
ビートルズの公式レコーディング全213曲を初CD化で全て揃える為に、1988年3月8日にリリースされたのが、編集アルバム「PAST MASTERS」です。初CD化の時には、2枚がバラ売りされて、アルバム「PAST MASTERS VOLUME ONE」全18曲入りと、アルバム「PAST MASTERS VOLUME TWO」全15曲入りとしてリリースされています。このアルバムは英国オリジナル・アルバム12作13枚に、米国キャピトル編集アルバム「MAGICAL MYSTERY TOUR」を加えた13作14枚には収録されていない、シングルやEPのみでリリースされた楽曲を集めたものですが、今回は編集アルバム「PAST MASTERS VOLUME TWO」を紹介します。内容は、1「DAY TRIPPER」、2「WE CAN WORK IT OUT」、3「PAPERBACK WRITER」、4「RAIN」、5「LADY MADONNA」、6「THE INNER LIGHT」、7「HEY JUDE」、8「REVOLUTION」、9「GET BACK」、10「DON'T LET ME DOWN」、11「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」、12「OLD BROWN SHOE」、13「ACROSS THE UNIVERSE」、14「LET IT BE」、15「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」の、全15曲入りです。基本的にはシングルのみでオリジナル・アルバムには未収録曲をリリース順に並べてありますけれど、1966年の「PAPERBACK WRITER / RAIN」と、1968年の「LADY MADONNA / THE INNER LIGHT」の間が抜けています。その1967年のシングル3作6曲(「STRAWBERRY FIELDS FOREVER / PENNY LANE」、「ALL YOU NEED IS LOVE / BABY YOU'RE RICH MAN」、「HELLO GOODBYE / I AM THE WALRUS」)と、EP「MAGICAL MYSTERY TOUR」全6曲(「MAGICAL MYSTERY TOUR」、「YOUR MOTHER SHOULD KNOW」、「I AM THE WALRUS」、「THE FOOL ON THE HILL」、「FLYING」、「BLUE JAY WAY」)を加えた全12曲中重複している「I AM THE WALRUS」の除いた全11曲が、米国キャピトル編集アルバム「MAGICAL MYSTERY TOUR」に収録されて、初CD化のラインナップに加わったからなのです。
つまり、英国オリジナルでは44曲もの曲がオリジナル・アルバムには未収録で、シングルやEPでしか聴けなかったのです。特に驚かされるのは1968年の「HEY JUDE」で、7分を越える長尺な曲を敢えてシングルでリリースして、同時期にレコーディングしていたアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」2枚組全30曲入りには収録していなかった事実です。それを見逃さなかった米国キャピトルは、1970年2月26日に編集アルバム「HEY JUDE」(2014年1月21日に初CD化)をリリースしています。編集アルバム「HEY JUDE」の内容は、A面が、1「CAN'T BUY ME LOVE」、2「I SHOULD HAVE KNOWN BETTER」、3「PAPERBACK WRITER」、4「RAIN」、5「LADY MADONNA」、6「REVOLUTION」で、B面が、1「HEY JUDE」、2「OLD BROWN SHOE」、3「DON'T LET ME DOWN」、4「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」の全10曲入りで、上手い具合に1966年から1969年のシングルのみでアルバム未収録曲を拾っていたのですけれど、最初の2曲が1964年のアルバム「A HARD DAY'S NIGHT」からなので場違いです。それを「THE INNER LIGHT」と「GET BACK」シングル・ヴァージョン辺りにしていれば、初CD化のラインナップに編集アルバム「MAGICAL MYSTERY TOUR」同様に入っていたかもしれません。但し、もしもそうなっていたならば、この「PAST MASTERS VOLUME TWO」の内容は、益々スカスカになっていたでしょうなあ。アルバム「PAST MASTERS VOLUME TWO」は、1「DAY TRIPPER」と、2「WE CAN WORK IT OUT」が、1965年12月3日リリースの英国では11作目で初の両A面シングル「DAY TRIPPER / WE CAN WORK IT OUT」からで、この2曲はそれぞれがジョン主導とポール主導ではあるものの、両方共にレノン=マッカートニーの合作と云って良いでしょう。ポール・マッカートニーがソロ・ライヴで「DAY TRIPPER」を演奏した時には、カッコ良過ぎてシビレました。3「PAPERBACK WRITER」と、4「RAIN」は、1966年6月10日リリースの英国では12作目のシングル「PAPERBACK WRITER / RAIN」からで、A面の「PAPERBACK WRITER」がポール主導で、B面の「RAIN」がジョン主導で書かれたレノン=マッカートニー作です。「RAIN」がB面なんですから、恐ろしいバンドですなあ。
前述の理由から1967年は飛ばされて、5「LADY MADONNA」と、6「THE INNER LIGHT」は、1968年3月15日リリースの英国では17作目のシングル「LADY MADONNA / THE INNER LIGHT」からで、A面の「LADY MADONNA」はポールが主導で書いたレノン=マッカートニー作で、B面の「THE INNER LIGHT」がジョージ・ハリスン作で、ジョージの曲がシングルに選ばれた(ジョン・レノンが推した)のは初めてでした。7「HEY JUDE」と、8「REVOLUTION」は、1968年8月30日リリースの英国では18作目のシングル「HEY JUDE / REVOLUTION」からで、「HEY JUDE」はポール主導で、「REVOLUTION」はジョンが主導で書いた、レノン=マッカートニー作です。このシングルからアップルからのリリースとなりましたが、「REVOLUTION」がB面なんですよ。9「GET BACK」と、10「DON'T LET ME DOWN」は、1969年4月11日リリースの英国では19作目のシングル「GET BACK / DON'T LET ME DOWN」からで、A面の「GET BACK」はポール主導で、B面の「DON'T LET ME DOWN」はジョンが主導で書いた、レノン=マッカートニー作で、この2曲は「with Billy Preston」と表記されています。それにしても、名曲「DON'T LET ME DOWN」がB面なんですからねえ。11「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」と、12「OLD BROWN SHOE」は、1969年5月30日にリリースされた英国では20作目のシングル「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO / OLD BROWN SHOE」からで、A面の「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」はジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作で、B面の「OLD BROWN SHOE」はジョージ作です。「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」は、ジョンとヨーコさんのプライベートな話を、ジョンとポールの二人だけでレコーディングしていて、それをビートルズとしてシングルにしちゃうんですから、もう無茶苦茶ですなあ。13「ACROSS THE UNIVERSE」は、1969年12月22日にリリースされたオムニバス・アルバム「NO ONE'S GONNA CHANGE OUR WORLD」に収録されたヴァージョンです。
こちらは、サー・ジョージ・マーティンがプロデュースしていて、1968年2月のレコーディング・セッションからテープ・スピードを上げてリミックスしています。鳥のさえずりがSEで使われているので、通称「バード・ヴァージョン」と云われています。1970年5月8日にリリースされるフィル・スペクターがプロデュースしたアルバム「LET IT BE」に収録されたヴァージョンは、逆にテープ・スピードを遅くして、オーケストラや女性コーラスをオーバーダビングしていますが、どちらも元になったのは1968年2月の同じテイクです。14「LET IT BE」と、15「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」は、1970年3月6日リリースの英国では22作目で現役時代では最後のシングル「LET IT BE / YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」からで、14「LET IT BE」はポール主導で、15「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」はジョンが主導で書いた、レノン=マッカートニー作です。14「LET IT BE」は、サー・ジョージ・マーティンがプロデュースしたシングル・ヴァージョンで、フィル・スペクターがプロデュースしたアルバム・ヴァージョンとはミックスが大きく違っているものの、元になったのは1969年1月31日の同じテイクです。ポールはこの曲の3番の歌詞が出来ていなくて、レコードになったこのテイク(Take 27)でしか3番の歌詞を歌っていません。映画「LET IT BE」に使われた「Take 28(Take 27 b)」での3番の歌詞は、微妙に違っています。15「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」は、元々は1967年5月から6月にかけてベーシック・トラックをレコーディング(ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズがサックスで参加)した音源に、1969年4月30日になってジョンとポールが出鱈目なヴォーカルを入れた楽曲で、ジョンは「プラスティック・オノ・バンド」のシングルにする心算だったものの反対されて、こうしてビートルズのシングルのB面になった曲です。お陰で、ビートルズは「YESTERDAY」や「HEY JUDE」や「LET IT BE」だけではないと、証明する曲となったわけですなあ。
オリジナルの編集アルバム「PAST MASTERS VOLUME TWO」では、この「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」だけがモノラル・ミックスで、他の14曲はステレオ・ミックスで収録されて、全世界統一規格化されました。ビートルズのオールタイム・ベスト・アルバムである「THE BEATLES 1962-1966(赤盤)」と「THE BEATLES 1967-1970(青盤)」が初CD化されたのは、1993年9月20日です。それまでの間には、シングルのみの楽曲は、編集アルバム「PAST MASTERS VOLUME ONE」と「PAST MASTERS VOLUME TWO」以外では、1989年11月6日(3インチ盤)と1992年11月2日(5インチ盤)リリースのシングルの箱と、1992年6月15日リリースのEPの箱でしかCDでは聴けない状況でした。ところが、「赤盤」と「青盤」のCD化によって、「FROM ME TO YOU」、「SHE LOVES YOU」、「I WANT TO HOLD YOUR HAND」、「I FEEL FINE」、「WE CAN WORK IT OUT」、「DAY TRIPPER」、「PAPERBACK WRITER」、「LADY MADONNA」、「HEY JUDE」、「REVOLUTION」、「GET BACK」シングル・ヴァージョン、「DON'T LET ME DOWN」、「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」、「OLD BROWN SHOE」、「LET IT BE」シングル・ヴァージョン、と云ったシングルのみでのリリースだった代表曲が収録されてしまったのです。おそらく「赤盤」と「青盤」のCDを「PAST MASTERS」と同時期にリリースしていたならば、全213曲完全制覇を狙っていたビートルズ・ファン以外には「PAST MASTERS」は見向きもされなかったでしょう。普通の人は、アルバムには未収録だった大ヒット曲である「SHE LOVES YOU」や「I WANT TO HOLD YOUR HAND」や「HEY JUDE」や「LET IT BE」シングル・ヴァージョンなどが聴きたくて「PAST MASTERS」を買ったわけで、決して「I'LL GET YOU」や「SIE LIEBT DICH」や「RAIN」や「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」が聴きたいわけではなかったでしょう。結果的にはそう云う裏のビートルズを聴かせる事となった意味は、大きいかと存じます。
(小島イコ)
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