
1982年4月26日にリリースしたアルバム「TUG OF WAR」を、見事に全英首位!・全米首位!日本でも首位!と大ヒットさせたポール・マッカートニーですが、元々アルバム「TUG OF WAR」はレコード2枚組の構想でした。アルバム「TUG OF WAR」にはポールとスティーヴィー・ワンダーが共演した「EBONY AND IVOLY」と「WHAT'S THAT YOU'RE DOING」や、カール・パーキンスと共演した「GET IT」などが収録されたのですけれど、ポールは既にマイケル・ジャクソンと共作共演した「SAY SAY SAY」と「THE MAN」や、スタンリー・クラークと共作共演した「HEY HEY」などもレコーディングしていたのです。2枚組が1枚になってしまったので、それらの曲は次作アルバムへと持ち越しにされました。ところが、マイケル・ジャクソンが曲作りを教えて欲しいとポールに頼んで実現した「SAY SAY SAY」と「THE MAN」がリリースされる前に、その共作共演のお返しとしてポールがマイケル・ジャクソンのレコーディングに参加した「THE GIRL IS MINE」が、モンスター・アルバムとなるマイケル・ジャクソンの「THRILLER」からの先行シングルとして、1982年10月26日に先にリリースされてしまい、全英8位・全米2位のヒット曲となってしまったのです。そして、同1982年12月1日にリリースされたマイケル・ジャクソンのアルバム「THRILLER」は空前の大ヒットとなり、全世界で1億枚も売れたと云われています。つまり、レコーディングはポールの「SAY SAY SAY」が先だったのにも関わらず、バカなレコード会社が2枚組を認めなかったので先送りにしたので、まるでポールがマイケル・ジャクソンの大ヒットに便乗した様に受け取られてしまったのです。そもそもマイケル・ジャクソンはポールの「GIRLFRIEND」をカバーしていて、前述の通りポールに曲作りを教えて欲しいと英国へやって来たわけですけれど、お人好しのポールは版権ビジネスまで教えてしまい、後にレノン=マッカートニー作品の版権をマイケル・ジャクソンに買われてしまうと云う、トンデモ展開にもなってしまいました。
ポールは1983年10月3日になって、ようやくマイケル・ジャクソンとの共作共演作をA面にしたシングル「SAY SAY SAY / ODE TO A KOALA BEAR(コアラの詩)」(B面はポールの単独作でアルバム未収録曲)をリリースして、全英2位・全米首位!と大ヒットさせました。12インチ・シングルもリリースされた「SAY SAY SAY」は、1981年11月のレコーディング曲でしたが、そんな事情はリリース当時は分からなかったわけで、前作での「EBONY AND IVOLY」につづいて、ポールが今度はマイケル・ジャクソンに頼ったと思われてしまいました。そんな「SAY SAY SAY」を収録した、ポールのソロでは4作目(ポール&リンダやウイングスを含めると12作目)のアルバム「PIPES OF PEACE」は、1983年10月31日(英国・パーロフォン)・同年10月26日(米国・コロムビア)になって、ようやくリリースされました。内容は、A面が、1「PIPES OF PEACE」、2「SAY SAY SAY」、3「THE OTHER ME(もう1人の僕)」、4「KEEP UNDER COVER」、5「SO BAD」で、B面が、1「THE MAN」、2「SWEETEST LITTLE SHOW」、3「AVERAGE PERSON」、4「HEY HEY」、5「TUG OF PEACE」、6「THROUGH OUR LOVE(ただ愛に生きて)」の、全11曲入りです。「SAY SAY SAY」と「THE MAN」がポールとマイケル・ジャクソンの共作で、「HEY HEY」がポールとスタンリー・クラークの共作で、他の8曲はポールの単独作となっていて、プロデュースはサー・ジョージ・マーティンで、エンジニアはジェフ・エメリックと云う、前作アルバム「TUG OF WAR」と同じ体制でレコーディングされています。と云うか、二つのアルバムは同時進行で制作されていたので、レコーディングは1980年10月から1983年7月までと、長期に渡っています。「KEEP UNDER COVER」や「AVERAGE PERSON」と云った曲は、1980年10月に第7期ウイングスでリハーサルしていた楽曲ですし、「TUG OF PEACE」などと云う曲が入っているのも、2枚組の構想だった名残りでしょう。
1983年12月5日には英国で「PIPES OF PEACE / SO BAD」(全英首位!)を、同年12月13日には米国で「SO BAD / PIPES OF PEACE」(全米23位)と、それぞれAB面を逆にしてシングル・カットしています。「SAY SAY SAY」と「PIPES OF PEACE」のミュージック・ビデオは、どちらも短編映画の様な予算もかけた傑作ですが、ポール&リンダとリンゴ・スターとエリック・スチュワートの4人だけでシンプルな「SO BAD」のミュージック・ビデオも良いし、「SO BAD」は楽曲としても傑作だと思います。アルバム「TUG OF WAR」の余りものだけではなく、このアルバム用に新たにレコーディングされた「THE OTHER ME」でのポールのワンマン・レコーディングの様な曲も愛らしいのですけれど、やはり「PIPES OF PEACE」と「SAY SAY SAY」が派手過ぎて、他の曲は損をしています。アルバムは、全英4位・全米15位と、特に米国では納得がいかない結果となりました。米国では、みんな「SAY SAY SAY」のシングルや12インチ・シングルで満足してしまったのでしょうなあ。ポール・ファンとしては、逆に「SAY SAY SAY」と「THE MAN」を外してくれた方がスッキリ爽やかな小品となったと思う方々も居るでしょう。アルバム「PIPES OF PEACE」は、1993年8月9日に「ザ・ポール・マッカートニー・コレクション」でCD化された時に、「TWICE IN A LIFETIME」(同名映画主題歌)、「WE ALL STAND TOGETHER」(アニメ作品主題歌)、「SIMPLE AS THAT」(チャリティー・アルバム提供曲)の3曲(配信では「SAY SAY SAY」12インチ・ヴァージョンも加えた4曲)がボーナス・トラックとして収録されました。そして、2015年10月2日に「アーカイヴ・コレクション」で、2CD+1DVDの箱がリリースされました。価格は税込み1万6千5百円と、相変わらずお高くなっていて、CD2枚には全20曲が収録されています。
そんなに高いんじゃ買えないよ、と云う普通のポール・ファンの方々には、毎度お馴染みの「MOONCHILD RECORDS」から2022年にリリースされた2CDで税込み千円のパイレート盤「PIPES OF PEACE & MORE」がお買い得です。内容は、CD1が、1「PIPES OF PEACE」、2「SAY SAY SAY」、3「THE OTHER ME」、4「KEEP UNDER COVER」、5「SO BAD」、6「THE MAN」、7「SWEETEST LITTLE SHOW」、8「AVERAGE PERSON」、9「HEY HEY」、10「TUG OF PEACE」、11「THROUGH OUR LOVE」、12「ODE TO A KOALA BEAR」、13「TWICE IN A LIFETIME」、14「THE GIRL IS MINE」、15「IT'S NOT ON」、16「SIMPLE AS THAT」、17「CHRISTIAN BOP」、18「ON THE WINGS OF A NIGHTINGALE」、19「THE UNBELIEBLE EXPERIENCE」、20「WE ALL STAND TOGETHER」、21「BOIL CRISIS」、22「GIVE US A CHORD, ROY」、23「SEEMS LIKE OLD TIMES」の、全23曲入りです。1「PIPES OF PEACE」〜11「THROUGH OUR LOVE」の11曲は、アルバム「PIPES OF PEACE」全11曲の最新リマスター音源です。12「ODE TO A KOALA BEAR」はシングル「SAY SAY SAY」のB面曲で、13「TWICE IN A LIFETIME」は同名映画主題歌で、14「THE GIRL IS MINE」はマイケル・ジャクソン&ポール・マッカートニーのシングルで、15「IT'S NOT ON」〜16「SIMPLE AS THAT」と、18「ON THE WINGS OF A NIGHTINGALE」〜23「SEEMS LIKE OLD TIMES」の8曲はデモ音源で、18「ON THE WINGS OF A NIGHTINGALE」はエヴァリー・ブラザーズへの提供曲で、17「CHRISTIAN BOP」はアウトテイクです。CD2は、1「AVERAGE PERSON」、2「KEEP UNDER COVER」、3「SWEETEST LITTLE SHOW」、4〜5「SAY SAY SAY」、6「ODE TO A KOALA BEAR」、7「PIPES OF PEACE」、8「THAT'LL BE THE DAY」、9〜12「THE GIRL IS MINE」、13〜16「SAY SAY SAY(WAITING 4U)」、17〜19「SAY SAY SAY」の、全19曲入りで、合計42曲入りです。アーカイヴ・コレクションよりも、22曲も多くなっています。
1「AVERAGE PERSON」〜3「SWEETEST LITTLE SHOW」の3曲はデモ音源で、4〜5「SAY SAY SAY」は12インチ・ヴァージョンとインストゥルメンタル・ヴァージョンで、6「ODE TO A KOALA BEAR」はオーストラリア・ミックスで、7「PIPES OF PEACE」はシングル・ヴァージョンで、8「THAT'LL BE THE DAY」はバディ・ホリーのカバーです。その後は、9〜12の「THE GIRL IS MINE」が4連発と、13〜19の「SAY SAY SAY」の7連発となっていて、9「THE GIRL IS MINE」はデモ音源、10「THE GIRL IS MINE」はプロモ盤、11「THE GIRL IS MINE」は2008年ミックス、12「THE GIRL IS MINE」は2008年クラブ・ミックスです。13〜16「SAY SAY SAY(WAITING 4U)」は、13がオリジナル・ミックス、14がラジオ・ミックス、15が「TOCADISCO'S NOT GUILTY MIX」、16が「BEATS 4 U」です。17〜19「SAY SAY SAY」は、17が2015年リミックス、18が2015年ラジオ・エディット、19が2015年インストゥルメンタル・ヴァージョンです。「SAY SAY SAY(WAITING 4U)」に関しては、2006年にハイ・タックが「SAY SAY SAY」をサンプリングした楽曲なので、ポールは与り知らないヴァージョンかもしれませんが、税込み千円の一部ならば損はしないでしょう。17〜19「SAY SAY SAY」リミックス・ヴァージョンは、ポールが2016年のベスト・アルバム「PURE McCARTNEY」にも収録しているので、ポールが関与しているリミックス音源です。マイケル・ジャクソンが2009年6月25日に亡くなっていた事もあったので、オリジナルよりもマイケル・ジャクソンのリード・ヴォーカルを目立つ様にリミックスされていて、版権を買われてしまった恩讐を超えて、ポールがマイケル・ジャクソンを追悼したのでしょう。特に2枚目は、ポールとマイケル・ジャクソンの「THE GIRL IS MINE」と「SAY SAY SAY」が合わせて13ヴァージョンも収録されているので、飽きてしまうかもしれませんけれど、あたくしの様にポールのCDは買うけれどマイケル・ジャクソンのCDは買わない者にとっては、便利なパイレート盤です。
(小島イコ)
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