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2025年12月04日

「ポールの道」#931「THE BEATLES BLACK VOX」
#240「WINGS AT THE SPEED OF SOUND & MORE」

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1975年5月30日(英国)・同年5月27日(米国)にキャピトルからリリースした、ウイングスとしては4作目(ポールとしては6作目)のアルバム「VENUS AND MARS」は、「第4期ウイングス」と「第5期ウイングス」が混在した作品ですが、ポールらしいメドレーやリプライズも駆使したコンセプト・アルバムで、全英首位!・全米首位!と大ヒットさせました。ポールは「第5期ウイングス」(ポール&リンダ・マッカートニー、デニー・レイン、ジミー・マカロック、ジョー・イングリッシュ)の5人に、ホーン・セクション4人(トニー・ドーシー、ハウイー・ケーシー、スティーヴ・ハワード、タデアス・リチャード)を加えた9人編成での「第5.5期ウイングス」として、1975年9月から翌1976年10月までの長期に渡る世界ツアーを行っていて、その成果は1976年12月10日リリースのレコード盤3枚組(CD2枚組)のライヴ・アルバム「WINGS OVER AMERICA」で聴けて、映像作品「ROCK SHOW」で観る事が出来ます。ポールはツアーの合間(1976年1月から2月)にレコーディングして、1976年3月26日にウイングスとしては5作目(ポールとしては7作目)のオリジナル・アルバム「WINGS AT THE SPEED OF SOUND」をキャピトルからリリースしました。内容は、1「LET ’EM IN(幸せのノック)」、2「THE NOTE YOU NEVER WROTE」、3「SHE'S MY BABY(僕のベイビー)」、4「BEWARE MY LOVE(愛の証し)」、5「WINO JUNKO」で、B面が、1「SILLY LOVE SONGS(心のラヴ・ソング)」、2「COOK OF THE HOUSE」、3「TIME TO HIDE(やすらぎの時)」、4「MUST DO SOMETHING ABOUT IT」、5「SAN FERRY ANNE」、6「WARM AND BEAUTIFUL(やさしい気持ち)」の、全11曲入りです。このアルバムは、全英2位・全米首位!と大ヒットして、シングル・カットした「SILLY LOVE SONGS」(B面は「COOK OF THE HOUSE」)も全英2位・全米首位!となり、同じくシングル・カットした「LET ’EM IN」(B面は「BEWARE MY LOVE」)も全英2位・全米3位と大ヒットしました。レコード盤ではそのA面1曲目とB面1曲目が凄過ぎて、他の曲が霞んでしまいました。

前作アルバム「VENUS AND MARS」からは、名義が「ポール・マッカートニー&ウイングス」ではなく「ウイングス」となっていて、元・ビートルズのポールではなく、現役バリバリなウイングスのメンバーであるポールになっています。ところが、このアルバム「WINGS AT THE SPEED OF SOUND」は、ポール・ファンにとっては食い足りないアルバムと云われているのです。理由は簡単で、2大シングル・ヒットを含めた全11曲中、ポールが歌っているのが約半分の6曲(「LET ’EM IN」、「SHE'S MY BABY」、「BEWARE MY LOVE」、「SILLY LOVE SONGS」、「SAN FERRY ANNE」、「WARM AND BEAUTIFUL」)しかないからなのです。ポールは、ウイングスはバンドだ、と主張したくて、他のメンバー4人にも歌わせているのです。しかも、ジミー・マカロックが歌う「WINO JUNKO」はジミー・マカロックとコリン・アレン作で、「TIME TO HIDE」はデニー・レイン作なのです。残りの9曲は、例によってポール&リンダ・マッカートニー作となっていますが、デニー・レインが「THE NOTE YOU NEVER WROTE」と「TIME TO HIDE」の2曲も歌っていて、ジミー・マカロックが「WINO JUNKO」を、リンダ・マッカートニーが「COOK OF THE HOUSE」を、そしてドラマーのジョー・イングリッシュまでもが「MUST DO SOMETHING ABOUT IT」を、それぞれ歌っているのです。意外にもドラマーのジョー・イングリッシュが少なくともデニー・レインよりも歌が上手いと発覚したりもしたのですけれど、ウイングスのファンはポールの歌を聴きたくてレコードを買うわけで、それが半分しか歌っていないのでは詐欺みたいなものです。このアルバム「WINGS AT THE SPEED OF SOUND」には、「SILLY LOVE SONGS」、「LET ’EM IN」の2大シングル曲だけではなく、「SHE'S MY BABY」、「BEWARE MY LOVE」、「SAN FERRY ANNE」、「WARM AND BEAUTIFUL」と、ポールが歌った6曲は全てが名曲だし、ジョー・イングリッシュに歌わせた「MUST DO SOMETHING ABOUT IT」も佳曲なので、ウイングスのメンバーにも歌わせるなんて事をしなければ、もっと評価されるべきアルバムです。

ジャケット写真も、ポールが意図していたであろう効果はなく、特にCDサイズだと「何じゃこりゃあ」としか思えなくて損をしています。2014年11月5日にはアーカイヴ・コレクション2CD+1DVDが出ましたけれど、1万2千円はお高いわねえ、と云う普通のポール・ファンの方々には、毎度お馴染みの「MOONCHILD RECORDS」から2022年にリリースされたパイレート盤「WINGS AT THE SPEED OF SOUND & MORE」がございます。コレは素材がないのか、CD2枚組で税込み千円でした。内容は、CD1が、1「LET ’EM IN」、2「THE NOTE YOU NEVER WROTE」、3「SHE'S MY BABY」、4「BEWARE MY LOVE」、5「WINO JUNKO」、6「SILLY LOVE SONGS」、7「COOK OF THE HOUSE」、8「TIME TO HIDE」、9「MUST DO SOMETHING ABOUT IT」、10「SAN FERRY ANNE」、11「WARM AND BEAUTIFUL」、12「MESSAGE TO JOE」、13「SILLY LOVE SONGS」、14「LET ’EM IN」、15「SHE'S MY BABY」、16「THE NOTE YOU NEVER WROTE」、17「BEWARE MY LOVE」、18「MUST DO SOMETHING ABOUT IT」、19「SILLY LOVE SONGS」、20「LET ’EM IN」、21「WARM AND BEAUTIFUL」の、全21曲入りです。1「LET ’EM IN」〜11「WARM AND BEAUTIFUL」の11曲は、アルバム「WINGS AT THE SPEED OF SOUND」全11曲の最新リマスター音源です。12「MESSAGE TO JOE」からはボーナス・トラックで、13「SILLY LOVE SONGS」〜15「SHE'S MY BABY」の3曲はデモ音源で、16「THE NOTE YOU NEVER WROTE」はストリングス抜きの音源で、17「BEWARE MY LOVE」はレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムがドラムスを叩いているヴァージョンです。ボンゾはウイングスの大ファンで、北米ツアーの追っかけをやっていたのだそうです。当時ツェッペリン・ファンから「ポールなんて軟弱だ」とかバカにされていたのですけれど、ざまあみろ、なのです。18「MUST DO SOMETHING ABOUT IT」は、ポールが歌っているヴァージョンで、やはり、こっちの方が良いです。19「SILLY LOVE SONGS」〜20「LET ’EM IN」はプロモ盤音源で、21「WARM AND BEAUTIFUL」は美しいインストゥルメンタル・ヴァージョンです。

CD1の全21曲は、アーカイヴ・コレクション全18曲は全て収録されているので、もう1枚目だけで充分に税込み千円では元が取れてしまいました。但し、このパイレート盤は、CD2がショボいのです。CD2の内容は、1「HEARTBEAT」、2「MOONDREAMS」、3「RAVE ON」、4「I'M GONNA LOVE YOU TOO」、5「FOOL'S PARADISE」、6「LONESOME TEARS」、7「IT'S SO EASY / LISTEN TO ME」、8「LOOK AT ME」、9「TAKE YOUR TIME」、10「I'M LOOKIN’ FOR SOMEONE TO LOVE」、11「OOBU JOOBU SINGALONG THEME」、12「OOBU JOOBU」、13「RHODES, MOOG TRACK」、14「DON'T YOU WANNA DANCE」、15「OLD SIAM, SIR」、16「HOW DO YOU LIKE THE LYRICS」、17「NORFOLK BROADS」、18「DERVISH CRAZY MOOG」、19「ALL IT NEEDS IS A DARN GOOD SONG」、20「FISHY MATTERS UNDERWATER」、21「HEY MAN, CARDS UP ON THE TABLE」、22「SHE'S MY BABY」、23「BEWARE MY LOVE」、24「SILLY LOVE SONGS」の、全24曲入りで、合計45曲入りです。1「HEARTBEAT」〜10「I'M LOOKIN’ FOR SOMEONE TO LOVE」の10曲は、1977年2月リリースのデニー・レインのソロ・アルバム「HOLLY DAYS」全10曲です。全てがバディ・ホリーのカバーで、コレはポールがバディ・ホリーの版権を持っていたので、カタログを増やす為にリリースしたアルバムです。ポールがプロデュースしていて、内容はほとんどがポールとデニー・レインの二人(一応、リンダも居る)で演奏していて、リズムボックスを使った曲もあって、デモ音源みたいな仕上がりです。曲はバディ・ホリーのカバーなので良いけれど、全編に渡ってデニー・レインのへなちょこリード・ヴォーカルなので、腰砕けします。ポールが全面的にサポートしているので、聴いてみたいと云う方々は、無理してオリジナル盤を探すよりも簡単にコレで聴けます。11「OOBU JOOBU SINGALONG THEME」〜21「FISHY MATTERS UNDERWATER」の11曲はデモ音源などで、既に「OOBU JOOBU」や「OLD SIAM, SIR」などのデモ音源も聴けます。早くも「McCARTNEY U」みたいな事を、ポールはやらかしていました。22「SHE'S MY BABY」は完全版で、23「BEWARE MY LOVE」は初期テイクで、24「SILLY LOVE SONGS」はオーバーダビング前の音源です。このアルバムの時期のライヴ音源はライヴ・アルバム「WINGS OVER AMERICA」があるので、そちらでたっぷりと聴けて、別テイクなどは少ないのです。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする