
1969年にデビュー・アルバム「PHILOSOPHY OF THE WORLD」を、父親が自主制作した千枚を配布したシャッグスは、ドロシー・ドット・ウィギン(ヴォーカル、リード・ギター)、ベティ・ウィギン(ヴォーカル、リズム・ギター)、ヘレン・ウィギン(ドラムス)のウィギン3姉妹からなるバンドです。プロデューサーは3姉妹の父親であるオースティン・ウィギン・ジュニアで、その母親(シャッグスにとっては祖母)の「3姉妹に音楽活動をさせれば大スターになる」と云う何の根拠もない預言を信じた為に、1965年に高校を中退させて家に閉じ込めて、3姉妹はそれまでは触った事すらなかったギターやドラムスの練習をさせられて、ドロシーはコード進行が何たるものかも知らずに曲作りをさせられたのです。そうしてたったの1日でおそらく一発録音でレコーディングされたのが、デビュー・アルバム「PHILOSOPHY OF THE WORLD」です。チューニングが狂ったギターを不規則なリズムで演奏して、リード・ギターは単音弾きで歌メロをなぞる様に演奏されて、ドラムスは絶妙にズレていて、ドロシーが書いた曲は単純ながら不安定で、歌声は抑揚がなく何処へ向かうのかが予測不能で、通常のルートからは外れ捲る、異様な音楽となっています。シャッグスはデビュー・アルバムをリリースした後に、従妹のレイチェル・ウィギンをベース・プレイヤーとして加入させて、ようやくマトモな編成となり、練習も以前よりは自発的に行う様になりました。そして、1975年になって6年ぶりの2作目のレコーディング・セッションを行っています。しかし、同年にプロデューサーである父親のオースティン・ウィギン・ジュニアが心臓発作で47歳の若さで亡くなってしまい、シャッグスは元々が父親の命令で結成させられたバンドなので、同1975年に解散しました。
ところが、デビュー・アルバム「PHILOSOPHY OF THE WORLD」が1970年代にカルト盤としてコピー盤が出回って、1980年にラウンダー・レコードからリイシュー盤がリリースされたのです。それが好評だったので、1982年には1969年から前述の1975年までの未発表音源を集めたコンピレーション・アルバム「SHAGGS' OWN THING」が同じくラウンダー・レコードからリリースされました。それが、CDの時代となった1988年に、コンピレーション・アルバム「THE SHAGGS」として同じくラウンダー・レコードからリリースされたのです。内容は、1「I'M SO HAPPY WHEN YOU'RE NEAR」、2「MY COMPANION」、3「THAT LITTLE SPORTS CAR」、4「SWEET THING」、5「PHILOSOPHY OF THE WORLD」、6「WHAT SHOULD I DO?」、7「MY PAL FOOT FOOT」、8「WHO ARE PARENTS」、9「THINGS I WONDER」、10「WHY DO I FEEL?」、11「IT'S HALLOWEEN」、12「WE HAVE A SAVIOR」、13「WHO ARE PARENTS」、14「YOU'RE SOMETHIN' SPECIAL TO ME」、15「WHEELS」、16「PAPER ROSES」、17「SHAGGS' OWN THING」、18「PAINFUL MEMORIES」、19「GIMME DAT DING」、20「MY CUTIE」、21「YESTERDAY ONCE MORE」、22「MY PAL FOOT FOOT」、23「I LOVE」、24「SHAGGS' OWN THING」、25「LOVE AT FIRST SIGHT」の、全25曲入りで、67分59秒もシャッグスをCDで聴けます。デビュー・アルバム「PHILOSOPHY OF THE WORLD」とコンピレーション・アルバム「SHAGGS' OWN THING」が単品でCD化されるよりも先に、このコンピレーション・アルバム「THE SHAGGS」はCD化されています。
コンピレーション・アルバムと云っても、1「I'M SO HAPPY WHEN YOU'RE NEAR」〜12「WE HAVE A SAVIOR」の12曲は、1969年のデビュー・アルバム「PHILOSOPHY OF THE WORLD」全12曲を何故か曲順を変えて全曲収録しています。13「WHO ARE PARENTS」は別テイクで、14「YOU'RE SOMETHIN' SPECIAL TO ME」〜24「SHAGGS' OWN THING」の11曲は、1982年のコンピレーション・アルバム「SHAGGS' OWN THING」を同じ曲順で全曲収録していて、25「LOVE AT FIRST SIGHT」は未発表曲です。つまり、このコンピレーション・アルバム「THE SHAGGS」は、ほぼ全曲集と云っても良い選曲になっていて、このCD1枚があれば、シャッグスの楽曲はほとんど全てが聴けます。前々回に紹介したデビュー・アルバム「PHILOSOPHY OF THE WORLD」と、前回に紹介したコンピレーション・アルバム「SHAGGS' OWN THING」も単品でCD化されていますが、音源だけ欲しい場合は、このコンピレーション・アルバム「THE SHAGGS」で充分でしょう。このコンピレーション・アルバム「THE SHAGGS」の裏ジャケットには、フランク・ザッパ先生のコメントとして「THE SHAGGS. BETTER THAN THE BEATLES - EVEN TODAY.」が掲載されていますけれど、前にも書いた通り、フランク・ザッパ先生はそんな事は云っていません。その後のシャッグスは、1999年にドロシーとベティで再結成(ヘレンは病気で不参加)して4曲披露していて、2001年にはトリビュート・アルバム「BETTER THAN THE BEATLES」がリリースされました。ヘレンは2006年に亡くなって、2017年にはドロシーとベティで2度目の再結成をしています。再結成と云っても、レコーディングしたのではなく、ライヴで数曲演奏しただけです。デビュー・アルバム「PHILOSOPHY OF THE WORLD」と比べると、コンピレーション・アルバム「SHAGGS' OWN THING」はマトモに聴ける様になっていますが、やっぱりシャッグスは、演奏や歌や作詞作曲能力が上手くなってはいけないバンドです。
(小島イコ)
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