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2025年07月12日

「ポールの道」#786「THE BEATLES BLACK VOX」
#095「DOWN IN HAVANA」

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ビートルズは、マネジャーのブライアン・エプスタインが亡くなった後の1967年9月に音楽出版社アップル・パブリッシングを設立しました。10月にはアップル・エレクトロニクスを、11月にはアップル・リミテッドを、12月にはアップル・ブティックと広げ、1968年1月にはアップル・フィルムズとアップル・コープスを設立します。しかし、アップル・ブティックがすぐに経営悪化して、1968年4月にはアップル・レコードを中心とした会社となりました。その辺は、餅は餅屋で、ビートルズは音楽だけやっていれば良かったのですけれど、まあ、4人共に若かったから、色々とやってみたかったのでしょう。ビートルズのレコードは、1968年3月15日リリースのシングル「LADY MADONNA / THE INNER LIGHT」までは、英国パーロフォン・米国キャピトル・日本オデオンからリリースされていましたが、アップル・レコードを設立したので、それ以後はそれぞれのレコード会社の傘下とは云え、自分たちのレーベルである「アップル」からリリースされてゆきます。それはシングルは英国では1968年8月30日にリリースされた「HEY JUDE / REVOLUTION」からで、アルバムは英国では1968年11月22日にリリースされた「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」からとなります。1968年5月30日にジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作の「REVOLUTION」(後に「REVOLUTION 1」と「REVOLUTION 9」となる)から始まったアルバム「THE BEATLES」のレコーディング・セッションですが、7月になって先行シングルをリリースする事となりました。それは、ビートルズのレーベルであるアップルの最初のレコードです。

そこで、ジョン・レノンは最初にレコーディングした「REVOLUTION」をシングルにしたいと云ったのですが、10分以上もあった事もあり、ポール・マッカートニーやジョージ・ハリスンに反対されます。それで、7月10日から12日にかけて、テンポを速くしたシングル用の「REVOLUTION」をレコーディングし直しています。ところが、その頃のジョンはヨーコさんとW不倫関係となり、妻のシンシアと当時5歳だった息子のジュリアンと別居していて、ポールは落ち込んでいるジュリアンの元を訪ねて励まして、帰りの車の中でジュリアンへ向けた「HEY JUDE」(「HEY JULES」)を書いたのです。元ネタは、米国のドリフターズで有名な「SAVE THE LAST DANCE FOR ME」です。そして、7月28日から30日にかけてEMIスタジオで4トラックでリハーサルして、7月31日から8月1日にかけてトライデント・スタジオで初めて8トラックでレコーディングして、シングルのA面はポール、ジョージ、リンゴが推した「HEY JUDE」になり、ジョンが推しつづけた「REVOLUTION」はB面になってしまったのでした。7月30日のリハーサル時には、ポールがジョージに「ギターを弾くな」と命じて、それは後の1969年1月の「THE GET BACK SESSIONS」の「TWO OF US」でのポールとジョージの口論にも繋がって、ジョージ脱退の要因ともなっています。その日はドキュメンタリー番組の為にカメラが入っていたのですけれど、スタジオでポールとジョンとリンゴが演奏しているのを、ジョージ・ハリスンはサー・ジョージ・マーティンとコントロール・ルームから観ている模様が写されています。「HEY JUDE」は7分以上もある曲で、それじゃあ、元の「REVOLUTION」が10分以上あって長いからシングルに出来ないと云う話にはならないんですけれどね。

さて、今回は「SECRET TRAX」からの1CDブートレグ「DOWN IN HAVANA」を紹介します。内容は、1「DOWN IN HAVANA」、2「STEP INSIDE LOVE」、3「LOS PARANOIAS」、4「THE WAY YOU LOOK TONIGHT」、5「JAMMING」、6「CAN YOU TAKE ME BACK?」、7〜9「I WILL」、10〜22「HEY JUDE」の、全22テイク入りです。つまりは「I WILL」セッションと「HEY JUDE」セッションの2曲しか入っていません。特に10〜22の「HEY JUDE」13連発は強烈です。その13連発の内、4分半や5分以上の完奏ヴァージョンが7テイクもあります。1「DOWN IN HAVANA」〜9「I WILL」は、1968年9月16日の「I WILL」のレコーディング・セッション音源で、前回に紹介したブートレグ「MAD DAY OUT / THE EVOLUTION OF “REVOLUTION”」にも収録されていましたが、こちらの方が長く、「I WILL」の「take 1」と「take 68」もフル・ヴァージョンで聴けます。「take 68」は67テイクの中から出来が良かった「take 65」をコピーした完成テイクの元で、兎に角、70テイク近く演奏して完成しています。それをポールは鼻歌で出来てしまったが如く聴かせてしまうのですから、その辺は、やっぱりスゴイですなあ。メインエベントの「HEY JUDE」は、10が6分16秒の「take 1」で、11が4分23秒の「take 2」で、12が27秒の「take 7」で、13が16秒のセッション音源で、14が1分25秒の「take 8」で、15が5分55秒の「take 9」で、16が5分3秒の「take 10」で、17が18秒、18が1分8秒、19が15秒のセッション音源です。

20は7分3秒の英国盤プロモ音源で、21は7分10秒の米国盤プロモ音源で、22は7分の1995年リマスター音源です。英文解説文にも、7「I WILL」から、22「HEY JUDE」までは、他のブートレグでも聴ける音源ではあるものの、ここまでまとめて聴けるのはコレのみですよ、みたいに書かれているのですけれど、そりゃあ、他のブートレグ業者だって「HEY JUDE」13連発なんてやりませんよ。何でもあるだけ入れてしまう「SECRET TRAX」だからこそ、こんなブートレグをリリースしたのです。前半の「I WILL」セッション音源は、現在では2018年の公式盤の箱「THE BEATLES」にも収録されているのですけれど、それは「I WILL」と「BLUE MOON」と「STEP INSIDE LOVE」と「LOS PARANOIAS」と「CAN YOU TAKE ME BACK?」だけなので、「DOWN IN HAVANA」と「THE WAY YOU LOOK TONIGHT」はブートレグでしか聴けません。「HEY JUDE」は、箱「THE BEATLES」には「take 1」が、アルバム「ANTHOLOGY 3」には「take 2」が収録されていますけれど、公式盤ではただでさえ長い「HEY JUDE」13連発なんて考えられません。なにせ、このブートレグでの「HEY JUDE」は45分位つづくよどこまでもなので、兎に角、あるだけ「HEY JUDE」を浴びる様に聴きたい方だけ聴いて下さい。シングルA面になった「HEY JUDE」は、全英2週連続首位!(ポールがプロデュースしてアップルから「HEY JUDE」と同日にリリースされた、メリー・ホプキンのデビュー・シングル「THOSE WERE THE DAYS(悲しき天使)」が変わって首位!となった)・全米9週連続首位!となり、ビートルズで最も売れたシングルとなりました。それなのに、アルバム「THE BEATLES」には未収録なのです。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする