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2025年10月06日

「ポールの道」#872「THE BEATLES BLACK VOX」
#181「BETTER THAN THE BEATLES」

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前回紹介したコンピレーション・アルバム「BRAVO! BEATLES THE BEATLES RELATIONS」は、主に「ビートルズ讃歌」を集めていましたが、1964年にビートルズが全米制覇を成し遂げた時には、そうした好意的な反応だけではありませんでした。今回紹介するのは、そうしたビートルズに対して敵意を剥きだしにした楽曲を中心に選曲されたコンピレーション・アルバム「BETTER THAN THE BEATLES」です。内容は、1「I'M BETTER THAN THE BEATLES」BRAD BERWICK、2「WE'RE THE WEAVILS」THE WEAVILS、3「HERE I AM IN LOVE AGAIN」THE WEAVILS、4「BUGG VS. BEETLES」THE BUGGS、5「AIN'T NO BEATLES」GARY SANDERS、6「THE BEETLE-BOMB」THE EXTERMINATORS、7「THE SPIRIT OF ’64」BOCKY & THE VISIONS、8「IT'S COMIN THRU THE DOORS」BOBBY & THE BLUE JAYS、9「BEATLE MANIACS」RAY RUFF & THE CHECKMATES、10「THE GUY WITH THE LONG LIVERPOOL HAIR」THE OUTSIDERS、11「YOU GOT ME BUGGED」THE PACERS、12「I LOVE YOU」TONY RIVERS & THE CASTWAYS、13「RINGO COMES TO TOWN」CHUG & DOUG、14「RINGO BOY」DORIE PEYTON、15「BEATLE BOUNCE」BOBBY COMSTOCK & THE COUNT、16「I WANNA BE A BEATLE」GENE COSTOCK & THE COUNT、17「OH MISERY」GENE COSTOCK & THE COUNT、18「THE BEETLE DANCE」ERNIE MARESCA、19「THE BEETLE」GARY USHER、20「ONLY SEVENTEEN」THE BEATLE-ETTES、21「LIVERPOOL」THE VULCANES、22「I DREAMED I WAS A BEATLE」MURRY KELLUM、23「THE BOY WITH THE BEATLE HAIR」THE SWANS、24「I WANT TO BE A BEATLE」BOBBY WILDING、25「LONG-HAIR」THE MOTIONS、26「LIKE RINGO」DICK LORD、27「BONUS TRACK」MR. REK-O-KUT、の全27曲入りです。

コンピレーション・アルバム「BRAVO! BEATLES THE BEATLES RELATIONS」全23曲とダブっているのは、ゲイリー・アッシャーの19「THE BEETLE」と、マレイ・クラムの22「I DREAMED I WAS A BEATLE(あこがれのビートルズ)」と、スワンズの23「THE BOY WITH THE BEATLE HAIR」の3曲しかありません。ほとんどが1964年から1965年にかけてリリースされたシングル曲で、いきなりだなあ、と「俺様はビートルズよりも偉大だ」と根拠もなく歌われるブラッド・バーウィックによる1「I'M BETTER THAN THE BEATLES」に始まって、ビートルズ人気に便乗しつつも対抗心を表した楽曲が多く選曲されています。こちらにも、13「RINGO COMES TO TOWN」や、14「RINGO BOY」や、26「LIKE RINGO」と云ったリンゴ・スターが主役の楽曲があって、米国でのリンゴの人気ぶりが伺えます。このコンピレーション・アルバムのタイトル曲とも云える1「I'M BETTER THAN THE BEATLES」から、2「WE'RE THE WEAVILS」、3「HERE I AM IN LOVE AGAIN」、4「BUGG VS. BEETLES」、5「AIN'T NO BEATLES」と云ったところは、ビートルズへのライバル心を剥きだしにしていますけれど、4「BUGG VS. BEETLES」は「I WANT TO HOLD YOUR HAND」の替え歌なのにレノン=マッカートニーの名前は載っていないし、5「AIN'T NO BEATLES」では、ビートルズと共にローリング・ストーンズも米国には必要ないんだよ、と歌っていて、英国からの侵略者をまとめてぶっ飛ばそうとしています。それなのに曲調は思いっ切りローリング・ストーンズ風であるところに、複雑な感情が伺えます。そんな曲が多い中で、前回紹介したコンピレーション・アルバム「BRAVO! BEATLES THE BEATLES RELATIONS」にも入っていたゲイリー・アッシャーの19「THE BEETLE」は、事を荒立てずに手堅くビートルズに便乗している辺りが、一発屋にすらなれなかった他のミュージシャンとは違っています。

6「THE BEETLE-BOMB」、7「THE SPIRIT OF ’64」、8「IT'S COMIN THRU THE DOORS」、9「BEATLE MANIACS」、10「THE GUY WITH THE LONG LIVERPOOL HAIR」、11「YOU GOT ME BUGGED」と続くところも、ビートルズの「イェー!イェー!イェー!」などを取り込んだ楽曲で、全体的にそうした便乗曲を集めてあるわけですけれど、中にはガールズ・グループのビートレッツによる、20「ONLY SEVENTEEN」の様に「I SAW HER STANDING THERE」に対するアンサー・ソングが入っていたりもするので、侮れません。12「I LOVE YOU」、15「BEATLE BOUNCE」、16「I WANNA BE A BEATLE」、17「OH MISERY」(Aメロがジョージ・ハリスンの処女作「DON'T BOTHER ME」とソックリ)、18「THE BEETLE DANCE」、21「LIVERPOOL」、24「I WANT TO BE A BEATLE」、25「LONG-HAIR」と云った曲も、このコンピレーション・アルバムで初めて聴いた曲ばかりです。と申しますか、前回に紹介したコンピレーション・アルバム「BRAVO! BEATLES THE BEATLES RELATIONS」とダブっている、ゲイリー・アッシャーの「THE BEETLE」と、マレイ・クラムの「I DREAMED I WAS A BEATLE(あこがれのビートルズ)」と、スワンズの「THE BOY WITH THE BEATLE HAIR」以外の本編全26曲中23曲は、このコンピレーション・アルバム「BETTER THAN THE BEATLES」で初めて聴いた曲ばかりですし、演奏しているバンドやミュージシャンも聞いた事もない名前ばかりです。最後の27は、ケアフリーズの「WE LOVE YOU BEATLES(ビートルズに首ったけ)」のサワリで、偶然でしょうけれど、前回に紹介したコンピレーション・アルバム「BRAVO! BEATLES THE BEATLES RELATIONS」に続く様になっています。それで、コレを聴いて連想したのは、本家のビートルズではなく、ガレージ・ロック集の「ナゲッツ」に近いと云うか、ズバリ云って日本の「カルトGS」です。あたくしは「ナゲッツ」も「カルトGS」も好きなので楽しく聴いていますけれど、普通のビートルズ・ファンはこんなカルト盤は聴かなくとも良いですよ。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする