリースされて、ほとんどがポールのワンマン・レコーディングで、どう聴いてもダメな方のポールが書いた駄作ですけれど、主演の二人とポールが共演したミュージック・ビデオが面白く、全英13位・全米7位とヒットしてしまいました。それで、ポールはこの路線で行けると勘違いして、共同プロデュースしたフィル・ラモーンとヒュー・パジャムと組んでアルバムを制作する事となったのです。フィル・ラモーンと制作していたアルバム「RETURN TO PEPPERLAND」は頓挫しますが、ヒュー・パジャムとは悪名高いアルバム「PRESS TO PLAY」を完成させるわけですなあ。アルバム「PRESS TO PLAY」は、現在では駄作で、多くの曲を共作したエリック・スチュワートが悪いなんてデマが流されていますけれど、どう聴いても悪いのはヒュー・パジャムと彼を起用したポールでしょう。何度も書いていますけれど、何でポールのアルバムが売れなかったらエリック・スチュワートのせいにされるのか、訳が分かりません。

こうして駄作「SPIES LIKE US」を5ヴァージョンも悪ノリして制作していたのですから、ポールは大いに勘違いしていたのです。それは兎も角として、アルバム「GIVE MY REGARD TO BROAD STREET」に話を戻せば、レコーディング・メンバーは、ポール&リンダ・マッカートニーの他に、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモア(ギター:「NO MORE LONELY NIGHTS」は名演)、元・ビートルズのリンゴ・スター(ドラムス)、10ccのエリック・スチュワート(ギター、バッキング・ヴォーカル)、元・レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズ(ベース、キーボード)、デイヴ・エドモンズ(ギター)、クリス・スペディング(ギター)、TOTOのスティーヴ・ルカサー(ギター)、TOTOのジェフ・ポーカロ(ドラムス)などが参加しています。劇中でも色んな扮装をして、名うての名手たちとポールが生演奏しているわけで、ポールお得意の意味不明なストーリーを抜きにすれば、正に「MTV」への挑戦状であって、ミュージック・ビデオと云うのはね、こうして撮影するもんなんだよ、と云うポールのドヤ顔が思い浮かびます。しかし、1967年のテレビ映画「MAGICAL MYSTERY TOUR」が後に高く評価されているのは、行き当たりばったりなストーリー展開ではなくてですね、正に「MTV」の元祖で本家である音楽のパートなのですよ。脚本がなしで制作されたから初めからストーリーなどなかった「MAGICAL MYSTERY TOUR」よりも酷いのは、この映画「GIVE MY REGARD TO BROAD STREET」はポールが脚本を書いたわけで、脚本があるのにアノ出鱈目な展開と云う事はですね、ポールには脚本なんて書けないって事なんですよ。黙って音楽だけ作っていれば良いのに、ポールは天才で自分が何でもやればできると思っているから、色々とやりたくなってしまうんですよ。それから、エリック・スチュワートは次作アルバム「PRESS TO PLAY」ではポールの相方となるわけですけれど、映像を観るとですね、エリック・スチュワートがスタジオに来たら、みんな「エリック・スチュワートが来たぞ!」と嬉々としてお出迎えしているわけで、英国での10ccって云うのは、それだけ偉大なんですよ。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする