
1週間程ビートルズ本隊から話を逸らして、シャッグスを3回も続けてしまいましたが、久しぶりに話をビートルズに戻します。今回紹介するのは「UNDERCOVER」からリリースされた、1CDのブートレグ「UPGRADED COLLECTION - HIGHLIGHTS」です。既に各アルバムごとの関連ブートレグやパイレート盤に関しては2000年リリースの「1」や2015年リリースの「1+」まで進めていて、2017年から始まったアルバムごとの公式盤の箱や、2023年の「赤盤」と「青盤」の新装拡大盤も取り上げていますので、これからはランダムにビートルズのコンピレーション・アルバムを適当にピックアップして紹介していく予定です。このブートレグ「UPGRADED COLLECTION - HIGHLIGHTS」は、品番が「UC-001」となっているので、おそらく「UNDERCOVER」と云うレーベルが最初にリリースしたCDでしょう。ちなみに、コレの他にあたくしが持っている「UNDERCOVER」のブートレグは、以前紹介した1CDのブートレグ「YELLOW SUBMARINE SANDWICH」が「UC-004」で、ポール・マッカートニーのラジオ特番「OOBU JOOBUS」からの音源を集めたCD4枚組の「BEST JOOBUS」は「UC-005-1/2/3/4」です。実は、今回は別のブートレグを紹介する予定だったのですけれど、内容が聴いていてシャッグスとは違う意味で「気持ち悪い」ので、そんなブートレグを紹介するのも何だなあ、と思い、コレに変更しました。そのブートレグは、敢えてタイトルは伏せますけれど、「dap」からリリースされた「NOW AND THEN」です。ソレはですね、ソロになったビートルズのメンバーの曲を、リード・ボーカルだけ残して、バッキングは「AI」に学習させてビートルズ風に演奏させている音源集で、2枚組なんですけれど、1枚どころか1曲聴き通すのも苦痛なのです。
これまでも「AI」を使ったブートレグは紹介してきましたけれど、どうも最近は度を越した「AI・ビートルズ」がブートレグの世界では蔓延っているみたいで、あんまりにも酷い出来栄えなので、タイトルに「AI」が入っているブートレグを買うのは止めました。そうなるとですね、結局はリマスター位で留めてあった昔のブートレグに愛着が湧いてくるわけです。このブートレグ「UPGRADED COLLECTION - HIGHLIGHTS」も、そんな昔のブートレグのひとつです。内容は、1「SHOUT」、2「I'M A LOSER」、3「THAT MEANS A LOT」、4「YESTERDAY」、5「AND YOUR BIRD CAN SING」、6「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」、7「WHEN I'M SIXTY-FOUR」、8「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」、9「ONLY A NORTHERN SONG」、10「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」、11「YOUR MOTHER SHOULD KNOW」、12「ACROSS THE UNIVERSE」、13「SOUR MILK SEA」、14「HELTER SKELTER / GONE TOMORROW HERE TODAY / BLACKBIRD」、15「WHAT ABOUT BRIAN EPSTEIN?」、16「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」、17「NOT GUILTY」、18「GONE, GONE, GONE」、19「ACROSS THE UNIVERSE」、20「MEAN MR. MUSTARD / HER MAJESTY / POLYTHENE PAM / SHE CAME IN THROUGH THE BATHROOM WINDOW」、21「FREE AS A BIRD」、22「WHATEVER HAPPENED TO...」、23「INDIA」の、全23曲入りです。メドレーを分けると、全28曲も詰め込んであります。コレの良いところはですね、まだ「AI」技術が発達する前のブートレグなので、聴いていて気持ちが悪くなる様な「エセ・ビートルズ」ではない点ですなあ。
1「SHOUT」は1964年4月にテレビ番組「アラウンド・ザ・ビートルズ」用にレコーディングしたアイズレー・ブラザーズのカバーで、公式盤「ANTHOLOGY 1」に収録された編集ヴァージョンよりも長く演奏が聴けます。2「I'M A LOSER」は1964年12月リリースのアルバム「BEATLES FOR SALE」用の「Take 2」で通常のスピードに戻されていて、3「THAT MEANS A LOT」は1965年8月リリースのアルバム「HELP!」用のポール・マッカートニー世紀の駄作のボツ音源(Version 2)で、こんなもんまで通常のスピードに戻されています。4「YESTERDAY」は前曲と同じ1965年8月リリースのアルバム「HELP!」に収録されたポール・マッカートニー世紀の傑作ですが、コレは完成テイクから弦楽四重奏を抜いたインチキ・ミックスです。「THAT MEANS A LOT」と「YESTERDAY」を同時期に書いたポールは、やっぱり二人いるんですよ。5「AND YOUR BIRD CAN SING」は1966年8月リリースのアルバム「REVOLVER」収録曲のアウトテイクで、公式盤「ANTHOLOGY 2」では入っているジョンとポールがゲラゲラ笑っている声が入っていません。6と8「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」は、1967年2月リリースのシングル曲のビートルズによる「Take 1」と、リテイクのスピードを元に戻した音源です。7「WHEN I'M SIXTY-FOUR」は1967年6月リリースのアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」収録曲のスピードを元に戻した音源で、9「ONLY A NORTHERN SONG」は、その1967年のアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」ではボツになって、1969年1月リリースのアルバム「YELLOW SUBMARINE」に収録されたジョージ・ハリスン作の曲を、やはり通常のスピードに戻した音源です。
10「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」は、1967年にバッキング・トラックが完成(ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズがサックスで参加)して、1969年にジョンとポールが出鱈目なボーカルを乗せて完成させて、結局は1970年3月リリースのシングル「LET IT BE」のB面になった曲の、アルバム「ANTHOLOGY 2」でのステレオ・ロング・ヴァージョンにエンディングだけシングル・モノラル・ヴァージョンを繋いだインチキ・ミックスです。11「YOUR MOTHER SHOULD KNOW」は、1967年12月に英国では2枚組EP「MAGICAL MYSTERY TOUR」に収録された曲の初期ミックスを通常のスピードに戻した音源で、この曲は米国キャピトル編集アルバム「MAGICAL MYSTERY TOUR」に収録されて、現在ではその米国編集盤がCD化されています。12「ACROSS THE UNIVERSE」は、1968年2月にシングル用にレコーディングされたもののボツ音源となり、1969年12月にチャリティー・アルバムにサー・ジョージ・マーティンのプロデュースで収録された曲を通常のスピードに戻した音源です。13「SOUR MILK SEA」は1968年5月に「イーシャー・デモ」で披露していたジョージ・ハリスン作の楽曲で、ジョージのプロデュースで1968年8月にジャッキー・ロマックスがアップルからシングルでリリースしていて、そっちのヴァージョンにはジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、ポール・マッカートニー、エリック・クラプトンが参加しています。14「HELTER SKELTER / GONE TOMORROW HERE TODAY / BLACKBIRD」は、1968年11月リリースのアルバム「THE BEATLES」のレコーディング・セッションでポールが演奏している音源で、この音源は個別には取り上げなかったのですけれど、1CDのブートレグ「GONE TOMORROW HERE TODAY」として出ていてあたくしも持っています。しかしながら、全19曲中13曲が「BLACKBIRD」なので、スルーしました。
15「WHAT ABOUT BRIAN EPSTEIN?」も、1968年のアルバム「THE BEATLES」のレコーディング・セッションでジョンが歌っている曲で、前年に亡くなったマネジャーのブライアン・エプスタインを揶揄しています。ちなみに、前曲もこの曲もアウトテイクなのに通常のスピードに戻した音源です。16「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」は、やはり1968年のアルバム「THE BEATLES」収録のジョージ作のアコースティックな「Take 1」で、これはこれで味があります。17「NOT GUILTY」も1968年のアルバム「THE BEATLES」用のジョージ作ですが、100テイク以上もレコーディングした挙句の果てにボツとなり、ジョージがこの曲を完成させるのは1979年12月リリースのソロ・アルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」の時です。18「GONE, GONE, GONE」は1969年1月の「THE GET BACK SESSIONS」音源で、19「ACROSS THE UNIVERSE」は1970年5月リリースのアルバム「LET IT BE」でフィル・スペクターがプロデュースした曲を通常のスピードに戻した音源です。20「MEAN MR. MUSTARD / HER MAJESTY / POLYTHENE PAM / SHE CAME IN THROUGH THE BATHROOM WINDOW」は、1969年9月リリースのアルバム「ABBEY ROAD」のレコードだと「B面メドレー」と云われるところの「HER MAJESTY」を最初に構想した位置に戻したインチキ・ミックスです。こうしてブートレグでやる分には良いけれど、2019年9月リリースの公式盤の箱でもやらかしているのはイカンですなあ。21「FREE AS A BIRD」はヴァーチャル・ビートルズの第1弾で、コレが入っているので1995年よりも後にこのブートレグは制作されていると分かります。22「WHATEVER HAPPENED TO...」と、23「INDIA」は、ジョン・レノンのデモ音源ですが、「ニュー・バッキング」と書いてあるので、何かやらかしている感じもします。全体的にテープ・スピードを調整する程度の改変なので、気持ち悪くはなりません。
(小島イコ)
【関連する記事】
- 「ポールの道」#913「THE BEATLES BLACK VOX」
#222「P.. - 「ポールの道」#912「THE BEATLES BLACK VOX」
#221「S.. - 「ポールの道」#911「THE BEATLES BLACK VOX」
#220「M.. - 「ポールの道」#910「THE BEATLES BLACK VOX」
#219「P.. - 「ポールの道」#909「THE BEATLES BLACK VOX」
#218「P.. - 「ポールの道」#908「THE BEATLES BLACK VOX」
#217「P.. - 「ポールの道」#907「THE BEATLES BLACK VOX」
#216「L..

