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2025年11月08日

「ポールの道」#905「THE BEATLES BLACK VOX」
#214「YELLOW SUBMARINE」

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1968年11月22日に、英国オリジナルでは9作目のオリジナル・アルバム「THE BEATLES」をアップルからリリースしたビートルズですが、ポール・マッカートニーは不満でした。それと云うのもアルバム「THE BEATLES」は、タイトルに反して4人それぞれのソロを全30曲並べた様な内容となってしまったからです。しかしながら、アルバム「THE BEATLES」を聴いて思うのは、当の本人であるポール・マッカートニーのソロ曲やポール・マッカートニー&ザ・ビートルズによる曲が多く、ジョン・レノンやジョージ・ハリスンやリンゴ・スターの曲には、それ程にはソロと云える曲は多くはありません。ポールが不安を募らせたのは、ローリング・ストーンズのテレビ特番「ROCK AND ROLL CIRCUS」に、アルバム「THE BEATLES」をリリースした直後の同年12月に「ダーティー・マック」と云う名のスーパー・バンド(ジョン・レノン、エリック・クラプトン、キース・リチャーズ、ミッチ・ミッチェル)が出演して、ビートルズの「YER BLUES」を披露したからでもありました。しかし、それも、マイケル・リンゼイ=ホッグ監督が最初はポールに出演を打診したのに、ポールが煮え切らなくて、それならばと、ジョンへ声を掛けたら二つ返事で出演を快諾したばかりか、エリック・クラプトンを連れてやって来たのです。つまり、アルバム「THE BEATLES」をソロばかりにしたのも、ジョンに「ダーティー・マック」を結成させたのも、ポール自身のせいなのです。そもそも、何故マイケル・リンゼイ=ホッグ監督は、ポールとジョン個人ではなく、ビートルズに声を掛けなかったのでしょうか。マイケル・リンゼイ=ホッグ監督は、1966年5月には「PAPER BACK WRITER」と「RAIN」のプロモーション・フィルムを、1968年9月には「HEY JUDE」と「REVOLUTION」のプロモーション・フィルムを手掛けていて、1970年に公開される映画「LET IT BE」も監督しているわけで、ビートルズとは昵懇の仲だったのです。もしかしたら、ビートルズとして出演してもらう事を想定して、ポールに声を掛けたのかもしれません。テレビ番組「ROCK AND ROLL CIRCUS」は、結局はお蔵入りして、公式に発表されたのは1996年です。

このままではビートルズがバラバラになってしまうと考えたポールは、1968年12月に「THE GET BACK SESSIONS」を考案して、年明けの1969年1月2日から1月16日までの平日に、トゥイッケナム・フィルム・スタジオでリハーサルを敢行します。1月10日にはジョージ・ハリスンが脱退する事態にもなりますが、条件付きでジョージが復帰して、ビリー・プレストンがキーボード奏者として加わって、1969年1月20日から1月31日までは、土日返上でアップル・スタジオで「ルーフトップ・コンサート」も含むレコーディング・セッションを行いました。原点回帰を掲げてビートルズの4人だけで演奏して、ノーオーバーダビングでバンドの結束を固めるはずの「THE GET BACK SESSIONS」は、ポールが想定していたのとは真逆の方向へ進み、ビートルズは解散へと向かってしまうのです。ビートルズの英国では10作目のオリジナル・アルバム「YELLOW SUBMARINE」は、そんな「THE GET BACK SESSIONS」が進行中だった1969年1月17日に、アップルからリリースされました。内容は、A面が、1「YELLOW SUBMARINE」、2「ONLY A NORTHERN SONG」、3「ALL TOGETHER NOW」、4「HEY BULLDOG」、5「IT'S ALL TOO MUCH」、6「ALL YOU NEED IS LOVE」で、B面が、1「PEPPERLAND」、2「SEA OF TIME」、3「SEA OF HOLES」、4「SEA OF MONSTERS」、5「MARCH OF MEANIES」、6「PEPPERLAND LAID WASTE」、7「YELLOW SUBMARINE IN PEPPERLAND」の、全13曲入りです。コレはアニメ映画「YELLOW SUBMARINE」のサントラ盤で、レコードではA面の6曲がビートルズの演奏で、B面の7曲はサー・ジョージ・マーティンによるインストゥルメンタル曲です。そして、ビートルズの6曲中2曲(「YELLOW SUBMARINE」と「ALL YOU NEED IS LOVE」)は既発曲で、新曲はたったの4曲(「ONLY A NORTHERN SONG」、「ALL TOGETHER NOW」、「HEY BULLDOG」、「IT'S ALL TOO MUCH」)だけです。

しかも、その4曲は蔵出しで、全てが1967年2月から1968年2月にかけてレコーディングされています。A面の、1「YELLOW SUBMARINE」は、1966年リリースのアルバム「REVOLVER」とシングルで既発曲で、レノン=マッカートニーの合作でリンゴが歌っていますが、アニメ映画の主題歌なのでこちらにも収録されました。2「ONLY A NORTHERN SONG」は、1967年2月と4月にレコーディングされたジョージ作で、1967年リリースのアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」のボツ音源です。3「ALL TOGETHER NOW」は、ポールが主導で書いたレノン=マッカートニー作で、1967年5月のレコーディング曲です。4「HEY BULLDOG」は、このアルバムでは最も遅くレコーディングされていますが、ジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作で、1968年2月にシングル「LADY MADONNA」のプロモーション・フィルムを撮影した時にレコーディングした曲です。5「IT'S ALL TOO MUCH」は、ジョージ作で、1967年5月から6月にかけてレコーディングされていて、公式音源でも6分半近くありますけれど、アウトテイクでは8分を越えている楽曲で、コレはジョージの傑作のひとつだと思います。最後の、6「ALL YOU NEED IS LOVE」は、ジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作で、1967年6月25日に全世界衛星中継のテレビ番組「OUR WORLD」で新曲として披露されて、1967年7月7日にシングルがリリースされて、米国キャピトル編集アルバム「MAGICAL MYSTERY TOUR」にも収録されましたが、アニメ映画のクライマックスで流れるので、こちらにも収録されています。ジョンの「ALL YOU NEED IS LOVE」と、ポールの「ALL TOGETHER NOW」と、ジョージの「IT'S ALL TOO MUCH」は、3人で「OUR WORLD」用の新曲を競って書いていて、ジョンの「ALL YOU NEED IS LOVE」が勝ったので、他の2曲は「アニメ用」となったのだそうです。B面はサー・ジョージ・マーティン指揮によるオーケストラ演奏で、サー・ジョージ・マーティンはアルバムに入れる為にわざわざ全曲をレコーディングし直しています。

サー・ジョージ・マーティンがノリノリでも、流石にビートルズの新曲が4曲では弱いと考えていて、蔵出しの新曲4曲である「ONLY A NORTHERN SONG」と「ALL TOGETHER NOW」と「HEY BULLDOG」と「IT'S ALL TOO MUCH」に、1968年2月のジョン作のボツ音源「ACROSS THE UNIVERSE」を加えた5曲収録のEPでリリースする案もあったようです。それを裏付けるのが、2009年9月9日にリリースされた箱「THE BEATLES IN MONO」に入っている「MONO MASTERS」で、なんとその5曲の真正モノラル・ミックスが収録されているのです。しかし、1967年のEP「MAGICAL MYSTERY TOUR」が受け入れられなかったので、何とかアルバムにしようとなったのでしょう。アルバム「YELLOW SUBMARINE」は、英国ではステレオ盤とモノラル盤でリリースされていますが、アルバムのモノラル盤はステレオ・ミックスをモノラルにしただけのインチキ・ミックスです。「ONLY A NORTHERN SONG」はモノラル・ミックスしかなかったので、ステレオ盤に疑似ステレオを入れて、モノラル盤にはその疑似ステレオをモノラルにすると云う訳が分からない事をしています。故に「MONO MASTERS」の売りのひとつは、前述の5曲が真正モノラル・ミックスで収録された事です。アルバム「YELLOW SUBMARINE」は、1987年8月24日にステレオ・ミックスで初CD化されましたが、おそらく、ビートルズのアルバムで最も人気がないのでしょう。それで、1999年9月13日に、リミックス盤「YELLOW SUBMARINE SONGTRACK」がリリースされました。こちらはアニメ映画「YELLOW SUBMARINE」で使われたビートルズによる15曲がステレオ・リミックスされて収録されていて、中期のベスト・アルバムとしても聴く事が出来ます。内容は、1「YELLOW SUBMARINE」、2「HEY BULLDOG」、3「ELEANOR RIGBY」、4「LOVE YOU TO」、5「ALL TOGETHER NOW」、6「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、7「THINK FOR YOURSELF」、8「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、9「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、10「BABY YOU'RE A RICH MAN」、11「ONLY A NORTHERN SONG」、12「ALL YOU NEED IS LOVE」、13「WHEN I'M SIXTY-FOUR」、14「NOWHERE MAN」、15「IT'S ALL TOO MUCH」の、全15曲入りです。

そのアルバム「YELLOW SUBMARINE SONGTRACK」は、初めてサー・ジョージ・マーティン以外のエンジニアであるピーター・コビンが担当していて、所謂ひとつの「ビートルズの現役時代を知らない人」によってリミックスされています。それで、オリジナルを聴いてきた古参ファンからは文句を云われましたし、現在ではジャイルズ・マーティンとサム・オケルが毎年の様にビートルズの新作を発売する度に、ネチネチと文句を云われているのでしょうなあ。アルバム「YELLOW SUBMARINE」は、その1999年のアルバム「YELLOW SUBMARINE SONGTRACK」はなかった事にされて、2009年9月9日にステレオのリマスター盤(箱とバラ売り)がアップルからリリースされました。モノラル盤はインチキ・ミックスだったので、箱「THE BEATLES IN MONO」には入っていません。但し、前述の通り新曲4曲と「ACROSS THE UNIVERSE」の5曲の真正モノラル・ミックスは「MONO MASTERS」に収録されています。2023年11月10日にアップルからリリースされたベスト・アルバム「THE BEATLES 1962-1966(赤盤)」には「YELLOW SUBMARINE」の2022年ステレオ・リミックスが収録されていますが、それはあくまでもアルバム「REVOLVER」の収録曲としての扱いです。同日リリースのベスト・アルバム「THE BEATLES 1967-1970(青盤)」には、「ALL YOU NEED IS LOVE」の2015年ステレオ・リミックスが収録されていますが、それは1967年のシングル曲としての扱いです。このアルバムからは「HEY BULLDOG」が、新たに2023年ステレオ・リミックスで収録されています。アルバム「YELLOW SUBMARINE」のステレオ盤は、後半のモノラル・ミックスをステレオ・ミックスに出来なかったので、「ONLY A NORTHERN SONG」が疑似ステレオで収録されていますが、2009年リマスター盤では真正モノラル・ミックスで収録されています。ステレオ・ミックスをモノラルにしただけのアルバム「YELLOW SUBMARINE」のモノラル盤では、「YELLOW SUBMARINE」と「ALL YOU NEED IS LOVE」が真正モノラル・ミックスとは違っています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする