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2025年07月19日

「ポールの道」#793「THE BEATLES BLACK VOX」
#102「THE BEATLES COMPRESSED VERSION」

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ビートルズは1968年に、4人が社長の「アップル・コープス」を設立しました。アップルは、音楽出版の「アップル・パブリッシング」や、マジック・アレックスの法螺話に騙された「アップル・エレクトロニクス」や、あっと云う間に潰れた「アップル・ブティック」や、映像部門の「アップル・フィルムズ」等々、手広く事業展開したのですけれど、マトモに機能したのは音楽部門の「アップル・レコーズ」だけと云ってもいいでしょう。2025年の現在も、ビートルズのリイシュー盤は「アップル」からリリースされていますが、1974年には事実上閉鎖されて、1976年の勝手に出したジョージ・ハリスンのベスト・アルバム「THE BEST OF GEORGE HARRISON」を最後に、一度「アップル」はレーベルとしては終わっています。現在の「アップル」は、1990年代になってから、旧作のリイシュー盤やリマスター盤やリミックス盤などをリリースする為に復活させたレーベルで、ビートルズが直接関わっていた1968年から1976年までの「アップル」とは、会社としては同じですが、意味合いは違っています。それは兎も角として、1968年8月30日(英国)・同年8月26日(米国)にリリースしたビートルズのシングル「HEY JUDE / REVOLUTION」からは、ビートルズのレコードは「アップル・レコーズ」からリリースされています。とは云え、製造と販売をするレコード会社は、英国ではEMIで、米国ではキャピトルと、以前と同じで、その傘下での自主レーベルが「アップル」です。自主レーベルと云う事で、ビートルズが発掘した新人もデビューさせていて、シングル「HEY JUDE / REVOLUTION」と同日に、ポールがプロデュースしたメリー・ホプキンのシングル「THOSE WERE THE DAYS(悲しき天使)」や、ジョージが曲を提供してプロデュースしたジャッキー・ロマックスのシングル「SOUR MILK SEA」(バックミュージシャンが無駄に豪華)などもリリースしています。

アップルは他にも、アイヴィーズ(後にバッドフィンガーに改名)や、ジェイムズ・テイラーなどもデビューさせていて、ビリー・プレストンやドリス・トロイなども移籍させていて、ビートルズは勿論、メリー・ホプキンやバッドフィンガーやビリー・プレストンなども大ヒットしています。それでも潰れてしまったのは、やはり、音楽だけやっていれば充分に利益を得ていたのに、余計な分野にも手を伸ばし過ぎたのが原因でしょう。シングル「HEY JUDE」は全英3週首位!・全米9週連続首位!と売れに売れて、英国で「HEY JUDE」に代わって首位!となったのはメリー・ホプキンの「THOSE WERE THE DAYS」だったので、レーベル的にも大成功でした。1968年11月22日に英国ではステレオとモノラルで、同年11月25日に米国ではステレオで、それぞれリリースしたビートルズの2枚組アルバム「THE BEATLES」は、全英では8週首位!・全米でも9週首位!と、2枚組にも関わらず大ヒットしています。前述の通り、英国ではこのアルバムまではステレオとモノラルでリリースしていて、それぞれが異なるミックスを行っていました。米国では、このアルバムからステレオのみでリリースされてゆきます。つまり、この1968年当時には、米国の家庭にステレオ・プレイヤーが充分に普及していたのでしょう。米国盤のアルバム「THE BEATLES」は、付属のポスターでのジョンとヨーコさんの全裸のイラストや、ポールの全裸写真などを修正しています。しかしながら、そんな事よりも重要なのが、米国盤の初期プレス盤が破棄されている事実です。

米国盤の内容は、A面が、1「BACK IN THE U.S.S.R.」、2「DEAR PRUDENCE」、3「GLASS ONION」、4「OB-LA-DI, OB-LA-DA」、5「WILD HONEY PIE」、6「THE CONTINUING STORY OF BUNGALOW BILL」、7「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」、8「HAPPINESS IS A WARM GUN」で、B面が、1「MARTHA MY DEAR」、2「I'M SO TIRED」、3「BLACKBIRD」、4「PIGGIES」、5「ROCKY RACCOON」、6「DON'T PASS ME BY」、7「WHY DON'T WE DO IT IN THE ROAD?」、8「I WILL」、9「JULIA」で、C面が、1「BIRTHDAY」、2「YER BLUES」、3「MOTHER NATURE'S SON」、4「EVERYBODY'S GOT SOMETHING TO HIDE EXCEPT ME AND MY MONKEY」、5「SEXY SADIE」、6「HELTER SKELTER」、7「LONG, LONG, LONG」で、D面が、1「REVOLUTION 1」、2「HONEY PIE」、3「SAVOY TRUFFLE」、4「CRY BABY CRY」、5「REVOLUTION 9」、6「GOOD NIGHT」の、全30曲入りです。つまり、英国オリジナルのステレオ盤と同内容なのです。では、何故にその初期プレス盤が破棄されてしまったのかと云うとですね、ジョージ・ハリスンが発売前に米国キャピトルのロサンゼルス本社に行って、米国キャピトルでカッティングされたレコードを聴いて激怒して、それまでの米国盤を全て破棄させてしまったのだそうです。その時点でのマトリクス番号は「33」だったので、結構な数が破棄された事となります。ところが、広い米国なので、そのボツになった盤も僅かながら流通してしまったのです。

それが現在ではレア盤として、結構な高値で取引されているのですけれど、そんなボツ音源もしっかりとブートレグになっています。それが「THE BEATLES COMPRESSED VERSION」なる2枚組CDRです。CDRだと云うところに、何やら素人がやらかしたか、もしくはサッサと売り切って逃げようと云う魂胆が丸見えなのですけれど、わざわざ高いお金を出して回収盤を手に入れる程ではないものの、聴いてみたいと云うあたくしの様な「浅い」ファンには丁度いいブートレグです。アナログ盤起こし音源で、スクラッチ・ノイズも処理せずに、そのまんま入れています。果たして、どんな音なのかと云うとですね、まず、全体の音がコンプレッサーで潰してあって酷い音です。更に、低音部がほとんど聴こえなくて、ポールの骨太なベースが、素人がコピーした下手なギターの低音弦みたいなペラペラな音になっているし、リンゴのドラムスもおもちゃのチンパンジーが叩いているみたいな音になっています。アルバム「THE BEATLES」は、ベーシック・トラックを4人でガッツリとレコーディングしている曲が多いので、ドラムスとベースが肝となっているのに、それが平べったくなっていたんじゃ台無しです。それに乗せたギターやピアノの音も、ヴォーカルもぐしゃっと潰れていてへなちょこで、ジョージが怒ったのも納得の酷い音です。今時、ブートレグでもこんなに酷い音じゃ商売になりません。まあ、コレもブートレグなんですけれど、レア盤として取引されているのは、あくまでも数が少ないからで、ブッチャー・カバーと同じ様なもんです。それでも聴きたいと云う方々だけ、探して聴いてみて下さい。オリジナルの回収盤は勿論、このCDRですら、聴く為に買ったのならば大損する音源です。現在ならば、ネットで探せば聴けるんじゃないでしょうか。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする