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2025年10月03日

「ポールの道」#869「THE BEATLES BLACK VOX」
#178「OFF THE BEATLE TRACK」

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ビートルズのパイレート盤とブートレグを中心に紹介している、この「THE BEATLES BLACK VOX」も、ミュージック・ビデオ集の「1+」辺りまで進みました。今年(2025年)11月21日には、ボツ音源集の箱「ANTHOLOGY」と、その情報解禁から1か月近く経過してからバラ売りもすると姑息な手段を使った「ANTHOLOGY 4」もリリースされますので、この連載も「マダマダ、ツヅクヨ〜ン(ミック・ジャガー声で)」なのですけれど、ビートルズばっかり取り上げていても何ですから、今回から数回はビートルズに関連する、別のミュージシャンの作品を紹介します。今回は、サー・ジョージ・マーティンが1964年にリリースしたアルバム「OFF THE BEATLE TRACK」です。このアルバムに関しては、以前にサー・ジョージ・マーティンが1967年3月にリリースしたアルバム「GEORGE MARTIN INSTRUMENTALLY SALUTES THE BEATLE GIRLS」を取り上げた時に、軽く触れておりますが、再び、ガッツリと取り上げてみます。サー・ジョージ・マーティンは何作かのオーケストラ演奏によるビートルズや当時の他のバンドの曲をリリースしていますが、その発端となったのがこのアルバム「OFF THE BEATLE TRACK」です。このアルバムは、1964年7月10日に米国・ユナイテッド・アーティスツから、同年8月3日に英国・パーロフォンからリリースされていて、内容は全12曲が全てサー・ジョージ・マーティンによるアレンジのオーケストラ演奏による、ビートルズの楽曲をカバーしたインストゥルメンタル・アルバムとなっています。

内容は、A面が、1「ALL MY LOVING」、2「DON'T BOTHER ME」、3「CAN'T BUY ME LOVE」、4「ALL I'VE GOT TO DO」、5「I SAW HER STANDING THERE」、6「SHE LOVES YOU」で、B面が、1「FROM ME TO YOU」、2「THERE'S A PLACE」、3「THIS BOY」、4「PLEASE PLEASE ME」、5「LITTLE CHILD」、6「I WANT TO HOLD YOUR HAND」の、全12曲入りです。プロデューサーらしく、大ヒット曲も押さえつつ、渋い楽曲も選曲しています。リリースが1964年7月10日(米国)・同年8月3日(英国)で、それぞれ米国盤はユナイテッド・アーティスツから、英国盤はパーロフォンからのリリースと云う事で、ビートルズの初主演映画「A HARD DAY'S NIGHT」と連動させた企画だったと分かります。米国ユナイテッド・アーティスツからは、1964年6月26日にサントラ盤「A HARD DAY'S NIGHT」がリリースされていて、そちらには、「I SHOULD HAVE KNOWN BETTER」、「AND I LOVE HER」、「RINGO'S THEME(THIS BOY)」、「A HARD DAY'S NIGHT」の4曲が、サー・ジョージ・マーティンのオーケストラ・アレンジによるインストゥルメンタル曲として収録されていました。一方、本国である英国では、1964年7月10日にビートルズの3作目のオリジナル・アルバムとして「A HARD DAY'S NIGHT」がリリースされていて、そちらは全13曲がレノン=マッカートニーによるオリジナル曲で、全てがビートルズによる演奏で歌入りでした。一応、レコードだとA面の7曲が映画で使われていて、B面の6曲は映画には使われなかった曲となっています。

このサー・ジョージ・マーティンによるアルバム「OFF THE BEATLES TRACK」は、米国ではサントラ盤と被るのは「THIS BOY」だけで、そのアレンジはほとんど同じです。英国では、そもそもスコアを収録したレコードはリリースされていなかったので、サー・ジョージ・マーティンによるオーケストラ演奏が聴けるのは、この「OFF THE BEATLE TRACK」しかなかったのです。サー・ジョージ・マーティンとしては、初めて自分の名義でリリースしたレコードだったので、気合が入っているし、ジャケットには表も裏も、思いっ切りビートルズの4人と一緒に撮影した写真を使っていて、ライナーノーツはジョン・レノンが担当すると云う、完全なる便乗商法をやらかしています。個人的には、コレに限らず、サー・ジョージ・マーティンのアレンジでのインストゥルメンタル・アルバムは「流石は本物のプロデューサーがスコアを書いて指揮しているなあ」と思えて好きなのですけれど、ビートルズ旋風が巻き起こっていた1964年に、このアルバムは大して売れていません。まあ、当時はプロデューサーが何をしているのかも理解されていなかったでしょうし、前述の通り、サー・ジョージ・マーティンが自分の名前でリリースしたアルバムはコレが最初だったので「ジョージ・マーティンって誰?」状態だったのでしょう。と云うわけで、ビートルズ関係のアルバムではそれほど売れなかったので、後に結構なプレミアが付く事となったアルバムです。でもね、両面で26分17秒は短いよ。サー・ジョージ・マーティンはその後、1965年に「HELP!」、1966年に「AND I LOVE HER」、1967年に「GEORGE MARTIN INSTRUMENTALLY SALUTES THE BEATLE GIRLS」、1968年に「BY GEORGE!」を、ビートルズ現役時代にリリースしています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする