
1965年のビートルズは、世界ツアーをやりながら、ラジオやテレビにも引っ張りだこで、2作目の映画「HELP!」も撮影して公開している中で、新曲も途切れる事なくリリースしていました。1965年4月9日にはシングル「TICKET TO RIDE / YES IT IS」を、1965年7月23日にはシングル「HELP! / I'M DOWN」を、英国パーロフォンからリリースして、1965年8月6日には5作目のアルバム「HELP!」を英国パーロフォンからリリースしています。アルバム「HELP!」全14曲中、既発シングルのA面2曲(「TICKET TO RIDE」、「HELP!」)はアルバムにも収録されていますけれど、B面の2曲(「YES IT IS」、「I'M DOWN」)は未収録です。1965年前半で新曲を16曲もリリースしていて、米国キャピトル編集アルバムで先出しされた「BAD BOY」も加えれば17曲もリリースしていました。そして、1965年12月3日には、シングル「DAY TRIPPER / WE CAN WORK IT OUT」と、6作目のアルバム「RUBBER SOUL」を英国パーロフォンから同時にリリースしていて、シングルは全英5週連続首位!で、アルバムは全英12週連続首位!となっています。両A面曲である「DAY TRIPPER」と「WE CAN WORK IT OUT(恋を抱きしめよう)」はアルバム未収録で、「DAY TRIPPER」はジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作でジョンとポールが二人で歌っていて、「WE CAN WORK IT OUT」はレノン=マッカートニーの合作でポールが歌っています。その強力な2曲を含まない6作目のアルバム「RUBBER SOUL」の内容は、A面が、1「DRIVE MY CAR」、2「NORWEGIAN WOOD(THIS BIRD HAS FLOWN)」、3「YOU WON'T SEE ME」、4「NOWHERE MAN」、5「THINK FOR YOURSELF」、6「THE WORD」、7「MICHELLE」で、B面が、1「WHAT GOES ON」、2「GIRL」、3「I'M LOOKING THROUGH YOU」、4「IN MY LIFE」、5「WAIT」、6「IF I NEEDED SOMEONE」、7「RUN FOR YOUR LIFE」の、全14曲入りです。タイトルは黒人ブルースマンがローリング・ストーンズを「プラスティック・ソウル」と揶揄した発言から、ポール・マッカートニーが考案したものです。
アルバム「RUBBER SOUL」の全14曲は、11曲がレノン=マッカートニー作で、2曲がジョージ・ハリスン作で、1曲がレノン=マッカートニー=スターキー作の、全曲オリジナルです。前述の通り、シングル「DAY TRIPPER / WE CAN WORK IT OUT」は未収録なので、1965年後半の新曲は16曲で、1965年のビートルズは33曲も新曲をリリースしています。コレが米国キャピトル盤では、1965年12月6日にアルバム「RUBBER SOUL」をリリースするものの全12曲入りで、しかも2曲(「I'VE JUST SEEN A FACE」、「IT'S ONLY LOVE」)は英国での前作アルバム「HELP!」の収録曲です。残りの4曲(「DRIVE MY CAR」、「NOWHERE MAN」、「IF I NEEDED SOMEONE」、「WHAT GOES ON」)は、1966年6月20日にリリースされたブッチャー・カバーで有名な編集アルバム「YESTERDAY AND TODAY」に回されています。アルバム「YESTERDAY AND TODAY」には、既発シングル「DAY TRIPPER / WE CAN WORK IT OUT」も収録されていて、米国キャピトルは独自に「NOWHERE MAN / WHAT GOES ON」もシングル・カットしているので、もう滅茶苦茶でした。ちなみに英国では、アルバム「RUBBER SOUL」からは1曲もシングル・カットされていません。A面の、1「DRIVE MY CAR」は、ポールが主導で書いたレノン=マッカートニー作ですが、全編に渡ってジョンとポールが二人で歌っているモータウン風の曲です。2「NORWEGIAN WOOD(THIS BIRD HAS FLOWN)(ノルウェーの森)」は、ジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作でジョンが歌っていて、ジョージが初めてシタールを弾いています。3「YOU WON'T SEE ME」は、ポールが主導で書いたレノン=マッカートニー作でポールが歌っています。4「NOWHERE MAN(ひとりぼっちのあいつ)」は、ジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作でジョンが歌っていますが、ジョンとポールとジョージが3声でコーラスしている傑作です。5「THINK FOR YOURSELF(嘘つき女)」は、ジョージ作でジョージが歌っていますが、ポールのファズ・ベースが目立っています。
6「THE WORD(愛のことば)」は、ジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作で、ジョンが歌っています。6「MICHELLE」は、レノン=マッカートニーの合作でポールが歌っている名曲です。ひっくり返してB面の、1「WHAT GOES ON(消えた恋)」は、レノン=マッカートニーにリンゴ・スター(サー・リチャード・スターキー)が加わった共作で、アルバムに1曲のリンゴの歌ですが、リンゴは言葉を5コ位考えただけだそうです。前作「HELP!」に続いてB面1曲目がリンゴの歌なのは、ソコにしか置きようがないからでしょうなあ。2「GIRL」は、ジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作で、ジョンが歌った佳曲ですけれど、1965年11月11日の最終セッションで、「YOU WON'T SEE ME」と蔵出し「WAIT」と共にギリギリで絞り出した曲です。3「I'M LOOKING THROUGH YOU(君はいずこへ)」は、ポールが主導で書いたレノン=マッカートニー作でポールが歌っています。この曲のイントロでギターをトチっているヴァージョン(米国キャピトル盤「RUBBER SOUL」のステレオ・ミックス)は、ミックス違いの泥沼に入るキッカケとなっています。4「IN MY LIFE」は、レノン=マッカートニーの共作でジョンが歌っている名曲ですが、詞はジョンで確定ですけれど、曲は双方が自分が中心で書いたと云っています。5「WAIT」は、レノン=マッカートニーの共作で二人で歌っていますが、コレは時間がなくて前作アルバム「HELP!」のアウトテイクをリメイクした曲です。6「IF I NEEDED SOMEONE(恋をするなら)」は、ジョージ作でジョージが歌っていて、1966年の来日公演でも、1991年の来日公演でも披露してくれました。最後の、7「RUN FOR YOUR LIFE(浮気娘)」は、ジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作で、ジョンが歌っているものの、ジョン自身は「クズ曲」と云っていました。それなのに何故、アルバム「RUBBER SOUL」のレコーディング・セッションの最初にレコーディングされていて、アルバムの最後に収録されているのでしょうか。曲を書いたのは、ジョンが9曲、ポールが7曲、ジョージが2曲、リンゴが1曲で、歌っているのは、ジョンが8曲、ポールが5曲、ジョージが2曲、リンゴが1曲で、ポールが量だけではなく質でも追い上げて来ました。
アルバム「RUBBER SOUL」は、1987年4月30日に初CD化されているのですけれど、その時にはサー・ジョージ・マーティンがステレオ・リミックスした音源になっていました。アルバム「RUBBER SOUL」のオリジナル・ステレオ・ミックスは、ヴォーカルが基本的に右で、演奏が左右に泣き別れしていて、サー・ジョージ・マーティンは以前から気に入っていなかったのです。リリース当時にサー・ジョージ・マーティンがそう云うステレオ・ミックスをしたのは、モノラル・プレイヤーでステレオ盤をかけても効果が出る様に考えていたからだったそうです。つまり、失敗しちゃったのです。それで、1976年6月7日リリースの編集アルバム「ROCK'N'ROLL MUSIC」の米国盤に収録された「DRIVE MY CAR」や、1977年にリリースの編集アルバム「LOVE SONGS」に収録された4曲(「GIRL」、「IN MY LIFE」、「MICHELLE」、「NORWEGIAN WOOD(THIS BIRD HAS FLOWN)」)は、英国盤と米国盤ではそれぞれ別の左右が逆でセンター寄りのステレオ・リミックスで収録されています。そして、2006年には、米国編集盤「RUBBER SOUL」が先にリマスターされて、ステレオとモノラルの「2in1」でリリースされています。2009年9月9日にステレオ・ミックス(箱とバラ売り)とモノラル・ミックス(箱)がリマスターされたものの、レギュラーとなったステレオ盤は、1987年のステレオ・サー・ジョージ・マーティン・リミックスのリマスターです。そして、オリジナル・ステレオ・ミックスは、モノラル盤に追加収録されています。1973年4月にリリースされたベスト・アルバム「THE BEATLES 1962-1966(赤盤)」には、そもそも何故かこの「RUBBER SOUL」から6曲も選ばれていたのですけれど、2023年11月10日にアップルからリリースされたベスト・アルバム「THE BEATLES 1962-1966(赤盤)」の拡張盤には、同時期のシングル「WE CAN WORK IT OUT」と「DAY TRIPPER」に、アルバム「RUBBER SOUL」から、「DRIVE MY CAR」、「NORWEGIAN WOOD(THIS BIRD HAS FLOWN)」、「NOWHERE MAN」、「MICHELLE」、「IN MY LIFE」、「IF I NEEDED SOMEONE」(追加収録)、「GIRL」の7曲と、合計9曲が「2023年ステレオ・リミックス」で収録されています。
(小島イコ)
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