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2025年09月20日

「ポールの道」#856「THE BEATLES BLACK VOX」
#165「THE BEATLES 1962-1966 ULTIMATE VIDEO COLLECTION」DISC1

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1960年代の現役時代のビートルズは、楽曲だけではなく、映像とリンクさせた1964年公開の映画「A HARD DAY'S NIGHT」や、1965年公開の映画「HELP!」や、1967年公開のテレビ映画「MAGICAL MYSTERY TOUR」や、1968年公開のアニメ映画「YELLOW SUBMARINE」や、1970年公開の映画「LET IT BE」などを発表していました。多忙な為にテレビ放送用にプロモーション・フィルム(以下、ミュージック・ビデオに統一)も制作していて、それらは1980年代になってから盛んになった「MTV」の元祖だと云われています。が、しかし、そう云ったビートルズのミュージック・ビデオは、全く商品化されずに、ビートルズの新作と云う触れ込みのリイシュー盤がリリースされる時に、1曲1回限定でニュース番組で放送されて、ファンはソレを必死でビデオに録画して楽しむと云う、いつでも手軽にYouTubeで観れる現在の感覚では信じられない様な状況でした。そんな状況だったので、1996年に「ANTHOLOGY」がビデオとレーザーディスクで全8巻で10時間が商品化された時には狂喜乱舞となったのですけれど、これまた現在の感覚だと「ビデオって何?」や「いやいや、レーザーディスクって何?」でしょうなあ。あたくしなんか「ANTHOLOGY」を観る為に、レイザーディスク・プレイヤーと大型テレビ(まだブラウン管だった)を買ってしまいました。「ANTHOLOGY」は後にDVD化されましたし、おそらく今年(2025年)の30周年記念「ANTHOLOGY」映像版はブルーレイでリリースされるでしょう。映像版「ANTHOLOGY」は10時間もありましたけれど、あくまでもドキュメンタリー作品なので、ミュージック・ビデオやライヴ映像は完全収録されてはいません。

ビートルズのミュージック・ビデオが公式盤としてまとめられたのは、なな、なんと、2015年11月6日リリースの「1」と「1+」で、ベスト・アルバム「1」をジャイルズ・マーティンとサム・オケルがリミックスして、その全27曲のミュージック・ビデオを収録したCD+BD(DVD)と、更に他のミュージック・ビデオ全23曲を収録したCD+2BD(2DVD)として、合計50曲のミュージック・ビデオが初公式盤となったのです。ビートルズが解散状態となったのは1970年ですから、この「1」と「1+」がリリースされるまで45年も経っていたのです。本当にビートルズ・ファンは辛抱強いと云うか、解散した頃に生まれて後追いでファンになった人が45歳になってやっと観れたわけで、もっと云えば、1966年のビートルズの来日公演を中学生で観たリアルタイムでは最も若かったであろうファンが、還暦になってようやく観れたと云う事になります。アップルには、そんなファンの青春を返してあげて欲しいとまでは云わないので、どんどん新作と称してリイシュー盤を出してもらってですね、ビートルズ・ファンは長生きをしなければなりません。ジョン・レノンのミュージック・ビデオ集「THE JOHN LENNON VIDEO COLLECTION」は1992年にビデオとレーザーディスクで出ていて、2003年には「LENNON LEGEND」がDVDで出ているし、ポール・マッカートニーのミュージック・ビデオ集「THE McCARTNEY YEARS 1970-2005」はDVD3枚組で2007年に出ているし、ジョージ・ハリスンも2004年の箱「THE DARK HORSE YEARS 1976-1992」と2014年の箱「THE APPLE YEARS 1968-1975」で主要なミュージック・ビデオを収録していましたし、ジョージの場合は覆面バンド「トラヴェリング・ウィルベリーズ」まで2007年にまとめられています。リンゴ・スターですら、2007年のベスト・アルバム「PHOTOGRAPH:THE VERY BEST OF RINGO」のDVDにミュージック・ビデオ6曲をまとめていました。

つまり、本隊であるビートルズのミュージック・ビデオ集が公式盤でリリースされる前に、4人のソロ(ポールはウイングスを含む)のミュージック・ビデオ集の方が先に世に出てしまったのです。そして、ポールの場合はその時点でもDVD3枚組にも及ぶ大作でした。そんなわけで、ビートルズが解散して45年も経った2015年になってようやく公式リリースされた「1」と「1+」ですけれど、収録されたのは「1」が全27曲で、「1+」が全50曲です。それらは全てが初BD化でしたから、そりゃあ、もう、大騒ぎだったのですけれど、ブートレグの世界では、ずっと昔からビデオ化されたりしていたわけで、公式が遂に動いたところで、DVD2枚組2セット合計DVD4枚組のミュージック・ビデオ集を「sgt.」が同じ2015年にリリースしています。それが「THE BEATLES 1962-1966 ULTIMATE VIDEO COLLECTION」(「赤盤」)と「THE BEATLES 1967-1970 ULTIMATE VIDEO COLLECTION」(「青盤」)です。公式盤の「1+」でも全50曲なのに、こちらはあるだけ入れているので、3倍位入っていますが、今回は「赤盤」の1枚目を紹介します。DISC1は、1「LOVE ME DO」、2「PLEASE PLEASE ME」、3「FROM ME TO YOU」、4「SHE LOVES YOU」、5「I WANT TO HOLD YOUR HAND」、6「ALL MY LOVING」、7「CAN'T BUY ME LOVE」、8「A HARD DAY'S NIGHT」、9「AND I LOVE HER」、10「EIGHT DAY'S A WEEK」、11「I FEEL FINE」、12「TICKET TO RIDE」、13「YESTERDAY」、14「HELP!」、15「YOU'VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY」、16「WE CAN WORK IT OUT」、17「DAY TRIPPER」、18「DRIVE MY CAR」、19「NORWEGIAN WOOD(THIS BIRD HAS FLOWN)」、20「NOWHERE MAN」、21「MICHELLE」、22「IN MY LIFE」、23「GIRL」、24「PAPERBACK WRITER」、25「ELEANOR RIGBY」、26「YELLOW SUBMARINE」と、公式の「赤盤」と同じ曲順に並べています。

つづいて、「ORIGINALS」として、27「LOVE ME DO」、28「TWIST AND SHOUT」、29「PLEASE PLEASE ME」、30「SHE LOVES YOU」、31「I FEEL FINE」、32「TICKET TO RIDE」、33「HELP!」、34「HELP!」、35「DAY TRIPPER」、36「DAY TRIPPER」、37「WE CAN WORK IT OUT」、38「WE CAN WORK IT OUT」、39「WE CAN WORK IT OUT」、40「PAPERBACK WRITER」、41「RAIN」、42「PAPERBACK WRITER」、43「PAPERBACK WRITER」、44「PAPERBACK WRITER」、45「RAIN」、46「RAIN」、47「RAIN」、48「RAIN」の全48曲入りで、122分もあって、もうDVDの1枚目の段階で「1+」の全50曲に近い曲が入っていて、しかもまだ1966年までの2枚組の1枚目なのです。ビートルズがコンサート活動で多忙だったので、テレビで演奏せずに済む様にミュージック・ビデオを作ろうとなったのは、1965年11月23日で、一気に5曲(「I FEEL FINE」、「TICKET TO RIDE」、「HELP!」、「DAY TRIPPER」、「WE CAN WORK IT OUT」)10テイクをトゥイッケナム・フィルム・スタジオで撮影しています。まさか、3年余り後に悪夢の「THE GET BACK SESSIONS」を同じ場所で行う事となるとは、夢にも思っていなかったでしょう。つまり、「I FEEL FINE」よりも前にリリースされた曲には、当時に制作されたミュージック・ビデオはありません。最後の方で何度も繰り返し出て来るギョッとするほどに鮮明なカラー映像の「PAPERBACK WRITER」と「RAIN」は、1966年5月19日と20日に、マイケル・リンゼイ=ホッグ監督によって撮影されていて、これまた、3年足らずの後に映画「LET IT BE」を監督する事になるわけで、こうして後になって俯瞰して観ると、解散へ向かってまっしぐらだった様に思えてしまいます。それでも、「赤盤」時代のビートルズは只々光り輝いていて、ほとんどがモノクロ映像なのに、とっても眩しいのです。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする