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2025年09月19日

「ポールの道」#855「THE BEATLES BLACK VOX」
#164「THE BEATLES 1967-1970 ALTERNATE ALBUM EXPANDED EDITION」

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2021年に「SUPERSTOCK」からリリースされたCD2枚組2セットの「THE BEATLES 1962-1966 ALTERNATE ALBUM EXPANDED EDITION」(「赤盤」)と「THE BEATLES 1967-1970 ALTERNATE ALBUM EXPANDED EDITION」(「青盤」)の拡大盤の、今回は後半の「THE BEATLES 1967-1970 ALTERNATE ALBUM EXPANDED EDITION」(「青盤」)を紹介します。CD1は、1「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」、2「PENNY LANE」、3「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、4「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、5「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、6「A DAY IN THE LIFE」、7「ALL YOU NEED IS LOVE」、8「I AM THE WALRUS」、9「HELLO, GOODBYE」、10「THE FOOL ON THE HILL」、11「MAGICAL MYSTERY TOUR」、12「LADY MADONNA」、13「HEY JUDE」、14「REVOLUTION」、15「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」、16「CHRISTMAS TIME(IS HERE AGAIN)」、17「THE INNER LIGHT」、18「WITHIN YOU WITHOUT YOU / TOMORROW NEVER KNOWS」、19「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」の、全19曲入りです。流石に「青盤」全28曲はCD1枚には入らないので、こちらは、1「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」〜14「REVOLUTION」の14曲が「青盤」の1枚目と同じ曲です。しかしながら、「赤盤」の拡大盤と同様に、全てが公式テイクとは別テイクや別ミックスで収録されています。15「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」〜19「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」はボーナス・トラックで、「赤盤」同様に「PAST MASTERS STEREO REMIX」となっていますが、一寸それは違うんじゃないか、と思える選曲です。

まず、15「YOU KNOW MY NAME(LOOK UP THE NUMBER)」は、ステレオ・ロング・ヴァージョンをモノラル・ヴァージョンと同じ長さに編集して、ステレオ・ロング・ヴァージョンではエンディングが切れていたので、そこだけモノラル・ヴァージョンを繋いだ、正々堂々の「インチキ・ミックス」です。そもそも1996年の公式盤「ANTHOLOGY 2」で初出音源だったステレオ・ロング・ヴァージョンのエンディングが切れていたのは、何故なのでしょうか。16「CHRISTMAS TIME(IS HERE AGAIN)」は、1967年のクリスマス・レコード用の曲ですが、コレは1995年の公式盤シングル「FREE AS A BIRD」にカップリングされた音源で、1967年と1966年のクリスマス・レコードを編集したものです。17「THE INNER LIGHT」は、1968年のシングル「LADY MADONNA」のB面曲で、この時にジョンがシングルB面ならば自分の曲(「ACROSS THE UNIVERSE」!)はボツにして、ジョージの曲を採用しようとなって、初めてジョージの曲がシングルになったのです。分かりましたか?レコスケくん。それで、ポールも良い曲だと褒めているのですけれど、それが「インド音楽だと考えないで聴けば美しい曲だよ」とか云っていて、逆にディスっているんじゃないか、と思える発言なのですけれど、勿論、ポールに悪気はありません。悪気がないのにそう云う上から目線の発言ばかりするから、ジョージに恨まれるのです。18「WITHIN YOU WITHOUT YOU / TOMORROW NEVER KNOWS」と、19「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」は、2006年のマッシュアップ盤「LOVE」でのリミックス音源です。ジャイルズ・マーティンは、最初に「WITHIN YOU WITHOUT YOU / TOMORROW NEVER KNOWS」を作って、ポールとリンゴに聴かせたそうです。「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」は、「イーシャー・デモ」にサー・ジョージ・マーティンがオーケストラ・スコアを書いて重ねていて、おそらく、これがサー・ジョージ・マーティンの遺作でしょう。

CD2は、1「BACK IN THE U.S.S.R.」、2「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」、3「OB-LA-DI, OB-LA-DA」、4「GET BACK」、5「DON'T LET ME DOWN」、6「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」、7「OLD BROWN SHOE」、8「HERE COMES THE SUN」、9「COME TOGETHER」、10「SOMETHING」、11「OCTOPUS'S GARDEN」、12「LET IT BE」、13「ACROSS THE UNIVERSE」、14「THE LONG AND WINDING ROAD」、15「GET BACK」、16「DON'T LET ME DOWN」、17「ACROSS THE UNIVERSE」、18「LET IT BE」、19「FREE AS A BIRD」、20「REAL LOVE」の、全20曲入りで、合計39曲入りです。前回に紹介した「赤盤」と合わせると、全97曲入りです。1曲1曲が短いので、58曲も入っていた「赤盤」に比べると、「青盤」は「HEY JUDE」の様な7分を超える大作もあるので、39曲では物足りないので、こっちはCD3枚組にしてもらいたかったです。1「BACK IN THE U.S.S.R.」〜14「THE LONG AND WINDING ROAD」の14曲は、公式盤の「青盤」の2枚目と同じですけれど、やはり全てが別テイクや別ミックスで収録されています。4「GET BACK」と、5「DON'T LET ME DOWN」は「ルーフトップ・コンサート」音源ですが、見事なステレオ・ミックスになっています。こうした「赤盤」と「青盤」の全曲を別テイクや別ミックスで収録出来る様になったのは、やはり2009年のゲーム「ROCKBAND」の存在が大きくて、それまでは別テイクがなかった曲も「ROCKBAND」REMIXで補える様になったのです。ボーナス・トラックは、こちらも「PAST MASTERS STEREO REMIX」となっていて、やはり、一寸違うかな?と云う内容ではあります。15「GET BACK」と、16「DON'T LET ME DOWN」は、シングル・ヴァージョンで、コレは本編が前述の通り「ルーフトップ・コンサート」音源だったし、確かに「PAST MASTERS」ではあります。

17「ACROSS THE UNIVERSE」は、バード・ヴァージョンで、本編がオリジナル・ヴァージョン(ジョンの声が通常のスピード)を元にしているリミックス音源だったので、そこまで入れるならフィル・スペクター・ヴァージョンも入れたら、と思えるのですけれど、実は本編のリミックス音源はフィル・スペクター・ヴァージョンの回転数を通常に戻して途中から繋いであるのでした。18「LET IT BE」はシングル・ヴァージョンで、本編はフィル・スペクター・ヴァージョンが元です。前後すると、14「THE LONG AND WINDING ROAD」は、ビートルズとビリー・プレストンによる美しい「ありのまま」のヴァージョンが前半は聴けます。こうして普通に出せば良いのに、公式盤は「LET IT BE... NAKED」なんてバカな事をやって、とか思っていると、いきなり間奏からフィル・スペクター・ヴァージョンが繋いであって、おいおい、何じゃこりゃ、となります。最後の、19「FREE AS A BIRD」と、20「REAL LOVE」は、1995年と1996年のヴァーチャル・ビートルズの2曲がいきなりだなあ、と出しゃばって来ます。この2曲を入れたかった気持ちは分からなくはないのですけれど、やっぱり違和感があります。「赤盤」と「青盤」のCDは、実は公式盤が1993年にリリースされる前に、パチモン盤が出ておりました。初CD化音源をデジタル・コピーしていたので、音も良くて、CD3枚組に全54曲入りで、以前も触れましたけれど、「A DAY IN THE LIFE」の後に意味不明な声が入っていたり、「LET IT BE」と「GET BACK」がアルバムのフィル・スペクター・ヴァージョンだったりと、遊んでいる部分もありました。1977年縛りが1967年縛りになって、ビートルズのパチモンも1967年までしか出せなくなりましたけれど、そもそも日本の著作権期間が短すぎると抗議したのは、ポール・マッカートニーなのです。

それでですね、前に今度出る「ANTHOLOGY」の箱は、新たに加わった「ANTHOLOGY 4」だけバラ売りしてくれませんか?と書いたのですけれど、アップルは9月17日になって、後出しで「ANTHOLOGY 4」だけCD2枚組とLP3枚組でリリースすると発表しました。8月22日のリリース情報解禁から1か月近く経って、みんなが箱を予約し終えたタイミングでバラ売りもしますって、あのね、どこまで商魂逞しいのでしょうか。あたくしも既に箱を予約しちゃったし、今更キャンセルするのもアレなんで、ジャイルズ・マーティン渾身の「ボツ音源リマスター」に期待して箱を買いますけれどね、納得いかないなあ。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする