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2025年12月07日

「ポールの道」#934「THE BEATLES BLACK VOX」
#243「McCARTNEY U & MORE」

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1980年1月16日に、第7期ウイングスを率いて来日公演を行う為にやって来たポール・マッカートニーは、成田空港の税関で大麻を所持しているのが発覚して、逮捕拘留されて、1月25日に国外退去されました。それによって、ウイングスの来日公演は全てが中止となり、それ以降に計画していた北米ツアーなども全てがキャンセルとなってしまったのです。それにしたって、何故にポールはスタッフではなく、逮捕して下さいと云うが如く自分で大麻を持っていたのでしょうか。それに先立って、ポールは1979年11月16日(英国・パーロフォン)・同年11月20日(米国・コロムビア)には、全ての楽器と歌をひとりでレコーディングしたシングル「WONDERFULL CHRISMASTIME / RUDOLPH THE RED-NOSED REGGAE」をリリースしていて、第7期ウイングスのライヴでも演奏していました。英国へ帰国したポールは、1980年4月11日(英国・パーロフォン)・同年4月15日(米国・コロムビア)には、シングル「COMING UP / COMING UP(LIVE)、LUNCH BOX - ODD SOX」をリリースしていて、「COMING UP」のスタジオ・ヴァージョンは全英2位まで上がっていて、米国では第7期ウイングスによるライヴ・ヴァージョンの方が人気となり、全米首位!を獲得しました。ジョン・レノンもそのライヴ・ヴァージョンが気にいっていて、音楽活動を再開するキッカケになったとも云われています。時代は「MTV」全盛期を迎える時期でしたが、ポールがひとりで何役も演じた「COMING UP」のミュージック・ビデオも人気となって、1980年代に向けて好スタートを切ったかと思えました。当時のポールは、日本での大事件などはどこ吹く風で、そもそも「大麻」が違法だなどとは思っていない人(後に「サー」の称号をもらった時に「大麻を合法化しよう!」などと発言している)なので、普通に音楽活動をつづけていたのです。来日公演の中止には莫大な損害が出たでしょうけれど、そんな事は知ったこっちゃなかったのでしょう。シングル「COMING UP」のもう1曲のカップリング曲「LUNCH BOX - ODD SOX」は、1975年リリースのアルバム「VENUS AND MARS」からのアウトテイクで、平気で「第5期ウイングス」の曲を蔵出ししちゃう感覚も、当時の第7期ウイングスのメンバーにとっては「全く、ウチのボスは何を考えているんだ?」だったでしょう。

ポールは、第7期ウイングスとしての7作目(ポールとしては9作目)のオリジナル・アルバム「BACK TO THE EGG」を、1979年6月8日(英国・EMI)・同年5月24日(米国・コロムビア)にリリースした後に、1979年の夏ごろから全ての楽器と歌をひとりでレコーディングしていました。その中からシングル「WONDERFULL CHRISMASTIME」や「COMING UP」が生まれたわけですが、それをアルバムとしてリリースする事を思い付いてしまい、1980年5月16日(英国・パーロフォン)・同年5月21日(米国・コロムビア)に、ポール個人名では2作目(ポール&リンダやウイングスを含めると10作目)のオリジナル・アルバム「McCARTNEY U」をリリースしてしまったのです。内容は、A面が、1「COMING UP」、2「TEMPORARY SECRETARY」、3「ON THE WAY」、4「WATERFALLS」、5「NOBODY KNOWS」で、B面が、1「FRONT PARLOUR」、2「SUMMER'S DAY SONG」、3「FROZEN JAP」、4「BOGEY MUSIC」、5「DARKROOM」、6「ONE OF THESE DAYS」の、全11曲入りです。日本での逮捕拘留へ対する批判だと思われた「FROZEN JAP」や「DARKROOM」がありますが、前述の通りレコーディングは1979年夏なので、既に日本での事件の前に曲は出来ていて、「FROZEN JAP」は「YMO」の影響を受けた曲で、事件がなければ「YMO」との共演も考えていたらしいのです。しかし、日本盤では気を遣って「フローズン・ジャパニーズ」と改題されていました。全体的にシンセサイザーでポールが遊んでいる様な楽曲も多くて、2025年の現在ではチープなサウンドに聴こえるでしょうけれど、シングル「COMING UP」(全英2位・ライヴ・ヴァージョンが全米首位!)やシングル「WATERFALLS」(全英9位)もあったので、アルバムは全英首位!全米3位(「COMING UP」のライヴ・ヴァージョンを収録した片面シングルのオマケ付き)と大ヒットしました。こんなもんが売れちゃったのですから、ポールは逆に困惑しちゃったんじゃないでしょうか。だってね、ポールとしては前作アルバムだった「BACK TO THE EGG」は、無茶苦茶制作費が掛かっていたのに、ひとりで遊んだこっちの方が売れちゃったのですから、ウイングスなんて正直に云えばやってられなくなったでしょう。

アルバム「McCARTNEY U」は、2011年6月13日にアーカイヴ・コレクションがリリースされていて、3CD+1DVDが1万2千円でした。音源は全27曲入りでしたが、やっぱりお高いわねえ、と思う普通のポール・ファンの方々には、毎度お馴染みの「MOONCHILD RECORDS」から2022年にリリースされたCD2枚組で新品が税込み千円のパイレート盤「McCARTNEY U & MORE」がお買い得となっています。内容は、CD1が、1「COMING UP」、2「TEMPORARY SECRETARY」、3「ON THE WAY」、4「WATERFALLS」、5「NOBODY KNOWS」、6「FRONT PARLOUR」、7「SUMMER'S DAY SONG」、8「FROZEN JAP」、9「BOGEY MUSIC」、10「DARKROOM」、11「ONE OF THESE DAYS」、12「CHECK MY MACHINE」、13「SECRET FRIEND」、14「ALL YOU HORSE RIDERS」、15「BLUE SWAY」、16「MR. H ATOM」、17「YOU KNOW I'LL GET YOU BABY」、18「BOGEY WOBBLE」、19「WONDERFULL CHRISMASTIME」、20「RUDOLPH THE RED-NOSED REGGAE」の、全20曲入りです。1「COMING UP」〜11「ONE OF THESE DAYS」の11曲は、アルバム「McCARTNEY U」全11曲の最新リマスター音源です。12「CHECK MY MACHINE」はシングル「WATERFALLS」のB面曲で、13「SECRET FRIEND」は12インチ・シングル「TEMPORARY SECRETARY」のB面曲で、2曲共にアルバム未収録曲でした。14「ALL YOU HORSE RIDERS」〜18「BOGEY WOBBLE」の5曲はアウトテイクで、後にアーカイヴ・コレクションに収録されました。19「WONDERFULL CHRISMASTIME」と、20「RUDOLPH THE RED-NOSED REGGAE」はシングル・ヴァージョンで、こちらも2曲共にアルバム未収録曲でした。10分半もある「SECRET FRIEND」の先見性などは、やはりポールが只者ではないと思わされます。テクノポップ風な楽曲も多いものの、「COMING UP」、「WATERFALLS」、「SUMMER'S DAY SONG」、「ONE OF THESE DAYS」と云った名曲も出来てしまうのが、ポールなのです。

CD2は、1「COMING UP」、2「FRONT PARLOUR」、3「FROZEN JAP」、4「MR. H ATOM」、5「SUMMER'S DAY SONG」、6「BOGEY WOBBLE」、7「DARKROOM」、8「CHECK MY MACHINE」、9「WATERFALLS」、10「COMING UP」、11「WONDERFULL CHRISMASTIME」、12「SEEMS LIKE OLD TIMES」、13「SEEMS LIKE OLD TIMES」、14「LOVES FULL GLORY」、15「LOVES FULL GLORY」、16「WATERFALLS」、17「COMING UP」、18「BLUE SWAY」の、全18曲入りで、合計38曲入りです。アーカイヴ・コレクションはCD3枚で全27曲入りなので、こちらはCD2枚に詰め込んでいて11曲も増えています。1「COMING UP」はベーシック・トラックで、2「FRONT PARLOUR」と、3「FROZEN JAP」はフル・レングス・ヴァージョンで、4「MR. H ATOM」はオリジナル・ミックスで、5「SUMMER'S DAY SONG」はインストゥルメンタル・ヴァージョンで、6「BOGEY WOBBLE」〜8「CHECK MY MACHINE」の3曲はフル・レングス・ヴァージョンで、9「WATERFALLS」はプロモ・ヴァージョンで、10「COMING UP」と、11「WONDERFULL CHRISMASTIME」の2曲はフル・レングス・ヴァージョンで、12と13「SEEMS LIKE OLD TIMES」はピアノ・デモ音源で、14と15「LOVES FULL GLORY」はリンダ・マッカートニーがヴォーカルで1998年リリースの遺作アルバム「WIDE PRAIRIE」に収録された曲で、16「WATERFALLS」はビデオ・ヴァージョンで、17「COMING UP」は第7期ウイングスによるライヴ・ヴァージョンで、18「BLUE SWAY」はオーケストラ入りのヴァージョンです。矢鱈と長い曲が多いのですけれど、ポールは当初はレコード2枚組の構想で、例によってバカなレコード会社が待ったをかけたので、1枚になった経緯があります。ポールとしては、このアルバム「McCARTNEY U」は遊び半分のソロで、まだウイングスを諦めてはいなかったのでしょうけれど、結果的にはここからポールのソロ活動は始まってしまいました。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする