nana.812.png

2025年09月05日

「ポールの道」#841「THE BEATLES BLACK VOX」
#150「No.3 ABBEY ROAD N.W.8」

no.3abbeyroadnw8.jpg


サー・ジョージ・マーティン曰く、ビートルズの4人が、おそらく最後のアルバムになると意識して臨んだ、1969年9月26日にアップルからリリースしたアルバム「ABBEY ROAD」は、ビートルズの4人が並々ならぬ覚悟でレコーディングしていたので、アウトテイクが少ない作品集となりました。アルバム「ABBEY ROAD」は全17曲入りですが、その内の12曲(「SOMETHING」、「MAXWELL'S SILVER HAMMER」、「OH! DARLING」、「OCTOPUS'S GARDEN」、「I WANT YOU(SHE'S SO HEAVY)」、「SUN KING」、「MEAN MR. MUSTARD」、「POLYTHENE PAM」、「SHE CAME IN THROUGH THE BATHROOM WINDOW」、「GOLDEN SLUMBERS」、「CARRY THAT WEIGHT」、「HER MAJESTY」)は、既に1969年1月の「THE GET BACK SESSIONS」で曲自体は出来ていて、何度もリハーサルしてもいたので、アルバム「ABBEY ROAD」用の新曲としては5曲(「COME TOGRTHER」、「HERE COMES THE SUN」、「BECAUSE」、「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」、「THE END」)しかなくて、1969年2月22日の「I WANT YOU(SHE'S SO HEAVY)」から断続的にレコーディングされて、4月には「OH! DARLING」と「OCTOPUS'S GARDEN」が、5月には「SOMETHING」と「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」が、それぞれレコーディングされて、A面に収録される曲はほとんど出来ていたところで、同年7月から8月にかけてサー・ジョージ・マーティンのプロデュースで集中してレコーディングされています。「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」は「CARRY THAT WEIGHT」で繰り返されるので、それも「THE GET BACK SESSIONS」の頃には構想があったのでしょう。

となると、本当の新曲は、ジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作品「COME TOGRTHER」と「BECAUSE」、ジョージ作の「HERE COMES THE SUN」、そして、ポールが主導で書いたレノン=マッカートニー作品「THE END」の4曲だけとなります。それで、「COME TOGRTHER」のアウトテイクが1996年リリースの公式盤アルバム「ANTHOLOGY 3」に、ジョージの「HERE COMES THE SUN」のアウトテイクが2019年リリースの公式盤の箱「ABBEY ROAD」に収録されているのでしょう。他のアウトテイクを聴いても、ラフミックス音源や別ヴォーカル音源位しか出てこないわけで、B面メドレーに関しても「SUN KING / MEAN MR. MUSTARD」と「POLYTHENE PAM / SHE CAME IN THROUGH THE BATHROOM WINDOW」と「GOLDEN SLUMBERS / CARRY THAT WEIGHT」は、最初からつづけて演奏されているわけで、緻密に計算されてレコーディングされています。その点では、サー・ジョージ・マーティンとジェフ・エメリックとポール・マッカートニーが目指したであろう「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND PART 2」よりも全体の流れは自然で、ここまで作り込んでいるビートルズのアルバムは、他にはありません。1969年7月から本格的にアルバム「ABBEY ROAD」のレコーディング・セッションになるまでは、並行してグリン・ジョンズが必死でアルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」と格闘していました。と云うわけで、アルバム「ABBEY ROAD」のアウトテイクを集めたブートレグも少ないのですけれど、今回はアナログ盤時代から有名なブートレグ「No.3 ABBEY ROAD N.W.8」を紹介します。コレは、アナログ盤を元にしてボーナス・トラックも加えた2019年リリースの「dap」からの1CDのブートレグです。アナログ盤だと、A面がアルバム「ABBEY ROAD」のアウトテイク集で、B面がポール・マッカートニーとドノヴァンのセッション音源が収録されていました。

内容は、1「GOLDEN SLUMBERS」、2「CARRY THAT WEIGHT」、3「HER MAJESTY」、4「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」、5「OCTOPUS'S GARDEN」、6「MAXWELL'S SILVER HAMMER」、7「OH! DARLING」、8「SOMETHING」、9「HOW DO YOU DO」、10「BLACKBIRD」、11「THE UNICORN」、12「LALENA」、13「HEATHER」、14「MR. WIND」、15「THE WARLUS AND THE CARPENTER」、16「LAND OF GISCH」、17「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」、18「BECAUSE」、19「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」、20「SUN KING」、21「MEAN MR. MUSTARD」、22「POLYTHENE PAM / SHE CAME IN THROUGH THE BATHROOM WINDOW」、23「GOLDEN SLUMBERS」、24「CARRY THAT WEIGHT」、25「THE END」、26「LET IT BE」、27「GOODBYE」の、全27曲入りです。まず、1「GOLDEN SLUMBERS」〜8「SOMETHING」の8曲が、アナログ盤ではA面で、アルバム「ABBEY ROAD」のアウトテイク集です。と云っても、1「GOLDEN SLUMBERS」と、2「CARRY THAT WEIGHT」は、ラフミックス音源ですし、3「HER MAJESTY」は完奏ヴァージョンです。4「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」は、エンディングがジャム・セッションになって長いヴァージョンで、5「OCTOPUS'S GARDEN」と、6「MAXWELL'S SILVER HAMMER」は、ラフミックス音源で、7「OH! DARLING」はポールのヴォーカルが高音が出なくなってファルセットになるアレで、8「SOMETHING」はエンディングがジョンの「REMEMBER」みたいなピアノのリフになってジャム・セッションになる「Take 37」です。アナログ盤時代のアルバム「ABBEY ROAD」のアウトテイクと云ったら、これらが定番でした。

9「HOW DO YOU DO」〜16「LAND OF GISCH」の8曲は、アナログ盤のB面で、1968年12月にポールとドノヴァンがアコースティック・ギターでセッションした音源です。コレは以前も別のブートレグで紹介していますが、時期的に云えばアルバム「ABBEY ROAD」ではなく、アルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」から「THE GET BACK SESSIONS」の狭間に行われたセッションです。全8曲中、ポールがメインで歌っているのは、9「HOW DO YOU DO」、10「BLACKBIRD」、13「HEATHER」の3曲だけで、他の5曲はドノヴァンがメインです。10「BLACKBIRD」は1968年のアルバム「THE BEATLES」に収録されていますが、「HOW DO YOU DO」と「HEATHER」の2曲は未発表曲です。「HEATHER」は、勿論、リンダ・イーストマン(後のリンダ・マッカートニー)の連れ子で、翌1969年にはポールの娘になるヘザー・マッカートニーに捧げた曲です。17「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」〜27「GOODBYE」の11曲は、ボーナス・トラックです。17「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」は、ラフミックス音源にベースを加えたなんちゃってリミックス音源で、18「BECAUSE」、19「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」、20「SUN KING」、21「MEAN MR. MUSTARD」、22「POLYTHENE PAM / SHE CAME IN THROUGH THE BATHROOM WINDOW」、23「GOLDEN SLUMBERS」、24「CARRY THAT WEIGHT」、25「THE END」の9曲は、B面メドレーのカラオケです。26「LET IT BE」は、何故かここに入っている、1970年1月4日のオーバーダビング・セッション音源です。最後の「GOODBYE」はポールによるデモ音源で、ステレオ・リミックスされています。ボーナス・トラックの意味が少し分からないのですけれど、アウトテイクが少ないから苦肉の策なのでしょう。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする